石野純也の「スマホとお金」
ソフトバンクが各種手数料を値上げ、オンライン有料化で広がる他社との“温度差”
2025年7月24日 00:00
ソフトバンクが、7月18日に各種手数料の値上げを発表しました。新料金は8月20日から適用され、メインブランドのソフトバンクだけでなく、サブブランドのワイモバイルやオンライン専用ブランドのLINEMOにもその影響が及びます。店頭で手続きするための手数料は、おおむね1100円上がります。
よりインパクトが大きいのが、Webでの手数料。元々ソフトバンクでは、ソフトバンクオンラインショップを利用した際には、新規契約や機種変更の手数料が無料になっていましたが、これが有料化され、3850円の手数料がかかります。また、「当面無料」にはなりますが、eSIMの再発行にも手数料が設定されることになります。
とは言え、機種変更の場合、今はSIMカードを入れ替えるだけ。特にオンラインで手続きした場合、その作業もユーザー自身が行います。では、この手数料とは一体何なのでしょうか。他社の手数料と比較しつつ、新しい手数料の仕組みをひも解いていきます。
機種変更にかかる手数料は何のため? 登録作業にかかる手数料
ソフトバンクの手数料が、8月20日に改定されます。ソフトバンクショップや家電量販店などで新規契約や機種変更、SIMの再発行を行うと、これまでは3850円の手数料がかかっていましたが、この日からそれが4950円に値上げされます。値上げ幅は1100円。ソフトバンクは、昨今の物価高騰などを理由に挙げています。
値上げ幅という意味でより影響が大きいのが、Webで手続きした場合の手数料。元々、ソフトバンクオンラインショップで新規契約や機種変更した場合、料金はかかりませんでしたが、ここにも3850円の手数料が設定されます。中でも、ソフトバンクのユーザーにとって影響が大きいのが、機種変更の手数料でしょう。
ただ、機種変更と言っても、今はSIMカードを入れ替えればそのまま端末を利用できるケースがほとんど。ソフトバンクの場合、iPhoneやAndroid、SIMフリーとSIMカードが分かれているため、端末の種別を変えた場合にはSIMの再発行が必要になることはありますが、iPhoneからiPhoneやAndroidからAndroidに機種変更した際には、SIMカードを入れ替えればそのまま使える場合が少なくありません。
また、オープンマーケット版の端末をユーザー自身で調達して、SIMカードを差し替えれば手数料はかかりません。キャリアモデルでも同様で、中古や新古品をソフトバンク以外の販路で調達し、SIMカードを移せば料金はかかりません。あくまで、ソフトバンクを介して機種変更した際にかかる手数料というわけです。
機種変更時の手数料を最初に設定したのはNTTドコモ。これは、スマホ導入後に設けられた料金で、当初は2100円(税込み、当時の消費税率は5%)でした。名称が「登録手数料」だったことからも分かるように、機種変更そのものではなく、変更した機種をドコモ内のシステムに登録するためにドコモショップなどの店頭でかかる手数料という位置づけでした。キャリアショップは基本的に代理店が多いため、その手数料が必要になるという側面もあります。
実際、SIMカードはそのままでも、キャリア側のシステムには使用中の端末が登録されており、この情報に基づいてサポートを受けることが可能。オンラインとは言え、完全に自動で登録作業が終わるわけではなく、システム構築のコストもかかっているため、それをユーザーに転嫁するようになったと捉えることはできます。また、代理店手数料がかからないぶん、オンラインの方が安いというのは一定の合理性もあります。
無料と有料、キャリアによって分かれるオンラインでの手数料
もっとも、最初に機種変更の手数料を設定したドコモに関しては、現在、ドコモオンラインショップを利用する際の手数料は課していません。元々機種変更の手数料は店頭での負荷増加を理由に設定していたため、店頭に出向く必要がないオンラインショップでは無料にするという理屈が維持されています。
実際、店頭とオンラインの作業を比較すると、店頭ではSIMカードの入れ替えや発信テスト、システムへの入力作業などを店員に任せているぶん、明らかに人件費はかかっています。初期設定のサポートなども請け負っているため、ここで一定の手数料がかかるのは理解できます。それをユーザーに委ねるオンラインショップだと手数料がかからないというのは、ユーザーの理解を得やすいと思います。むしろ、ソフトバンクの3850円は割高なようにも見えます。
同様に、ドコモオンラインショップでは新規契約手数料も無料。本来であれば、SIMカードやeSIMプロファイルの発行にコストがかかっているはずで、機種変更よりも本人確認などを含めて事務作業は多くなっていますが、ここも無料のまま据え置かれています。オンライン契約を促進するための、サービス的な側面もあると言えるでしょう。
また、第4のキャリアとして参入した楽天モバイルも、新規契約の際の手数料は無料。機種変更にも手数料はかかりません。元々は3300円の手数料を取っていましたが、参入後の20年11月4日に無料化されたまま、現在に至っています。楽天モバイルの場合、オンラインだけでなく、ショップで契約した場合の料金も無料に据え置かれています。
とは言え、こうした措置を取っていたのはドコモとソフトバンクだけ。KDDIのauオンラインショップやUQ mobileオンラインショップは、新規契約や機種変更の事務手数料として、auショップと同じ3850円の手数料を取っています。店頭でも、オンラインでも手数料は変わらないというわけです。その意味では、8月20日から手数料を取るようになるソフトバンクはKDDIに追随したと見ることもできます。
PayPayポイント還元の仕組みも用意、無料を維持してほしいeSIM再発行
4社を比べると、どちらで契約しても3850円のKDDIと、無料の楽天モバイルは対照的と言えるでしょう。その中間がドコモとソフトバンクで、オンラインでは無料、店頭では3850円かかっていました。8月20日から手数料を改定するソフトバンクは、どちらかと言えばKDDI寄りになると言えるかもしれません。ただし、値上げに伴って店頭とオンラインでは手数料に差を設けているところはこれまでのやり方を踏襲しています。
さらに、PayPayポイントでの還元を組み合わせることでより実質的な負担額を軽くする試みも設けられています。ソフトバンクとワイモバイルの場合は「PayPayカード割」が適用されていることが条件。LINEMOの場合には、同種の割引がないため、PayPayカードでの料金支払いを設定していることが条件になります。
いずれも還元されるポイントは1100ポイント。これを加味した新規契約や機種変更の手数料は店頭で3850円、オンラインで2750円まで下がります。1100円上げておいて、PayPayカードなら1100ポイント還元するのは物価高対策ではなく、単なるクレジットカードの契約促進では……とツッコミたくなってきますが、実質的な料金が下がるメリットは大きいと言えそうです。
また、ワイモバイルからソフトバンクやLINEMOからソフトバンクのようなブランド変更の場合には、店頭だと3850ポイント、オンラインだと2750ポイントが特典として付与されます。こちらは、先に挙げたPayPayカード割に加えて、ソフトバンクの「ペイトク50」もしくは「ペイトク無制限」に加入していることが条件になります。ソフトバンクに移る場合に限り、手数料を実質無料にする措置を取ることで、アップセル(事業者にとって売上増になる料金プランの変更)の障壁を取り除こうとしていることが見て取れます。
なお、eSIMの再発行に関しては、ドコモやKDDIはオンラインなら無料、楽天モバイルも無料に設定されている一方で、ソフトバンクは8月20日から3850円という金額を標準にしたうえで、「当面無料」という措置を取ることになります。4社横並びではありますが、ソフトバンクは「有料化の準備が整い次第、別途Webサイトなどでお知らせします」としており、課金する気マンマンなのが引っかかるポイントです。
eSIMはSIMカードのように別の端末に差すことができず、端末を入れ替える際には再発行の手続きが必須になります。端末上転送できるように見えるiOSの「eSIMクイック転送」やAndroidの「Android eSIM転送」も、直接端末間でeSIMプロファイルをコピーしているのではなく、UI(ユーザーインターフェイス)を簡素化を簡素化し、キャリア側に再発行をかけ、新しい端末でそれをダウンロードしているだけなので、この理屈だと手数料がかかってしまいます。
現にKDDIの場合、契約種別が「5G」から「5G SA」に変更になった場合などに、予期せず手数料が3850円かかることがあり、物議をかもしています。eSIM(クイック)転送は、SIMカードのような機種変更の簡易さをeSIMで実現するのがその目的。ここに手数料をかけてしまうと、利便性を損ないかねません。機種の変更がしづらく、お金もかかってしまうならSIMカードのままでいいとなってしまえば本末転倒。有料化には、慎重になってほしいと感じています。








