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「iPhone 11 Pro/Pro Max」3つのカメラに込められたアップルの工夫

6CC CAへの対応、U1チップのもたらす未来

 アップルは9月10日(米国時間)、新製品となる「iPhone 11」「iPhone 11 Pro」「iPhone 11 Pro Max」を発表した。

 「iPhone 11 Pro」「iPhone 11 Pro Max」の大きな特徴は背面に設けられた3つのカメラだ。超広角(13mm)、広角(26mm)、望遠(52mm)という使い分けだ。

 3つのカメラと言えば、すでにAndroidのハイエンドモデルでは常識になりつつある。ファーウェイを筆頭にサムスン電子やソニーモバイルが導入済みだ。超広角はこれまでのスマホにはない画角で撮影できるため、個人的にもXperia 1を気に入って使っている。風景のみならず、子供を撮影するなど超広角で撮影する機会も多い。

 すでに3つのカメラはAndroidで見慣れているので、iPhoneが採用したところで、革新的だとは思わないし、むしろ「後追い」な印象が強い。

 ただ、垂直統合で、アップルはOSとハードを一緒に開発していることもあり、3つのカメラを最大限、活用できるような仕掛けがいくつも施されている。

 たとえば、広角で撮影した際、実はiPhoneは超広角でも同時に撮影しており、その画像を30日間、キープしているという。これにより、「昨日、撮影した風景、やっぱり超広角で撮っておけばよかった」と後悔することがない。

 また、広角で撮影したものの「斜めになっているので、傾きを直してトリミングしよう」という際も、超広角の画像のほうを修正すれば、トリミングで使えない部分が少なくて済む。

 Filmic Proというアプリを使えば、トリプルカメラとインカメラ、同時に映像を撮影することが可能だ。これは「A13 Bionicのパワーがなせる技」(アップル関係者)という。

 Androidのトリプルカメラ搭載機種では、標準カメラアプリ以外のサードパーティ製アプリなどでは、トリプルカメラを使えないことがある。

 しかし、今回発表されたiPhoneでは、さまざまなアプリで3つのカメラを使えるようになっているという。このあたりは、1機種あたりのシェアが高いiPhoneだからこそと言えるだろう。

駆動時間、長くなった背景には

 今回の新製品では、バッテリー寿命も従来機種に比べて伸びている。

 iPhone 11では1時間、iPhone 11 Proは4時間、iPhone 11 Pro Maxになると5時間といった具合だ。

 単に大きなバッテリーを積んでいるだけかと思いきや、そうではないらしい。

 Super Retina XDRディスプレイにより、エネルギー効率が15%も改善。iOS13により、効率の良い方法でタスクをチップに振り替えていく。さらにA13 Bionicがアップル製のパワーマネジメントユニットに電力を供給すべき場所と時間を命令し、パワーマネジメントが電力を配分していくという。

 つまり、iOSや自社製のユニット、ディスプレイなどの組み合わせによって、省電力を実現しているのだ。

 他メーカーのハイエンドAndroidスマートフォンに比べると、今回のiPhone 11シリーズは派手さはないかも知れない。後追いであることは間違いないのだが、細部をチェックしてみると、iOSとハードを一緒に作っているアップルの強みが生かされている。iPhoneユーザーからすれば、地味ながら進化を感じられるのではないだろうか。

6CC CAに対応、U1チップが「忘れ物タグ」噂のもと?

 通信関連でもiPhone 11、iPhone 11 Pro、iPhone 11 Pro Maxは進化している。まず、LTE関連では、6つの電波を束ねる6CC CAに対応。これにより、KDDIのネットワークでは最大958Mbpsでの通信が可能になるという。また、Wi-FiはWi-Fi6にも対応している。

 注目したいのが、U1チップの搭載だ。超広帯域無線(UWB)により、空間位置情報の把握が可能になるというものだ。現状では機能として提供されていないが、将来的には、自分の目の前にいる人に向かって、「ピンポイントでAirDropを使ってファイルを送ることも可能になる」(アップル関係者)という。昨今、満員電車のなかで、不特定多数の人を狙った「AirDrop痴漢」が流行っているようだが、将来的には特定の人だけに向けて画像を送りつけるということもできてしまうのだ。

 また、「ショッピングセンターのような巨大な駐車場のなかから、自分が置いたクルマを探し出すという用途にも期待できる」(アップル関係者)という。

 スペシャルイベントの直前、「アップルが忘れ物タグを発表するのではないか」という噂があったが、このU1チップの存在が噂の発端のようだ。

アップルCEOのティム・クック氏

 アップルとしてはiPhone11シリーズにすでにU1チップを搭載しているので、今後、ある日突然、新機能や新サービスとしてU1チップが活躍する日が来るかも知れない。

退職するデザイナーのジョナサン・アイブの姿も

 ちなみに、9月10日のスペシャルイベントにはNTTドコモの吉澤和弘社長、KDDIの高橋誠社長、ソフトバンクの榛葉淳副社長が招待されていた。10月1日から本格サービスを開始するはずだった第4のキャリア・楽天の三木谷浩史社長の姿は確認できなかった。

NTTドコモの吉澤和弘社長
ソフトバンクの榛葉淳副社長(左)とKDDIの高橋誠社長(右)