石野純也の「スマホとお金」

ソフトバンクが海外ローミング「15日間無料」開始! 先行するドコモ・auとの違いとは

 今年は曜日の並びがよく、お盆休みは一般企業でも最大9連休とも言われています。休みが長期になれば、遠出となる海外旅行需要も高まります。

 このような中、ソフトバンクが新たに海外ローミングの無料施策を打ち出してきました。「海外あんしん定額」が15日間無料になるキャンペーンがそれです。

 タダで使える海外ローミングと言えばドコモのahamoや楽天モバイルがおなじみでしたが、25年6月からは、ドコモが「ドコモMAX」に、KDDIが「auバリューリンクプラン」や「使い放題MAX+」に無料特典を付与。ソフトバンクもキャンペーンながらこれに追随した格好です。

 では、ソフトバンクのそれは他社とどう違うのでしょうか。3社が出そろった今、改めて無料ローミングの特徴を整理しました。

ソフトバンクは、海外あんしん定額の無料キャンペーンを8月1日に開始する。写真はイメージ。背景に合成した風景はスペイン・バルセロナ

改めて知る海外あんしん定額の仕組み、キャンペーンでは1万4700円相当が無料に

 ソフトバンクの海外ローミングは、24時間あたりの料金が決まっている「海外あんしん定額」と青天井でデータ通信を使える「海外パケットし放題」の2本立て。

 後者はフィーチャーフォン時代の名残で、1日あたり2980円と高額な料金がかかってしまうため、事実上の主力と言えるのが前者の海外あんしん定額です。

 料金は日本人の渡航が多い「定額国L」で、24時間あたり3GBで980円。データ容量が尽きると、通信速度が128Kbpsに制限されます。

 海外あんしん定額で付与されるデータ容量は国内ぶんとは別計算になっており、例えば3GBの小容量プランを契約している場合でも、海外では24時間で3GB利用することができます。普段より通信を使ってしまっても、国内ぶんの容量を消費しない点は安心感があります。

定額国Lでの料金体系。24時間、3GBで980円。まとめ買いもできる

 24時間980円だけでなく、3日に相当する72時間や4日相当する96時間ぶんをまとめて購入することも可能。この場合、データ容量はそれぞれ9GB、12GBになり、金額は3倍、4倍になります。ボリュームディスカウントがないのであれば、まとめ買いする必要はないのでは……と思われるかもしれませんが、そのぶん、使い方に柔軟性が生まれます。

 例えば、96時間、12GBを選択して最初の1日で9GB使い、残り3日を3GBで過ごすといったことができます。このような使い方は、24時間、3GBを選択した際にはできません。日数をまとめて購入することで、日ごとに変わるデータ使用量の変動を吸収しやすくなるメリットがあると言うことができそうです。

毎日の使用量のイメージ。1日につき3GBという枠に縛られなくなるのがまとめ買いのメリットだ

 8月1日から実施される「海外ギガ無料キャンペーン」でも、この建てつけはそのままですが、特定の料金プランを契約している場合、クーポンで“15日ぶん”が無料になります。

 毎月1万4700円が無料になるため、海外渡航が頻繁な人にとっては、料金プランの元が取れてしまうおいしいキャンペーンと言っても過言ではありません。終了日は未定。できることなら、永続的に続けてほしいキャンペーンです。

15日無料の対象プランは3プランのみ

 ただし、対象となる料金プランは限定されています。具体的には、「ペイトク」、「メリハリ無制限+」、「メリハリ無制限」の3つがそれにあたります。

 3つと言いつつも、ペイトクの中には「ペイトク無制限」だけでなく、データ容量が50GBの「ペイトク50」や、同30GBの「ペイトク30」も含まれているため、必ずしもデータ容量が無制限の料金プランだけというわけではありません。中容量のペイトク30も対象なのは、うれしいポイントと言えるでしょう。

提供条件書からの抜粋。対象プランは、ペイトクの3つとメリハリ無制限/同+

 定額国Lだけ……と聞くと不安を感じる向きもありそうですが、ここには欧州や南北アメリカの大部分、アジア、オセアニア、中東、アフリカが含まれており、日本人の渡航先の大部分はカバーしています。

 対象外になる「定額国S」は、バハマ、ベネズエラ、ベリーズ、クック諸島、ミクロネシア、イラン、レバノン、ガンビア、ジンバブエ、モーリタニアなどでむしろ少数派です。

定額国Lの対象地域は広い

 また、上記には米国が含まれていませんが、これはより条件のいい「アメリカ放題」が適用されるためです。アメリカ放題の場合、サイトでの手続きは必要なく、到着直後にローミングをオンにすれば、そのまま無料で通信が利用できます。

