インタビュー
「ユーザーファーストな金融サービスを」、番所社長が語るPayPay証券が初心者におすすめな理由
2024年4月16日 00:00
新NISA制度のスタートから3カ月ほど。そろそろ始めてみようかという人も多いのではないだろうか。一方で立ちはだかるのは証券口座開設のハードルの高さ。そもそもどの証券会社を選べばいいのか、証券会社で何が違うのかわからないということも少なくないはず。
投資熱の高まりもあり、新NISA口座開設数は上々というPayPay証券。人気の秘密はなんなのか? 投資初心者にとってPayPay証券が魅力的な理由とは? PayPay証券 代表取締役社長の番所健児氏に訊いた。聞き手は本誌編集長関口聖とライターの法林岳之氏。
PayPay証券ならではのメリットとは?
――素人からするとそもそもどの証券会社を選べばいいのか悩みます。どんなポイントに着目するのが良いのでしょうか? だからこそPayPayアプリからの利用がおすすめという理由があればお聞かせください。
番所氏
まずNISA口座は基本的に使わない理由がないですね。恒久制度ですから税制の優遇が生涯にわたり1800万円まで受けられます。資産形成をするうえで使わない理由はないでしょう。ただ、その資産形成を始める段階で躊躇してしまう、というところが課題かと思います。証券会社を選ぶときには、始めやすい・分かりやすいサービスであることは大事ではないでしょうか。
必ずしも(投資は)勉強しなければ始められない、ということでもないと思っていて、欧米で投資は普及していますが、じゃあアメリカ人やヨーロッパ人は日本と比べて金融リテラシーが高いのかというと、決してそんなことはないです。親がやっているから子どももやっている、ということだけで。欧米はマザーマーケットが成長してきた歴史的経緯もあり、投資などが当たり前だったということですね。日本もいよいよそうなるところなのではないでしょうか。
一方で、まだまだ資産形成をしなくてはいけない方々が「自分には関係ない」と思っているところもあるのではないかなと。対面の証券会社は、富裕層をメインの顧客としていました。しかし新NISAは制度設計からしても、必ずしも富裕層を対象としたものではありません。当社の場合は「実は100円から始められるんですよ」という仕組みなので、100円でも1000円でもとにかく始めることが大事。資産形成は銀行預金や保険だけではなく、そういう(資産運用初心者の方)目線でサービスを構えている証券会社は当社だけなんじゃないかなと思っています。PayPayアプリをお使いなら口座開設も簡単にできますし、PayPayポイントで有価証券も買えます。
――なるほど。
番所氏
ユーザーの方のお話を聞いていると、貯金しかしたことがないとか、レートに応じてお金が増えるのはうれしいけど、減ることもあるというのを躊躇される方は非常に多いです。4~5割くらいの方がそういう風に思われていて、なかなか手が出ないんです。ただ、お買い物したときのポイントだったら(減っても)まあいいか、という方がいるからこそ「ポイント運用」をしている方が1500万ユーザーまで増えたんだとしたら、同じ体験をNISA口座でも提供できるのでは、と。100円から始められますし、投資信託だけではなく日米株も100円から買うことができます。
――まったくの初心者でも気軽に始められるというのは、心のハードルが低くなりそうです。しかし、口座数では他社さんが上回っている状況と考えると他社さんを選びたい人もいそうですがどうでしょうか?
番所氏
それはあると思います。やはり、1000万口座ほども開設されていればそれを選ぶ理由にされることもあるでしょう。ただ、結果として特にこの半年ですが、PayPay証券は非常に受け入れていただいたかなと。旧NISA制度のころから、1位・2位のネット証券がほとんど独占している状態でしたが、我々は今、月間口座開設数では3位につけており、4位とは相当の差があります。ほかとは違う価値提供をしているなかでそれが選ばれたという結果でしょう。
事業全体を見渡した時に、やはり我々は優位な位置にいるなととらえています。“一丁目一番地”で戦えている、PayPayというプラットフォーマーとやっていることの特徴かなと。ほかの証券会社さんはポイント還元を大きく打ち出していますが、我々は特にやっていないんです。しかし、たとえばメディアで新NISAが話題になると、当社への注目も急増するんですよ。PayPayは多くのユーザーがいますから「PayPayアプリ内のバナーで『NISA』ってなんか出てたな……」と我々のところに来ていただける、という良い流れがあります。
――投資初心者にとって、証券口座を開設するのはハードルが高いです。PayPayから遷移すれば3分で申し込み完了ということですがここも意識して作り込んだことがうかがえます。
番所氏
投資をこれから始めようとする方にとってみると「どうしていいかわからない、でもみんなやってるし……。NISA申し込んでみようか」っていうことになるんですが、証券口座開設は金融サービスのなかでも相当ハードルが高いんじゃないかなと思います。
マイナンバー入力や投資経験の有無……「なんのために口座を活用しますか?」というところまで登録しなくてはいけません。口座開設で迷うところはとにかく少なくするのが、やはり丁寧な対応であろうというふうに思っています。
PayPayで本人確認が終わっていれば、証券口座を開設する際の本人確認はPayPayのデータを連携することができます。マイナンバー入力だけはやっていただくことになりますが……マイナンバーカードも普及率が高まってきているなかで非常にご好評いただいていて、他社さんと比べても口座開設はやりやすいと考えています。
アプリも社長がチェック、UIにもこだわり
――番所社長はアプリのUIのチェックもされるそうですね。社長の立場でそこまで実務で動くのは稀じゃないでしょうか?
