石野純也の「スマホとお金」

新料金プラン「auマネ活プラン+」のメリット・デメリットを徹底解説! 他社との違いやおトクになるしくみとは

 金融・決済連携の料金プランとして、他社に先駆け「auマネ活プラン」を導入したKDDIですが、サービス開始から1年が経ち、徐々に期限切れを迎える特典も出てきました。この1年で、NTTドコモやソフトバンクも決済サービスと連動させた料金プランをスタートさせており、競争環境も激化しています。先陣を切ったauマネ活プランですが、他社と比較すると内容的に見劣りする部分があったのも事実です。

 このような状況の中、KDDIはauマネ活プランをリニューアルし、「auマネ活プラン+」を導入します。見劣りしていた決済サービスとの連携を大きく強化しているのが、このプランの最大の特徴。 ドコモやソフトバンクの料金プランを研究し、より還元を受けやすい形にした こともうかがえます。では、auマネ活プラン+以前のauマネ活プランや、他社のポイ活プランとはどのように違うのでしょうか。その特徴を見ていきます。

KDDIは、auマネ活プラン+を12月3日からスタートする

他社料金のいいとこ取りをした新料金、クレカとコード決済に還元を分ける

 12月3日に導入されるauマネ活プラン+は、これまでのauマネ活プランよりも決済サービスとの連携に重きを置いているのが最大の特徴になります。そのイメージを分かりやすく一言で表すのであれば、 auマネ活プランとドコモの「eximoポイ活」、ソフトバンクの「ペイトク無制限」を足して3で割ったような内容 。これまでの金融特典を生かしつつ、使った金額に対する還元率、還元額を高め、他社のプランに寄せています。

 具体的には、au PAYとau PAYゴールドカードを利用した際に、4.5%もしくは4%の還元を受けられるようになります。これらの上限金額は、“合計”で3000円です。

 また、現行のauマネ活プランと同様、au PAYカードの契約やauじぶん銀行の口座保有、auじぶん銀行を支払い口座に設定したau PAYカードによる携帯電話料金の支払いで、毎月1000円ぶんのPontaポイントが付与されます。すべて合わせると、4000円ぶんのポイントになり、他社の決済連携料金プランと還元額が近くなります。

買い物の決済に対して合計3000ポイント、料金支払い等に対して1000ポイント貯まる仕組み。

 ドコモのeximoポイ活やソフトバンクのペイトク無制限は、いずれも5%還元(eximoポイ活はdカードGOLDの場合)。eximoポイ活は5000ポイント、ペイトク無制限は4000ポイントを上限にしています。これに対し、auマネ活プラン+は上乗せされる還元率がau PAYだと4.5%、au PAYゴールドカードだと4%になり、他社と比べるとやや低めです。

 決済そのものに対する還元額の上限も3000ポイントと、違いがあります。一方、クレカや銀行口座の保有、支払いで1000円ぶんのポイントがもらえるため、極端な話、1円も支払わずとも還元を受けることは可能。5%還元の上限も3000ポイントになっているため、上限達成に必要な金額も約7万円と、8万円なり10万円なりの他社より低めになっています。

上限が低いぶん、他社より達成するためのハードルは下がる。いずれも還元率は5%だが、auマネ活プラン+とeximoポイ活はゴールドカードの場合

 銀行口座の開設やクレカの契約というのが1つのハードルにはなりそうですが、料金がかかるものではないため、手間がかかるぶん、毎月利用する金額は少なくて済むと言えるでしょう。さらに、先行するドコモやソフトバンクの決済連携料金プランとは異なり、計3000ポイントの還元は、au PAYとau PAYカードの2つに分かれています。それぞれ1500ポイントずつ還元を受けると、3000ポイントになるということです。

 この還元を受け切るために必要な金額は、au PAYが3万3334円、au PAYゴールドカードは3万7500円になります。ドコモのeximoポイ活の場合、ポイント還元を受けるにはdカードが必要。dカードで支払うd払いは対象になるものの、d払い残高からの支払いだと追加のポイント還元はありません。

左下が決済に対して貯まるポイント。コード決済とクレカ、それぞれに1500ポイントずつ還元される

 ペイトク無制限は、還元をPayPayに一本化しており、PayPayカードで支払った金額に対してはポイントの加算がありません。auマネ活プラン+は、還元額を1500ポイントずつに分けることで、この2つのいいとこ取りをしたというわけです。auポイ活プランとeximoポイ活、ペイトク無制限を足して3で割ったプランと表現した理由は、ここにあります。

還元対象を分けて幅広い利用シーンをカバー、KDDIの立ち位置も反映か

  還元に必要な決済方法がコード決済とクレカに分かれている点は、非常に合理的 だと感じました。生活の9割9分をキャッシュレス化している筆者のような“キャッシュレス過激派”でも、支払い方法は店舗や商品の額などによって異なるからです。コード決済は必ずしもすべての店舗で使えるわけではなく、公共料金の支払い手段としてもまだまだ一般的ではありません。

 一方で、少額の決済に都度クレカを使っていると、料金をいくら支払ったかが分かりづらい側面もあります。銀行口座から残高でチャージできた方が、残りの金額が把握しやすく、管理が容易になるメリットもあります。また、還元キャンペーンが多いこともコード決済の特徴です。毎日のランチやコンビニでの買い物にはコード決済を使いつつ、大きな買い物をするときにはクレカの出番という人は少なくないでしょう。

費目によって支払い手段が違うのは一般的。コード決済とクレカを両面でカバーできているのは、auマネ活プラン+の魅力と言える

 auマネ活プラン+を導入するKDDIも、少額決済はau PAY、より大きな金額の買い物や家賃、公共料金などの定額払いはau PAYカードというような住み分けを考えているようです。それぞれ3万円台ずつで、1500ポイントで上限に到達できるため、クレカ一辺倒のeximoポイ活や必ずPayPayを介さなければならないペイトク無制限より、ポイントを貯めやすくなっているというわけです。よりユーザーの利用実態に即した還元方法を用意してきた点は、評価できます。

 KDDIの立ち位置にも、この還元方法はフィットしているように見えます。クレカで言えば、ドコモのdカードや楽天グループの楽天カードの方が契約数は多く、KDDIのau PAYカードはそれを追う立場。一方のコード決済では、PayPayが圧倒的に強く、利用店舗数や決済回数などの各種数値は、他社を凌駕しています。au PAYもユーザー数は多いものの、そこまでのポジションを占めるには至っていません。

24年9月時点でのau PAYゴールドカード会員は約138万。1100万を超えているドコモのリードを許している
コード決済の分野では、PayPayがユーザー数、決済額、決済回数などで群を抜く存在。au PAYはこれを追う立場だ

 KDDIは、クレカとコード決済、どちらか1つに還元方法を絞り込みづらい立ち位置にあったと考えることもできます。いわば折衷案のような還元方法ですが、1500ポイントずつを合算して3000ポイントになる方が、ユーザーメリットが大きいのも事実。これらに加えてauマネ活プランで実施してきた金融連携特典もつくため、お得感が高まっています。決済による還元に軸足を移したこともあり、より分かりやすさが増したのもメリットと言えそうです。

現行のマネ活より基本料はアップ、他社との比較では?

 こんなにお得なら、auマネ活プランからauマネ活プラン+に自動変更でもいいのでは……と思われるかもしれませんが、 新料金プランに移行した際のデメリット も存在します。基本料金が上がってしまうのが、その筆頭と言えるでしょう。au PAY、au PAYカードでの還元額が上がった半面、毎月支払う料金も高くなっている点には注意が必要です。

 具体的には、現行のauマネ活プランの場合、基本料が7238円。固定回線をセットで契約した際の割引となる「auスマートバリュー」を適用すると、1100円の割引を受けることができます。auマネ活プランには「家族割プラス」がないため、料金体系自体はシンプルで、7238円か6138円のどちらかを支払うことになります。

 これに対し、 auマネ活プラン+は基本料が8778円 。割引がauスマートバリューのみという点は現行プランと同じで、これを適用した場合の料金は7678円まで下がります。KDDIに支払う金額については、1540円高くなると言えるでしょう。一方で、現行のauマネ活プランだと、au PAYカード、auじぶん銀行とそのセットで800円ぶんのau PAY残高が還元されます。auマネ活プラン+ではこれが1000円のポイントに変わっているため、200円ぶん、還元が増えています。これを加味すると、実質的な差額は1340円になります。

基本料、割引後、特典還元後の料金は、いずれも現行のauマネ活プランの方が安い

 とは言え、au PAY、au PAYゴールドカードへの還元が大幅に増えていることもあり、これらをしっかり使うのであれば、十分元は取れます。現行のauマネ活プランでは、au PAYへの上乗せが0.5%で月150ポイント、au PAYゴールドカードの利用も上乗せは0.5%で月250ポイントまでだったため、auマネ活プラン+はここが大幅に強化されています。au PAYとau PAYゴールドカード、どちらか一方でも還元を受け切れば元は取れるため、現行プランのユーザーが乗り換える価値も高いと言えそうです。

実質料金は1340円上がっているものの、それ以上にau PAY、au PAYカードの還元が大きくなった

 他社との比較だと、 ドコモのeximoポイ活は基本料が1万615円、ソフトバンクのペイトク無制限は9625円で、auマネ活プラン+の方が安く設定されています 。ただし、eximoポイ活やペイトク無制限は、固定回線とのセット割に加え、家族割引やクレカ割引も用意されているため、条件さえ整えば料金を大幅に下げることが可能。具体的には、eximoポイ活が8228円、ペイトク無制限が7128円になり、7678円のauマネ活プランはちょうど2つの中間的な金額に収まります。

 一方で、 ポイント還元を加味した際に実質価格は、ドコモが2728円、ソフトバンクが3128円なのに対し、auマネ活プラン+は3678円 と、やや高めになっています。家族と同じ回線を契約できたり、支払い方法を1つに集約できたりするのであれば、他社の方が実質的な料金は安いと言えるでしょう。

大手3キャリアの比較。auマネ活プラン+は基本料が安い一方で、割引が少ない。還元額まで加味すると、他社の方が安くなるケースも

 とは言え、auマネ活プラン+には金融特典もあるため、ここまで加味すれば逆転も可能と一長一短があります。他社から乗り換えるほど圧倒的にお得かというとそうでもないですが、還元の受けやすさや金融特典の充実ぶりはauマネ活プラン+の利点。金額だけでなく、ポイントの貯めやすさを重視する人には利用がしやすい料金プランに仕上がっています。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya