スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

写真の文字入れフォントを自由自在! 遊び心満載のカスタムフォントとは

 前回書いた創作物の件。AI生成の画像をコラージュ・レタッチし、そこにマンガ風のフキダシや枠を加え、さらにセリフや語りなどのテキストを入れ、絵として眺めつつ物語を読んでいける、という画像作成である。

こんなような画像。現在の画像生成AIは、実写風もアニメ風も絵画風もだいたい何でも生成でき、顔がよく似た人物を複数バリエーション生成する比較的に容易なので、画像生成AIと少々の画像合成技術があれば、絵を描かずにマンガなどのグラフィカルな物語系作品を創作できる。

 こういう創作は愉快。絵だけだと伝わりにくい物事が、テキストを少々加えるだけで、鑑賞者にとって「あっそういうことか」と理解できるようになる。また、鑑賞者が「ということは……」と絵にもテキストにもない物事を想像して楽しんでくれる。なるほどねーだからマンガって超絶普及してるんスね~、と。

 さておき、上記の創作において、ちょっとした沼にハマってしまった。どういうフォントを使うのが最適か? と考え始めた途端、創作が全然進まなくなった。

俺のMacで(デフォルトで)使えるフォントは369もあった。日本語は現在21書体となっているが、どのフォントを使えば……?

 いまのマンガ作品って……どんなフォント使ってんの? とか思ってデジタルなマンガ作品をいろいろチェックしてみたら、さらにハマってしまった。もーナンでもアリって感じで、作者それぞれ目的や好みに応じてフォントを使い分けているっぽい。

 ただ、多くのマンガ作家が共通して使っているフォントがあった。ので、俺的にもソレをメインに使うことにした。

 そのフォントとは、「アンチックゴシック」とか「○○アンチック」と呼ばれるカテゴリーのもの。アンチゴチなどとも呼ばれ、「マンガのフォントといえばコレ!」という定番のカテゴリーだ。

 一般的なフォントは仮名も漢字も同じフォントだが、アンチゴチはカナがアンチック体で、漢字がゴシック体。アンチック体は明朝体ほど細太のメリハリがない、ちょと太めでゴシック体寄りの明朝体というイメージ。

左から、明朝体、ゴシック体、アンチゴチ体。アンチゴチは漢字がゴシック体で、カナがアンチック体。アンチック体は太めでメリハリ弱めの明朝体という雰囲気だ。

 で、不思議なことに、アンチゴチをセリフなどとして使うと、一気にマンガっぽい雰囲気となる。マンガをずっと読んできて、脳がアンチゴチにすっかり慣れ親しんでいる? アンチゴチ体でセリフなどを読むと、なんかこう非常にシックリくるのだ。

Midjourneyが生成した画像に、イラスト・マンガ制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」でフキダシとセリフを加えた画像。使っているフォントは明朝体。
こちらはセリフのみアンチゴチ体にしたもの。

 フォントが変わるだけで「マンガ感」が強まった! マンガ独特の味が出る! スゲいなアンチゴチ体! と思った次第。

マンガ向けフォントのアンチゴチ体は、無料フォントがたーくさんある!

 アンチゴチ体と言っても、そのバリエーションは多々ある。いろいろなアンチゴチ体を試した結果、俺が常用するようになったのはAdobeの「貂明朝(てんみんちょう)アンチック」。

 貂明朝アンチックは、アドビのクラウドフォントサービス「Adobe Fonts」から利用することができる。また、Adobe IDさえあれば、Adobe Creative Cloudなどの有料プランを契約していなくても、無料で使うことができる。なお、Adobe Fontsライブラリ内のすべてのフォントは、個人利用にも商利用にも使える。

Adobe「貂明朝アンチック」は無料使える本格的なアンチゴチ書体。ウェイト(フォントの太さ)は6種類ある。

 上の画像のように、伸ばせるオンビキや罫線や波線など、マンガのセリフに特化した文字も用意されている。「!」を1~5個並べるような、やはりマンガでよく見られるテキスト表現にも対応している。さらに、平仮名やカタカナに濁点や半濁点を加えた文字も用意されている。