番所氏
証券会社だとあまりないかもしれません。とはいえ、モバイルサービスの会社なら普通かなとも思いますね。金融機関のサービスを見渡してみると「プロダクトアウト」(顧客ニーズよりも企業側の意図が反映された仕組み)だなと思うところがあります。事業者の都合が色濃く、極めてわかりにくいというのが金融サービスが浸透しない理由ではないでしょうか。
一方でスマホ決済サービス「PayPay」はとても分かりやすいユーザーインターフェイスになっており、ユーザーを大事しながら使いたいサービスを届けるということをやっているわけです。我々もそれと同じような発想で、一番はユーザーの反応や、私自身も使ってみて「このサービスだったら使いたい」と思うものを作っています。改善していく過程にCEOが入るのは当然という感覚です。
もともと、投資の仕事をしていてシリコンバレーや中国の投資先の方たちと接するとCXOは待つのではなく、現場に出て仕事を見て、自ら指示して進めるというのが当たり前なんですよね。従来の金融の部分とテクノロジーを統合していくのは、大きなチャレンジで私が入ってやっていくことで現場のスピードが上がると思っていますので、かなり細やかに入っているということになっています。
――PayPay側との交流は密接のようですね。
番所氏
PayPayとはWin-Winの関係を築くというか、シナジーを発揮していきたいので私レベルでも実務者レベルでも議論を戦わせながらサービスを磨いています。
――アプリのインターフェイスでここは自慢の場所! というところはありますか?
番所氏
たとえば「ポイント運用」ですね。今1500万人ぐらいの方にお使いいただいています。ポイント運用の画面からワンタップで実際の投資にも移動できるようになっており、ポイント運用と同じように簡単なUI/UXで投資信託をはじめとした有価証券の売買・積立ができます。極めてシームレスな使い勝手になっているということは大きいと思います。
PayPayも当初は「スマホ決済アプリ」でしたが今は「金融アプリ」として発展しようとしています。PayPayアプリのトップ画面から下部の「ウォレット」をタップいただくと、残高やクレジットカードの利用額、ポイント管理に加えて当社での運用額や評価損益が一括で確認できるようになり、よりPayPayと融合している形になっているところは売りですね。
――今のアプリが持つ機能は理想に近いということでしょうか? もし今後の展望があったらお聞かせください。
番所氏
PayPayアプリのなかで、ポイントを確認する画面からも自然にポイント運用に移動でき、そこから「PayPay資産運用」へ極めて少ないステップで移動できるので、だいぶ(PayPayアプリとの)融合はできてきたかなとは思っています。
PayPay自体が金融アプリとして発展しているさなかということもありますし、たとえばPayPayとしては、給与のデジタル支払いにも取り組んでいますので、それが実現すればそこからスムーズに(PayPay証券のサービスを)使えるようにするという構想は持っています。
――(法林)PayPay証券のネイティブアプリとPayPay内のミニアプリが別建てで、徐々に近づけているのでしょうが、片方の口座で持っている銘柄が片方にはないということが最初はありました。しかし最近はちゃんと反映されるようになりましたね。ゆくゆくは統合するんでしょうか?
番所氏
アプリを発展させる構想はあって、少し先も見据えて対応を進めています。(社名変更前の)「OneTap BUY」時代は米国株を入口に、1000円から買える仕組みを提供していましたが、積立に対応するにあたり、初心者向けのサービスとして近しい形で準備するほうが迷いがなくなるかなと思っています。UI/UXは基本的に統一していこうと考えています。
――(法林)ポイント運用は結構上手く行く人も少なくないようです。そこからPayPay資産運用への導線は意識されているポイントなんでしょうか?
番所氏
ポイント運用をされている方が、次のステップとしてPayPay資産運用を利用していただくことは増えています。当社の証券口座を申し込んでいただいた方の90%以上はポイント運用の経験のある方々で、サービスのシナジーを発揮できたのかなと。
――(法林)伝統的な証券会社さんと比較して、ユーザーへのアピールが一枚上手ですね、他社さんはお客さんの獲得に苦労されているところも多いようですが……。
番所氏
当社として、もっとアピール施策を展開したらどのくらいお客さんが来てくれるかな、なんて思ったりもしますが、逆に言うとそういう戦い方をしなくてもいいんです。ユーザーサイドからしてもそこは本質的ではないのかなと。
――(法林)人気な銘柄のランキングなんかも出されていますよね。
番所氏
こういったところの工夫で選ばれていることもあるのかなと考えています。ポイント運用ではチャートも載せていませんし「○○コース」とだけ示していますが、値動きは対応するETFと同じです。しかし、それをETFだったり(銘柄名である)SPXLと言っても何のことかわからないので「チャレンジコース」としています。それを買っていただき、値動きについて理解してもらってPayPay資産運用のほうを開いていただくと。
PayPay資産運用も有価証券の取引ですが、あえて日経平均のチャートなどは載せていません。ポイント運用で投資の疑似経験をしていただいた方に、見てもらうものってS&P500や日経平均のチャートなんだろうか? と。もちろん、長期・分散・積立で資産運用していくには必要な情報ですから仕組みとしては備えています。ただ、新NISAが始まったばかりの今、投資信託を積み立てようと思っている方々にとって必要な情報を厳選してお届けしているのです。
――(法林)ふつうは投資信託の一覧があって残高や入金の多寡が、と並んでいますが、PayPay証券のアプリではチャートがなく、自分のポートフォリオのグラフがあるというのは上手いなと思いました。
番所氏
ああいうもの(チャート)があるから「どうしたらいいの?」と迷われてしまう、困惑してしまう方がすごく多いんですよね。我々はそのあたりも考えていましてNISA口座のつみたて投資枠や成長投資枠であといくら使えるか、ということが出てくるようになっていて、ユーザーに届ける大事なコンテンツは簡単に参照できるようになっています。たとえば、長期分散積立だって(初心者には)さっぱり分からないですよね。
そこで我々はインフォグラフィック仕立てで見られるようにしていますが、これはほかの証券会社さんにはない発想なんじゃないかなと思います。もちろん、金融サービスですからPayPay資産運用では、実は約500銘柄も取引でき、本格的に利用できるサービス体制を整えています。
しかし、長期分散積立の場合は数銘柄~数十銘柄に分散していくという風な世界で、それに対して「どうすればいいんだっけ?」ということがわからないユーザーに対しては、目標設定の機能をトップに設けました。積み立てる金額の目標やリターンを設定すれば、それに対してのおすすめ銘柄がすぐに見られるんです。
月1000円でも、買ったら放置もアリ
――新NISAをすでに始めている人はITも金融もリテラシーが高いんでしょうか
番所氏
新NISAが始まってすぐのころは、利用の意向が強いユーザーが入ってきていました。
――金融初心者の方がチャレンジする流れは今も続いているということですか?
番所氏
そういうことだと思います。まだまだこれからというと語弊があるかもしれませんが……。業界全体において1カ月で数十万口座増えたというレベルなので、そういう意味では大きな流れはこれから来るということかなと。現時点でも、本当に初めてなんだろうなという資産運用初心者のユーザーが非常に多く、投資の裾野が広がってきているというところはあると思います。
――ところで今、すごく株価が上がっていますよね。初心者からすると値上がっている今から始めるのか……という気もしてしまいますが、どうでしょうか?
番所氏
「資産形成をする」ということは、日々の値動きを追ったり、その利ザヤを稼いだりという考え方とは全く違うんですよね。上がることもあれば下がることもあるというのが普通です。長い目で見てもらうことが一番大事なのではないでしょうか。
加えて自分にあったやり方でやっていくこともそうです。月々〇万円から始めるということに抵抗があるなら1回1000円ずつでもいいんです。毎週積み立てるなどまずは少額でもいいです。日本や米国、全世界など自分が分かる範囲で、自分がとれるリスクで始めてみることが大事ですね。
預金とは違い値動きするものですから放っておくというか、気にしないのもいいでしょう。どうしても気になるのなら、まずは自分が保有しているPayPayポイントの分だけでやるというのもおすすめです。
――日々の値動きは気にしなくてもいいと考えればちょっと気が楽になりますね。
番所氏
我々はエコシステムで戦っていくというか、良いサービスをお届けして選ばれるということで戦っていきます。金融サービスもそういう流れになってきています。私が新入社員だった20数年前、会社指定の給与振込口座を作り、そこで住宅ローンや定期預金を組むというのは当たり前の世界でした。
今の新社会人の皆さんは会社に金融機関を指定されても「ネットバンクなら手数料もタダだしモバイル対応してて使いやすいじゃん」ということで自分にとってメリットがある、使いやすい金融機関で口座開設する、というようになって来ていて。金融サービスを“ベネフィット”で選ぶことが当たり前の価値観になってきていますから、サービスもよりモバイルにシフトしていくでしょう。
――本日はありがとうございました。