ニュース

総務省が次世代モバイル「5G」の実験、3キャリアなどが実施

 総務省は、次世代のモバイル通信規格「5G」の実現に向け、実際の利用シーンを想定した総合実証実験を開始する。大手3キャリアを含めた6社の実施主体と、実証実験の概要を発表した。

NTTドコモ~5Gbps通信で高精細な映像配信

 NTTドコモは、端末あたりの通信速度が5Gbps(基地局あたり10Gbps超)となる超高速通信の実現を目指し、5Gによる映像配信・中継の実験を行う。

 利用シーンとして高精細な映像コンテンツの配信や、広域監視システムへの活用、総合病院と地域診療所の間での遠隔医療の実現などへの応用を想定。実験の想定パートナーとして東武タワースカイツリー(東京スカイツリーの運営主体)と綜合警備保障(ALSOK)、和歌山県が挙げられている。想定される実施場所は東京スカイツリーの周辺と和歌山県。

スカイツリー周辺での5Gエリア構築のイメージ図(NTTドコモの2016年11月9日付ニュースリリースより)

 なお、2016年に11月にNTTドコモは東武タワースカイツリーやALSOKとの協力を発表している(※関連記事)

NTT Com~電車やバスで2Gbps超の高速通信

 NTTコミュニケーションズは、鉄道やバスなどの高速移動体において、高精細な映像を配信する実証実験を行う。技術目標は高速移動時に2Gbpsの通信速度を実現すること。

 想定パートナーは東武鉄道とインフォシティで、実施場所は東武スカイツリーラインや東武日光線の沿線および静岡県が想定されている。

KDDI~低遅延の通信で建機を遠隔操縦

 KDDIは、大林組やNECとともに、5Gを活用した建設機械の遠隔操縦システムを実証する。

 3社の発表によると、建設機械に4K解像度対応のカメラを取り付け、5Gで映像を伝送。建設作業員は遠隔地から映像を見て状況を把握し、建機をリアルタイム操縦して施工するという内容。

 5Gの通信には、NECの開発した28GHz帯対応の超多素子アンテナが活用される。総務省の実証実験としての技術目標は、無線区間で1ms以下の低遅延の通信の実現。

KDDIの実証実験の概要図

 また、KDDIは東京大学と協力し、ドローンで空撮した映像をリアルタイム配信する技術の実証も行う。

ATR~5Gbps通信でスタジアム・駅構内での情報配信

 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は、屋内スタジアムで、高精細な自由視点映像を同時に配信する実験や、鉄道駅構内で高精細な映像を収集・配信する実験を行う。

 想定される協力パートナーは那覇市と京浜急行電鉄。沖縄県および東京の羽田空港国際線ターミナル駅での実施を想定している。技術目標はドコモの実験と同じで、端末側速度が5Gbpsを超える超高速通信通信の実現。

 なお、KDDIはATRの実証実験において、同社に協力して実証実験を行うと発表している。

ソフトバンク~低遅延通信でトラックの隊列走行

 ソフトバンクは、グループ企業のSBドライブや先進モビリティと連携し、5Gによる自動運転の実証実験を行う。

 具体的には幹線輸送におけるトラックの隊列走行を想定。有人運転の先頭車両に、自動運転の後続車両を連ねて輸送するという内容で、車両間通信や車両と運行管制センターとの間で5Gによる通信を利用する。

 実施場所は山口県を想定。技術目標はKDDIの実験と同様に、無線区間において1ms以下の低遅延通信を実現すること。

NICT~1平方キロメートルあたり100万台の多数同時接続

 情報通信研究機構(NICT)は、5G通信における同時多元接続を検証する。物流管理システムや倉庫の在庫管理システム、スマートオフィスやテレワークの実現を想定した内容で、パートナーは公募により選定される。

 実施場所は北海道と大阪府を想定。技術の目標は1平方キロメートルあたり100万台の端末を同時接続すること。