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「誰もがAIを使える社会に」、ソフトバンクの高校生向け教材「AIチャレンジ」

 ソフトバンクは、高校生を対象としたAI活用に関わる人材を育成する教育プログラム「AIチャレンジ」を2022年4月から提供する。

 AIチャレンジは、高校生を対象としてAIの基礎や仕組みを実践的に学べる学校教育プログラム。AIを活用できる人材の不足が叫ばれる中、AIが多用される将来を見据えて若手人材の育成を促進する。

左から、ZOZO NEXT 野口氏、ソフトバンク 池田氏、SNC 高松氏

AIの活用法を自ら考える

 AIチャレンジでは、AIリテラシーの習得とAIの活用実践という2つの観点からそれぞれパートに分かれている。

 コースは、「AI活用リテラシーコース」(4コマ)と「AI活用実践コース」(10コマ)の2つから選べる。Unit 1・2だけでも、AIがどのようなものかを学習でき、Unit 3・4では実際にツールを利用してどういう結果になるか、何が予測されるかといったことを実体験できる仕組み。

 高等学校学習指導要領の情報I・IIに対応した内容となっており「世の中に必要されている情報を網羅している」とソフトバンク CSR本部 本部長の池田昌人氏は語る。

 実際の授業では、生徒はAI活用の企画書を作り、これをソフトバンクグループ内のAI関連の担当者が実際に目を通しフィードバックを受けられるというメリットがある。使用できるツールは、予測系AIでは「Prediction One」、識別系AIでは「Teachable Machine」、会話系AIでは「Dialogflow」。このほか、多くの学校で導入できる環境も提供すると、使いやすさをアピールする。

 指導教員向けにも分かりやすいよう資料が用意されるほか、授業サポート、不明な点があった場合のヘルプデスクも提供される。

Prediction Oneなど、実際に提供されるツール
Pepperは今回の教材に含まれないが、レンタル中のPepperが学校にいれば連携できる

 ソニーネットワークコミュニケーションズ(SNC) 法人サービス事業部 AI事業推進部 Prediction One プロジェクトリーダーの高松慎吾氏によると、Prediction Oneは、AIの専門知識がなくても使いやすいという、シンプルなユーザーインターフェイスが特長。

 ソニーグループ内の研修でも利用されており、生徒は実際に企業で活用されるツールに触れながらの学習が可能。学習用のサンプルとして属性ごとに適したメガネの提案に向けたデータが提供され、店舗を訪れた客にPepperを通して、年齢や性別といった属性からおすすめのメガネを提案するAIサービスの構築が体験できるようになっている。

 高松氏は、SNCがAIを活用する人材の不足というソフトバンクと共通の課題認識を持っていたことを挙げ、「高校生という早い段階でAI教育をしていくことに賛同した」と語る。

費用は13万2000円~

 各コースとも、1年契約となり、費用は年間で「AI活用リテラシーコース」が13万2000円、「AI活用実践コース」が29万7000円。学校または学科単位での契約となり、指導人数による追加費用などは発生しない。提供価格は、ソフトバンクが一部の費用を負担したかたちとなっており、無利益という。

 本日20日から案内を開始し、12月に体験版を提供、2022年1月から本申込を開始する。

誰もがAIを使える社会に

 池田氏は「日本の国際競争力は苦しい状況。AI・情報革命で日本の活力をより一層高くするための『AIチャレンジ』」と語る。

 同社では、AIを中心とした成長戦略を推し進めており、ビジネスの変化やさまざまな自動化などAIがその中心的役割を果たすとしている。そうした社会環境の変化が予測される中で急務とされるのが、「AIを活用する人材」の育成だ。

 自社にAIを活用した製品・サービスの企画を担う人材が不足していると多くの企業が訴えており、政府が掲げるAI人材育成関連の目標にも触れ、池田氏は「AIリテラシーを持った人材の輩出が必要」と提供の背景を語る。

 AIチャレンジのゴールを「AIを使いこなす人材の育成」という池田氏。AIを作るのではなく、それをどのように使うのかというところがポイントだ。「AIを誰もがあたりまえに使える世の中にしていきたい」と目標を語る。

 今回のAIチャレンジは、ZOZO NEXT 取締役 CAIO 日本ディープラーニング協会 人材育成委員の野口竜司氏のアドバイスのもと、特別協力校でのトライアルを経て開発した。

 同氏は、AIチャレンジについて「AIを使いこなす側の人材をいかに増やすか、難しく捉えらがちなAIをできるだけ詰め込まず、必要な内容を厳選し収録、これによりAIを当たり前に使いこなせる『AI Native Kids』を増やしていきたい」と制作のポイントを説明。

 さらに今後、学習成果の発表の場として「AI企画コンテスト」を開催予定。優秀校には、Beyond AIの研究者と交流できるソフトバンクのAI部門へのインターン体験ができる特典が用意される。

 池田氏は、今回は内容の難易度などから高校生向けとしたと説明した上で「小中学校でPepperのプログラミング教育も展開している。それらのPepperと連携させて、中学校の(パソコン関連の)部活動向けとしても提供できると思う」と今後のさらなる展開にも臨む構えを見せた。