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KDDI、LoRaWANで富士山の登山状況を見える化する実証実験を開始
2017年8月10日 19:33
KDDIは、IoTセンサーとLoRaWANを活用して、富士山の登山客の数を把握する実証実験を、静岡県御殿場市とともに開始した。9月10日まで行われる。
御殿場口登下山道および御殿場口のハイキングコース5カ所にIoTセンサーを設置し、その前を通過した人数をKDDIのWebサイト「富士山登山状況見える化プロジェクト」で見られるようにする。これまで御殿場市は、人数カウンターを設置して登下山者数を把握してきたが、カウンターを設置した場所まで人が登って確認しなくてはならないという面倒があった。今回のIoTセンサーを導入することで、高い頻度でカウントが可能になるほか遠隔でのデータ確認が可能になる。
この実証実験では、省電力で広域をカバーする「Low Power Wide Area」(LPWA)ネットワークの方式の1つである「LoRaWAN」が活用される。LoRaWANの活用にあたっては、KDDIの「LoRa PoCキット」を利用。このLoRa PoCキットは、先日買収を発表したソラコムが開発したシステムと、KDDIのIoT向け回線サービス「KDDI IoTコネクト Air」を連携させた法人向けの検証キットだ。
なお、KDDIは、すでに富士山頂を4G LTEでエリア化しているほか、子会社のワイヤ・アンド・ワイヤレスが、すべての山小屋を含む49カ所にWi-Fi設備を設置しており、富士山でも高速通信が可能になっている。
低コスト、低消費電力で少しだけ通信する
「山の日」の前日となる8月10日、実証実験の説明会が富士山御殿場口新五合目で行われた。
冒頭、御殿場市産業スポーツ部 部長の勝俣昇氏が登壇し、「富士山の御殿場口に付随してハイキングコースがあるが、今までハイキング客の実態がなかなか把握できなかった。今回の実験を通して実態を把握できる。ハイキング客の利便性向上の検討やツーリズムの基礎資料にしたい」と実証実験に対する期待を語った。
実験の詳細については、KDDI 中部総支社 管理部長 江口研一氏が説明を行った。今回取り組むのは「登山者数の見える化」だと江口氏。人感センサーによって登下山者数をとらえ、RoLaWANで少量のデータを送る。センサーの情報は30分ごとに更新され、「人の力を借りなくてもセンサーがキャッチした情報を確認できるシステム」となっている。コストについては非公開だったが、システムは約1カ月という短い期間に「安く早く」構築された。
センサーは御殿場口新五合目に近い5カ所に設置。カウントしたデータはRoLaWANで飛ばして、御殿場口新五合目の「Mt.FUJI TRAIL STATION」に設置したLoRaWANの基地局で受ける。
ちなみに、RoLaWANの電波がどれだけ飛ぶかも、確認したという。「実は今日、富士山の山頂まで登り、そこでも電波を受けていることを確認した。そのくらいの距離であれば問題なく飛ぶ」(江口氏)。
配布された資料には御殿場口新五合目から約4.5キロメートル離れた宝永山付近、御殿場登山道8合目付近でも問題なく利用可能とあったが、それよりもさらに遠い富士山の山頂でも電波が届くことを確認したという。
江口氏は「3Gから4G、2020年の5Gに向けて、これまでは高速化を追求するような流れだったが、IoTの世界では低速で低価格、バッテリー持ちがいいLPWAがキー技術になっている」との認識を示した。なお、他の登山ルートでも同様の実証実験を行う予定はあるかとの質問に対しては、「有効性を確認して、他でもニーズもあって意味があるならやってみたいが今のところは未定」答えるに留まった。