 データ通信だけでなく、電話やSMSも無料。しかも、料金プランも問いません。こと米国に関しては、キャンペーンを行う必要がまったくないと言えるでしょう。

アメリカでは、データ容量が無制限になるアメリカ放題を利用できる

 ちなみに、“15日ぶん”と引用符付きで表記したのは、あくまでソフトバンクがそのように打ち出しているからで、実際には16日ぶん使えるケースもあるからです。

 同社によると、15日というのは24時間、3GBを15回適用した場合の表記とのこと。72時間、9GBを5回利用しても15日ぶんになります。一方で、96時間、12GBのクーポンコードは毎月4回ぶん付与されます。

 これをすべて使うと、16日ぶんになる計算。そんなに滞在しないよと思われるかもしれませんが、先に挙げたように、データ容量は既定の日数に達する前に使うことができるため、無料キャンペーンであえて24時間や72時間を選択した方がいいのは、超短期滞在でかつデータ容量もそこまではいらないというケースに限られてくると言えるでしょう。1週間程度の滞在であれば、基本は96時間一択でよさそうです。

24時間を15回使うより、96時間を4回使った方が日数が長くなるのはもちろん、総容量も増える

他社対抗が背景か、キャリアごとに異なる課金の仕組みや容量

 ソフトバンクがキャンペーンに踏み切った背景には、ドコモやauが続々と無料の海外ローミングを新料金プランに組み込んでいることがあります。

 ドコモはドコモMAXに、KDDIはauバリューリンクプランや使い放題MAX+の値上げの対価として海外ローミングをそれぞれ15日間無料にしています。

 大手3キャリアの中で、新料金プランを導入していないソフトバンクだけは、こうした特典がなかったというわけです。

ドコモはドコモMAXの特典の1つに、無料の海外ローミングをつけた
KDDIもauバリューリンクプランなどで海外ローミング無料を打ち出している

 期間限定ながらあくまでキャンペーンとしてクーポンで無料化したのは、もっとも簡易的に導入するためとみられます。料金プランに組み込んでしまうと、規約やシステム改修に時間がかかりますが、この方法なら比較的スムーズに開始できるからです。近いうちに、他社に対抗した料金プランを導入する布石と捉えることもできそうです。

 ちなみに、同じ15日間無料でも、キャリアによってその仕様は少々異なります。それによって、使い勝手も若干ですが変わってきます。まずドコモのドコモMAXは、秋ごろまで現行の海外ローミングサービスの「世界そのままギガ」を無料にする方式。

 ソフトバンクと同様、海外到着後に専用サイトにアクセスして、利用日数を選択する必要があります。制限は、最大15日間で30GBです。

ドコモは世界そのままギガの利用手続きが必要。データ容量は全体で30GBまでとなる

 ソフトバンクとの違いは容量にあります。ドコモの場合、15日間という日数だけが決まっており、30GBはその中で自由に使うことが可能。初日から14日目まで1GB使いつつ、最終日に16GBを一気に消費するといった使い方もできます。

 ソフトバンクの場合、96時間、12GBでも4日ごとに天井が決まっているため、このような利用の仕方ができません。その意味では、ドコモの方がより柔軟性が高いと言えそうです。

 auの無料特典はこれまた仕組みが異なっており、15日ぶんというのはあくまで概算。厳密には、毎月1万8000円ぶんの「au海外放題」の料金を割り引く仕組みになっています。15日になるのは、事前予約なしで利用した24時間ぶんの料金である1200円がかかった場合。

 au海外放題は、米国や韓国、台湾といった特定の国や地域に渡航する際に事前予約すると料金が24時間800円まで下がります。この場合、無料で利用できるのは22日間になり、3社の中で最長になります。

auは総額で1万8000円までを割り引く方式。事前予約で料金を抑えれば、そのぶんだけ長い期間利用できる。容量は無制限だ

 また、それ以外の国や地域で事前予約すると料金は24時間、1000円になります。この場合だと、1万8000円ぶんは18日間になります。事前予約の有無や渡航先によって、15日か18日、22日ぶんの海外ローミングが無料になるというわけです。

 さらに、au海外放題はその名の通りデータ容量に制限がなく、使い放題になります。3社の中でもっとも日数が長く、かつ制限がない海外ローミングになっています。

 もっとも、ドコモのahamoを除けば、3社とも無料の海外ローミングは比較的料金の高いプランに限定されています。

 海外ローミングは、使用量に応じて国内キャリアから相手先のキャリアへの支払いが発生しているため、ビジネスモデルを考えると全料金プランへの開放はできないのが実情です。

 安価な料金プランを契約している人は、海外eSIMや現地SIMなど、別の選択肢も検討しておくようにしましょう。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya