インタビュー

「AIの民主化」を掲げるOPPO、FeliCa非搭載・キャリア抜きで挑む理由と“逆輸出”の舞台裏

 19日、オウガ・ジャパンは新型スマートフォン「OPPO Reno13 A」や「OPPO Reno14 5G」などを発表した。発表会ではオウガ・ジャパンによる新製品や今後の戦略について、グループインタビューが行われた。

オウガ・ジャパン専務取締役 河野謙三氏
同社 営業推進部 プロダクトマネージャー 中川裕也氏

FeliCa非搭載・キャリア抜きで挑むReno14 5G、その理由

――今回の「Reno14 5G」にFeliCaが搭載されていないのはなぜか。

中川氏
 今回、チップセットやカメラ性能が非常に良く、お客様の要望に応えられる自信がありました。FeliCaを搭載することで開発期間が長くなり、投入が遅れてしまうことを避けるため、投入スピードを重視し、国内展開を優先した結果となります。

――「Reno13 A」はキャリアに採用された一方で、「Reno14 5G」は採用されなかった。キャリアとの関係性や、あり方について改めてお聞きしたい。

河野氏
 「Reno14 5G」に関しましては、キャリア様なしで今回発売させていただいております。日本のお客様に新端末をいち早く使っていただきたいという思いがあり、日本独自の機能などを盛り込むことで発売時期が遅れることを避けるためです。たとえ2カ月の遅れであってもそれを避けたかったのです。

 前回の「Find X8」の発売で一定の手応えを得たことも背景にあります。社内ではキャリアと組むべきかという議論も当然ありましたが、スピード感を重視し、今回の形に至りました。

 OPPOは7年前の日本参入時から、「三方よし」の考え方を貫いており、キャリア様との関係は非常に良好です。お客様から「使ってみたら意外と良かった」という声や、販売店やキャリアショップの皆様からも良い評価をいただいております。キャリア様からも、OPPOはサポートもしっかりしているというお褒めの言葉をいただいており、今後もこの良好な関係は変わらないとお約束しています。

全モデルへのAI展開とクラウド採用の狙い

――モデルごとに異なるAIの機能が紹介されていたが、今回は全モデルにAIを展開するとのこと。これは全機種で同じAI機能が利用できるということなのか、それとも個別に最適化されるのか。

中川氏
 現時点では、「Reno14 5G」には「Reno13 A」のAI機能が全て網羅されており、加えて画像編集機能などが搭載されています。「Reno14 5G」は1つ上機種としてより多くのAI機能を備えていますが、今後、全ての機種でAIを提供していく方針であり、アップデートなどを検討しています。「Reno13 A」にも、今後「Reno14 5G」の画像編集機能を盛り込む予定です。

――オンデバイスAIとクラウドAIに関して、他社ではセキュリティや即時性を重視してオンデバイスAIを採用する傾向が見られますが、OPPOはどのように考えているのか。

中川氏
 オンデバイスAIは端末のスペックに依存するため、ハイエンド端末でしかAI体験ができないというデメリットがあります。しかし、通信環境がなくても使えたり、端末内で完結するという精神的な安心感があるのも事実です。

 一方で、ミッドレンジやローエンドのお客様にもAIを届けるためには、オンデバイスの縛りを超えて提供する必要があるため、我々はクラウドを選択しています。

日本発のデザインがグローバル基準に

――Aシリーズは元々日本向けのローカライズやカスタマイズ、特にデザインが特徴だった。今回の発表会ではその話がなかったが、これはローカライズの方向性が変わったということなのか。

河野氏
 かつてはユーザー調査として、新橋や渋谷などで社員が製品のバックパネルやデザインの模型を持ち込み、色や触り心地、光の反射具合などを調査していました。最近、発表会でそうした話が出ないのは、約3〜4年前から日本で採用したモデルがグローバルのカラーや仕上げの採用基準の1つとなっているためです。

 つまり、日本で選んだ色や仕上がりがグローバルで採用されており、いわゆる「逆輸出」のような状況が起こっています。そのため、日本でのローカライズがなくなったわけではなく、日本の提案がグローバルモデルになっているという事実があります。

AI体験の民主化と、課金は当面考えず

――クラウドでAI処理を行う場合、その利用料やデータ処理量に応じてコストがかかる。これらをどのように管理していく予定なのか。他社では将来的に有料化の可能性も示唆されてる。

河野氏
 もちろん有料にできるのであれば有料にしていきたいという本音はありますが、今回我々はAIの民主化、つまり全ての方にAIを体験していただきたいということを会社のスローガンとしています。

 AIが画像を合成したり、背景から人を消したりできると聞いても、実際に触ってみないと「すごいね」というサプライズは分かりません。そういった意味も踏まえ、当面は課金のことは一切考えず、お客様にまずは触れて体験していただきたいと考えています。8月に原宿にオープンするAIラボも、多くの方にAIを使っていただくことを目的としています。

――近年のAIサービスはアカウント作成やコスト支払いが必要な仕組みだが、端末の差別化が難しくなる中で、これらのサービスを販売・収益化していく方法は考えているのか。

河野氏
 今のところは考えていません。

主力はミドルレンジ、AI研究も積極展開

――Aシリーズの販売目標は何台でしょうか。

河野氏
 会社としてマストだと考えているのは30万台です。それ以上の数字はぜひ達成していきたいと思っています。

――今回のスマートフォンの具体的なターゲット層を教えてほしい。

河野氏
 まずは、AIという言葉は聞いたことがあるけれど、まだ触ったことがないというお客様に体験していただきたいと考えています。また、最近買い替えでOPPO製品を再び選んでくださるお客様が増えており、そういった方々にもAIに触れていただきたいと思っています。

 具体的な年齢や属性は考慮しておらず、「自分らしさの表現」や「人間らしさの表現」というコンセプトで、好奇心を持ってAIを使って自分らしさを取り戻してほしいと考えています。そのため、年齢はあまり重視していません。

――最近他社では、本来ミドルレンジに分類されるであろう機種がハイエンドとして扱われることがある。OPPOの場合、どのような基準でエントリー、ミドル、ハイエンドといった製品分類を行っているのか。

河野氏
 これは社内でも明確な判断基準があるわけではないため、答えづらい質問です。我々は製品開発の際に、どのようなお客様をターゲットにするかをまず考え、そのターゲットが求めるAIやその他の機能、スペックを盛り込んでいきます。その結果として価格帯が決まります。

 今回発表したスマートフォンはミドルレンジとミドルハイに位置付けられます。なお、「Reno13 A」は主力機種であり、OPPOは歴史的にミドルレンジを最も大切にしているメーカーです。

――以前はスマートフォンの差別化要因としてカメラが挙げられていたが、今回はAIに集中しているように感じる。AIで他社と差別化することは難しいように思いますが、どのように考えているのか。

河野氏
 AIは差別化要因であると同時に、企業として全ての方々にAIを使っていただくというミッションでもあります。ハードウェア面では、バッテリー増量やモノラルスピーカーからステレオへの変更など、お客様の声を反映した改良を毎年加えています。

 AIに関しては、2024年にAI研究所を設立し、独自の画像大規模言語モデルやマルチモーダルモデルの研究開発を進めています。これまでに約100種類の成果が生まれ、その中から製品に採用するものを選択しています。

 また、最近のAIに関する会議では、OPPOのAIに関する論文が約10本採択されるなど、地道な基礎研究の積み重ねが他社との差別化要因になると考えています。

 人間は情報の約90%を目から得ているということもあり、初めてAIに触れる方には、まず画像や動画の加工・編集といった視覚的な機能から体験していただくことを重視しています。