石野純也の「スマホとお金」
ドコモの新サービス「d払いタッチ」、「d払い」やほかのサービスの違いやメリットは?
2024年2月8日 00:00
ドコモは1月29日に、FeliCaを使った非接触決済サービスの「d払いタッチ」を導入しました。これに伴い、現在提供中の「d払い(iD)」は、4月以降順次終了していく予定です。
「d払い(iD)」の新規発行や再発行は23年10月に終了していますが、更新に関しても4月以降順次終了していくことで徐々にサービスをクローズしていきます。iDの決済は、d払いタッチに集約する方針と言えるでしょう。
ここでは、通常のd払いとの違いや利便性はどこにあるのかといったことや、同様のサービスを提供している他社との違いを見ていきます。
d払い(iD)を大リニューアル、残高共有も可能なd払いタッチ
d払いタッチは、その名のとおり、タッチで決済するためのサービス。現時点での対応プラットフォームはAndroidのみで、iOS(iPhone)には未提供です。
“タッチ”という名称が「Visaのタッチ決済」などのNFCによる非接触決済と同じで、少々紛らわしいところには引っかかるものの、d払いタッチはその無線方式にはFeliCaを採用しています。
また、決済ブランドとしてはドコモのiDを利用します。そのため、支払い時にも「d払いタッチで」や「d払いで」と言うのではなく、iDを指定する必要があります。
簡単に言えば、その仕組みはd払いのバーコード/QRコードの代わりに、iDを使って決済するというもの。決済端末とやり取りするインターフェイスが、コードからFeliCaのiDになったと考えれば理解しやすいかもしれません。
サービスとしてはあくまでd払いのため、d払い残高から支払うことが可能。dポイントによる支払いにも対応しています。
また、d払いは残高だけでなく、dカードを含めてクレカや、携帯電話料金に合算した支払いもできます。支払いソースをユーザー側が選択できるというわけです。
d払いタッチにもこの仕組みは受け継がれており、残高だけでなく、携帯電話料金との合算やクレカに切り替えることができます。ただし、クレカに関しては、dカードのみが対象。他社クレカを指定できない点は、コード決済のd払いとの差分と言えるかもしれません。
冒頭で述べたように、d払いの非接触決済には「d払い(iD)」というものがありました。iDを使ったd払いという名称のサービスということで、非常によく似た印象ですが、こちらはあくまで携帯電話料金との合算払いしか選択できませんでした。
d払い残高やdカードでの支払いには対応していません。それもそのはず、こちらは名称こそd払いですが、その前身は「dカード mini」と呼ばれるサービスだったからです。
ドコモが、このdカード miniをd払いに統合すると発表したのが19年のこと。一方で、この時点では、あくまでdカード miniのブランドを変えただけのサービスでした。
d払いアプリからリンクは張られるようになったものの、残高などは共有できず、「どこがd払いなの?」と疑問に持たれた方も少なくなかったと思います。
携帯電話料金と合算する“枠”もd払いのそれとは別。これを本当の意味でd払いに統合したのが、d払いタッチです。名称や決済方法は似ていますが、サービス内容は別物と言えるでしょう。
iDで払えると何がいい? 速さや限度額、他社ユーザーにはメリット
d払いと支払いソースが同じなら、どこにメリットがあるのかという疑問もわきそうですが、その答えは決済可能な店舗の違いにあります。コード決済のd払いを導入する店舗も非常に多くなっており、利用可能なシーンは増えているものの、iDなどの非接触決済にしか対応していない自販機を見かけることはあります。
また、非接触決済以外のコード決済はPayPayだけといった店舗も、見かけることがあります。
こうした時に、d払いタッチであれば、d払い残高からの支払いが可能。普段d払いを利用しているユーザーが、その決済シーンを増やせるという意味では、便利なサービスと言えるでしょう。
また、iDであれば、コード決済のように、スマホの画面を開く必要もなく、本体をかざすだけ。d払いタッチが対応しているAndroidは、Apple Payと違って顔認証や指紋認証なども不要なため、決済時の操作を大幅に短縮できます。
レジ前でもたもた操作をしたくないという人には、いいサービスと言えそうです。
