石野純也の「スマホとお金」

「UQ mobile」と「povo2.0」の中容量プランを解説、移行の注意点は?

 データ容量を30GBに増量したドコモのahamoに対抗する形で、KDDIもUQ mobileの中容量プランを11月12日に改定します。また、povo2.0も中容量プランを強化しており、30GBをリーズナブルに使える仕組みを導入しました。KDDIは5Gのネットワークを強化しており、その上で快適にデータ通信を使ってほしいというのが新料金プランを導入するメッセージです。

 料金プランの改定によって、ネットワークの快適性をより具体的な形で伝えているのはKDDIの宣伝上手なところと言えるでしょう。一方で、UQ mobileやpovo2.0の新料金プランは、ahamoのように自動移行ではないため、注意点もあります。今回は、これらの特徴を見ていきます。

KDDIはネットワークが英Opensignalの調査でNO.1になったことを受け、UQ mobileとpovo2.0に新料金プランを導入した

データ容量を13GB増量したUQ mobile、料金や音声通話定額はそのまま

 UQ mobileが新たに導入するのは、30GBプランの「コミコミプラン+」です。前身となる現行の「コミコミプラン」は、ドコモのahamoに対抗する形で導入された中容量プランで、UQ mobileの他の料金プランとは異なり、割引等々が一切ない素の料金で勝負しているところが特徴。料金はahamoよりわずかに高い3278円でしたが、そのぶん、音声通話が10分まで無料になっており使い勝手をよくしています。

 このコミコミプランのデータ容量を30GBに拡大したのが、11月に導入されるコミコミプラン+です。金額はコミコミプランと同じ3278円。10分間の音声通話定額がつく点も、コミコミプランから変わっていません。また、コミコミプラン+には、無料でデータ容量を拡大する「データ増量特典」がつき、3GBが増量されます。これによって、コミコミプラン+のデータ容量は33GBまで拡大します。

新たにコミコミプラン+を導入する。データ増量特典も合わせると、データ容量は33GBまで増える

 ahamoとの比較で言えば、金額はわずかに高いものの、データ容量は3GB多く、音声通話定額の時間も5分ではなく10分と長い点が特徴になります。これらがすべてセットになりつつも、3278円で利用できる点はお得度が高いと言えるしょう。

ahamoは10月1日からデータ容量が30GBに増量された。料金は2970円とUQ mobileのコミコミプラン+より安いが、音声通話定額は1回5分まで

 もっとも、UQ mobileは7月から「増量オプションII」で増えるデータ容量を10GBにするキャンペーンを展開しており、そのオプション料も7カ月間無料になっていました。コミコミプラン+は、こうした施策を正式な料金プラン化し、さらにデータ容量を増量したプランと言えるかもしれません。

UQ mobileでは、7月から、増量オプションIIのキャンペーンを実施している。コミコミプラン+は、これを正式なプラン化したような形だ

 また、増量オプションII自体はコミコミプラン+でも残されており、適用すると550円で毎月のデータ容量が5GB増えます。データ増量特典とも併用が可能。これらをすべて含めた時のデータ容量は、38GBになります。余ったデータ容量を翌月に繰り越すこともでき、ahamoと比べるとデータ容量の柔軟性が高い料金プランに仕上がっているところは評価できます。

既存ユーザーは料金プラン変更が必要、2段階速度制限も導入

 注意したいのは、コミコミプラン+という新たな料金プランとして建てつけられているため、既存のユーザーが自動で30GBに増量されないところにあります。コミコミプランをすでに契約している人は、忘れずにプラン変更をかけておきたいところ。ahamoの場合、既存ユーザーも自動で30GBに増量されていたため、それとの比較だと、UQ mobileの方が手間がかかると言えそうです。

料金プランは自動移行ではない。既存のUQ mobileユーザーは、手続きが必要になる点には注意したい

 ただし、こうした仕組みのため、あえて既存のコミコミプランを使い続けることもできます。わざわざデータ容量が少ない現行のコミコミプランを使い続けるメリットは少ないようにも思えますが、実はデータ容量を使い切ったあとの制限には差分も設けられています。

 コミコミプラン、コミコミプラン+のどちらも、制限時の速度は1Mbpsと比較的高速ですが、後者のみ、データ使用量が50GBを超えた場合、速度が128Kbpsに絞られます。33GBを超えたとき、1Mbpsで使えるのは17GBだけということになります。いわゆる2段階の速度制限が新設された格好です。

