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ソフトバンク、ジャパネットが新設する「長崎スタジアムシティ」で連携

スタジアムの名称を「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」へ

左から、ジャパネットホールディングス 代表取締役社長兼CEOの髙田 旭人氏と、ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川 潤一氏

 ソフトバンクとジャパネットホールディングスは、長崎県長崎市で計画している「長崎スタジアムシティプロジェクト」においてICT領域で連携することを発表した。

 また、プロジェクト内で建設されるスタジアム名称が2024年~2028年の5年間「PEACE STADIUM Connected by SoftBank(ピーススタジアム コネクテッドバイソフトバンク)」となることが発表された。

5GやWi-Fi環境をソフトバンクが整備

 スタジアムシティ内の5GネットワークやWAN、LAN、Wi-Fi環境をソフトバンクとグループ会社が連携して整備し、スタジアムシティ内のあらゆるものがつながる通信ネットワークを構築する。

 スタジアムシティ内では、スマートフォンアプリを活用した、参加型の応援体験や、フード類の注文と受け取り、駐車場やコインロッカーの空き状況案内などを実施する。将来的には、スタジアムを中心とした各施設のデータを連携させ、AIを活用した人流の最適化や相互送客により消費行動を活性化させる「Autonomous Stadium(オートノモススタジアム、自立的なスタジアム)」の実現を目指すとしている。

 Wi-Fi接続環境については、スタジアムの年間シート購入者などに専用のSSIDを用意し、より快適なWi-Fi環境を利用できる仕組みを構築するという。

ジャパネットがスポーツに力を入れる意義

ジャパネットホールディングス 代表取締役社長兼CEOの髙田 旭人氏

 ジャパネットホールディングス 代表取締役社長兼CEOの髙田 旭人氏は、今回のスタジアムシティの核となる「V・ファーレン長崎」ホームスタジアムの建設について「チームの再建をサポートしていた際に、坂が多く平地が少ない長崎にたまたま長崎市内に700m2の土地が生まれることに着目した」と説明。スポーツを通じ長崎の魅力を伝えるということに取り組み、これを成功に導けば、日本全体の地域創生を推進するということにもつながるとアピールする。

 地域創生は行政の課題と思われがちだが、ジャパネットでは民間の取り組みとして進める。そうすることで地元を愛する日本全国の地方民間企業が取り組み、「日本全体が盛り上がる」きっかけになると髙田氏は説明。一方で「赤字を垂れ流してスポーツが盛り上がった」は成功ではないとし、今回のプロジェクトは「スポーツで盛り上がり、収益もある」ことが目標であるとした。

「ユニフォームを着るだけでスタジアム入場」できる入場ゲートも、ジャパネットがスポーツで地域創生を目指す取り組みのひとつ

周りが一体となったスタジアムシティ

 スタジアムシティの建設地は、長崎駅から徒歩10分の場所にある。髙田氏は「坂が多い長崎でこれだけの広さの平地を取得できたことは奇跡」とコメントしている。

 経済効果について、建設時に約2000人の雇用創出と経済波及効果約1436億円、開業後は約13000人の雇用創出と約963億円の経済波及効果があるという。

 スタジアムは、日本一ピッチに近いスタジアムとして、Jリーグ規定ギリギリの5mで設計されている。また、「常設のゲートは設けない」(髙田氏)とし、試合が開催されない日は一般に開放され誰でも楽しめる空間にする。

 また、隣接してBリーグに所属するプロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」のホームアリーナとして、約6000人規模のアリーナも建設される。髙田氏は、「現在の動員数は平均2000人だが、チームがさらに魅力的なものになれば、6000人埋められるのではないか」と期待感を示した。試合のない日は、コンサート会場などにも活用されるとし、1000人規模のコンサートから開催できるよう、運用面で工夫を凝らしたアリーナになるとしている。

 そのほか、オフィス棟や商業施設についても「長崎初」の企業に入ってもらいたいと髙田氏はコメント。施設内では、ジャパネットグループのレストランやビール醸造所も出店。「おいしいビールがあれば、公共交通機関で来るのではないか」(髙田氏)と、周辺道路の混雑対策にも力を入れるという。

オフィス棟
ホテル

 周辺道路の混雑対策に向けて、さまざまな「来退場の分散化」の取り組みを実施する。たとえば、駐車場の出庫時間に応じた料金を設定し、試合終了から遅れて出庫すると、終了直後よりも安価な駐車料金になるようにする。

駐車場

 また、ブロンズスイートを年間購入したユーザーには、相手チーム名産の食事を用意するなどして試合開始直前の交通集中を避ける取り組みを実施。あわせて、滞在時間の拡大にも期待しているという。

