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「Pixel 3/3 XL」の修理はどうなる? iCrackedが正規サービスプロバイダーに

 11月に日本でも発売された、グーグルのスマートフォン「Pixel 3」「Pixel 3 XL」。Googleレンズなど、AIを中心にした新しい機能に注目が集まる中、その修理体制がどうなっているか、ご存じだろうか。

 NTTドコモやソフトバンクでも取り扱われる「Pixel 3」「Pixel 3 XL」。基本的にキャリア版はキャリアショップでのサポートが利用できる。その一方で、グーグル版を購入するユーザーに向けて、iCracked Japan社がグーグルとの契約に基づき、日本国内で正規サービスプロバイダーとして修理サービスの提供を開始しているのだ。

 今回、iCracked Store渋谷店を訪れ、「Pixel 3 XL」を実際に分解してもらい、修理の流れを取材した。

iCracked Store渋谷店

修理の半数以上はディスプレイ

 スマートフォンで修理を依頼するようなケースと言えば、まず思いつくのは、ディスプレイの破損だ。

 全国26店舗を展開するiCrackedではこれまで、登録修理事業者としてiPhone向け修理サービスを提供。ディスプレイの交換修理が6~7割と、半数以上を占める。

 発売されたばかりの「Pixel 3/3 XL」でも、修理依頼の多くがディスプレイ破損に対応するものと見込まれている。

所要時間は2時間

 ではその「Pixel 3/3 XL」でディスプレイパネルを交換するには、どれくらいの時間と手間がかかるものなのか――iCrackedでは、ユーザーに対して「2時間程度は見て欲しい」と伝える。もし破損した場合、翌朝、店舗に預けるとお昼休みには修理が完了している、と期待できる時間だ。

 実際の作業時間は1時間半を少し超える程度で、少し余裕を持たせた格好だ。ちなみに修理の様子は、ユーザーもその場で見学したり、修理対応スタッフ(iCrackedではそのスタッフをiTechと呼ぶ)と話したりしながら過ごすこともできる。

ピック状の道具や、薄いへらのような道具でバックパネルのガラスを曲げないよう慎重に開けていく

 実は、同社でiPhoneのディスプレイ修理を請け負う場合、修理にかかる時間はもっと短く30分程度で済む。iPhoneとPixel 3/ 3 XLで修理にかかる時間の差は、両機種の構造の違いが生み出したものだ。

 iPhoneは、ディスプレイ部を交換する場合、ディスプレイ部だけを取り外せる構造だ。逆に背面ガラスが破損している場合、修理は難しくiCrackedでは受け付けていない。

パネルを外したところ。Pixelのバックパネルを外すのは、マニュアルには記されていない絶妙な力加減が必要という。破損を恐れるとまったくはがれず、力を入れすぎると割れてしまう

 一方、「Pixel 3/3 XL」ではディスプレイ部は側面のフレームと一体化した構造。iTechの一人でもある橋詰隆史氏によれば、バックパネルの交換は簡単だが、ディスプレイ部を交換するには、内部の部品を全て取り外す必要があるのだという。

 今回、その分解の流れを一通り拝見したところ、まず最初にボディからバックパネルを外せるよう、間にある接着剤を20分かけて専用の機材を使って温めるとこから始まる。

Pixelのディスプレイ修理は、まず20分温めるところから

 この工程自体は、iPhoneでも必要ながらiPhoneの場合は数分でパネルを外せる。しかし「Pixel 3/3 XL」はかなりしっかりと接着剤が用いられており、20分もの時間を要する。

 この接着剤の強さが「Pixel 3/3 XL」の大きな特徴。また側面フレームとディスプレイ側が一体化しているため、ボディがゆがまない。分解修理後、再び同じように大きな面積でしっかりと接着をすると、分解後であっても防水性能に影響はないのだという。

Pixelのバックパネルに残る接着剤の痕跡
こちらはiPhone 7用の接着剤パーツ。わかりにくいが、縁の数mmだけが接着剤

 さらにディスプレイ交換にいたるまで26個のねじを外していく(iPhoneのディスプレイ交換なら10個程度)。しっかり研修を積んだ村岡氏でも、温める時間と分解完了まで40分はかかるのだという。

全て外し終わったところ

 Pixel 3 XLの内部構造を観ると、2つのフロントカメラ、バッテリーと一体化したワイヤレス充電のコイルなど特徴的なパーツが目に入る。マイクは3つ(通話用、動画撮影用、通話時のノイズキャンセリング用)あり、バックパネルから指紋センサーを外して交換することもできる。