33GBを超えると1Mbpsで利用できるが、50GB超で速度制限がさらに厳しくなり、128Kbpsまで下がる

 1Mbpsは最高速度と比べれば遅いものの、Webの閲覧やSNSアプリを使うぶんにはそこそこ快適。そのため、コミコミプランで20GBを使い切ったあと、そのまま通信速度に制限がかかった状態で使い続けていた人もいるはずです。一方で、128Kbpsはかなり厳しい制限。メッセージの送受信程度なら可能ですが、Webサイトの閲覧などでもかなりの時間がかかってしまい、快適な利用は難しいはずです。

 こうした点が気になる場合には、あえて現行のコミコミプランから料金を変更せず、そのまま使い続けることができます。これは、自動移行ではないことのメリット。数カ月間様子を見て、データ使用量が50GBを超えていないことを確認したあと、コミコミプラン+に変更をかけることが可能になります。11月11日までは増量オプションIIのキャンペーンも継続しているため、まずこれらを使って様子を見てみてもいいでしょう。

コミコミプランの新規受付は、11月11日で終了するが、それ以前に契約していたユーザーは、新プランと天秤にかけてどちらか一方を選択することが可能だ

新トッピングと新割引を導入したpovo2.0

 もう1つの中容量プランが、povo2.0の新トッピングです。こちらは、トッピングで提供するという機動力を生かし、すでに提供を開始済み。新たに導入されたのは、有効期間が365日と長い「360GB(365日間)」。1カ月あたりに直すと、データ容量はちょうどUQ mobileのコミコミプラン+と同じ30GBになります。料金は2万6400円。1年分まとまった金額で書かれると「高い……」と見えてしまうかもしれませんが、1カ月にあたりにならすと2200円です。

新たに360GB(365日間)トッピングを導入。料金は2万6400円

 1年トッピングのメリットは、データ容量はあくまで1年単位であるということ。つまり、300GBを1カ月で使ってもいいですし、1年コツコツと30GBずつ使ってもいいということです。毎月のデータ使用量の変動を吸収しやすい点は、1年ぶんまとめてデータ容量が付与されるメリットと言えそう。1回の支払いが多くなってしまうのは難点ですが、UQ mobileの導入している繰り越し以上に柔軟な使い方が可能になります。

 逆にデメリットは、1年分の料金を先払いしてしまうため、実質的な“縛り”になってしまうこと。途中でpovo2.0よりも安価な30GBプランが出ても、すでに支払っているため乗り換えづらくなってしまいます。他社だけでなく、povo2.0内でさらにお得なトッピングが出た時にも、乗り換えできないことになります。違約金が発生するような従来の縛りとは性質が異なりますが、先払いによってこのような制約が生じることは念頭に置いておいた方がいいかもしれません。

povoには様々なトッピングが用意されている。1年分まとめて支払ってしまうと、こうしたトッピングへの乗り換えもしづらくなる

 一方で、このような事実上の縛りを受け入れる代わりに、ユーザー還元を受けることが可能になります。縛りのネガティブイメージを緩和するための策というとうがちすぎかもしれませんが、1年間使う意思が固まっているのであれば、利用しない手はありません。それが、「1年間トッピング デビュー割」です。

 条件は、これまで1回も有効期間が1年間のトッピングを購入していないこと。さらにpovo2.0にau IDを紐づけ、そのau IDでau PAYを利用していると、支払った額の10%相当がau PAY残高として還元されます。10%といっても、年額に対しての率になるため、金額はまずまずの大きさ。上記の360GB(365日)に対してだと、2640円の還元になります。これを加味したトッピングの実質価格は2万3760円まで下がり、1カ月あたりに換算すると1980円になります。

還元を受けるには、au IDとの紐づけが必要。povoアプリ内の画面下にある「請求情報」から設定できる

 実質価格とは言え、30GBが1980円という価格設定は大手キャリアの中で最安。楽天モバイルの3GB超20GBまでの料金をも下回っており、かなりの割安感があります。ただし、povo2.0は、音声通話定額もトッピングとして契約する必要がある点には注意が必要。UQ mobileのコミコミプラン+やahamo、楽天モバイルとはこの点で条件が異なります。

 この1年間トッピング デビュー割は、新トッピングだけでなく、既存の1年間トッピングにも適用されます。1年分のデータ容量をまとめ買いするだけで安いうえに、au PAY残高への還元もつくというお得な内容のため、1年間トッピングの契約を検討する人も増えるのではないでしょうか。povo2.0にとっても、ユーザーの離脱が減り、売上高も安定するため、事業者とユーザーの双方にメリットのある施策と言えそうです。

1年トッピング デビュー割は、他の1年間トッピングにも適用される
石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya