インタビュー

ドコモが「d払い」アプリを続々強化、「自分は今何%還元?」がひと目で分かる――増えるサービスとお得を可視化

 NTTドコモのスマホ決済サービス「d払い」に、ドコモの料金プランの支払額や利用できるデータ通信容量が分かる「利用サービス」機能が15日、追加された。合わせて、dポイントが何%の還元を受けられるかも把握できるようになっている。

 背景には、多数あるドコモのサービスの可視化してほしいといったユーザーの要望や複数のサービスを組み合わせることでもっとお得になることを示して利便性を高めたい狙いがある。

左からNTTドコモの阿部能人氏、永野優作氏、松本真里奈氏

お得な状態を一目で確認できる「利用サービス」機能

 今回新たに追加された「利用サービス」機能は、d払いのアプリ内から、自らが契約するドコモ回線の料金や利用できるデータ通信容量などが分かる。

 加えて、dポイントのランク、dカードや投資などの金融サービスの利用状況をワンストップで確認できるようになった。現在の会員ランクに応じたポイント倍率や、dカードの利用設定状況などがグラフィカルに表示される。たとえば、dカードを設定することで「プラス0.5%」の還元が受けられていることや現在のランク特典による優遇状況などが可視化される仕組みだ。

 未契約のサービスがある場合でも、単なる広告バナーを表示するのではなく、そのサービスを利用することで還元率がどう変化するかといった「メリット」を提示する設計となっている。アプリ内では、d払い、dポイント、dカード、ドコモ料金、投資の5つの機能の利用状況を表示できる。要望次第では今後、対応するサービスを増やすことも視野に入れる。

複雑化するお得をシンプルに見られる

 新機能搭載の背景には、ユーザーからの声や社内でも搭載したほうがいいのではないかという意見があったことがあるという。ユーザーからは「利用したサービスの金額が分かる機能が欲しい」「たくさんあるサービスを一覧化して可視化してほしい」という声が上がっていた。

 d払いのユーザーは「dポイントを貯めたい」という意向も強く「どう(ドコモのサービスを)クロスしたらお得になるか」を示すことで、利便性を高めた。ドコモサービスを使いこなすユーザーにとって利便性が高まる一方で、そのサービスを使っていないユーザーにとって、バナーは単なる宣伝と捉えて忌避されがちだ。

 特に、dカードを保有するd払いユーザーは珍しくない一方、投資などのサービスにまで食指が動くユーザーは決して多数派ではないと、NTTドコモ ウォレットビジネス部 ペイメントビジネス担当の松本真里奈氏は説明する。未使用のサービスを使うよう促すのではなく今、ユーザーが使っているものが、新たなサービスと組み合わせるとどうお得になるか、ということを示すことを重視したという。

 NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー ウォレットサービス部 UI・UX企画の阿部能人氏は「いろいろお得な情報があるものの『結局いくら還元されるのか分かりにくい』という声があった」と話す。「利用サービス」機能で、最終的な還元率をトップに表示しているのは、分かりやすさを重視した結果だという。

 NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー ウォレットサービス部 グロース推進担当部長の永野優作氏は「戦略的にはバナーを貼って宣伝する傾向がある。しかし、デザイナーの視点では(ユーザーが)見たい機能だけを見せたい」と、サービスの訴求と使いやすさのバランス取りに苦心したことを明かす。

決済アプリから生活インフラへ、d払いの進化

 2018年4月にサービスを開始した「d払い」は、当初はシンプルなバーコード決済アプリとしてスタートした。その後、2019年にはウォレット機能、2020年には予約注文などができるミニアプリ機能や送金機能を実装するなど、決済にとどまらない機能拡充を続けてきた。

 こうした利便性の向上が支持され、現在のユーザー数は6515万人、取扱高は2兆519億円に達している。2025年のオリコン顧客満足度調査では「スマホ決済サービス」部門で1位を獲得するなど、生活に密着したサービスとして定着している。

 直近では1月に、通信環境が不安定な場所でも決済が可能な「ネットワーク未接続時支払い機能」をリリースし、インフラとしての安定性を高めている。

 ドコモでは、住信SBIネット銀行とともに新サービスブランド「d NEOBANK」を10月に立ち上げている。永野氏によれば「具体的に言える段階ではないが、もちろん連携については検討して進めている」とした。

 d払いは、決済のみならず「dポイント運用」や「かんたん資産運用」など、投資関連機能も備える。投資永野氏は「d払い、dポイント、dカードの3点を使うと非常に高い還元率でお得な状態が保てる。まずはそこを使ってもらい、そこからポイント運用などで投資体験も楽しんでいただければ。いろいろなサービスが追加される中でもシンプルな状態を保ちたい。(あまり多くの)サービスを使っていない方にもお試しで使ってもらえるようにしたい。楽しんで楽にお得になるところは担保していきたい」と語った。

 加えて、阿部氏は「たとえば『NISAを始めたいけどよくわからない』という人も多い。『ドコモのサービスなら簡単に使える』というかたちを作り、ハードルを下げることにつなげたい」と展望を示した。