 髙田氏は、これまで大規模なスタジアムなどは「行政主導」で行ってきたことに触れ「行政は地域創生のカギを握っており、公平性を担保したものを設計する。民間では、公平性以上に幸福の最大化を目指せる」と、今回のプロジェクトを民間主導で行う意義を強調。

 また、サッカーやバスケットボールの試合がない日にもスタジアムやアリーナを活用するという。VIPルームをホテルの客室にしたり、スタジアム諸室を託児所に、アリーナのVIPルームを会議室にしたりすることで、収益確保を目指すという。

ソフトバンクが支援する意義

 ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川 潤一氏は、「施設を連携していくようなプラットフォームを展開していきたい」と、今回のスタジアムシティへの支援について説明。

ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川 潤一氏

 さまざまなデータを、ヤフーやLINE、公共のデータなどをあつめて一つのクラウドに格納、AIで分析して最適化していくもので、ソフトバンク本社がある竹芝のビル(東京ポートシティ竹芝オフィスタワー)でも実現しているという。

 飲食店同士で送客し合ったり、近隣のビルと連携し送客しあったりすることを長崎でも実現したいとした。

 スタジアムシティでは、託児所や飲食店の満空状況や、ホテルの公共スペースを一元管理しユーザーに提供。また、渋滞の緩和策として、駐車場のダイナミックプライシングを行うことで、施設内に長くいてもらうことや周辺道路の渋滞緩和につながると、今回の取り組みについてアピールした。

 竹芝での取り組みでは、ビル自身が自立して、警備の配置や清掃などを自動で管理するしくみを作っており、竹芝で実施してきたいろいろな実験の成果を、今度はサービスで提供していきたいと宮川氏は意気込みを見せる。

 長崎では、さまざまな商業施設とスタジアムシティが連携を取り合って、自動運転車のMaaSなど「スタジアムから観光地へ誘導」する仕組みなどで地方創生を狙っていきたいとした。

 今回の取り組みでは、ジャパネット 髙田氏の「長崎を盛り上げたい、元気にしたい」という暑い熱意に押されたと説明するが、これを全国にも広げて行きたいと、今後に向けての可能性を示唆した。

 なお、スタジアムシティへの出資について宮川氏は「なんでもありきのソフトバンクなので、出資という議論があれば検討していくが、今のところそうした考えはない。地方は地方でやりきって地方の良いところを地方の人たちが作り上げるのがベスト」と説明。加えて「東京資本が地方にしゃしゃり出てと言うよりは、支援できるところを支援していく、ソフトバンクとして新しい仕事をいただいて、(地方創生に取り組む)第2第3の長崎として(ほかの地方企業が)出てくることを期待したい」と地方創生に対する考えを示した。

宮川氏

スタジアムのネーミングライツ取得

 また、スタジアムの名称について、ソフトバンクが2024年~2028年の5年間ネーミングライツを取得し、「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」とすることが発表された。

 ネーミングライツは、施設の名前に企業名やサービス名を入れた名前を命名できるもので、ソフトバンクグループの球団「ソフトバンクホークス」の本拠地「福岡ドーム」では、2022年現在PayPayが命名権を取得し「福岡PayPayドーム」と称している。

 今回、企業名やサービス名が前に出ない名称になった理由について、ソフトバンク 宮川氏は「LINEスタジアムやPayPayスタジアムにするか検討したが、今回のプロジェクトは『商業ベースではない』と考え、『平和』という言葉を使えたらよいのでは」と説明。

 また、デジタルに特化した最先端のスタジアムを作りたいんだという想いがあり、「Connected(コネクテッド)」というところにこだわりが込められているという。最先端のスタジアムは、データ無しでは語れないといい、スタジアムだけでなく周辺施設まるごとがつながるという想い、そして平和へとつなげたいという想いがあるという。

宮川氏

 「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」という名称については、「非常に良いんじゃないか」とコメントした。

スポーツとITの親和性

 今回の取り組みでは、2つのプロスポーツチームが関わった一大プロジェクトとしており、ITも活用し地域創生を図っている。

 ソフトバンク 宮川氏はスポーツとICTの親和性について、「オリンピックで急に強くなったのも、ありとあらゆるデータが活用されているおかげ」とし、スポーツにソフトバンクの技術やサービスを投入することについて「ほかの地域では実現できていないものにも踏み込む」とコメント。

 また、「PayPayドームをはじめとした球場やサッカー場でいろいろなチャレンジを進めているが、ありとあらゆること進めてチャレンジしていきたい。日本一のスタジアムを作らないと横展開できないため、地方創生のビジネスモデルとして、スタジアムを中心とした街作りで地方創生していく。これを第1弾に、全国に広げて行くことに向けて全力投球していきたい」とした。