インタビュー

シャープ「AQUOS zero6」「AQUOS sense6」はどんな機種? 開発者に聞くその特徴

 シャープが28日に発表したAndroidスマートフォンの新機種「AQUOS zero6」「AQUOS sense6」。

 9月末までにホームルーターなどをあわせシャープでは5G対応製品を20機種、提供しており、Androidの国内販売数ではシェア24.4%を誇る。

 そのうちスマートフォンについては、ここ数年、春にフラッグシップの「Rシリーズ」、そして秋に軽量モデルの「zeroシリーズ」とミドルレンジの「senseシリーズ」が提供されてきた。

 今回発表された新製品も、その流れに沿った「AQUOS zero6」「AQUOS sense6」で、順当な進化を遂げた内容に仕上げられている。開発をリードしたシャープの小林繁パーソナル通信事業部 事業部長と商品企画部の清水寛幸課長、小山誠也主任にそれぞれの機種の特徴を聞いた。

AQUOS zero6は「どんな用途でも軽やかに」

 「ゼロからスマホのあるべき姿を追求したモデル」とされるzeroシリーズでは、初代モデルが146g、2台目が141gと軽量化が進められた。そして1年前の「AQUOS zero5G basic」は「ネオハイエンド」と位置づけられ、重さは182gとアップした一方で、機能を網羅し、かつてハイエンドモデルを割引込みで気軽に入手していた人に向けて、スペックと軽さのバランスを図ったモデルとなっていた。

 はたして今回の「AQUOS zero6」はどういった路線となったのか。

 重さを見ると「AQOUS zero6」では146gと再び軽量化を実現。4000mAh以上のバッテリーを持つ防水対応の5Gスマートフォンでは世界最軽量となり、スペックも充実させた。

 一見すると「2台目のAQUOS zero2より重い」と思われるかもしれないが、初代の「AQUOS zero2」と比べ、ミリ波を含めた5G対応のほか、バッテリー容量の増加(3130mAh → 4010mAh)、イヤホンジャックやmicroSDXCカードスロットの追加、そしてカメラもシングル→トリプルカメラ+レーザーオートフォーカス(AF)とスペックが大きく変わった。

 スペックを充実させながら軽さも追求する。そんな「AQUOS zero6」を“脳がバグる軽さ”と表現する小林氏は、衣食住に並ぶほど常にスマートフォンを手放さないようなユーザーに向け、「身につけるように、軽やかにどんな用途でもとことん使い倒せる」ことを目指したと語る。

軽さを実現した3つの要素

 一般的に、充実したスペックを備えるスマートフォンは、それなりの重さになる。部材が増えれば増えるほど、当然のことながら重くなる。

 一方、「AQUOS zero6」はマグネシウム合金フレームを採用し、剛性と軽さを両立。薄さは7.9mmに仕上げられた。

 またディスプレイを保護する強化ガラスは、コーニングの「GORILLA GLASS VICTUS」を採用し、軽さと耐久性を追求。

 さらにバックパネルの薄型化による約10%の重量減、基板面積の14%削減なども軽量化に寄与している。

パフォーマンス

 チップセットはSnapdragon 750G。メモリーは8GB(LPDDR4X)、ストレージは128GB(UFS 2.2)となる。

 ディスプレイは、10億色表示できる最大240Hz駆動の有機ELディスプレイ。画面が静止した状態であれば、ほぼ駆動しないが、毎秒120回の表示と連動して黒画面を挿入して、残像を減らす技術により、滑らかな描画を実現する。ゲーム以外のアプリでもこの恩恵を体験できるという。

 バッテリーの持ちは、容量アップなどもあって、1年前の「AQUOS zero5G basic」と比べ20%アップさせた。

AQUOS R6のカメラ技術を応用

 カメラは、4800万画素の標準レンズ(F値1.8、画角79度)、800万画素の広角レンズ(F値2.4、画角120度)、800万画素の望遠レンズ(F値2.4、光学2倍)という3眼構成。さらに後述する「AQUOS sense6」も同じカメラシステムとなる。

 そのカメラで捉えた被写体を仕上げるのは、新画質エンジン「ProPix3」。1インチセンサーのカメラで話題になった「AQUOS R6」のカメラ画質技術を応用しており、カメラ画質のチューニングは「AQUOS R6」と同じスタッフが担当した。たとえばゴーストと呼ばれる現象や、リンギングと呼ばれる被写体の輪郭(エッジ)の歪みの発生を徹底的に抑える処理が導入されている。

 一方で、「AQUOS R6」のほうが、1インチセンサーの威力を活かして、より暗い場面での撮影は強い。また被写界深度の違いで、「R6」のほうがより良いボケ感で撮影できるという。

 なお、カメラにナイトモードといったメニューはないが、AIによる認識で夜景撮影もサポートする。

AQUOS sense6

 「AQUOS sense6」は、「必要十分」という路線を打ち出し、これまでのシリーズ累計出荷は1000万台に達する「AQUOS sense」シリーズの最新モデル。

 従来との大きな違いはボディ形状の仕上がりと、ディスプレイ、そしてカメラだ。このうちカメラは先述した通り、「AQUOS zero6」と同じ内容だ。

 ボディについては、今回、6.1インチディスプレイ(sense4/sense5Gは約5.8インチ)と大型化しつつ、横幅は70mmで1mm小さくなった。スペック上はわずかなボディサイズの違いだが、ディスプレイの大型化から分かる通り、額縁がより狭くなっている。

 ボディ素材は従来通りアルミボディを採用。MILスペック準拠のタフネス性能と、薄さ7.9mm(先代モデルより1mm薄い)のすらりとした美しさを兼ね備えた外観に仕上げられた。

 ディスプレイは、こちらもIGZO OLED。10億色表示に対応し、ピーク輝度は1300nit、コントラスト比は1300万:1で、省エネ性能と美しい表示を両立させている。

AQUOS zero6と共通した開発

 チップセットは、Snapdragon 690 5G。メモリーとストレージは、6GB/128GB版と、4GB/64GB版がラインアップされ、販路によって異なると見られる。

 「Snapdragon 690 5G」はAQUOS sense5Gと同じチップセットとなるが、これはSnapdragonの6シリーズで後継製品が登場していないことや、コスト面を考慮して引き続き採用されることになった。

 一方、同時発表の「AQUOS zero6」に搭載される「Snapdragon 750G」とはソフトウェアの互換性があるとのことで、「AQUOS zero6」と「AQUOS sense6」は、カメラで同じハードウェアを用いつつ、画質エンジンといったソフトウェアも共通化されている。

 異なる位置づけのモデルを、ここまで共通化したのはシャープとしては初めて。

 ただ、カメラ以外では、構造面などでは「AQUOS zero6」は軽量化に注力しており、「AQUOS sense6」とは異なる設計となる。共通化できる部分と差別化すべき部分が意識された兄弟モデルと言えそうだ。

シャープの家電と連携

 今回の2機種での特徴は、もうひとつ「スマート家電」との連携がある。これはシャープのIoT家電との連携機能のこと。

 「スマートフォンを買ったらサクッと繋がるようにしたい」と語る小林氏は、今回、「AQUOS Smart home HUB」という機能を開発したと語る。OSレベルで実装されたもので、アプリを追加することなく、IoT家電と連携できる。「COCORO MEMBER」でサインインすれば基本的にはロック解除なしで、家電の情報を得られたり、ON/OFFの操作をしたりできる。

 AQUOS zero2はオンラインアップデート、そのほかの出荷済機種はAndroid 12へのバージョンアップとあわせて導入され、2021年11月以降のAQUOS全シリーズに用意される。

2021年以降のAQUOSは全てeSIM対応

 これまでも楽天モバイル向けモデルなどでeSIMに対応していた「AQUOS」シリーズだが、小林氏は、2021年以降のAQUOS全シリーズでは基本的にeSIMに対応すると説明。

 また「かんたんデータコピー」を用意して、機種変更時に、古い機種とケーブルでつなげればスピーディにデータを移せるようにする。