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ソフトバンクGが「AI×医療」の新会社を設立、孫氏が語った展望

 急速なペースで技術開発が進む人工知能(AI)は、人類にとって役に立つものなのか、あるいは破滅への道なのか――この問いかけに「確実に有益で使わないと損」と答えるのは、ソフトバンクグループを率いる孫正義氏だ。

孫氏

 ソフトバンクグループは27日、米国のTempus AIとのジョイントベンチャー「SB TEMPUS(エスビーテンパス)株式会社」の設立を発表した。7月にクロージングが完了する予定で、ソフトバンクグループとTempusがそれぞれ150億円を出資する。

 Tempusは2015年に設立され、今月にはNASDAQへの上場を果たした気鋭のスタートアップ。米国・シカゴに拠点を置き、CEOのエリック・レフコフスキー(Eric Lefkofsky)氏はグルーポン(Groupon)の創業者としても知られる。

 Tempusの主要なサービスは「遺伝子検査」「医療データの収集・解析」、そして「AIによる治療提案」の3つ。同社が提供するAI対応プラットフォームは、米国における多数のがんの病院で導入されているという。

 個々の病院におけるさまざまな様式の医療データを、匿名化した状態でTempusのデータベースに集約。AIがそれを解析して再び病院へデータを送り、独自の研究開発や処方に役立てられる。こうしたデータ連携はリアルタイムで行われ、医師に対してはAIが治療の選択肢を提示する。

 また、集約されたデータは製薬会社にも提供し、対価を得るビジネスモデルとなっている。膨大なデータの恩恵を受けるかたちで、製薬会社は薬の開発にかかる時間やコストを削減できる。

 新会社のSB TEMPUSは、Tempusが米国での事業を通じて蓄積した知見や技術を、患者識別データにはアクセスせずに応用する。そして、先述の遺伝子検査やデータ収集・解析、AIによる治療提案といった、個別化医療を支援するサービスを国内で提供していく予定。

 昨年に父親をがんで亡くしたという孫氏は「毎日泣いた。最期は壮絶だった」と当時を振り返り、AIの活用によって病や死に関する悲しみを減らしたいと語る。

 孫氏によれば、急激な発展を遂げる生成AIはすでに米国医師国家試験に合格できる実力があり、今後は“人工超知能”「ASI(Artificial Super Intelligence)」への進化も期待される。それを医療に活用することで、「人の命を救ったり悲しみを減らしたりできる」(孫氏)。

 ソフトバンクグループが掲げる経営理念は「情報革命で人々を幸せに」。孫氏は「情報革命は人類を破滅に導くためのものではなく、人々を幸せにするためのもの」と語り、日米のタッグで最先端医療に取り組む意欲を見せた。