実は筆者も、d払い(iD)はそのサービス開始当初である09年から愛用していました。特に、タクシーに乗るときに活用していました。ただ、こちらは限度額が1万円(最大でも3万円)。
3000円程度の距離を数回乗っただけで、すぐに制限を超えてしまいます。限度額オーバーで決済ができず、恥ずかしい思いをしたことも。これだと、素早く決済ができるiDのメリットも帳消しになってしまいます。
これに対し、d払いタッチの携帯電話料金合算払いは、20歳以上なら最大10万円。筆者も10万円に設定されていたため、限度額が10倍に上がった格好です。d払い(iD)からd払いタッチになることで、使い勝手が増したと言えるでしょう。
また、d払い(iD)は、ドコモ回線を契約しているユーザーに限定されたサービスでした。これに対し、d払いタッチは、他社回線でd払いを使うユーザーにも開放されています。
ドコモ回線ではないため、この場合、携帯電話料金合算払いを選択することはできませんが、d払い残高やdポイントでのiD決済が可能になる点はメリットと言えるでしょう。
基本的には、d払い(iD)からアップデートされた点が多く、メリットが多いとサービスだと評価できます。
ちなみに、d払い(iD)はiDアプリで管理していましたが、d払いタッチは「Googleウォレット」に登録されます。ドコモのサービスなのに、ドコモのiDアプリを使わないのはやや不思議な感もありますが、操作性などはGoogleウォレットの方が一歩上を行っているうえに、最近はiDアプリを使うiDのサービスも減少しています。
Googleウォレットであれば、SuicaやQUICPay、NFCのタッチ決済もまとめて管理できるため、利便性は向上しています。この点も、d払いタッチのメリットと言っていいと思います。
複数インターフェイスは何とかPayのトレンドか、他社サービスと比較
決済サービスとして残高を持ちつつ、そのインターフェイスである支払い方法に多様性を持たせているのは、d払いだけではありません。むしろ、決済サービスのトレンドとも言える流れ。
他キャリアの決済サービスも、同様にコード決済とFeliCa決済で残高を共有できるものがあります。その意味で、d払いはむしろ対応がやや遅かったとも言えます。
au PAYは、そんなサービスの1つです。au PAY残高は、元々au PAYプリペイドカードで支払うためのものでしたが、17年に、そのプリペイドカードがApple PayのQUICPayに対応しました。
コード決済の機能を実装したのは19年。クレカのインターフェイスを使ったサービスがQUICPayに対応し、その後にコード決済を追加した順番です。ただし、こちらはAndroidのQUICPayには非対応。Apple Pay非対応のd払いとは、ある意味対照的です。
LINEのLINE Payも、コード決済だけでなく、Visa LINE Payプリペイドカードによる支払いが可能です。Visa LINE Payプリペイドカードは、Apple PayおよびGoogle Payに両対応。
しかもVisaのタッチ決済に加えて、iDも利用できます。支払い方法を複数から選べるという点では、d払いタッチやau PAYのQUICPay以上に、完成されていると言えるかもしれません。マルチプラットフォーム対応で端末を選ばない点も、評価できます。
楽天ペイも、コード決済に加えて、NFCによるタッチ決済に対応しています。ただし、タッチ決済は楽天カードのみで、しかもiOSには非対応。実質的な楽天ペイの残高と言える楽天キャッシュも利用できず、単純に楽天カード払いになる点にも注意が必要です。
また、対応するカードブランドはVisaかMastercardのみ。JCB、American Expressは非対応です。タッチという名称ではありますが、他社のサービスとは違いがあると言えるでしょう。
コード決済サービスとしてはもっともメジャーなPayPayも、FeliCaやNFCによる決済には対応していません。PayPayカードをQUICPayに登録するといったことは可能ですが、残高は基本的にコード決済にしか利用できません。
残高を利用できるバーチャルカードのような機能もないため、特にネット決済では、まだまだハードルが高め。複数方法で決済できるサービスが増えているだけに、今後の対応にも期待したいところです。