インタビュー
「Optimus it L-05E」開発者インタビュー
「Optimus it L-05E」開発者インタビュー
日本向けに丁寧に作り上げたコンパクト端末
(2013/5/30 12:49)
ちょうど1年前の2012年夏モデルとして登場したOptimus it L-05Dの後継機種として、LGエレクトロニクスの「Optimus it L-05E」が6月下旬に発売される。モデル名は変わらないながらも、各部の仕様は着実に進化し、前モデルの特徴であるコンパクトさもしっかり受け継いだ。
同社はハイエンド向けのOptimus G Proも発売しているが、Optimus itの性能も上がってきた今、どこに重点を置いて差別化を図っているのか、さらには前モデルからの具体的な違いはどこにあるのか、Optimus it L-05Eの企画を担当した尹智媛(ユン チウォン)氏にお話を伺った。
Nexus 4採用の2.5D Glassをさらにグレードアップ
――1年ぶりの新しいOptimus itですね。さっそくですが、前モデルからはどの部分が変わっているか教えていただけますか。
尹氏
2012年にリリースしたOptimus it L-05Dは、ユーザーの皆様からご好評をいただいたので、その良いところを継承しつつ、また新しい点も加えつつ、コンパクトでかわいらしい感じの端末に仕上げています。
一番のポイントはやはりコンパクトなサイズ感であることと、LGの強みを活かした高画質ディスプレイによる驚きの映像美というところです。Gorilla Glass 2を採用した、傷などに対する強度も備える4.5インチのHDディスプレイで、L-05Dの4.0インチからは0.5インチほどサイズアップしました。
LGとして今回初めて、おくだけ充電にも対応しましたし、防水、NOTTV、ワンセグ、赤外線、NFC、おサイフケータイも網羅しています。日本向けに作っているため、特に防水性能は外せない部分です。お客様がスマートフォンの購入を検討する際には、使わないけれど入っていてほしい機能のトップバッターかなと思っているので、重要な要素だと認識しています。
――ターゲットは、やはりOptimus G Proとは異なってくるのでしょうか。
尹氏
この夏モデルからは「NEXTシリーズ」や「withシリーズ」という括りがなくなっているんですけども、ターゲットとしては、ハイエンドユーザーはOptimus G Proでカバーして、エントリーユーザーにも使いやすいwithシリーズっぽいものとして出したのがOptimus itとなっています。
基本的なハードウェアはOptimus G Proと似ているのですが、端末サイズを小さくしていますので、ハイスペックな性能をコンパクトな筐体に凝縮させた、ということになりますね。バッテリーは2100mAhとなっていて、今回の夏モデルの中ではどちらかというと大容量ではありませんが、コンパクトさに重きを置いて開発した端末ですので、そういう意味ではバランスのとれたスペックになっているかなと思っています。
前回のL-05Dは、グローバルからするとありえないサイズ感で、社内的にはなぜわざわざこんな小さなものを作らなければいけないのか、という雰囲気の中でのコンパクトさでした。でも、ユーザーからはとても良い反応をいただけて、今回もそれを受け継いだ形で作ることができたのは良かったですね。逆に韓国内からは、日本向けに出した端末をなぜ韓国でも出さないのか、という声をいただくこともありますが(笑)。
――ディスプレイはこれまでとは異なる加工を行っているようですが。
尹氏
一般的には分離されているガラスとタッチパネルを一体化した「Zerogap Touch」という新しい工法を採用しています。操作性が向上してサクサク感が得られるようになっているのと、ディスプレイが近くにあるように見え、浮かび上がるような鮮明さを感じることができます。
Optimus G Proも同じZerogap Touchを採用していますが、それと違う点は、エッジ部分にふくらみをもたせた「2.5D Glass」加工も施しているところで、Zerogap Touchと合わせてより臨場感を体感できるようになっています。従来の機種だとガラス面よりも奥の深いところにディスプレイ面があるように感じるのですが、Zerogap Touchによる手前に浮いて見えるような感覚と、2.5D Glassでレンズのような効果で画面の臨場感がより際立っています。
この2.5D Glassは、“水滴”や“表面張力”というコンセプトでデザインされました。実はNexus 4にも採用しているんですが、Nexus 4の場合は左右のエッジだけがふくらんでいるのに対して、Optimus it L-05Eでは上下左右にふくらみがある点で、よりグレードアップしています。この2.5D GlassとZerogap Touchの同時加工は、開発する上で特に難しかったところです。
――カメラまわりの機能にはどんなものがありますか?
