石野純也の「スマホとお金」

「Pixel 9」シリーズついに発表! ”無印/Pro/Pro XL/Fold”全4モデルの違いと選び方を徹底解説

 グーグルは、8月14日に米国で市品製品発表会の「Made by Google」を開催。Pixelシリーズの最新モデルを、一挙に4製品発表しました。

 これまでのPixelは、標準モデルの上に、メモリやカメラを強化した上位モデルの「Pro」を用意していましたが、そのラインアップやそれぞれの位置づけが変化しています。また、ナンバリングモデルとは独立していた「Fold」も、「Pixel 9 Pro Fold」としてPixel 9シリーズの中に入る形になりました。

一挙に4機種がそろったPixel 9シリーズ

 ここからは、グーグルがスマホでのAIを強化するため、よりスペックの高い上位モデルの選択肢を増やしていることが分かります。では、実際、Pixel 9シリーズはどのように選べばいいのでしょうか。日本での価格を交えつつ、Pixelシリーズの位置づけの変化や、それぞれの特徴を紹介していきます。

新たにコンパクトなProを追加、Foldもナンバリングモデルに

 Pixel 9シリーズは、チップセットに「Tensor G4」を採用。処理能力をシリーズでそろえている点は、これまでと変わっていません。2023年に登場したPixel Foldはやや例外的に、その前年に登場した「Pixel 7」シリーズと同じ「Tensor G2」を搭載していましたが、「Pixel 9 Pro Fold」では、Pixel 9と横並びになりました。

  新しく増えたのが、上位モデルのコンパクト版とも言える「Pixel 9 Pro」 です。端末名を見ると、一瞬「Pixel 7 Pro」や「Pixel 8 Pro」の後継機のように思えてきますが、実はこのモデル、標準モデルの「Pixel 9」と同じサイズで設計されています。どちらも、高さ152.8mm、幅72.0mm、厚さ8.5mmで、ディスプレイサイズも6.3インチです。

Pixel 9 Proは、Proモデルながら標準モデルと同じサイズ感。本体は握りやすく、操作がしやすい
左がPixel 9、右がPixel 9 Pro。サイズや形状の差がないため、正面からだと区別しづらい

 逆にサイズの面でこれまでのProを受け継いでいる事実上の後継機は、「Pixel 9 Pro XL」になります。

 カメラなどの機能的には「Pixel 9 Pro」と変わらず、画面サイズは6.8インチに。Pixel 8 Proと比べると0.1インチ大型化していますが、ボディのサイズ感は維持しており、高さ162.8mm、幅76.6mm、厚さ8.5mmになっています。標準モデルとProモデルの間に、 小型のProモデルが新規に加わった と整理すれば、理解しやすいかもしれません。

右がPixel 9 Pro XL。従来のProモデルに近いサイズ感だ。ちなみに、8月22日に発売されるのは、左のPixel 9とPixel 9 Pro XLのみ。先代モデルが存在する2機種が、先行発売されるようだ

 グーグルによると、機能はあきらめたくないが、もう少しサイズは小さい方がいいという声が多く、小型のProモデルとして「Pixel 9 Pro」を追加することを決めたそうです。こうしたフィードバックは、特に日本市場では大きかったようです。

 ご存じのとおり、Pixelシリーズは他国以上に日本で急成長していることもあり、グーグルとしてもその声を重視したかったようです(の割には発表がお盆休みを直撃していますが……)。

 実際、比較的手が大きい方の筆者でも、これまでのProモデルは少々持ちづらいと感じていました。逆にPixel 8シリーズでは、標準モデルが手に馴染むようなサイズ感になっていたこともあり、あえて「Pixel 8」を選んでいます。

 機能的にはProモデルが欲しいのに、どうしても持ちづらい――「Pixel 9 Pro」は、このような人にうってつけの端末と言えそうです。

価格はProが据え置き、標準モデルは値上げに

 もう1つ、ユーザーにとって大切なのは、そのお値段でしょう。

 サイズがコンパクトになったぶん、「Pixel 9 Pro」は「Pixel 9」より高く、「Pixel 9 XL」よりも安くなっています。最小構成でのグーグル直販価格は15万9900円です。昨年の発売時期より円安が進む中、Proモデルとしての価格は据え置きになった形です。

 少々ややこしいのは、本来「Pixel 8 Pro」の後継機にあたる「Pixel 9 Pro XL」が17万7900円からに設定されていることです。名前だけで判断すれば価格は据え置きですが、大画面のProモデルを求めていた人にとっては事実上の値上げになります。ただし、米ドルでも「Pixel 8 Pro」から価格据え置きになったのは「Pixel 9 Pro」のため、 円安の影響というよりもグーグルが価格設定を見直している ことがうかがえます。

発売時のPixel 8シリーズとPixel 9シリーズの価格比較。Proという名称だと価格据え置きに見えるが、Pixel 8 Proの後継機をPixel 9 Pro XLと見なすと、値上げと言うこともできる

 Pixel 9シリーズは、標準モデルの「Pixel 9」も12万8900円からとなっており、発売当初、11万2900円だった「Pixel 8」よりも1万6000円ほど値上がりしています。ただし、こちらも、米国での価格が上がっているため、日本での価格は比較的為替レートの影響を受けないよう、グーグルが配慮していることが分かります。