主要パーツ部
フロントカメラ2つを外したところ
ディスプレイへ行き着くまで、細かなねじを外している。絶妙に長さが異なり、数種類のねじが混在している。組み立て時には新品のねじへ交換する
バッテリー。ワイヤレス充電のためのコイルも

 グーグルの正規サービスプロバイダーだけあって、iCrackedのPixel修理サービスで用いる部品は全て純正品。ただ、発売直後の現在はまだパーツが揃いきっておらず、正式にはまだ修理サービスは提供していない。まだ破損しているユーザーも多くはないようだが、既にバックパネルの破損で修理の相談が寄せられているという。

全てを外し終わった後のディスプレイ部。側面フレームと一体という構造だ

登録修理事業者と正規サービスプロバイダーの違い

 2015年12月より、渋谷店を皮切りに、日本国内でスマートフォンの修理サービスを提供してきたiCracked Japan。当初は、登録修理制度への登録不備などを指摘されたが、グーグルとの交渉などを担当した同社顧問の福島知彦氏によれば、これまで全iPhoneシリーズで、登録修理事業者としての登録をしている。

福島氏

 登録修理制度では、1機種ごとに登録が必要で、その都度検査などの費用がかかる。修理事業者の中には、全ての機種ではなく一部のiPhoneだけ登録といったケースもあるようだが、iCrackedは全てで登録という路線を選択してきた。

 そのiPhoneでは、正規の修理ルートと言えば、アップルストアのほかに、正規サービスプロバイダーであるキタムラ、ビックカメラが存在する。iCrackedは、Pixelの正規サービスプロバイダーであり、iPhoneにおけるキタムラ、ビックカメラと同じ立ち位置で修理を提供する。

 これまでiPhone修理では、登録修理事業者として対応してきたiCrackedだが、Pixelの正規サービスプロバイダーとしては登録していない。

iPhoneを1000台以上修理し、さらに今回米国で研修を積んだ関東統括SVの村岡雄哉氏(中央)と、同じく研修を納めたサービス企画・技術研修担当の橋詰隆史氏(左)

 これは修理手順/マニュアルや部材がグーグルから提供されるものであり、修理後に技適マーク取得時との違いが発生しないためだ。iCrackedでPixel 3/3 XLを修理しても、いわゆるメーカー保証が切れることはない。また純正パーツを用いるため、ディスプレイのみならず、カメラの交換や基板交換(落下時の衝撃などで破損することがあるそう)など、幅広く受け付ける。

 つまり登録修理事業者というサードパーティ向けの制度を利用する必要がないため登録はしていないというわけ。正規のサービスプロバイダーというのは、そういった点で違いがある、と理解してよさそうだ。

 全国26店舗で修理に対応し、さらに郵送でも受け付ける。ただし、郵送の場合は、ユーザーのパスワードがなければ端末へログインできないため、いったんユーザー側でデータをバックアップしてもらい、リセットしてから送付するよう案内している。

渋谷店のiTechのおふたり。右は村岡氏

きっかけは米国で

 もともと米国本社同士が近く、かねてよりグーグル側と情報交換を行っており、そこへひょんなことから日本での契約話が舞い込んだと語るiCracked Japan顧問の福島氏。

分解後、再び組み立てに入る。分解時には最後まで残っていたバッテリーはそのまま、組立時、先に基板を取り付けていく

 直前まで、グーグル側から「日本でPixelを販売する」と明言されたわけではないが、iCracked側は自社の体制を示しつつ、日本で正規サービスプロバイダーとして展開することになった。米国発の企業ながら、iCrackedが今回正規サービスプロバイダーとなったのは、ひとまず日本国内でのみという。

 iCrackedでは、全国で100人強、iTechと呼ぶ修理スタッフを抱える。iPhone修理では、グローバルで展開する強みを活かして、高品質な部材をより良い価格で調達したり、修理に関するノウハウを共有したりできる。

 Pixelの修理は当初、予約制で応対していくが、年内にも国内のiTech全員が研修を終えて、全店で応対できるようにしていく。iCrackedでは、2018年度末までに50店舗まで拡充したい考えで、全国の都道府県でサービスを提供したいとしている。

最後まで組み立てた村岡氏
無事電源が入った
アイコンを長押しして、ディスプレイの隅々まで動かし、動作確認する

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