尹氏
カメラは1320万画素のセンサーで、肌色がきれいに見えるよう補正してくれる「ビューティーショット」機能と、声でシャッターを切れる「ボイスシャッター」機能があります。このボイスシャッターではタッチ操作が必要ないので、画質のよいアウトカメラで自分撮りしたいシーンで、見えない画面内のボタンを探ることなく簡単に撮影できるというメリットもあります。
その他には、最大6枚の連写機能と、1秒前までさかのぼってカメラ撮影できる「タイムキャッチショット」などの機能も用意しています。動画撮影では、「ライブ効果」で変顔などに変えてくれる機能ですとか、「ライブスナップショット」で動画撮影中に静止画を撮影できる機能などがあります。
――外観の変更箇所は、ディスプレイ以外ではどの部分がポイントになりますか。
尹氏
タッチ式のハードキーのマークが、前回はプリントだったところ、今回は金属を埋め込む形にしてリッチ感を出しているのも特徴ですね。グローバル向けの端末というのは、ほとんどの場合そのまま持ち込んで、最小限のカスタマイズだけで済ませるんですけども、日本向けのモデルというのは色や素材といった点が重視されますので、外観から考えなければならないのが難しいところでもあります。
ボディカラーについては、我々からドコモさんに対してカラーとデザインを提案して、この形に一番似合っている色はなんだろうと純粋な気持ちから決めたものになります最終的には一番しっくりきているホワイトと、最も人気が高くなるであろうブラックの2色に決めました。
――ソフトウェア面ではどんな特徴があるでしょう。
尹氏
ユーザーインターフェースの部分では、Optimus G Proにもある「アイコンカスタマイザ」機能を利用できます。ホーム画面上のアイコンを自作画像などに変えたり、通常の4倍サイズの大きなアイコンにするといったことが可能です。
それから、「季節の壁紙」というライブ壁紙もプリインストールしました。15日ごとに季節に合わせたデザインに入れ替わり、正月や母の日など、特別な日もその日専用のデザインになります。
アプリ一覧では、もともとフォルダ分けして整理することはできましたが、不要なアプリであっても削除はしたくない人のために、アイコンの表示・非表示を切り換えるカスタマイズもできるようになりました。
2つのアプリ画面を1画面で同時に使えるおなじみの「Q Slide」機能だけでなく、カメラ撮影するだけで画像内の文章を翻訳する「Q Translator」、スクリーンショットに手書きできる「Qメモ」、電話着信時の発信者情報を表示しない「プライバシーキーパー」も継続して搭載しています。
Optimus GとG Proには「ファイルネットワーク」という機能があったのですが、今回から「ワイヤレスストレージ」という名前になって、ステータスバー内から直接オン・オフを切り替えられるようになりました。これは、同じLAN内のPCからOptimus itにアクセスして、端末内のファイルを操作できるというものです。
――Miracastにも対応されていますね。
尹氏
はい。Wi-Fi経由で受信したデータをMiracastでテレビに映像出力することが可能ですので、YouTubeなども高画質で快適にご覧いただくことができます。
バッテリー高密度化などの技術向上でよりコンパクトに
――ハイエンドに近いスペックと思いますが、サイズ感というところで他のメーカーや端末と差別化しているわけですね。
尹氏
さらにコンパクトにするという方向性もあるのかもしれませんが、実際に持った時に操作のしやすい幅、サイズ感というのもありますので、それを考慮したときにこれくらいがベストじゃないかと考えました。以前のL-05Dの時は、当時のAndroid端末の中にそこまでコンパクトなものがほとんどない、という状況だったのもあって、サイズについてのウケは良かったんです。
スマートフォンにとっては画面が命ですが、これより小さくなってしまうと情報の見やすさという観点では厳しい。4.5インチディスプレイが最低限必要な広さかなと思っています。
――筐体は若干大きくなりつつも、重量は1gですが軽くなっています。これにはどんな工夫があるのでしょうか?
尹氏
2点ありまして、1つはバッテリーの技術が上がったおかげです。バッテリーを高密度にすることで、たとえば同じサイズでも容量を増やすことができるようになりました。それともう1つは防水加工などの技術向上ですね。内部パーツの配置などを工夫して、より狭額縁で設計できるようになったのが、同じサイズ感で重量を減らしつつ、バッテリー容量やディスプレイサイズを変えることが可能になった大きな要因です。
さらに裏蓋も外せるようにしてバッテリー交換を可能にしました。コンパクトさや指紋が目立たないボディのマット感と合わせて、販売店の方からも売りやすいとおっしゃっていただいています。
――前回のOptimus it L-05Dで初めてMicro USB端子のキャップレス防水を実現されていました。これも引き続き採用していて、さらにおくだけ充電にも対応するなど、ユーザビリティを高める方向性に進んできている印象があります。
尹氏
充電のためにMicro USB端子のキャップを何度も開け閉めするのは不便ですし、それが、おくだけ充電対応機種が多くなってきている理由の一つでもあるでしょう。ただ、おくだけ充電を使えない環境でUSB充電しなければならない場面も少なくないわけで、その場合はキャップがない方が当然挿しやすいですし、キャップが劣化することに対する不安も減るのかなと思います。
――おくだけ充電を初めて採用されましたが、今後の端末でも積極的に採用される予定ですか?
尹氏
モデルの特性によりますが、基本的には今後の端末でもおくだけ充電の対応を進めていきたいと思っています。日本は安全に対する意識が高いところがありますが、我々もグローバル向けの端末でさまざまな経験を積んできていますので、そのあたりの経験値というのが今回の機種で試されるのではないかと思っています。
――充電にかかる時間は明らかになっていますか?
尹氏
現在は充電時間について最終的な測定を行っている段階です。
ショップとの連携でツートップに迫りたい
――コンパクトということもあり、ターゲットユーザーはやはり女性なのでしょうか。
尹氏
6:4くらいで女性寄りですが、男性の中にもコンパクトなものが好きという方が多いと思うので、そこもしっかり狙っていきたいなとは思っています。
ちなみに女性向けのコンテンツとして、先ほどもご紹介したライブ壁紙の「季節の壁紙」に注目してほしいですね。今回は韓国本社から日本向けのコンテンツをやってみたい、という企画提案があり、特定市場向けの製品に本社が直接関わるのはあまり例のないことでしたが、実現することができました。
定期的に季節感やイベントに合ったデザインの壁紙に切り替わるのですが、よく見ると正月の鏡餅のデザインなんかも、季節感を表す小さなアイコンイメージが集まって形作られているんですよ。平日は、この小さなイメージが1色で敷き詰められているのが、特別な日になると集まってその日のモチーフを形作るんです。
開発中は日本のカレンダーとにらみ合いながら、1日だけの特別なデザインをどういうものにするか考えるのが、楽しいながらも難しかったところです。当初は祝祭日だけに絞ろうと考えていたのですが、クリスマスは平日の場合も多いですし、ハロウィンや母の日、節分などもありますので、休日ではないけれど日本人が特別だと思っている日をピックアップする必要がありました。日本の人であればすぐにわかるようなことも、韓国の人にとってはかなり難しいんですよね。その日になったらどんな壁紙が出てくるのか、楽しみにしていただければと思います。
――他に女性向けのコンテンツは?
尹氏
「アイコンカスタマイザ」もありますね。ホーム画面上のアイコンを、好きな画像や写真に置き換えたりできるもので、見た目を変えて使いやすくするだけでなく、全体的にかわいい感じにすることもできて、結構面白く使えると思います。私は試しに一度、ホーム画面のアイコン全部を会社のメンバーの顔写真にしたことがあって、同僚に気持ち悪がられましたけど(笑)。
ロック画面での解除方法をさまざまなパターンに変えられる機能も含め、カスタマイズ機能を活用すれば愛着のわく端末になると思います。ただ、「アイコンカスタマイザ」はホームアプリがPalette UIだと使えなくて、LGオリジナルのホームアプリに切り替えていただく必要があるのがちょっと残念なのですが。
――自社の家電製品との連携はいかがでしょうか。パナソニックが家の外から家電をコントロールする、という機能で一時期論議を呼びましたが、5月10日からは省令が一部改正されて実現への道筋がついたところでもあります。
尹氏
Optimus G Proの方は「Q Remote」という機能で家電製品を操作できるようになっていますが、Optimus itには入っていません。これは、Optimus G Proがハイスペック端末の位置付けで、そうではないOptimus itについては、コストなどの関係からIrRC(赤外線リモコンの規格)に対応していないためです。
今後は家電製品との連携がより活発になっていくとは思いますが、LGの家電は日本市場ではまだそれほど浸透していないところもあるので、個人的にはもう少し先になるのではないかと考えています。スマートフォンで家電を操作する、という流れは、グローバルではすでにやっていて、日本については最近になって始まったものでもありますし、まさにこれからの活動になるのではないでしょうか。
――ドコモの“ツートップ”戦略についてはどのようにお考えですか。
尹氏
あまり目立てない上に、端末発売が6月下旬で“ツートップ”の後に販売が開始される形になりますので、たしかに戦いづらいところはありますが、地道にタッチ&トライしていただいたり、ショップの方と密に話をして連携を取りながらアピールしていく計画です。Optimus it自体はショップからの反応もよく、売りやすいという声も多数いただいていますし、ショップへの働きかけも重視しながら販売していければと考えています。今の時期は次につながる重要なタイミングだとも思いますので。
スマートフォンがメジャーになって数年たった今は、ユーザーのスマートフォンの選び方もある程度決まってきている気もします。“ツートップ”があるのでアピールの方法は難しい部分もあるんですが、シンプルに使いたいけれどスペックはしっかりしているものを選びたい、という方にはOptimus it L-05Eはおすすめできる端末です。
――では、最後に読者に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
尹氏
LGの端末は、触っていただかないとなかなか良さが伝わらないところがあるのですが、一度触っていただければ使い続けたいと感じる商品だと思います。日本メーカーのようにきめ細かいところまで作り込もうと、ライブ壁紙の「季節の壁紙」なども開発しましたし、使うほどに魅力が伝わる機種になっているはずです。
――本日はありがとうございました。