インタビュー

なぜJCOMが「スマホでお金を借りられる」新サービス? 神野社長に聞く

 JCOMフィナンシャルは6日、新しい金融サービス「J:COM プレミアムローン」(11月25日開始)を発表した。

 通信各社では、ユーザーの囲い込みに向けて“経済圏”を作るべく、さまざまなサービスを多角的に展開している。金融事業もその1つで、NTTドコモやKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのMNO4社は、自社グループで銀行や証券、決済、クレジットカードなどのサービスを展開している。

 今回のJCOMフィナンシャルの取り組みについて、同社代表取締役社長の神野雅夫氏は説明会で「JCOMの中期経営計画『新たな事業領域への拡張を含めた経営基盤の強化』を踏まえたもの」としており、加入者向けアプリ「MY J:COM」にサービスアイコンが追加されサービスが利用できるといった点やユーザー限定の優遇金利など、経済圏を意識したようなサービス設計のように見える。

 今回のサービスを含め、JCOMフィナンシャルは今後どのような取り組みを進めていくのか。発表会後、同社代表取締役社長の神野雅夫氏とJCOMビジネスデザイン本部金融事業推進部の田中光氏に話を聞くことができた。

JCOMビジネスデザイン本部金融事業推進部の田中光氏(左)とJCOMフィナンシャル代表取締役社長の神野雅夫氏(右)

カジュアルに使える“暮らしのローン”

――金融事業のスタートとして今回フリーローン(用途自由)とした理由を聞かせてください。

神野社長
 KDDIグループのなかで事業を展開する上で、KDDIとの棲み分けが必要だと思っています。その中で、何ができるのか、ユーザーとの接点が多いところを考えた中、ローンという選択肢が出てきたことが理由の1つです。

 もう1つ、たとえば電気事業サービスではJCOMで「J:COMでんき」を提供していますが、KDDIでも「auでんき」を提供しています。「J:COMでんき」では、J:COMのサービスの枠組みの中で契約いただいているため、J:COMの580万世帯におよぶ会員基盤の中で、KDDIの経済圏とは異なる“独立した経済圏”を作れるのではないか、という想いもあります。

JCOMフィナンシャル神野社長

――すでに金融事業を展開している会社を買収するといったやり方も考えられますが、

神野社長
 他社では、金融事業強化に向けて、既存の金融会社を買収されている事例があります。そうすると、その会社が持っていた顧客基盤をそのまま持ってこれるので、利益性が確保できます。

 一方で、我々は、やはり「生活に寄り添う」サービスとするため、ゼロから立ち上げることでJ:COMカラーが出やすい、そういった想いで立ち上げました。事業規模を求めるよりは、「J:COMユーザーの生活インフラの1つ」とするために、今後スーパーアプリ「MY J:COM」でローンのアイコンが登場したり、プッシュ通知でご案内したり、金融とは異なるチャネルからのアプローチをイメージしています。

――「2030年に10万人の累計利用者数」とのことですが、ローンを利用するユーザーとJ:COMのユーザー層があまりマッチしていないように見えますが、達成できそうでしょうか?

説明会では、2030年までに累計利用者数10万人を目指すとしていた

田中氏
 貸金業を営む他社さんの場合、若年層がボリュームゾーンである一方、異業種が運営するローンや銀行のカードローンでは、実は40歳以上の年齢層が多い傾向にあります。J:COMユーザーの年齢層と重ねてみると、同じような山なりになっているので、親和性があると思います。

 同様に、異業種や銀行のローンを利用するユーザーの年収を見てみると、低収入の方より一定以上の収入がある方が多く、年齢層と年収の2点を見てみると、市場と同等もしくはそれ以上のニーズがあるのではと考え、サービスの検討を始めました。

JCOM田中氏

“借金”のイメージを変えていきたい

――今後、太陽光パネルや蓄電池のローンを検討しているとのことですが、ほかに展開する考えはありますか?

神野社長
 太陽光パネルや蓄電池のローンはこれから検討しようとしているところです。

――J:COM MOBILEのスマートフォンとかにも。

神野社長
 今後検討していくべきだと思います。ただ、現在実施している割賦払いは、自社(JCOM)内で実施しているものになるので、どちらかというと、ECサイトなどでのサービス提供はおもしろいと思います。

 たとえば、ECサイトで高額商品を購入する際にローンが組める、といったことも今後考えていきたいと思います。

――自動車など目的別ローンの展開などの考えはあるのでしょうか?

神野社長
 やはり、フリーローンの方が自由に利用できるので、幅広く提供できると思います。

 たとえば、老後のために積立資産はあるけれども旅行などを楽しみたい、という場面で次のボーナスまでの間少し借りておく、といった使い方もできます。「積立を崩すより」は「少し借りてすぐ返す」といった使い方も今後ご案内していきたいと思います。

神野社長

――「ローン」や「借金」という言葉に敏感な方もいますが、どのように今後ユーザーに伝えていきますか?

神野社長
 「スマホ1つで借りられる」という経験で、お金に対する考え方が変わっていくきっかけになれたらいいと思います。

 借金というよりは、住宅ローンのように“暮らしのローン”の1つとして考えていただければ。ほかにアプリをダウンロードしなくても、J:COMのアプリの中で申し込めるので、抵抗感もそこまで感じられないと思います。

J:COMの商品ラインアップの1つに

――今後、提案していきたい使い方はありますか?

神野社長
 たとえば、老後のためにNISAなど積立にお金を回して、毎月ギリギリでやっている若い方、年配の方が多くいらっしゃいます。その中で、友人の結婚式などで遠方への交通費やお祝いなどで急に大きな出費となった際に、ボーナスまで借りておく、といった提案をしていきたいです。

――ありがとうございました。