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日本で「Apple Pay」、iPhoneかざしてSuica、クレカが使えるように

Apple Pay対応の「全国タクシー」で撮影

 25日早朝、「iOS 10.1」の配信が開始されると同時に、日本でもアップルの新サービス「Apple Pay」が利用できるようになった。世界で12カ国目のローンチとなる「Apple Pay」は、リアル店舗でのショッピングで、iPhoneをかざすだけで支払いできるというサービスだ。

 リアル店舗で使えるのはiPhone 7/7 Plus、そしてApple Watchシリーズ2(以下、Apple Watch2)。日本で発売されるこれらの製品では、日本でメジャーな非接触技術(かざすだけで処理できる技術)「FeliCa」がサポートされている。中でも、JR東日本のSuicaに対応し、注目が集まっている。まずはSuicaやクレジットカードの登録方法などを紹介する。

どこをかざせばいい?

 Suicaやクレジットカードといったプラスチックカードを利用する場合、カード全体にアンテナがあり、ユーザーは特に気にせず、カードをリーダーライターに置くイメージでかざせば決済に使える。一方、iPhone 7/7 Plusでは背面上部、Apple Watch 2ではディスプレイ面周辺に「Apple Pay」用のアンテナがある。iPhone 7の場合、端末の先のほうをリーダーライターに置くイメージだ。

 クレジットカードを登録していた場合、決済時には指紋認証のTouch IDも使う。たとえば親指の指紋を登録しておくと、親指をホームボタンに添えつつiPhone 7をかざす……という自然な持ち方で、よりスムーズに使える。

Suicaの使い方

 「iPhone 7」発表時に大きく話題となった「Suica」は、その時に案内されたように、それまで使っていたカードを、iPhone 7にかざせばいい。カードの情報はそのままiPhone 7へ移行し、それまでのカード型Suicaは無効になる。移行には、プラスチックカードのSuicaの入手時に支払ったデポジット(預かり金)の500円も含まれる。

 JR東日本の案内によれば、フィーチャーフォンやAndroidからiPhoneへ機種変更する際には、いったん機種変更手続きをしてサーバーへデータを預ける。それからiPhone側でカードデータの取り込みを行う前に、サーバーに預けた機種変更データを受け取るという流れ。もし先にiPhone側にSuica情報があると機種変更データを受け取れないとしている。このあたりの詳細については、JR東日本からサービス開始後にあらためて案内される見込み。

 機能面では、残高をチャージしたり、JR東日本が提供するアプリで定期券の購入などが可能だ。後述するクレジットカードでは、決済時にTouch IDによる指紋認証が欠かせないが、Suicaに限っては「エクスプレスカード」という仕組みが用意され、Touch IDなしで改札を通れる。

 ユニークなのは純正のマップアプリとの連携だ。マップで目的地までの経路を検索すると。ルートとともに交通費が表示される。もしiPhone内のSuicaの残高が、目的地までの交通費に足りなければ、そこからすぐApple Payの機能でチャージできるというインターフェイスになっている。

 もしSuicaのプラスチックカードを持っていなくとも、iPhone上でSuicaを新規発行できる。JR東日本沿線以外のユーザーであっても、Suicaと相互利用可能な路線/店舗が身近にあれば、あらかじめ設定しておいてもよさそうだ。ちなみにPASMOなど、Suica以外の交通系サービスへの対応について、米アップルのApple Pay担当バイスプレジデントであるジェニファー・ベイリー氏に話を聞いたところ、「相互運用は可能だが、PASMOなどは追加できない」とコメントするに留まる。

 先述した通り、登録できるのは手元にあるSuicaや、新規発行のSuica。Apple Watch2には、iPhone本体とは別のSuicaを登録できる。もし、iPhone 6sなど従来機種を使いつつ、Apple Watch 2だけ購入している場合は、JR東日本のアプリからApple Watch 2のWalletへSuicaを登録すれば、Apple Watch 2で改札を通れるようになる。ちなみに改札は同じSuicaで入退場する必要がある。

クレカは複数枚登録可

 Apple Payで登録できるクレジットカードは、幅広く国内の主要カードがサポートされる。またグローバルで利用できるようにするため、AMEX、JCBとも協力している。

Apple Pay 対応カード

主要なイオンカード、オリコカード、クレディセゾン、JCBカード、トヨタファイナンスのTS CUBIC CARD、ビューカード、三井住友カード、楽天カード、dカード(NTTドコモ)、au WALLETクレジットカード、ソフトバンクカード(※三菱UFJニコスカードも今後対応予定)

 コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ファストフード、タクシーなど、iDやQuicPayで支払える場所であれば、どこでも使えることになる。

QuicPay対応の全国タクシー

 Suicaとの大きな違いは登録方法。クレジットカードの場合、iTunesなどのアカウントで登録しているクレジットカードをそのまま流用するという方法のほか、クレジットカードをiPhoneのカメラで捉えて番号をスキャンする方法、手入力でクレジットカード番号を入力する方法がある。普段使っているクレジットカードがFeliCa非対応(非接触非対応)のカードであっても、iPhoneに登録できる仕組みだ。この時点で、自動的にiDかQuicPayが割り当てられ、Apple Payに登録される。

 Apple Watch2の右側面にあるボタン(リュウズの下)をダブルクリックしたり、iPhone 7のホームボタンをダブルクリックしたりすることで、Walletアプリを呼び出し、利用履歴を見ることもできる。

 Walletアプリには、複数のクレジットカードを登録でき、それぞれの券面にiDかQuicPayのロゴがある。店頭では、「iDで支払う」あるいは「QuicPayで支払う」と告げることになり、自分が登録したクレジットカードが、iDとQuicPayのどちらになっているかは、事前にチェックしておいたほうがいいだろう。

 また複数のクレジットカードを登録する場合、そのうち優先的に使うカードを指定することもできる。

 ちなみにクレジットカード番号は、iPhoneやアップルのサーバーには保管されない。

Apple Pay対応のWebサービスはアカウントを作らずに利用できる

 Apple Payが利用できるのはリアル店舗だけではない。当初から対応するサービスとして、ギフト贈呈の「giftee(ギフティ)」、手芸品などクラフトアイテムを扱う「minne(ミンネ)」、ショッピングアプリの「BASE(ベイス)」、タクシー配車&決済サービスの「全国タクシーアプリ」、フードデリバリーの「出前館」、旅行予約サイト「じゃらん」、映画チケット予約販売の「TOHOシネマズ」が登場する。

 これらのサービスでは、従来、ユーザーはアカウントを作成し、クレジットカード情報などを登録するという流れが必要だった。しかしApple Payで支払う際には、アカウント作成という手続きは不要になり、品物を選んで購入手続きをする形になる。こうしたWebサービスとApple Payの連携は、新しいiPhoneだけではなく、iPhone 6以降やiPad Proでも利用できる。

紛失したら? バッテリーがなくなったら? 機種変更したら?

 万が一、iPhone 7を紛失した場合、リモートでiPhoneを探すといった従来の仕組みのほかリモートでデータを削除できる。iCloudでApple Payの支払いも停止できる。削除後、手元にiPhoneが戻ってきた場合、iCloud経由でSuicaなどの情報を復元できる。

 機種変更時の手続きは、基本的にサービスごとに異なることになるが、iPhone→iPhoneの場合は、iCloudを利用して、より簡単な操作で移行できるとのこと。Androidなどへ切り替える場合は、アプリ/サービスごとの機種変更手続きが必要になる見込みだ。

 バッテリーが尽きて、放電した場合、iPhone 7やApple Watch2をかざしても、カードリーダーは反応せず、店舗での決済や鉄道の改札は利用できない。iPhone 7ではバッテリーの容量がこれまでよりアップしたようで、駆動時間は長くなったとのことだが、万が一に備えて、モバイルバッテリーを持ち歩くのも選択肢のひとつだ。

セキュリティの仕組み

 発表直後から、ある程度、明らかにされていたり推察が進んでいたりしたApple Payのセキュリティの仕組み。ベイリー氏によれば、Suicaの情報やクレジットカードの情報は、金融機関からトークンという情報が発行される。そのトークンは、iPhone 7/7 Plusに搭載されるセキュアエレメント(SE)というハードウェアチップに格納される。ベイリー氏は、「いわば金庫のようなもので非常に侵入しにくい」と堅牢性に自信を示し、クラウドでFeliCaの機能を再現する「HCE-F」という機能よりも安全だと胸を張る。

 ユーザーの手にするiPhone 7やApple Watchには、デバイス固有のアカウント番号が発行され、トークンは暗号化された状態でSEに格納される。

ベイリー氏
 「安全性と個人情報の保護はApple Payの基礎となる重要な要素です。iPhoneやiPad、Apple Watchを紛失した場合でも『iPhoneを探す』機能で紛失モードに設定していただくことで、簡単にApple Pay のご利用を一時停止することができます。リモートワイプ(遠隔消去)を実行していただくことで端末に保管されるApple Payを含む個人情報をすべて消去することもできます。iCloud. com にログインし、Apple Payの支払いを停止することもできます。

 Apple PayをiPhoneなどの端末に設定した場合も、お客様がお持ちのクレジットカード番号はお客様のデバイスやAppleのサーバーに保管されることはありません。お客様の端末には、各デバイス固有のアカウント番号が発行され、暗号化された状態で安全にデバイス内のセキュアエレメントに保管されます。Apple Payをご利用いただく際、お客様のクレジットカード番号が、加盟店に通知されることはありません」

おサイフケータイとは似て非なる新しいサービス

 これまで日本では「おサイフケータイ」というサービスが存在し、フィーチャーフォンやAndroidの一部機種で、「かざして電車に乗る」「かざしてショッピングする」といった体験は実現されている。ただ、本誌が過去、取材した際に得た情報ではその利用率は決して高くはなく、ITリテラシーの高い男性ユーザーに愛好されているという形だった。

iD対応店のTSUTAYA TOKYO ROPPONGIで撮影

 アップルでは、日本はiPhoneの市場として非常に大きく、そのプレゼンスはとても強い、と評価しているのだという。「Apple Pay」の利用も、過去のどのシステムよりも多く利用されるとの自信を持っている。

 他国では、ポイントカードやギフトカードのような使い方もApple Payではサポートしているが、日本での展開については未定。Suicaやクレジットカードへの対応を皮切りに、長期的な視点で取り組んでいくものと見られる。

 おサイフケータイの使い勝手に似ているものの、Apple Payはアップルが用意したプラットフォームであり、仕組みもサービス面でも異なる部分が多い。

 特に使い勝手の面では、「Suicaをかざすだけでコピーできる」「Webサービスの決済でアカウント作成なしでショッピングできる」といった部分が、“面倒”というシンプルかつ最大の敵をあっさりクリアしそうな出来映えだ。

 これも、アップルという非常に強力な存在だからこそなし得たものとみることができる。その一方で、Apple Payが日本でスムーズにサービスインできるのは、Suicaをはじめとする交通系サービスや、おサイフケータイを推進した携帯電話会社がかつて注力した結果、相当数の店頭にリーダーライターが揃っていることが大きい。その上で、日本で有数のシェアを誇るiPhoneだからこそ、これまで非対応だった店舗などでの普及が進むことにも期待したいところだ。

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