貂明朝アンチックを使うと、マンガ特有のテキスト表現ができる。

 ちなみに、Unicodeには合成文字という機能がある。具体的には「あ」に濁点の「゛」を合成して上の画像のような「濁点付きのあ」を入力することができる。ただし縦組み・横組みやアプリやフォントなどによって「可能・不可能」が異なるようだ。

 一方で貂明朝アンチックの場合は「濁点付きのあ」を1文字として持っているので、このフォントを使えば基本的にどのアプリでも「濁点付きのあ」などを表示できる。なので縦組みでも表示できるし、ルビ付きの縦組みなどでも「濁点付きのあ」などを利用できる。

 ともあれ、こういう高品位・高機能性のフォントを無料で使えるってスゲい時代ですニャ。ただ、上記のような濁点文字やオンビキの多くは、キーボードからの入力が面倒だったり、テキストの設定を細かくできるアプリが必要だったりはする。

 とは言っても、そういった特殊な文字を使いたい的な需要は高いようで、「濁点 文字 入力」などで検索すれば方法はすぐわかるだろう。またフォントのコード表が入手できれば、濁点付きの文字などをコピペしてIMEに単語登録できるだろう。そうしておけば、いつでもマンガ的な文字をすぐに扱える。

 アプリについては、前出のイラスト・マンガ制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」にて貂明朝アンチックを問題なく扱えた。ここまでに出てきたテキスト入り画像は、全てクリスタ上で文字入力をしている。

 なお、貂明朝アンチック以外にも様々なアンチゴチ体が存在し、無料で使えて商利用可能なものも多数ある。

 一般的には「アンチゴチ体」よりも「アンチック体」と呼ばれることが多いようなので、「アンチック体」で検索すると見つかる。またGoogle Geminiに「無料で使えるアンチック体があるURLを教えてください」とかリクエストするっと、まとめサイトやフォント利用時の注意点などまでまとめて教えてもらえる。

アンチゴチ体フォント、iPhoneやiPadで使える?

 アンチゴチ体フォント、じっくり見て「コレいいな~」と思ったかもしれない。でもパソコンじゃないと扱えないんでしょ、そういうフォントって……と思ったかもしれないが、iPhoneでも使うことができる。

 iOS 13から加わった(2020年頃に追加された)機能に「カスタムフォント」というのがある。iPhoneに好みのフォントをダウンロードして使えるという機能だ。

 ただしiPhoneのメニューなどを好みのフォントで使えるという機能ではなく、「カスタムフォントに対応したアプリ上で、そのフォントを使える」というもの。対応アプリとしては、たとえばiOS版のワープロアプリ「Pages」やiOS版のプレゼンテーションアプリ「Keynote」があるほか、写真に文字を書き込むようなカスタムフォント対応アプリもある。

 カスタムフォントを使う手順としては、まずフォントのインストール。いくつか方法があるが、フリーのフォントを手軽にインストールできる「FontInstall.app 日本語フォントインストール」アプリが便利だと思う。

 次いで、カスタムフォントを使えるアプリで、遊ぶ……? ここでは写真などに文字を入れられる「文字入れくん」アプリを例に挙げてみたい。

 どちらのアプリも使い方は簡単。なので、使う様子をお見せしてゆきたいッ!!!

FontInstall.appを使っている様子。このアプリでは多数のフリー・日本語フォントをダウンロードできる。アンチゴチ体もあった。「○○アンチック」という名のフォントがアンチゴチ体フォント。
こちらは文字入れくんアプリを使っている様子。写真アプリから写真を読み出して、そこに文字を入れられる。縦組みでも横組みでもOKで、フォントサイズや色も自由に変更可能。文字入れくんアプリにも多彩なフォントが含まれているので、アンチゴチ体を使わないなら前出のFontInstall.appを使う必要はないだろう。
こんなふうに写真に文字を入れられる。
別の写真も処理。
iPhone内の写真だけで……マンガみたいなコンテンツが作れるかも!

 上記のように、写真の上に縦組みのアンチゴチ体でテキストを書けた。……これらの写真をPagesやKeynoteに貼っていけば、そしてPDFなどとして書き出せば、マンガ的なコンテンツが作れる、ハズ! というわけで、興味があればぜひマンガ的コンテンツを作って楽しんでみてほしいッ!!!

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。