インタビュー

PayPayはふたたび大型還元をするのか――中山社長の一問一答

 PayPayの代表取締役社長執行役員CEOを務める中山一郎氏は、26日、報道陣の取材に応じた。

中山氏

LINE Payとの関係

――LINE Payとの関係について知りたい。どういった協力関係を模索していくのか。また、両サービスのすみ分けはどのようになるのか。

中山氏
 LINE Payとは一緒にやっていったほうがいいのではないかと思っている。おそらくLINE Payも同じように考えていると思うので、当面は同じグループとして手を携えながらやっていきたい。

 PayPayとLINE Pay、どちらを使ってもらっても同じ体験ができるようにするということで、大きな変更は当面はないのではと思う。

――LINEポイントとPayPayポイントの統合については、なにか動きがあるのか。

中山氏
 現在は協議しているところ。

――PayPayポイントを普及させるための決め手は“還元”なのか?

中山氏
 利便性が一番大事だと思う。

PayPay事業の状況、手数料のインパクトなど

――地方自治体とのキャンペーン「あなたのまちを応援プロジェクト」は、PayPayにとって大きな存在になっているという印象がある。自治体の予算などにもよると思うが、このプロジェクトの今後に関する考えを教えてほしい。

中山氏
 我々としては今後もやっていきたいと思っているし、それが地域の活性化につながるのであれば、おのずとやっていただけると思っている。

 PayPayの新規加盟店が増えている要因のひとつは、「新しいお店ができていること」。そしてもうひとつは、この「あなたのまちを応援プロジェクト」の存在となっている。

――「あなたのまちを応援プロジェクト」をやるかやらないかで、加盟店の増え方に大きな違いはあるのか。

中山氏
 ここでは具体的な数字を申し上げられないが、顕著に違う。

――2月のソフトバンクの決算会見時に、宮川社長から「(PayPayに関しては)もうひと暴れさせてほしい」というコメントがあった。大規模な還元施策はやっていくのか。

中山氏
 やみくもに、無計画にやっていくということはない。当たり前だが事業なので、費用対効果を考えていく。これまでの事業における経験をいかし、綿密に計算をしながら取り組んでいきたい。

――事業の黒字化の見通しについては。

中山氏
 現時点で、いわゆる“獲得費”というところを除くと黒字。我々としては、そこを戦略的にやめるかどうかというところ。

 現時点ではユーザー数が4700万で、スマートフォンユーザーが9000万ということを考えると、まだまだ獲得費が必要な状況かなとは思っている。

――つまり、方針を変えるまでには至っていないのか。

中山氏
 たとえば3月は少しキャンペーンをやったが、実は4月はキャンペーンをほとんどやっていない。そういった状況で、検証しながら進めているという感じになる。

――手数料のインパクトについて教えてほしい。加盟店数への影響は。

中山氏
 インパクトについては僅少だった。

 PayPayを入れてからキャッシュレス決済の需要に気づき、ほかの決済手段も入れる店舗が多い。PayPayを入れた時期が古い店舗ほど、ほかの手段も採用していて、そういう意味では我々が入り口になった側面はあるのではと思う。

PayPayポイントの“外販”

――PayPayポイントの“外販”について、今後の伸びはどの程度イメージしているのか。

中山氏
 この数年間で、PayPayのキャンペーンに一定程度効果があったことを、ある程度認めていただいていると思う。

 したがって、各社のみなさんが(PayPayポイントの“外販”利用による)効果を試してみるというのは、やっていただけるのではないかと思っている。

――外販の施策について、店舗側への話はすでに始まっているのか。

中山氏
 話はしている。反応としては、扉が閉ざされるようなことはなく、検討したいというような反応がある。

“ミニアプリ”について

――“ミニアプリ”を以前から推していると思うが、これについて、「成功するミニアプリ」「うまくいかないミニアプリ」の違いは見えてきたのか。

中山氏
 なんとなく見えてきた。なので、ミニアプリにかかるフレームワークは、ガイドラインの見直しを今しているところ。

 実は、オリジナルのアプリをそのまま移植したものは、たいがいうまくいかなかった。

 ペイメントのアプリに実装する場合は、シンプルに体験までたどり着けることが非常に大事。それが実装されている場合は、全部うまくいっている。

 こうした学びをいかして、今後につなげたいと思っている。

――ミニアプリの成功について、業種との関係は。

中山氏
 業種はあまり関係ない。やはりシンプルさが大事で、“スリーステップくらいで体験できる”というのがすべてだと思う。

 こうしたことが大事というのはもちろんわかっていたが、やってみないとわからないことも多くあった。また、やってみないと向こう(アプリの提携先)を説得できなかった。

 やってみて、数字にずいぶんと差が出てきたので、ここから変わっていくと思っている。

保険事業や「PayPayあと払い」

――保険事業のユーザー数が伸びているイメージがあるが、今後PayPayにとって保険事業はどういう位置づけになっていくのか。

中山氏
 皆さまのおかげで多少話題になったが、数字としては大したことがない。単価も安い小口保険であり、全体に対しては米粒みたいな話。

 ただ、これまで保険に慣れていなかった方に対して「保険ってこんなに簡単に入れるんだ」という体験を提供できるのが、(我々のサービスの)特徴のひとつだとは思っている。

 保険業界そのものに良い影響を与えられるような存在になれればと思う。

――(保険事業が)大きな柱になっていくのか。

中山氏
 いや、まだまだずいぶん先の話。

――「PayPayあと払い」に関する今後の考えは。

中山氏
 まだ始まったばかり。PayPay同様に、ユーザーの方に満足いただけるような変化をこれから起こしていきたい。

今後の展望など

――「PayPayの用途に広がりを持たせる」というところをどう考えているか。

中山氏
 ここはPayPayの一番大事なところになる。PayPayが使えるところはずいぶん広がったのではと思うが、そこを引き続き広げていくのは重要だと思っている。

――クレジットカードのタッチ決済が広がっている印象があるが、こうした動きについてはどう思っているのか。

中山氏
 歓迎している。PayPay一社でなんとかできるようなマーケットサイズではない。業界全体での取り組みが大切だと思う。

――上場について教えてほしい。(上場の)基準やタイミングなどはどう考えているのか。

中山氏
 上場を前提として事業をしているわけではなく、事業を成長させることがすべてだと思っている。したがって、上場についてはノーコメントとさせていただく。