標準モデルの価格もじりじりと上がっている。Pixel 9ではついに12万円を超え、12万8900円からとなった

 とは言え、「Pixel 8」に関してはキャリアが投げ売りに投げ売りを重ね、しまいにはソフトバンクが128GB版を5万9472円まで値下げしてきたため、価格に対する感覚がマヒしているのも事実。筆者も当初、「12万8900円」と聞いて、「めちゃくちゃ高くなったな」と思ってしまいましたが、よくよく振り返ってみると、そこまでの大幅な値上げではありませんでした。

機種発売時の価格機種発売時の価格
Pixel 811万2900円Pixel 912万8900円
Pixel 9 Pro15万9900円
Pixel 8 Pro15万9900円Pixel 9 Pro XL17万7900円

 過去の経緯もあって、標準モデルが12万円台はやはりお高めに思えてしまうのも事実。Pixelシリーズは人気の高いモデルなだけに、それを取り扱うキャリア各社も契約獲得の“武器”にしています。「Pixel 8」も競争が進んで各社がどんどん実質価格を下げていたため、「Pixel 9」も購入を少し待てば、お得になる可能性もありそうです。

Pixel 8はキャリアの販売合戦が過熱した結果、日を追うごとに価格が下がっていた。ソフトバンクでは6万円以下に

 ちなみに、同サイズながらも、「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」では、デザイン上の差別化も図られています。「Pixel 9」の方がより発色がよく、ポップな色合いなのに対し、「Pixel 9 Pro」は落ち着いたカラーリングでまとめられています。

日本で発売される全モデル、全カラー。Pixel 9は、他のモデルより発色がよく、ポップな仕上がりになっている。価格がもっとも安いだけに、カジュアルさを売りにしているようだ

 また、フレーム部分も「Pixel 9 Pro」は光沢仕上げで、高級感を演出しています。どことなくiPhoneのような違いの出し方ですが、標準モデルはカジュアルに、Proモデルはゴージャスにといった住み分けがされているようです。Proとのサイズ感の差がなくなったため、価格やこのような仕上げが気に入るかどうかで選ぶ端末になったと言えそうです。

形状はPixel 9と同じだが、Pixel 9 Proの方がフレームの光沢感も強い。価格に見合った高級感を出そうとしていることがうかがえる

ディスプレイが大きく変わった「Pixel 9 Pro Fold」、一方でお値段はほぼ据え置きに

 もう1つのPixel 9シリーズが、初めてナンバリングモデルになった「Pixel 9 Pro Fold」です。こちらは、その名の通りフォルダブルモデル。開くと画面が大きくなる横開き型の端末で、競合になりそうなのはサムスン電子の「Galaxy Z Fold6」などの端末です。

Pixel 9 Pro Foldは、Pixel Foldの後継機。横折りのフォルダブルスマホだ。今回から、ナンバリングモデルになり、Pixel 9シリーズの一員であることが強調されている

 先代のPixel Foldは開くとディスプレイのアスペクト比が横長になる、やや変則的な形状でしたが、「Pixel 9 Pro Fold」では開いたときにもやや縦長のアスペクト比を維持しています。こうした違いもあるため、「Pixel 9 Pro Fold」では、本体を開いたときもアプリを縦表示することができます。身も蓋もない言い方をすれば、Galaxy Z Foldに寄せてきた格好です。

内側ディスプレイは正方形に近いが、若干縦に長い。アプリも縦表示で開く

 「Pixel 9 Pro Fold」には、撮影しているときに外側ディスプレイにアニメーションを表示させ、被写体の注意を引く機能が搭載されるなど、よりフォルダブルの形状を生かした機能が搭載されています。

 ただし、価格的にはProモデル2機種よりも高い一方で、カメラ機能はやや抑えられています。

 メインカメラのセンサーサイズが1/2インチでやや小さいことに加え、超広角と望遠もピクセルビニングが可能なQuad PDには非対応。そのため、画素数も前者が10.5メガピクセル、後者が10.8メガピクセルになります。

撮影時に外側のディスプレイにアニメーションを表示させ、被写体の注意を引く機能に対応する

 そのお値段は25万7500円から。Pixel Foldが発売時に25万3000円だったことを踏まえると、ほぼ据え置きと言ってもよさそうです。ちなみに、初代Pixel Foldの価格は米国だと税抜きで1799ドル。1ドルあたり約127.8円の“グーグルレート”で設定されていました。Pixel Foldもほぼほぼそれに近い設定。それなりに円高には戻ってきましたが、当時よりも円安傾向がある中、相当気合いを入れて価格を抑えていることがうかがえます。

 ちなみに、日本では競合となるサムスン電子のGalaxy Z Fold6も比較的安価(と言っても20万円は超えますが)で、オープンマーケット版は24万9800円。結果としては、「Pixel 9 Pro Fold」もそれに近い価格になりました。8月9日あたりの為替レートをそのまま適用してしまうと、価格は29万円を超えてしまいますが、さすがにそれでは競合に勝てないと判断したのかもしれません。

サムスンのGalaxy Z Fold6は24万9800円から。グーグルも、「Pixel 9 Pro Fold」の価格をここにぶつけてきた

 グーグルとサムスン電子は急接近しており、最近では「かこって検索」をGalaxyシリーズとPixelシリーズから搭載し始めるなど、深く協力しています。サムスン電子がGalaxy AIのAIモデルに、グーグルのGemini NanoやGemini Proを採用したのも、その一例です。一方で、端末に関してはお互いを意識しながら、ガチンコ勝負しているようです。「Pixel 9 Pro Fold」も日本で最薄のフォルダブルをうたっており、サムスン電子を強く意識していることがうかがえました。

グーグルは、「Pixel 9 Pro Fold」を国内最薄とアピール。Galaxy Z Fold6を強く意識していることがうかがえた
石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya