石野純也の「スマホとお金」

楽天モバイル「最強預金」は本当におトク? 最大金利0.64%のマシマシ施策とは一体

 楽天モバイルが、楽天銀行とのシナジーを狙った「最強預金」を開始しました。これは、楽天モバイルのユーザーに対し、料金プランに応じた金利を上乗せするというもの。

 最大で、楽天銀行の普通預金金利が年0.64%(税引き前、以下同)になる大盤振る舞いの取り組みになります。通常の金利が年0.3%であることを踏まえると、倍以上の金利がつく形になります。

楽天モバイルと楽天銀行は、2月に最強預金を開始した。最大の金利が適用されるのは4月からとなる

 ここまで金利が高くなるのであれば、楽天モバイルの通信料ぶんぐらい稼げるのでは……と思う方もいるかもしれません。逆に、楽天モバイルユーザーが楽天銀行を使ってみる動機にもなりそうです。では、最強預金が適用された場合、ユーザーはどの程度おトクになるのでしょうか。その仕組みを見ていきます。

楽天モバイルユーザーは普通預金の金利が上乗せに、プラン変更すべき?

 2月から、最強預金が始まりました。最大の金利は0.64%。1000万円預けていれば、1年で税引き後に4万3410円の金利がつく計算になります。

 しかも、定期預金ではなく、普通預金のため、必要になったらお金をすぐに引き出すことも可能。普通預金でここまで金利が高い銀行はなかなかないので、楽天モバイルと合わせて使ってみようと思う人は出てくるかもしれません。

 ただし、楽天モバイルぶんで上乗せされるのは最大で0.1%。最大まで金利を上げるには、給与・賞与・年金の受け取りだったり、外貨定期預金の積立購入だったり、3件以上に口座振替の引落だったりと、各種条件をすべてクリアしなければなりません。

 また、Rakuten最強プランとRakuten最強U-NEXTでは、適用されるボーナス金利が異なってきます。

金利の内訳。楽天モバイル契約ぶんは、0.02%か0.1%になり、料金プランによって異なる

 前者は、年0.02%の上乗せなのに対し、後者は年0.1%の上乗せ。最大まで金利を上げるには、Rakuten最強U-NEXTの契約が必須になるということです。

 0.08%(税引き後で0.064%)もの差があると、無理にでもプラン変更した方がいいのでは……と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。最大額の1000万円を預けても、税引き後の差分は年間で約6400円にしかならないからです。

上限いっぱいの1000万円預けた際に受け取れる利息。ただ、差額は6370円にとどまる。U-NEXTに興味がない人は、無理に料金プランを変更する必要はなさそうだ

 Rakuten最強プランの最大額は3278円。対するRakuten最強U-NEXTは、フラットな料金体系でデータ使用量を問わずに4378円になります。その差額は1100円。6カ月使うと、利息としてつく6400円を料金プランの差額が上回ってしまいます。

 もちろん、Rakuten最強プランのユーザーが、半年間、無料でU-NEXTを楽しめるという見方もできますが、年間を通して支払う料金そのものは上がってしまいます。U-NEXTに興味があり、どうしても安く見たい人にはいいサービスと言えそうな半面、U-NEXTに興味がなければ、無理に料金プラン変更すべきほどではないことも分かります。

利息に過度な期待は禁物、回線獲得よりも預金獲得が狙いか

 しかも上記の試算は、楽天モバイル契約の上乗せぶんを最大まで適用することを想定し、1000万円の普通預金で計算しています。ただ、普通預金にポンっと1000万を入れている人は、そこまで多くはないでしょう。

 同じ銀行でも定期預金にするなど、別の手段にした方が金利は高くなるからです。この資金があるのであれば、投資に回した方がいいのでは……という考え方もあります。

 金融広報中央委員会の調査によると、21年の貯蓄の中央値は2人以上の世帯で450万円。これがすべて普通預金だと仮定した場合、Rakuten最強プランの上乗せぶんで年675円、Rakuten最強U-NEXTの上乗せでも年3555円にしかなりません。この額だと、最強預金目当てに他社から乗り換えてでも楽天モバイルを契約する……とはならないでしょう。

預金額ごとの上乗せ利息。金利は税引き後でRakuten最強プランが0.015%、Rakuten最強U-NEXTが0.079%で計算。1年まとめて計算しているため概算値になる。さすがにこの利息目当てで他社から移るユーザーは少なそうだ

 また、楽天モバイルは若年層に強く、より貯蓄額が低いと仮定し、普通預金に150万円預けていたとすると、毎年上乗せされる金利はもっと少なくなります。150万円でRakuten最強プランだと225円、Rakuten最強U-NEXTでも1185円にしかなりません。

楽天モバイルは20代、30代の若者が多いため、貯蓄額はやや少なめになる傾向がある。そのぶん、利息も少なくなりそうだ

 トータルでの金利は確かに魅力的なものの、これを目当てにしたユーザーを楽天モバイルが獲得できるかというと、その効果にはやや疑問符がつくのも事実です。

 一方で、現在楽天モバイルのユーザーが、新たに楽天銀行に口座を開設して、預金を移すというのは考えられそうなケース。どうせ預けるなら、金利が高い方がいいと考えるのは自然な流れだからです。

 特にRakuten最強U-NEXTの場合、450万円の貯金でも年間で3555円が上乗せされます。元々U-NEXTに興味があり、Rakuten最強U-NEXTを契約し、おトクに楽天モバイルを使っていたユーザーが、これを機に楽天銀行に流れるといったことは考えられそうです。

 エコシステムに取り込むことで、グループ全体のARPU(1ユーザーからの平均収入)を上げていきたい楽天グループの方針には合致しています。

楽天モバイルは、同サービスを起点にエコシステムの拡大に取り組んでいる。最強預金も、その一環ととらえてよさそうだ

 銀行経営の観点では、金利のある時代になり、資金調達の手段として預金量の確保が求められるようになってきました。各社が、預金を促すような施策を行っているのは、そのためです。楽天モバイルと楽天銀行の最強預金も、こうした施策の一環と言えるかもしれません。

au、UQ mobileとauじぶん銀行も連携、ただし現在はキャンペーンに

 近い施策は、KDDIがauじぶん銀行で実施しています。auじぶん銀行の金利は、通常で0.31%。ここに、au PAYの口座連携で0.05%、au PAYカードの引き落としで0.05%、さらにSBI証券や三菱UFJ eスマート証券との連携で0.1%の「まとめて金利優遇」を受けることが可能。すべて合わせた際の普通預金金利は0.51%になります。

 近いと言ったのは、auじぶん銀行の場合、au回線やUQ mobile回線がまとめて金利優遇の条件になっていないため。過去の「auマネ活プラン」や「auマネ活プラン+」には金利優遇が特典としてついていましたが、現行の「auバリューリンク マネ活2」では、金利優遇ではなく、「銀行あずけて特典」で直接キャッシュバックをするようになっています。

auじぶん銀行も、au PAYやau PAYカードの引き落としを条件にしたまとめて金利優遇を実施しているが、回線は条件に含んでいない。分かりやすさを重視したのか、現行のマネ活2では、金利優遇をやめている

 一方でauじぶん銀行は2月28日まで、1年もの円定期預金の金利が年1.25%になるキャンペーンを実施中。通常の特別金利は1.05%ですが、auとUQ mobileのユーザーはさらに追加して0.2%相当の現金がプレゼントされます。

 こちらはあくまで特典として提供されるもので、正式な利息ではないようですが、最強預金と同様、回線契約に応じて金利を上げる施策と言えるでしょう。

定期預金のキャンペーンでは、au、UQ mobile回線のユーザーに上乗せで現金を提供している。実質的に、金利を上乗せしていると言える状態だ

 ただ、こちらも回線を契約することによる上乗せは0.2%。楽天モバイルでRakuten最強U-NEXTを契約した場合の上乗せ金利よりも大盤振る舞いをしているものの、1000万円を預けたとしても、上乗せぶんの利息は税引き後で1万5000円にしかなりません。500万だと、7500円まで下がります。

 これだけのためにauなりUQ mobileなりの回線を契約するかというと、やはり微妙な金額。

 どちらかと言えば、既存のauやUQ mobileのユーザーが、auじぶん銀行で定期預金をするきっかけになるキャンペーンのように見えます。実際、UQ mobile回線を持つ筆者が、サクッと釣られて定期預金を作っていることも、その裏付けです(笑)。

 現状では、KDDIと楽天グループの2社が実施している回線と金利の連動ですが、ソフトバンクにはPayPay銀行が、ドコモには住信SBIネット銀行改めドコモSMTBネット銀行があり、同様の施策を展開する下地は整っています。回線契約したユーザーから預金を集めるために、追随する他社が出てきても不思議ではないでしょう。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya