石野純也の「スマホとお金」

楽天モバイル0円廃止で注目の「povo2.0」、ギガ活駆使でどこまで0円?

ギガ活を駆使すれば、基本料0円でもpovo2.0を使い倒せる

 楽天モバイルの「0円プラン」廃止で、移行先としてにわかに注目を集めたのが、KDDIのオンライン専用ブランドである「povo2.0」です。同サービスは、楽天モバイルの「UN-LIMIT VI」と同様、0円で維持できるからです。

 ただし、料金プランの中身を見ていくと、同じ0円でも楽天モバイルの「UN-LIMIT VI」とは性格が異なります。楽天モバイルは1GB以下までなら制限なくデータ通信が使えるのに対し、povo2.0はあくまで、トッピングとしてデータ容量を購入するのが 大前提 だからです。

 そのため、povo2.0では、0円のままだとデータ通信の速度が128Kbpsと大幅に制限されます。テキストだけで構成されたメールのやり取り程度であれば、トッピングなしでもできてしまいますが、画像が多いサイトを開くのはなかなか大変。普通に使おうと思うと、やはりトッピングは購入したくなります。3GB、30日のトッピングは990円のため、普通に低容量プランとして使うぶんには、楽天モバイルより割安なのはうれしいポイントです。

現状は「もらう」が中心、特定の店舗での買い物が条件

 トッピングの購入はpovo2.0を利用する上での王道的な使い方ですが、工夫次第でもっと料金をリーズナブルにできるのが、このサービスのおもしろいところ。それを可能にしているのが、キャンペーンの「ギガ活」です。ギガ活を駆使すれば、0円で数GBものデータ通信ができ、やり方によっては楽天モバイルよりもはるかに多いデータ容量を0円で利用することもできます。

 ギガ活とは、povo2.0の導入に伴って開始されたキャンペーン。au PAYなどの決済サービスを使って買い物をするとデータ容量が付与される「もらう」や、街中、バーチャル空間でキャラクターなどを探す「さがす」、抽選でデータ容量が当たる「あたる」といった、3つの活動方法を用意しています。

「もらう」「さがす」「あたる」の3つが用意されていたが、現時点では特定店舗での買い物が必要な「もらう」が中心(写真提供:KDDI)

 ただし、現時点までのギガ活は、「もらう」が中心。「さがす」に分類される「FIND povo」は、近日中に開始されるとのことです。元々、FIND povoは21年秋にスタートする予定で、遅れが生じているようです。とは言え、「もらう」の対象店舗は開始時からかなり拡大しており、データ容量を付与される機会はかなり広がっています。

「さがす」は「FIND povo」というキャンペーン名称。元々は21年秋の予定だったが、開始が遅れている。povo2.0のサイトでは、スタートが間もなくと告知されている(写真提供:KDDI)

 「もらう」の方法は主に2種類あります。1つは、au PAYを使って一定額以上を決済する方法。もう1つは、決済方法を問わずに一定額以上の決済をする方法です。前者の場合は、キャンペーンサイトでau IDの登録が必要になりますが、後者は店舗でクーポンコードが記載されたカードをもらうことができます。ギガ活の対象店舗を見ると、現時点では、au PAYの利用を前提にしている店舗の方が多いことが分かります。

au PAYの利用を前提にしている店舗が多いが、決済手段を問わないケースも

 au PAYの利用が条件になっている店舗の場合、登録を済ませたら後は条件通りの金額で決済をするだけ。数日後に、プロモコードが記載されたメールが届きます。このプロモコードをpovo2.0のアプリに入力すると、データ容量が付与され、そのぶんだけ高速通信を利用できるようになります。

au PAYが条件の場合、プロモコードは後日、メールで送付される

 決済が条件になっているため、これを0円と呼んでいいのかは議論が分かれるところかもしれません。一方で、普段から購入していたものの購入先を対象店舗に切り替えるだけでもよく、ユーザーの負担は少ないと言えるでしょう。筆者も実際にギガ活を楽しんでいますが、データ容量をもらえるのであればということで、少し遠くの店舗まで足を延ばしてみることもあります。

生活密着型の店舗が多くハマれば使いやすい、目安は500円で300MB

 ギガ活の対象店舗を見ると、日常生活に密着した業種、業態が多いことが分かります。例えば、コンビニエンスストアの「ローソン」では、500円以上の買い物で3日間有効な300MBのプロモコードがもらえます。ローソンは、「ローソンストア100」や「ナチュラルローソン」も対象。店舗数も多く、お弁当やお惣菜を買えば500円はすぐに突破できそうなだけに、ギガ活の有力な候補と言えるでしょう。

ギガ活対象店舗のなかで、もっとも店舗数が多いと思われるのがローソン。街で見かける機会も多いだけに、ギガ活の拠点にできそうだ

 かく言う筆者自身も、ギガ活は主にローソンを活用しています。喫煙者(正確に言えばIQOSなので蒸気ですが)のため、1箱580円のたばこスティックを購入するだけで、ギガ活の条件は満たします。本稿を執筆している事務所の最寄りのコンビニはファミリーマートなのですが、少し離れたところにあるローソンにわざわざ足を延ばしているほど。

 現時点で大きなビジネスになっているわけではありませんが、こうした送客効果を見込めるのがギガ活の特徴。企業がキャンペーンとして組み込みやすければ、サステナブルな仕組みになりそうです。

