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KDDIも5Gは2020年の商用化を目指す、28GHz帯ハンドオーバー実験に成功

セコムと5G活用の共同実験も実施へ

 KDDIは、「5G」の検証として28GHz帯を利用した基地局間のハンドオーバー実験に国内で初めて成功したと発表した。22日に開催された発表会では、2020年を目標に商用サービスの開始を目指すとし、パートナーと実際の利用シーンを想定した実証実験に継続して取り組んでいく方針が明らかにされた。

 「5G」と呼ばれる世代は、現在3GPPで標準化の作業中で、実際に利用する周波数帯や利用できる通信方式などは正式には決定していないが、「高速・大容量」「多接続」「低遅延」という3つが特徴に挙げられている。また、「4G」策定時とは異なる業界の動きとして、幅広い業種にまたがり、さまざまなパートナー企業と連携してユースケースも同時に検証されている点が挙げられる。

 KDDIの取り組みもこうした流れにあり、KDDI 技術開発本部 シニアディレクターの松永彰氏は「4Gはステップアップの進化だったが、5Gは飛躍的に進化するのではないかと期待している。ダイナミックレンジ(≒事業の幅)が非常に大きくなる。社会の基盤を支えるような大きな存在になるのではないかと期待している」と、その市場の大きさ、影響力の大きさを語る。

KDDI 技術開発本部 シニアディレクターの松永彰氏

 前述の5Gで強化されると見込む「高速・大容量」「多接続」「低遅延」は、それぞれ別の分野で活用されることが予想されている。「高速・大容量」は現在のスマートフォンなどの通信速度が飛躍的に高速化されるもので、「多接続」はIoTやM2Mといった分野を想定する。「低遅延」は、LTEの10msオーダーから1msオーダーにまで、非常に低い値に短縮されるもので、建設機械や医療機器の遠隔操作といった、これまで実現が困難だったアプリケーションの登場も可能にする。

 このように“使われ方”がさまざまな分野に及ぶことから、5Gでは利用される周波数帯も、最適なものを組み合わせて利用していく。特にユーザーが持つ端末に近い領域では、高速化のための帯域幅を確保しやすい、高周波数帯の利用が見込まれており、直進性が強いという特性をビームフォーミングなどの技術で解決しながら運用される見込み。

 KDDIでは今回、5Gを想定した実験で28GHz帯を使用。同社は衛星通信を30GHz帯以下の周波数帯で運用しており、長年に渡る高周波数帯の運用ノウハウを活用して「安定した通信を確保していく」とアピールする。

28GHz帯、ビームフォーミングでハンドオーバーに成功

 国内初として公表された実験は、基地局と通信中の端末の接続を隣の基地局に受け渡すハンドオーバーを、28GHz帯で実施するというもの。商用環境と同等の市街地や高速道路(東京・飯田橋周辺)で実施された。

 高周波数帯は直進性が強い一方で、減衰しやすく遠くまで飛ばすことが難しいため、電波を集束させ到達距離を延伸するビームフォーミング技術を利用。狭まったビーム幅で端末を正確に捕捉することが、これまでの課題だったという。

 実験はサムスン電子の技術協力により行われ、機材もサムスン電子が用意。これらを飯田橋など都内の一般道で実験した点も重要とし、「実際の環境で実証実験をできたのがポイント」(松永氏)としている。

実証実験の模様の動画

 同社は今後、4月に東京・新宿のKDDIのビル周辺で5Gの実証実験を実施する予定で、デモが報道陣向けに公開される予定。実験内容は別途発表されるが、高周波数帯を使う実験の第2弾になるとしており、技術だけでなくユースケースについても実証実験を実施するとしている。

 松永氏は、「パートナーとユースケースを開発しながら、2020年の実用化を目指す」としたほか、「ライフデザイン企業への脱皮を標榜しているが、5Gは大きな力になる」と期待を語っている。

セコム、5Gと4K映像の伝送で監視サービスの質を強化

 22日の発表会にはセコムの担当者も登壇し、KDDIとセコムで5Gの実証実験を共同で進めていくことが明らかにされた。KDDIとして、ユースケースの共同開発を表明したのは、今回のセコムが初めてになる。

セコム 企画部 担当部長の寺本浩之氏

 セコムは2001年にKDDIのCDMA網を使う「ココセコム」を発表して以来、モバイル網の活用でKDDIと連携してきた経緯があり、すでに警備サービスなど一部では4G LTEを利用した映像伝送なども行っている。

 セコムでは、5Gによる「高速・大容量」を活用していく方針。仮設のカメラや警備員のウェアラブルカメラから、4Kなどの高精細な映像や写真を伝送して分析できることで、顔認識、ナンバープレートの認識といった、これまでにない高度なサービスを提供できると期待を語った。

 また同社は、カメラなどの装置を搭載したドローンやヘリ、飛行船などで、上空から監視・警備する取り組みも行っており、これらでも5Gの「高速・大容量」な通信が活用でき、より質の高いサービスを提供できるとしている。