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Beyond 5G推進コンソーシアム設立総会、世界で“ビジネスでも”負けない技術を産官学で
携帯キャリア4社の代表でトークセッションも
2020年12月19日 08:00
12月18日、都内でBeyond 5G推進コンソーシアム設立総会が開かれた。総会には、会長に就任する東京大学の五神 真総長のほか、武田 良太総務大臣、NTTドコモの井伊 基之代表取締役社長、KDDIの髙橋 誠代表取締役社長、ソフトバンクの宮川 潤一CTO、楽天モバイルの山田 善久代表取締役社長が出席した。
大阪関西万博で世界に発信できるものを
総会のはじめに、同コンソーシアム発起人の一人である徳島県の飯泉 嘉門知事がオンラインで登壇。飯泉知事は、「5GやBeyond 5Gで、人手不足の解消や働き方改革、地域の課題の解消につながり、地方創生に大いに貢献する」と期待感を示す。
「2025年に開催される『大阪関西万博』をBeyond 5Gを世界に発信する“ショーケース”としてほしく、(同コンソーシアムには)オープンな議論の促進を期待している」(飯泉知事)
また、会長に就任する五神 真 東京大学総長は、「人新世となった現代において、人間が管理責任を追うことになる。サイバー空間を含め、人類全体のグローバル・コモンズを守ることが必要」と、地球環境の改善に5GやBeyond 5Gへ期待する旨を明らかにした。
五神総長も、大阪関西万博は“国際発信の絶好のショーケース”と捉えており、同コンソーシアムを最大限活用してもらい、産学官の連携でBeyond 5Gの早期実現を目指してほしいとした。
国をあげた取り組み
武田 良太総務大臣は、「サイバーとフィジカルが一体となるBeyond 5Gは重要な基盤となり、国際競争力強化につながる」とコメントし、国を上げてBeyond 5G実現への取り組みを支援していく方針を示した。
同コンソーシアムでは、Beyond 5Gの企画立案などを行う「企画・戦略委員会」と国際競争などを担当する「国際委員会」が運営される。グローバルな要素技術の研究開発や拠点整備、知的財産権の獲得を迅速かつ戦略的に取り組む。
国としては、300億円の研究開発基金の創設や200億円の設備投資をはじめとした総額1000億円規模の国費をあてて、国際競争力の強化を図る。
また、情報通信研究機構(NICT)では、Beyond 5Gのホワイトペーパー作成などを進めるほか、人材育成やビジネス面でBeyond 5G開発を支援する「Beyond 5G新経営戦略センター」を運営する。「技術で勝ってもビジネスで負けることのないよう将来戦略の検討が重要」(NICT理事長 徳田 英幸氏)とし、産官学の連携を促進し、Beyond 5Gの研究開発を推進していく。
携帯キャリア4社のパネルディスカッション
総会の後半では、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの各代表者によるパネルディスカッションが行われた。
「消費者として気になるのは携帯電話料金」(司会の内田恭子アナウンサー)と、携帯電話料金に関する話題を期待するところではあるが、今回はBeyond 5Gに関する内容でディスカッションが開催された。
――Beyond 5G時代の社会像
ドコモ 井伊氏
10年先のことなので難しいが、現行の5Gが普及していくとリモート化が進んでいき、働き方や暮らし方が変わってくる。そうなると人々の時間の使い方が変わってくる。2030年頃には、仕事やライフスタイルに何を優先に時間を使うかが変わってくると思う。
KDDI 高橋氏
今から10年前を振り返ると、世の中が大きく変わっている。色々なものが通信でつながる時代になるだろう。得られたデータを使ってより社会がよくなる。
ソフトバンク 宮川氏
自動運転車の普及で物流が変わり、遠隔操作ロボットで工場のシステムが変わったり、都市部の地方の格差がなくなったり、社会が便利になる。
楽天モバイル 山田氏
ありとあらゆるセンサーやカメラがつながる社会になる。たとえば、現在は地図を航空写真で確認できるがこれは数十年前までは考えられなかったもの。現在は、数カ月前や数年前のものだが、Beyond 5Gによって、その写真がリアルタイムに近づいていき、今の状況を地図で確認できる日が来るのではないか。
――Beyond 5Gに向けた取組内容と意気込み
楽天モバイル 山田氏
Beyond 5G時代のネットワークは、AIなどによって自律的に動いていくもの。その前提として、ソフトウェアによるネットワーク構築が必要だが、楽天モバイルは、世界に先駆けて完全仮想化ネットワークの商用化を実現し、世界に売り出そうとしている。
また、制約がなくどこでもつながることを目指し、衛星が携帯回線の基地局となる計画を米国企業とともに進めている。災害にも強く、現在エリアではない山奥などでもつながるサービス実現を進めている。
ソフトバンク 宮川氏
Beyond 5Gの前に、まずは現在の5Gの基地局整備を進めていく。基地局の建設などを含めて推進していきたい。
また、ソフトバンクでは、産業用のインフラとなるBeyond 5Gでは、人口カバー率よりも面積でのカバー率拡大が重要であると考え、成層圏に飛行船を飛ばして基地局にするHAPSの事業を展開している。技術だけ出来上がって、商用化するためのコストダウンなどに突入するが、一企業だけでなく、産官学が連携して取り組む時代になってきている。がんばっていきたい。
KDDI 高橋氏
Society 5.0と5Gをかけ合わせて、Society 5.0をアクセラレートしていこうと考えている。どんなユーザーにどんな体験価値を与えられるか。ユーザーにBeyond 5Gや5Gを感じてもらえるように、力を入れていく。
ドコモ 井伊氏
Beyond 5G実現のために“世界に勝てる”技術開発を進めていく。世界に広がる技術を生み出すために英知を結集して、今までにない技術を実現していく。
また、インフラ投資について、一事業者で独占して整備するのではなく、一部設備のシェアリングなどでコストを下げて、ユーザーが使いやすいような価格設定をするのが、事業者として必要なこと。
――同コンソーシアムに対する期待
ドコモ 井伊氏
産官学が連携して日本初の強い技術やサービスをどうやって作っていくかになる。一企業で思い至らないところを、みんながあつまり英知を結集すれば、必ず強くいいものができる。オープンな議論と意見交換できる場所を同コンソーシアムに期待したい。
KDDI 高橋氏
プラットフォームを作る上でセキュアな環境整備や、サプライチェーンの構築などをしていかなければならないと思う。同コンソーシアムは立ち上げもスピーディーだったので、この先もスピード感を持って取り組んでいきたい。
ソフトバンク 宮川氏
5Gは産業の基盤、Beyond 5Gでは人間の生活全体の基盤になりうるものだと思う。Beyond 5Gで日本が元気になってほしい。その元気の源となるために、同コンソーシアムのメンバーには牽引してもらいたい。
楽天モバイル 山田氏
オールジャパンで取り組みたい。海外への展開にも日本の企業とパートナーシップをもって取り組んでいきたい。
対世界で“ビジネス”で勝つ
総会の最後に、第5世代モバイル推進フォーラム会長の吉田 進京都大学名誉教授からは、「対世界で“ビジネス”で勝つ」「人材のダイバーシティ性」「ローカル5Gによる地方創生」を期待したいとコメントした。
特に、対世界でビジネスで勝つことについて、吉田 名誉教授は「何事にも十分に用意周到なビジョンや戦略を持つことが大切。技術で勝ってビジネスで負ける理由、携帯電話を例に出すと、第二世代のときに『ジャパニーズデジタルセルラー』としてサービスを始めたが、最初からグローバルで使用するのを想定した『GSM』に負けてしまった。3Gの際は、ドコモが先頭を走りすぎたため、世界にあまり浸透しなかった。今回は『Beyond 5G新経営戦略センター』の設立で、大いに期待したい。」とした。
総会の最後は、吉田 名誉教授が音頭を取った一本締めで閉会した。