石川温の「スマホ業界 Watch」
Pixel 9でも全面に出された生成AI、KDDI 髙橋社長はどう見たか?
2024年8月16日 12:42
2024年8月13日(米国時間)、米カリフォルニア州マウンテンビューのグーグル本社で開催された「Made by Google」イベント。世界からメディアやインフルエンサー、さらにキャリアの幹部が参加していた。
そんななか、8月2日に行われた決算会見で「グーグルの発表会に寄ってくる」と宣言していたKDDIの髙橋誠社長の姿を確認することができた。
髙橋社長が見たPixel 9とGemini
イベント終了後、髙橋社長のところに駆け寄ったところ「今回はすごくユーザーに寄り添った商品の発表会だったという感じがした。Pixelを開発するチームだけじゃなくて、サムスン電子などほかのメーカーに横展開するチームが一緒になったのが凄く感じられた。Geminiをどうやってユーザーに提供していきたいのかというのがわかりやすく伝わった」と感想を述べてくれた。
そもそも、KDDIにとってPixelシリーズはどんな位置づけの商品なのだろうか。
髙橋社長は「iPhone同様、Pixelに関しても販売量は好調。凄く大事にしている。昔からグーグルとは関係性が強いが、今回のPixelは特に商品力が向上している。そういう意味では今も昔も大事なパートナーといえる」という。
髙橋社長は、ここ数日、シリコンバレー界隈のさまざまな企業を回ってきたようなのだが、特にPixel 9のチップでAIを処理する「オンデバイスAI」について関心があり、グーグルのイベントに参加したようだ。実際、髙橋社長はオンデバイスAIのどんなところに可能性を感じているのか。
「クラウド、エッジ、オンデバイス、このあたりにAIがどうやって入ってくるか。今回、グーグルのプレゼンではレイヤー構造を使って説明していてわかりやすかった。では、KDDIはどこでグーグルと組めるのか。そんなことを考えているところ。今回発表されたGeminiは、その多くが英語のみの対応で日本語対応ができていない。そういうあたりで我々としてグーグルと話ができる領域はないのかなと、いろんな可能性を感じられた」(髙橋社長)という。
iモード/EZwebと生成AI
ここ最近、生成AIがブームになっているが、ブラウザに質問文を打ち込む必要があったりと、活用できている人はごく一部だったりする。多くの人が「活用したいが、どうしたらいいのか」と悩んでいるのではないか。
髙橋社長も「いまの生成AIは、法人を向いている気がしている。スタートアップと話をしているなかで法人向けのAI活用は議論が進んでいる。しかし、一方でコンシューマー向けを考えたとき、AIをどうやって表現するとわかりやすいのかという点に頭を悩ませている。そんななか、今回、グーグルはGeminiを上手いこと提案してきたのはとても面白いと感じた」という。
業界的にはアップルも「Apple Intelligence」を開発するなど、“オンデバイスAIスマホ”が盛り上がりを見せているが、結局、グーグル、アップル、サムスン電子と海外企業ばかりが先行している。
そんななか、日本の企業も、オンデバイスAI市場で活躍することはできないものなのか。
髙橋社長は「かつて、iモードやEZwebといったプラットフォームができた際には、コンテンツプロバイダーが登場して、新しい市場ができた。生成AIの世界でも、そういう新たな潮流が感じられる。ケータイ(フィーチャーフォン)のころ、我々がグーグルのサーチエンジンを搭載したような工夫が今の時代でもできるのではないか」とヒントを語る。
実際、日本のスタートアップがグーグルやアップルと互角に戦うのは無理がある。しかし、グーグルやアップルとスタートアップの間にKDDIのキャリアが仲介役として入り、日本のスタートアップが、グーグルやアップルのプラットフォームで世界に向けて成功できる環境を整備するというのは不可能では無いのかも知れない。
いま、スマホに「AI」が組み込まれることで、新しいユーザーインターフェース、新しいコンテンツ市場が立ち上がろうとする中、スタートアップやキャリアに大きなチャンスが到来しつつあるのかも知れない。
実際、今後、幅広いユーザーに生成AIを活用してもらうとなると“スマホ”が生成AIとユーザーをつなぐ接点になるのは間違いないだろう。
先日、ソフトバンクの宮川潤一社長が、個人的な願いとして「AIスマホを作りたい」と語ったことが話題となった。
オンデバイスAIに興味のある髙橋社長のKDDIもAIスマホを作る気はないのだろうか。
髙橋社長は「うちのブランドだけとなるとマーケットが小さいから大変かも知れない。ただ、ソフトウェアの世界ではなにか可能性があるとは思う」とだけ語った。
さらに突っ込んで「オンデバイスAIを載せた『AI・INFOBAR』を作るのはどうでしょう」と提案してみたのだが、「それ、買ってくれますかねぇ」(髙橋社長)と上手いことはぐらかされてしまったのだった。