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ドコモ、「LTEでIoT」の消費電力を90%削減する技術を導入

LoRaWANは本格提供開始

 NTTドコモは、IoT向けの通信サービスに関する説明会を実施した。セルラーIoTに適用可能な省電力化技術やIoT通信向けの新料金プランが発表されたほか、LoRaWANソリューションの提供開始が案内された。

 LTEの登場によりモバイル通信の高速・大容量化が進む一方で、産業用機器などに通信機器を搭載し、遠隔地からの管理などに利用する動きが広がっている。それがIoT(モノのインターネット)と呼ばれるものだ。

 IoT向けの通信では、高速も大容量も必要ないが、多くのデバイスを通信に対応させたいというニーズがある。そのニーズに対応する通信技術は「LPWA(Low Power Wide Area)」と総称されており、日本でもキャリア3社などが本格導入に向けて動いている。

 古くから活用されてきた自販機の遠隔管理や、倉庫の在庫管理といったものから、農業や漁業での生育状況管理、バスの位置情報把握、ビルの集中管理など、LPWAの応用領域は幅広い。ドコモではLPWAの市場規模を2020年までに、現在の約10倍となる2020万回線規模まで拡大すると予測している。

 このLPWA、大きく分けて2種類の通信技術が存在する。1つが、既存のLTEを拡張した技術で「セルラーIoT」と呼ばれるものだ。もう1つは、免許不要の周波数帯(アンライセンスバンド)などを利用するもの。

 ドコモは前者のセルラーIoTに含まれる技術として「LTE カテゴリー1(Cat.1)」を展開。今後、「LTE カテゴリー0(LTE-M)」や「NB-IoT」といった別の技術を利用したサービスも提供する予定だ。

 後者のアンライセンスバンドを活用した技術としてドコモは、「LoRaWAN」の実証実験を進めており、10月より本格的なサービス提供を開始する。

「セルラーIoT」で待受時の電力消費を90%削減

 「セルラーIoT」のうち、「LTE カテゴリー1」は最大10Mbpsの通信が可能な規格。コンシューマー向けデバイスでは「Apple Watch Series 3」などに採用されている。LTEの初期から存在した規格で、基地局も端末も既存のLTE向けものを流用可能というメリットがある一方、もともとはIoT向けの規格という位置づけではなかったため、省電力性などに課題があった。

 今回、ドコモがセルラーIoTに向けに日本で初めて導入すると発表したのが、「eDRX」だ。10月2日より東京都市部から提供される。

 LTE端末は通常、待機時も基地局との間で定期的に通信し、ネットワーク側からの新しい情報が送られてこないかどうかを確認している。ドコモのLTEの場合、その通信は1.28秒間隔で行われる。

 一方で、たとえば1日に1回情報を送信すれば済む機器管理のケースや、1カ月に1回の情報送信だけでよい水道メーターのケースなど、IoTでは頻繁な通信が不要な用途もある。「eDRX」は、そういった用途に適した技術で、待機時の通信間隔を最大40分程度まで引き延ばすことができる。これにより消費電力が劇的に低減し、たとえば81.92秒間隔に設定した場合、消費電力は80%程度削減される。

 ただし、ネットワーク側からの情報を受信する間隔は設定した通信間隔に応じたものとなる。たとえば、40分間隔に設定した機器の設定変更を遠隔で行う場合、設定変更が実行されるのは最大40分後ということになる。また、「eDRX」では対応する通信モジュールが必要となる。

 ドコモは加えて、IoT向けの新しいSIMカード「ドコモUIM(M2M)バージョン6」を2017年内に提供する。従来のSIMカードは、デバイスに刺さっている限り、常に電力が供給されていたが、新しいSIMカードは通信時のみ電力を供給する仕様となる。このSIMと「eDRX」を組み合わせることで、更に消費電力を低減可能。

 「eDRX」で通信間隔81.92秒に設定し、低消費電力SIMを組み合わせた場合、待機時の消費電力を最大90%削減できる。将来的には、乾電池数本を電源として、10年程度の通信が可能なIoTモジュールも実現可能という。

eDRXの試験デバイス(左)と実験設備の外観
上がeDRX適用例(81.92秒に1回の通信)で、下が非適用例

IoT向けの新料金プラン

 あわせてドコモは、LTE Cat.1サービスも対象の新料金プラン「IoTプラン」「IoTプランHS」を発表。10月2日から提供を開始する。

 「IoTプラン」は2年契約で月額400円~1200円の2段階プラン。通信速度は常時128kbpsに制限される。「IoTプランHS」は、月間3GBまでの高速通信が利用可能なプランで、2年契約時は月額600円~2900円となる。

 低速版の「IoTプラン」の場合は月間約30MBまで、高速版の「IoTプランHS」では150MBまでが下限料金となる。ドコモの想定では、IoTプランの想定ユーザーの4割、IoTプランHSの想定ユーザーの8割が、下限料金でカバー可能としている。

 なお、IoTプランの提供開始にともない、従来プラン「LTEユビキタスプラン」の新規受付は2018年1月31日をもって終了となる。

 また、ドコモは10月2日よりM2M専用番号の使用を開始。IoTプランなどを新規で申し込む場合、020番号が発行される。

LoRaWANソリューションを10月より本格展開

 アンライセンスバンド向けの通信技術として、NTTドコモは「LoRaWAN」を活用した実証実験を重ねてきた。企業や自治体などと、9月時点で138件の実験が行われたという。その中で浮かび上がった課題は、ユーザー企業によるエリア設計や保守管理の難しさ。

 そこでドコモは、LoRaWANゲートウェイからクラウドまでを通信設備の設置から保守まで含めたパッケージで提供。ユーザー企業はデバイスとクラウド側のサービスを用意して、柔軟に使える仕組みとした。本格提供は10月20日に開始される。

 ドコモのソリューションでは、ユーザー企業専用のLoRaWAN基地局を設置。24時間体勢の保守管理サービスをあわせて提供する。料金は利用形態にあわせて応相談としているが、ビル管理の例では3ゲートウェイ設置、1300デバイスの接続で、1デバイス当たり月額180円程度としている。LoRaWANの場合、狭いエリアに多くのデバイスを設置したり、通常人がいない(携帯電話エリアではない)山中などでの利用が適しているという。

LoRaWANの活用領域の例
LoRaゲートウェイ(基地局)、LTE対応のモバイルルーターなどと接続する
クラウド側はユーザー企業が用意した設備や「Toami for DOCOMO」などに接続可能