LG開発者インタビュー

「Optimus it L-05D」「Optimus Vu L-06D」開発の狙い


 LGエレクトロニクスは、日本の報道関係者向けに、5月16日にNTTドコモから発表された「Optimus it L-05D」と「Optimus Vu L-06D」についての詳細を解説した。日本向けに特化した機能を備える同社の戦略端末の全容を明らかにするとともに、製造工場の内部も公開した。

 

ジョジョの奇妙な冒険とのコラボモデルも注目の「Optimus Vu L-06D」

 まず初めに、すでに韓国内で発売され、グローバルモデルとしての展開も進めている「Optimus Vu」の日本向けモデル「Optimus Vu L-06D」について、同社日本事業チーム 課長のパク・ソンジュン氏が紹介した。


「Optimus Vu L-06D」の試作機 
グローバルモデルとの違いは、背面にフェリカマークが追加され、スピーカーなどの位置が変更されるとともに、ハードウェアキーの配置が入れ替わっている点 

 

 「Optimus Vu L-06D」は、グローバルモデルにはないIPX5/7準拠の防水性能を備え、Xiに対応するほか、おサイフケータイとワンセグ、赤外線通信機能を搭載し、モバイル放送NOTTVの視聴も可能なAndroid 4.0端末。タッチペンも同梱される。これらのいわゆる“全部入り”を実現したことにより、フィーチャーフォンや既存の全部入りスマートフォンをすでに使っているユーザーでも、利便性を損なうことなくスムーズに使い始められるはず、としている。

 ディスプレイは、グローバルモデルと同様、縦横比率を4:3とした5インチのIPS液晶で、「屋外でも見やすく、視野角の広い、明るい」画面表示を実現。雑誌などの紙面1ページをほぼ同比率で表示できるだけでなく、大きく視野角の広い画面のメリットを活かして、「ドコモ ドライブネット」アプリや別売の「ドライブネットクレイドル 02」を利用したカーナビゲーションなどにも最適だという。


全部入りで、かつNOTTVにも対応カーナビゲーションにも最適

 

 端末のサイズはA6の文庫本とほぼ同等となる高さ約140mm×幅約90mm×厚さ約9.4mm、重量は約178gとなる。端末の厚みがグローバルモデルより0.9mm、重量が10gほどそれぞれ増したことや、そもそも5インチディスプレイということで大きく思われがちだが、同氏は「胸ポケットにも収まるサイズで、携帯性にも優れている」と語り、大きすぎず、小さすぎもしない適正なサイズに仕上がっていることをアピールした。


胸ポケットにも問題なく収まるサイズ手書き文字入力が可能な「7notes with mazec」もプリインストール

 

 また、標準モデルのBlackとは別に、荒木飛呂彦原作のコミック「ジョジョの奇妙な冒険」の連載25周年を記念したコラボモデルについても概要を説明。ホワイトをベースカラーにした端末背面に、荒木氏書き下ろしのキャラクターが描かれているだけでなく、“あのフレーズ”が変換候補に入っている「ジョジョ辞書(仮)」もプリインストール。壁紙やデコメ素材など、他にもさまざまな“ジョジョ風”のコンテンツが用意される。「ファンならずとも注目のモデルとなるはず」と、同氏の説明にも力がこもっていた。


「ジョジョの奇妙な冒険」とのコラボモデルも発売する

 


グローバルモデルの「Optimus Vu」のパッケージ

 

 同梱の専用タッチペンは他の汎用的なスマートフォン向けタッチペンより先端がやや細く、堅い。ディスプレイに対する接地面積が小さく摩擦力が弱いことなどから、滑らかな書き心地を実現している。また、「Optimus Vu」のディスプレイがこの専用タッチペンに最適化されていることもあって、汎用のタッチペンよりも精細な描画が可能という。試しに汎用のタッチペンで「Optimus Vu」に書き込んでみると、やはり専用のタッチペンよりも線がぎくしゃくするように感じられた。反対に、専用のタッチペンで他のスマートフォンの画面に書き込もうとしても一切反応せず、「Optimus Vu」のディスプレイが専用のタッチペンに最適化されていることを実感する。


専用タッチペンが同梱WACOMのタッチペン「Bamboo STYLUS」と比較。専用タッチペンは先端が特に細くなっており、堅い

 

女性ユーザーをターゲットにした全部入り&小型の「Optimus it L-05D」


LGエレクトロニクス 日本事業チーム 課長 イ・ジンヒ氏

 

 次に、「Optimus it L-05D」について、同社日本事業チーム 課長のイ・ジンヒ氏が解説した。同端末は「Optimus Vu L-06D」と同じく、IPX5/7準拠の防水性能を備え、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信機能をも盛り込んだXi対応のAndroid 4.0端末。「主に20代のフィーチャーフォンを使用している女性ユーザーをターゲットにした」もので、「女性の手にもなじむ、美しいフォルムのコンパクトデザイン」が特長。ユーザーが好みに合わせて選べるよう、4種類のカラーバリエーションも用意されている。