たばこスティックは1箱580円。毎日ローソンで1箱購入するだけで1カ月、9000MB(9GB弱)もらえる計算になる

 ほかにも、例えば牛丼屋チェーンでは「すき家」や「松屋」、コーヒーチェーンでは「ドトール」や同系列の「EXCELSIOR CAFFE」などが対象。「日高屋」や「餃子の王将」といった、中華レストランのチェーンも充実しています。うどんの「丸亀製麺」や、弁当屋の「ほっかほっか亭」などがギガ活の対象店舗に名を連ねています。

 いずれも、広い地域で利用できる店舗なだけに、ギガ活に参加しやすいと言えるでしょう。

牛丼チェーンやコーヒーショップなど、気軽に利用できる業種が多い

 ただし、条件の金額には注意が必要です。ローソンの場合、ある程度のものをまとめて購入すれば500円は突破するかもしれませんが、ドトールでコーヒー1杯を飲むだけといったケースではギガ活の対象金額に達しません。ほっかほっか亭も、500円に満たないお弁当があります。このようなときに、サイドメニューを購入して500円を超えるようにするのかどうかは悩ましいところです。

 裏を返すと、企業側にとってはプラスαの売上を見込めるため、キャンペーンとしてよく考え抜かれた仕組みなのかもしれません。

 上記のチェーン店、フランチャイズ店はいずれも、3日間有効な300MBのクーポンがもらえる店舗ですが、条件となる金額がより高額な店舗の場合、もらえるデータ容量も多くなります。居酒屋の「白木屋」や「千年の宴」「山内農場」「笑笑」などは、いずれも2000円以上の購入で7日間有効な1GBのプロモコードがもらえます。300MBのプロモコードは、どれも500円が条件になっており、単価はこちらの方がお得ですが、「1GB」もらえる居酒屋などのプロモコードが7日間有効なのは、うれしいポイントです。

居酒屋など、顧客単価が高めの店舗では、2000円で7日、1GBのプロモコードがもらえる

 居酒屋などの場合、1人で訪れることは少なく、誰かと一緒に行くというケースがほとんどだと思いますが、このようなときには割り勘でも支払いを任せてもらうといいでしょう。povo2.0のユーザーばかりだと、支払いの取り合いになってしまう可能性はありますが(笑)。このように、幅広い店舗が対応しているため、1カ月間トッピングを何も購入しなくても、十分な通信量をまかなうことができてしまいます。

注意したい自動解約、約半年に1回はトッピングの購入を

 変わったところでは、オンライン学習塾の「エアスタ」が、月額会員に対して毎月、3GBのプロモコードを付与しています。こちらは、有効期間が30日間。エアスタを利用する子ども用の回線にpovo2.0を選べば、毎月ほぼ無料で3GBまで通信ができてしまうというわけです。子ども用回線として、低容量のMVNOやオンライン専用プランを選ぶ親御さんは多いと思いますが、povo2.0であればギガ活で済んでしまうのは魅力と言えるでしょう。

 また、引っ越しでおなじみの「アート引越センター」では、2万円以上をau PAYで支払うと、30日間有効な20GBのプロモコードを取得できます。引っ越しをしたばかりで部屋に固定回線が引かれていないときには、どうしてもモバイル回線の通信量が増えてしまいがち。そんなときに、ギガ活の20GBでまかなってほしいという意図が見て取れます。

 このように、利用シーンに即してデータ容量を付与するサービスがあるのも、ギガ活のおもしろいところです。

引っ越ししたら20GBというインパクトがある取り組み。固定回線を引くまでのつなぎとして使えそうだ

 もらえるプロモコードには上限がなく、1日に複数回、おなじ店舗を利用してもOK。例えば筆者の場合、昼間にローソンでたばこスティックを買い、夜にお弁当を購入したところ、プロモコードが2回分送付されてきました。また、どの店舗も条件金額以上であれば、いくら金額を上回っていても、プロモコードがもらえるのは1回だけです。コンビニのような店舗では、あまりまとめ買いせず、小まめに買い物をしておくといいかもしれません。

 非常にお得なギガ活ですが、注意点もあります。povo2.0は、いわゆる幽霊会員が増えるのを防止するため、 180日以内に1回のトッピング購入、または660円を超える支払い を契約の条件にしています。トッピングを何か1つ購入したり、通話料やSMSで660円を超えればいいのですが、ギガ活でデータ容量をまかない、通話やSMSを使わないケースでは、この最低基準をどうやっても満たすことはできません。使い続けるためには、約6カ月に1回は何らかの支払いをすることも必要です。

 通話もそれなりに利用するメイン回線として活用する人は、「5分以内通話かけ放題」のトッピングをつけるといいでしょう。こちらは月額550円で、月額課金として契約が継続するため、自動解約になってしまう心配がありません。通話をほとんどしないというときには、コンテンツトッピングとして用意されている「smash.使い放題パック」がお勧め。220円と料金が安い一方で、「トッピング1回」という条件は満たしているからです。180日に1回、220円を払うついでに、動画を見てみてもいいでしょう。

トッピングで最安なのが「smash.使い放題パック」。1回220円

 次点としてお勧めしたいのが、330円の「データ使い放題(24時間)」トッピング。動画のダウンロードや、ブラウジング、さらにはスピードテストもし放題になり、ギガ活でコツコツとデータ容量を貯めてきたストレスを発散できます。

 このように、基本料のみが0円のpovo2.0ですが、ギガ活を駆使すれば楽天モバイルよりも多くのデータ容量が無料になります。「UN-LIMIT VI」が廃止されたことで、人気が急上昇したのも納得できます。キャンペーンのため、いつまで継続するかは不明ですが、ぜひ長期間続けてほしい取り組みです。

「データ使い放題(24時間)」を買い、思う存分データ通信を楽しんでもいいだろう
石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya