インタビュー
Apple Pay登場前夜、日本で「モバイルNFC」の世界に何が起きていたのか
2021年4月2日 06:00
歴史の裏に先人の挑戦あり――現在でこそApple PayやGoogle Payが世界的に「モバイル決済」の中心として認知されているが、そこに行き着くまでは紆余曲折があった。
「携帯電話に仮想的な“ウォレット”を設けて決済機能を持たせる」という試みは2010年ごろから本格化したが、プラットフォーマー同士の規格争いや「NFC(Near Field Communication)」の決済を受け付けるインフラ整備の遅れもあり、各社の試みは5年をかけてもほとんど実ることはなかった。この状況を塗り替えたのが、2014年10月に米国で始まったApple Payとなる。
日本においても、2016年のApple Pay上陸前にさまざまな試みが行われてきた。
日本では2004年にEdy(現、楽天Edy)を皮切りに「おサイフケータイ」の名称でモバイル決済のサービスの提供が開始されているが、国内展開されているのはあくまで「FeliCa」の技術をベースにしており、2010年代に本格的な普及が始まった「Type-A/B」ベースの“非接触決済”には対応していない。
そこで、おサイフケータイの技術をベースに、「海外ではType-A/BベースのNFC決済も利用できる」ことを目標として2013年にスタートしたのがNTTドコモの「iD/PayPass」だ。だが同サービスは残念ながら[2018年5月25日をもって終了]しており、国内における「モバイルNFC」の端緒を開くことはなかった。いまだ日本国内ではApple PayでVisaは利用できず、Google Payも対応が不十分な状態が続いているが、モバイルNFCの将来はこの2つのプラットフォームに委ねられたことになる。
今回は、当時ドコモにおいて「iD/PayPass(後にiD/NFCに改名)」の開発に携わり、現在もNFCやモバイル決済の分野の前線で活躍するNTTドコモ パートナービジネス推進部 アライアンス担当課長 金融・決済スペシャリストの室岡裕介氏とLINE Pay 事業開発室Business Development1チーム マネージャーの佐野真人氏の両名に、開発に至る背景とその実際、そして“早過ぎた”サービスを生み出した両名から見たNFCならびにモバイル決済の今後について話をうかがった。
(聞き手:鈴木淳也)
国内のFeliCaインフラを維持しつつ、海外での利便性を向上させる
――おサイフケータイでFeliCa全盛の日本に「iD/PayPass」のようなサービスを持ち込もうとした背景を教えてください
室岡氏
社内でiD担当だった当時、2013年の頭くらいにNFC(Type-A/B)が日本に上陸するという情報をつかんでいて、「iDを技術的にType-A/Bに載せることができるのか」という技術テストを行っていました。
技術的にできるということは分かったのですが、当時までの段階でFeliCa普及のために店舗に読み取り機を置くなどの多額の投資を行っていて、環境としても1台の読み取り機で複数の電子マネーが処理できるようになった段階で、われわれ自身が状況をひっくり返してまでType-A/Bに載せ替える必要はないというのが当時の結論でした。
ただ、世界的にモバイルデバイスにType-A/Bが載ってくるというなか、ドコモとしてそこに何かサービスを提供するべきではないかという意見が当時の上司だった小師隆氏(現、NTTテクノクロス取締役)から出て、今回同席している佐野も交えて何度もディスカッションを行いました。
われわれがiDを担当する前、iDは中国やグァムなどに海外進出したものの撤退していましたが、もし海外でこれからType-A/Bが広がるという話があるのならば、「海外はType-A/B、国内はiD」という仕組みができるじゃないかと考え出したのがきっかけです。当時まだApple Payは影も形もない段階で、われわれではこの仕組みを「ローミングサービス」と呼んでいましたが、決済におけるローミングサービスという考えで誕生したのが「iD/PayPass」です。
――ローミングサービスというのがキャリア的発想だと思います。FeliCaとType-A/Bの両方をサポートするうえで技術的なハードルはあったのでしょうか?
佐野氏
FeliCaを発行する仕組みとType-A/Bを発行する仕組みは、ともに巨大なものを作るイメージだったんですよね。
最大のハードルはiDに加えてType-A/Bを発行するという部分で、投資をすべきかというビジネス上の判断が難しかったです。
当時のドコモ内での議論として、収益性重視というよりも新しいテクノロジーにチャレンジする、自ら新しい“かざす”文化を創っていこうという雰囲気があって、社内でもその論調で企画を通していった記憶があります。
室岡氏
当時ドコモのSIMにType-A/Bを搭載しはじめましたが、Cashbee(韓国で利用される電子マネー)以外にType-A/Bに載るサービスがなくて、チャレンジという観点で投資が行われていました。
技術的にはAndroidの1つのアプリケーションでFeliCaのアプレットを書き込みつつ、iD利用のために発行されるカード会社が「iD/PayPass」対応であれば(当時のDCMXとオリコカード)、Type-A/B側も書き込むという処理はけっこう難しかった記憶です。両方のステータスを管理する必要があるので。
さらに、海外でサービスを利用するにあたって国際ブランドと組む必要もあり、そこも大変でした。
――開発期間は実際どの程度だったのでしょうか?
佐野氏
開発自体は半年程度だったと思います。ただ、アプリの認証を含めたブランドとの交渉に非常に時間がかかり、当時一番大きなプロジェクトだったと記憶しています。
室岡氏
構想段階で、ドコモのiDセンターでType-A/Bの電文を処理するという機能をNTTデータと共同で検討していたので、開発スタート後はそれほど時間がかかっていないと思います。ただ、Mastercardとの交渉でかなり時間がかかりました。「iD/PayPass」で利用できたのはMastercardのネットワークですが、もともと「何か一緒にやりたいよね」ということで2012年頃からVisaやMastercardといったブランドとのディスカッションをしており、その後ローミングサービスを具体的に検討していく中でお声がけをしていきました。
結果、Visaには今回のような「決済ローミング」という考え方が受け入れられず、一方で、Mastercardは「(日本では使えない)海外でのみ使えるMastercard Contactless」という仕組みを特別に認めてくれたという経緯がありました。実際には肝心のブランド認定がなかなか通らず、かなり苦しみましたが。
佐野氏
カードブランドのEMV(ICチップ搭載のクレジットカードの統一規格)の仕組みをモバイルで始めたのは世界でもかなり最初の方で、Mastercardとしてもそのあたりのノウハウがきちんと整う前にわれわれとの交渉が始まったという印象です。
実装にあたってのガイドラインのようなものがなかなか先方から出てこず、交渉先も日本の事務所のみではなく、アジア太平洋地域の本社のあるシンガポールも巻き込み、最後のほうはわざわざ現地に出向いて議論を重ねていました。
室岡氏
2012年秋というのは、ちょうどMastercardやVisaなどの国際ブランドがType-A/Bを本格的に普及させなければいけないという空気が出てきたタイミングで、日本国内のアクワイアラ(ブランド加盟店の開拓を行う事業者)に支援金を出してIC対応と一緒にType-A/Bの非接触対応を推進しようとしていました。
ちょうどその頃に(iDの)アクワイアラからも「FeliCaはどうするんですか?」という問い合わせがあり、ドコモとして先ほどの実験やサービス開発を行っていました。いわゆる「NFC Pay」というType-A/B専用の決済モードが日本国内でできたのもこの時期ですが、ブランド2社が50万台分くらいの支援金を積んだにもかかわらず、ほとんど利用されなかったと聞いています。
一方で、その時点の市場でFeliCaの浸透率はすでに高く、シンクライアント型の読み取り端末も市場に投入されはじめ、安価で1台で処理できる仕組みが確立されたことで、MastercardやVisaの試みにほとんど注目が集まっていなかったのではないかと考えています。
相性問題と実際の検証
――ドコモが提供したType-A/Bのサービスは結局CashbeeとiD/PayPassだけだったのでしょうか?
室岡氏
ジャックスが独自発行していたものがあります。あとは三井住友カードがpayWaveを利用できるものを出していました。ただ、仕組みとしてキャリア単位で発行を行う必要があり、ジャックスさんのケースでは3ブランド(JCB、Mastercard、Visa)と3キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)で、9つの組み合わせに対応する必要があったはずです。
佐野氏
さらにSIMのよる違いがあって、SIMごとにTSM(Trusted Service Manager)※の対応をする必要があります。1つのTSMで複数のSIMをサポートできたりしますが、ドコモの場合はType-A/Bの書き込みにあたってGemaltoのTSMを利用していました。
室岡氏
当時、ドコモではSIMだけで大日本印刷(DNP)、Gemalto、東芝、G&D(Giesecke & Devrient)の4社を扱っていました。当時は国際調達におけるリスク低減でマルチベンダー化を進めてましたが、同じ仕様とはいえ互換性問題もありうるので、その検証が必要でした。
――以前に取材で、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社がType-A/B対応のためにGemaltoのTSMを巨額投資でそれぞれ導入して、同社が非常に潤ったという話を聞いたことがあります。SIMの違いによる相性問題はあるのでしょうか?
室岡氏
確かありました。当時海外で手分けしてテストする際に、SIMの製造元を分けて持参していました。
佐野氏
Type-A/Bが実際に店舗で導入されていなかった日本でも、擬似的な試験環境としてローカル処理で(セキュアエレメント内の)アプレットの中身を読んで電文を飛ばすという仕組みは作っていました。
ただ、iD/PayPassではiD(FeliCa)とPayPass(Type-A/B)の変換を行っているので、その変換部分のテストも必要なため、いろいろな国でテストを行っていました。
室岡氏
チームで担当国を分担して「じゃあ、行ってらっしゃい」と送り出す感じですね。Mastercardとの協力で、どの国のどの店舗で使えるかはあらかじめ把握していたので、欧州はイギリスとフランス、米国は西海岸とハワイ、アジア太平洋地域では韓国、台湾、シンガポール、オーストラリアのシドニーに行っています。当時、カナダとオーストラリアでは銀行のキャッシュカードに非接触が付いていてすでに普及が始まっていたので、本当はカナダにも行きたかったのですが……。
――ローミングの趣旨とは外れますが、確かに当時の日本でテスト環境はなかったですね。私の記憶だと舞浜のイクスピアリと桜木町のコレットマーレの2カ所くらいでしか利用できなかった記憶があります。しかも両店舗ともにポイント機能の付いたハウスカードの“おまけ”として非接触が提供されていただけで。
室岡氏
それら店舗では、確かApple Payを試すとエラーが出たはずです。
ブランドの話によれば、昔の仕様に基づいた実装なので、MS(磁気ストライプ)モードという、読み取り自体は非接触ではあるものの、内部的には本来のIC方式のものではなく、従来の磁気ストライプ方式になっており、そもそもEMVの標準仕様に準拠しないという見解でした。
「携帯電話をかざして決済」という文化
――話を聞く限り、「Type-A/Bを使ったモバイル決済」という側面では「iD/PayPass」は相当に先行していたと考えます。実際の反響はどうだったのでしょう?
室岡氏
まぁ、さんざんですね(笑)。本当に月あたり何十万円とか使われたらすごいねという感覚です。
1人の方が海外出張に行かれて、かつドコモ回線のSIMを挿しっぱなしで運用し、その端末がAndroidであるという条件まで付いてくる。当時はさらにDCMX(現在のdカード)かオリコカードでなければiD/PayPassは利用できないので、そもそも対象となるユーザーが少ない。
ただユーザーを見ると非常に偏っていて、本人自体にインタビューはできていないのですが、ある男性で海外出張されている方で、本当にいろいろな場所でサービスを活用されている方がいらっしゃった。われわれとしてはこうしたユーザーに刺さるコアなサービスになることを期待していたわけですが、結局そのまま普及せず終わってしまいました。
考えてみれば、2010年代前半の当時は「SIMを海外で差し替えて使う」というのが少しずつ広まっていた時期と記憶していて、iD/PayPassはSIMを差し替えた時点で使えなくなってしまう。
それは、SIMにあるType-A/Bのセキュアエレメントに情報を書き込んでいたから。
しかもローミング状態でないと機能しないため、この時点ですでにだいぶハードルが高かったんだろうと思いました。本当に使われない状況が長く続いて、この2人はiDの事業から離れ、ある日終了のお知らせを知る……という流れです。ドコモとしては、サービスを維持できるだけのユーザー数を確保できていなかったのが終了という判断につながったのでしょう。
佐野氏
キャンペーンをやったときはそこそこのトランザクションがあった記憶なのですが、海外の店舗で支払いの段階で「カードを出してください」というときに携帯電話を取り出すと、店員さんが「は?」という顔をするんですよね。あの経験をしてしまうと「また使おうとは思わないな」ということで、これはいまだに私も思っています。いまはともかく、当時は特にその雰囲気が強かったと思います。この壁を乗り越えて使えるのは、本当に好きな人だけなのではないでしょうか。
――確かに、Apple Pay出るまでその風潮は変わらなかったですね。
室岡氏
本当に、Apple Payってその点では携帯を海外で“かざす”ことに関しては、ものすごく寄与したサービスだと思います。それはやはりAppleですからね。それ以外のAndroid端末だと厳しかったでしょう。
海外で使うという点では、一時期ハワイに「iD/PayPass使えます」のアクセプタンスマークを出して頑張っていたのですが。2013年冬はちょうどホノルルマラソンに協賛させていただいていて、それに合わせたプロモーションも展開していました。
佐野氏
ハワイには当時ドコモの拠点もあったので、いろいろと施策をやっていたんですよね。アラモアナセンターに「iD/PayPass」のアクセプタンスを出したり。ハワイを象徴的な場所にできないかを考えていました。
――ローミングの関係で現地SIM利用と相性が悪かったという話ですが、SIMカードに機能を入れること自体は仕方なかったのでしょうか?
佐野氏
当時はそうですね。その後GoogleからHCE(Host Card Emulation)が出てきましたけど、当時はSIMに載せるしかなかったのです。
室岡氏
当時、SIMにFeliCaを載せるかという議論がありました。
SIMでType-A/B/F(FeliCa)の3モードをやったとき、SIMと本体のインターフェイスを考えると、どうしても速度が出ない。一方で、SIMにFeliCaを入れればおサイフケータイの“引っ越し”がなくなるというメリットがある。
いろいろ検討してみましたが、最終的にSIMの調達価格がとんでもなく高くなるから諦めたというのが実情です。当時、iDのサービスが端末の乗り換え時にお客様が脱落するという現象が課題としてあったので、その対策もあり、アプリの工夫も含めていろいろ試行錯誤していた時期ではあります。
ただ、やはり使われなかった根本的な原因というのは「支払いに携帯電話を取りだして怪訝な表情をされる」という消費者心理にあるのだと考えています。一般消費者からみてスムーズに支払えないことがどれだけストレスかを考えれば、やはり新しい支払いの文化を創出するのは難しいのだと考えます。
佐野氏
われわれの感覚でいえば、たとえばロンドンに行って現地通貨の両替もなく「タッチだけですべて支払える」というの非常に便利でビジネスマンに刺さると考えていたわけですが、“かざして”払うという文化が根付くのに時間がかかるのです。
室岡氏
内部的な事情でいえば、日本でiDという決済ブランドを持っている当時のわれわれのチームが、一方で国内でiDじゃないブランドを推進するのは、また難しかったのかもしれません。当時PayPassの決済機能を海外だけに閉じたのはそういった理由もあります。iDというブランドは維持拡大していくんだという柱の下に、付随のサービスとして設計しましたから。
国内の環境がガラッと変わればまた話は別ですが、現状でなおFeliCaが使われていて、加盟店と話をしていても「すでにiDがあるのに、これ以上はいらない」という声もあったりと、いまなおFeliCaの需要は大きく、今後も残っていくと思います。ですので、佐野がLINEに移っても「LINE Payで(Apple PayやGoogle Payで)iDが使える」とやったのも、そのあたりが理由だと思います。
キャンペーンの先を見据えたキャッシュレス
――東京五輪では組織委員会が「カード1枚でいろいろできるようになる」という話をしていましたが、そういう姿が具体的に見えてきませんでした。2020年から2021年にかけて、具体的にこれに関連した動きはあったのでしょうか?
佐野氏
そこはVisaと話していますが、オリンピックはチャンスだと思っています。LINE Payとして、コード決済、NFC/FeliCaは互いに市場を食い合うことはないと思うんですよね。コード決済にはコード決済の市場がありますし、非接触には非接触の市場がある。実際、そこではiD/PayPassで培った経験が生きていて、iDとVisaタッチをどのように展開すべきかを考える際にとても役に立っています。
室岡氏
その文脈でいえば、事業者側がいろいろな決済が行える提供を用意して、最終的にはユーザーにどの手段で決済するかを主体的に選んでもらうのがキャッシュレスの伸びる道筋なのではないかと思います。皮肉を込めていえば、五輪会場でVisaしか決済手段が使えないのはナンセンスでしょう。時流的にはコード決済がお得なキャンペーンで各社で打ち合いになっていて、普段FeliCaを使っている人でもコード決済に使ったりと、キャンペーンに左右される現状ですが、ドコモというモバイルキャリアとしては、さまざまな手段を提供しているというのは正しい姿なのだと思います。
――7年前の話題ですが、国内でおサイフケータイやFeliCaの普及がいまひとつということで、当時ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が集まって普及協議会のようなものが作られましたが、すでに7年が経過してコード決済も交えた現状について、どのように考えますか?
佐野氏
個人店にとってプリントQRコードというのは、やはりキラーの存在なのだと思います。コスト面で圧倒的に優位にあるので。
室岡氏
一方で、リクルートの「Airペイ」のような「mPOS(エムポス)」の仕組みがあり、導入には5~6万円はするタブレットの導入が必要だったりとコスト面ではプリントQRコードに比べると不利ですが、それでもクレジットカードや電子マネーを扱いたいという需要に応える形でキャッシュレスの裾野を広げる効果があったと思います。
――コード決済の現状をどう考えますか?
佐野氏
加盟店手数料について、どのようにビジネスを成立させるかという問題はあります。LINE PayとしてはPayPayとのコード決済統合の話もあって、これから検討が進んでいくことになりますが。
室岡氏
おそらく現状のキャンペーンを主体にした普及は一巡したとみていいでしょう。d払いは各種の調査でもシェアは単独2位ですが、当面はdポイント経済圏を広げるという旗印の下で展開が進んでいます。ドコモに参加する以前から含めて10年以上この業界にいますが、明らかに現金利用が減ってプレイヤーが増えています。キャッシュレス全体でみるとユニークユーザーが右肩上がりで増えるわけではないので、シンプルで分かりやすいというのを追求していかないと、キャッシュレスの次は難しいかもしれません。モバイルの会社だからこそできることを進めていければと思います。
佐野氏
その意味ではLINEのトークや、そのトーク内での決済も可能性があると考えています。コロナ禍でお客さんが来なくなった来なくなった地元の飲食店に、ファンがLINE経由で注文、配達をし、業績が回復したという事例もあります。
――キャンペーンの先を見据えないといけないわけですね。
佐野氏
これを使うとどう生活が変わっていくのか、ということを示すことも重要だと思います。私の母が「LINEのVisaプリペイドカード使ったけど、これ便利だよね」ということで、それまで現金しか使ってこなかったものがキャッシュレスに移行しました。ささいな話だけど、そういうケースをたくさん作り、個々に対応していけば市場はより広がるのかなと。
室岡氏
うちの母もそうで、あるスーパーでカードを作ったところ、そのスーパー以外にもカードを使えると分かったときから現金使わなくなりました。ハウスカードの話だけではなく、囲い込む戦略から事業者が連携することで広がる世界もあるでしょう。