 

 世界初のLTE端末向けチップセットを開発し、LTE関連の特許保有数も世界1位である同社は、2010年、日本市場にいち早くXi対応端末を投入している。今回の「Optimus it L-05D」についても、ドコモのwithシリーズでありながらもXi対応端末となる。これについては、ある意味LTEの第一人者であるという自負がありつつも、日本におけるXi対応エリア拡大のロードマップが、同社の当初想定よりも早まることが明らかになった点も理由の一つとして挙げた。NTTドコモは、Xi対応エリアの人口カバー率を2014年度末に98%へと前倒しで向上させると宣言しており、イ氏も、「今後はより多くのエントリーユーザーがXiを必須機能と考えるはず」と予測している。


Xi対応エリアの人口カバー率は、2014年度末に98%となる

 

 防水対応については、キャップレスが大きなポイントであるという。各部に防水ラバーやゴアテックスなどの素材を用いて徹底的に浸水を防ぐのはもちろんだが、充電等に用いるUSB端子は露出しているにもかかわらず、軽く水に濡れた程度であれば、そのままUSB端子にケーブルを接続して利用することも可能になっているという。

 バッテリーは1650mAhと、コンパクトサイズの端末ながら比較的大きな容量を確保しているのに加え、さらにもう一つ同じ仕様の予備バッテリーを同梱。「予備バッテリーを端末と一緒に持ち歩いて、バッテリーが少なくなったときにいつでも入れ替えて使える」としている。また、専用バッテリーチャージャーも同梱され、一方のバッテリーを装着している間、もう一方の外したバッテリーはバッテリーチャージャーで充電しておく、という利用スタイルも可能だ。


専用バッテリーチャージャー

 

 コンテンツ面では、端末のメインターゲットである女性ユーザーを意識して、背景画像や主要アプリのアイコンを着せ替えられる“テーマ”を3種類用意。落ち着いた色合いや、カラフルでかわいらしい見た目などに変更できる。また、無料のデコメ素材も定期的に提供する予定。「毎月30個ずつ、確定ではないが2年間程度は継続したい」とのことで、季節ごとのイベントなどに応じたさまざまな素材をダウンロードできるようにするという。さらに、ファッションやレストランの情報を閲覧したり、気になったファッションアイテムの購入場所をすぐに調べられるアプリ「Style Navi」をプリインストール。街を出歩く女性にとって有用な機能と情報を豊富に用意しているようだ。


特に美しい液晶画面に対するユーザーの評価が高かったという 

 

 

LG製端末に採用されるディスプレイの製造工場を視察

 「Optimus Vu L-06D」および「Optimus it L-05D」の説明会と合わせ、LG製スマートフォンなどに採用されているディスプレイの製造工場と、スマートフォン本体の製造工場の見学会も実施された。


 

 LGエレクトロニクスのスマートフォンのディスプレイは、同社の子会社であるLGディスプレイの製品を採用しており、スマートフォンだけでなくノートPCやテレビなどのディスプレイも同じ工場で製造されている。同工場は首都ソウルの中心部から直線距離で北におよそ30kmの坡州(パジュ)市内、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との軍事境界線からわずか10km余りのところに位置している。工場の最上階には休憩用として使われる展望室があり、設置されている望遠鏡で実際に北朝鮮の領土内にある建物を捉えることができるほどだ。


休憩用の展望室備え付けの望遠鏡で北朝鮮側を眺めることができる
中央の建物が北朝鮮領土内の建物と思われる

 

 LGディスプレイでは工場内に来賓用や官公庁向けの見学コースを用意しており、今回の見学会でも同コースが案内された。LGディスプレイがこれまで製造してきたブラウン管テレビや液晶テレビの変遷のほか、工場の敷地周辺の立体模型、最新技術を用いた165インチ相当の3D対応ディスプレイや4Kディスプレイ、向こう側が透けて見える透過ディスプレイなど、LGディスプレイの歴史や数多くの製品・技術を余すところなく展示している。


1960年代のブラウン管テレビから最新のディスプレイまで、LGディスプレイが手がけた製品の歴史がわかる 
立体模型によるLGディスプレイの工場周辺の見取り図などIPS液晶の視野角の広さがわかる展示
大型有機ELディスプレイ165インチ相当の3D対応ディスプレイ
84インチの4Kディスプレイ 
 向こう側が透けてみえる透過ディスプレイと、広告に用いた際の利用例
 ディスプレイが埋め込まれた冷蔵庫

 

 残念ながら工場内外の写真撮影は禁止となっていたが、広大な敷地内はまるで大学キャンパスのような雰囲気。ちょうど休憩時間帯だったこともあって、多くの従業員が和気あいあいと連れだって歩いている姿も見受けられた。実際にディスプレイの製造を行っている建物内にも立ち入ることができ、ガラス1枚隔てた通路からクリーンルームとなっている工場内部を視察。ディスプレイパネルを搬送する装置や、パネルにトランジスタを蒸着する巨大露光機などが並ぶ様子も目にすることができた。

 

「Optimus Vu」の生産が進むスマートフォン組み立て工場

 一方、スマートフォン本体の組み立てを行っている工場は、ソウルの南方60kmほどの平沢(ピョンテク)市内にある。ここでは見学会の参加者全員が作業服を羽織り、泥・ホコリの飛散防止のためのビニールカバーを靴底に圧着した後、エアシャワーの通路を経て工場内に入った。工場内ではスマートフォンの組み立てが行われている真っ最中で、同時並行で複数のモデルの製造が進行していた。

 スマートフォンの組み立てはいくつかの工程に分かれるが、そのうち前半の工程となるメイン基板とディスプレイ部品の組み立てなどを行う“フォルダーライン”では、1ラインあたり18名の作業員が従事。グローバルモデルの「Optimus Vu」を生産している特定の1ラインは同工場の中で最も熟練した作業員が担当しており、7月からは同ラインが日本向けの「Optimus Vu L-06D」の生産ラインにそのまま移行するという。


 

 “フォルダーライン”の後は、端末全体の組み立てを行う工程と、各種検査を行う工程などを経て、梱包され、出荷されることになる。検査工程では、端末のセンサーやアンテナの感度チェック、各種機能の動作確認などが自動的に行われ、防水に関する検査も2時間程度に1回、抜き打ちで実際に水を満たした容器に沈めて行う。防水検査は、それ以前の別の検査でなんらかの異常が見つかった端末に対して実施されるため、出荷される端末に対して行われることはないとのことだ。


 

 1日の生産目標数と現時点の生産数、目標に対する現時点での適正生産数量との差などが常に電光掲示板に表示されており、ラインごとに順調に生産が進んでいるかどうかひと目で把握できるようになっている。生産に遅れが生じた場合は、その分勤務時間を延長するなどして対応し、原因を究明したのち製造工程の改善を図ることになる。

 工場全体では女性1000名と男性4000名が勤務しており、手先の器用さを考慮して、組み立てに従事する作業員は全員が女性、作業員や設備を管理する立場の従業員が男性となっている。全員立った状態で作業を行っており、いわゆる“トヨタ方式”に倣って生産効率を重視した体制としているとのこと。常に立ちっぱなしで働く工員のために工場内の一角には休憩スペースが設けられ、ゆったりしたソファとマッサージ機、足裏を刺激する凹凸のある床面エリアが用意されていたのも印象的だった。

 

キャリアショップ「LGU+」と「SKテレコム」を訪問

 見学会の最後には、ソウル市内にあるキャリアショップ「LGU+」と「SKテレコム」を訪問し、最新端末である「Optimus Vu」などが販売されている様子を視察した。

 LGテレコムが運営するキャリアショップ「LGU+」は、コントラストははっきりしながらも落ち着いた印象の内装。店内中央の最も目立つ位置に「Optimus Vu」が据えられており、力の入れ具合がわかる。その他にも「Optimus LTE」など数々のOptimusシリーズが展示されており、実際に触れて動作を確かめられるようになっていた。


「LGU+」の店舗外観「optumus Vu」は店内の最も目立つ位置で展示されていた
店内の様子多数のOptimusシリーズが並ぶ

 

 端末の販売プランは初期費用と月額費用の違いなどでいくつかのメニューが用意され、初期費用は日本円換算で4万円台~6万円台、それに月々2000円台からの基本使用料がかかる。初期費用は日本とそれほど変わらないものの、月額費用は安価な印象だ。基本使用料があまり高くないためか、韓国では月々の支払いも自分持ちで両親にスマートフォンをプレゼントするパターンが少なくないという。

 店頭では「Optimus Vu」のライバル製品とも言えるサムスンの「GALAXY Note」も販売されている。実際の販売状況については明らかにしなかったが、「Optimus Vu」と「GALAXY Note」は購入する客層は分かれるようで、だいたい互角の売れ行きを見せていることがうかがえた。


サムスンの「GALAXY Note」と「GALAXY S II HD LTE」も販売されていた
アクセサリー類も充実日本ではお目にかかれない「LG-LD611」。USB接続のLTE対応データ通信端末だ
店内の一角には無料で充電できるカウンターがある。Wi-Fiフリースポットも利用可能という

 




(日沼諭史)

2012/5/17 17:20