スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

NTT「nwm」は外音まる聞こえで音漏れ極小の完全ワイヤレスイヤホン

絶対必要! じゃないけど買ったら非常によかった

NTTソノリティ「nwm(ヌーム) MBE001」。充電器兼キャリングケース(バッテリー非内蔵)が付属する。

 2023年4月3日にNTTソノリティから一般発売された“音漏れを最小限に抑えたイヤホン”こと「nwm(ヌーム) MBE001」。Bluetooth接続の完全ワイヤレスイヤホンで、「PSZ」という独自の音漏れ抑制技術を搭載している。直販価格は2万4200円。

「nwm MBE001」は完全ワイヤレスタイプのBluetoothイヤホン。有線タイプの「nwm MWE001」もある。

 イヤホンとしてはオープンイヤータイプで、耳への圧迫感が少ない一方で音漏れしやすいタイプだ。その音漏れ問題をPSZ技術で解消し、オープンイヤータイプイヤホンの開放感や軽快さを狙った製品だと思われる。ほか詳細な仕様はリンク先をご参照いただきたい。

「nwm MBE001」使用時の様子。イヤホンのドライバー部分は耳の穴を塞がず、音はドライバーから空間を経由して耳の穴に入っていく。このときの音漏れをPSZ技術により抑えている。

 おっ! 新しいかも! 耳の穴を塞がないのに、音漏れしない/しにくいとは……実際どんな使用感なのかニャ〜ということで、案の定購入してしまった俺であった。いや実際コレがどうしても必要ってわけじゃなかったんスけどね。

 でも見るからに軽快そうな装着感で、周囲の音がモロに聞こえそうで、音漏れもしないとかいうんだから興味津々。使うしか! てなわけで手を出したわけだが、結果、用途がある程度限定されるものの非常に実用的だったのであり、今回はコレをレビューしてゆきたいッ!!!

周囲の音がまる聞こえ! なるほど、これが“パーソナルイヤースピーカー”ってコトか

 nwm MBE001の構造上、あらかじめアタマではわかっていたことではあるが、耳に装着しても「周囲の音がまる聞こえ」ってのがちょっと新鮮であった。まあ耳の穴を塞いでいないのだから当然だが、その状態で音楽などを流すと「周囲の音がまる聞こえでありつつBGMがキレイに聞こえてくる」ということに一種の開放感がある。

左耳への装着手順(説明書より抜粋)。慣れると片手で容易に装着できる。装着後、音が出るドライバー部分は耳の穴の上のほうに位置するので、耳の穴はまったく塞がれない。
こんな感じで、ドライバーは耳の穴の近くで音を鳴らしているという状態になる。

 ユーザーによって違う感覚になるかもしれないが、俺的には「耳への装着感が軽くて違和感が少ない」という使用感となった。誤解を恐れず書いちゃうと「メガネをかけている程度の感覚」かも。

 耳の上側(耳輪)の内側つまりメガネのテンプル後方が入るところに引っ掛けるだけで安定し、顔を振っても落ちない程度の保持力がある。だが耳が挟まれるような感覚は希薄。片側約9.5gという軽さもあってか、しばらく装着して馴染むと「nwm MBE001が耳のところにあるのを忘れてしまいがち」だったりする。

 忘れてしまうと、たとえば着信音(と相手の名前読み上げ)が突然耳付近で鳴って「えっ? えっ?」と驚いたりする。ほか通知音も同様で、メール着信音が耳の近くで鳴って「ドキッ」としたりすることも。まあすぐに「あっnwm MBE001か」ってわかる程度だが。

外見的には「やや目立つ完全ワイヤレスイヤホン」だが、装着感は希薄。人によるとは思うが、俺の場合は「nwm MBE001を装着していることを忘れがち」だったりする。メガネユーザーは「メガネを外すときにnwm MBE001を引っ掛けて落としがち」になるかもしれないので、ちょっと注意が必要かも。

 こういった希薄な装着感でありつつ、けっこうイイ音で音楽などが鳴る。そして前述のように周囲の音はまる聞こえ。

 なので、普段の音環境に「音楽や着信音が追加された」みたいな感覚にもなる。いつもの生活にある音はそのまま聞こえる。玄関チャイム音だったりスマートフォンの着信音だったり、あるいはキーボードを叩く音や床をスリッパで歩く音、さらには衣擦れの音まで、それまでの音はそのまま聞こえていて、nwm MBE001からのBGMなどが追加されるといった感じになる。

 もちろん人の声もフツーに聞こえるので、話しかけられても問題なく対応できる。外音取り込み機能があるインイヤー型やカナル型イヤホンでも同様のことができるが、nwm MBE001の場合は「周囲の音がそのまままる聞こえ」なので、会話時まで含めて周囲の音に関しての違和感はまったくない。

 なーるほど、これが“パーソナルイヤースピーカー”ってコトか、と思った。耳の近くに自分専用のスピーカーがあるという感じかもしれない。

 まあnwm MBE001の音を大きくしてしまうと、その「いつもの音」も聞こえにくくなる。また、後述の音漏れ抑制効果も薄れたりする。

 それから、これも後述するが、nwm MBE001は「音楽を聴き込む」ような使い方にはあまり向かないと思う。俺的印象だと、使っているうちに「このイヤホンは音が小さめのほうが心地いいかも」となり、生活のなかに「BGMをうっすらと流す」ために使うのがマッチするように思う。

音漏れは? ……完全ではない、音量を上げればそれなりに漏れる

 続いてnwm MBE001の音漏れ抑制効果。nwm MBE001(や有線タイプのnwm MWE001)には、PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)という独自技術(世界初)を搭載している。ドライバーから耳の外へ出ていく音(漏れ)に対し、逆相の音を与えて「音漏れを打ち消す」のだそうだ。

PSZ技術のイメージ。

 実際の効き目は……まず小さめにBGMを流した状態だと、周囲にはその音漏れがほぼ聞こえないようだ。ある程度の環境音がある屋外なら「音漏れがまったく聞こえない」という感じで、室内でも「相手が顔を近づけてこなければ音漏れに気づかない」といった感じ。

 ある程度以上の音量で音楽を聴いている場合、高音域が音漏れとして聞こえやすいという印象。ただ、インイヤー型のシャカシャカ音のような質ではなく、高音の一部が漏れてきているという音漏れ音質(!?)のような気がする。

 なので、どんな状態でも完全に音漏れを防ぐものではなく、音漏れの抑制についても限度がある、という効果だ。最新のノイズキャンセリングイヤホンのように「ノイズキャンセリングをオンにした途端に雑音がバッサリと消えて静粛に!」みたいなイメージではなく、「普通のインイヤー型とかのイヤホンと比べたらかなり音漏れしにくいけど、それでも多少は音漏れするんだネ」みたいな感じ。

 他方で、nwm MBE001は「大きな音では聴かないイヤホン」だと思う。耳の穴に直接音を注いでいるのではなく、耳の上の小型スピーカーで鳴っている音が耳の穴に入って聞こえてくるというイメージで、音を大きくしても「音の細部までしっかりわかる」みたいな情報量の増加にはつながらないという印象がある。なので、結局、あまり大きくない音でBGMを流すという使い方に収束するような気がする。

 そういう使い方になりがちだと思うので、PSZ技術による音漏れ抑制効果も、現状でまあフツーに実用的だなあと思う。もちろんもっと強力な次世代PSZ技術が登場するのに越したことはないと思うが。

音質は? 音楽を「聴き込む」には向かないが、音楽向けの高音質ではある

 nwm MBE001の音質については、俺的には「BGM向け」だと思う。バランスが取れた音質で音楽を聴くのに向くとは思うが、全体的に「音が痩せる」ような印象があるので、「大好きな曲をじっくり聴き込む」ような使い方には向かないし、それはできないと感じられる。

 細かいコトを言うと、ボーカル域はまずまずイイ音だと思うが、低音は明らかに物足りず、高音域も透明感や鋭さといったところでイマイチな気がする。でもそういった刺激的な音質ではないぶん、ある程度大きめな音で再生していても「BGMとして聴きやすく、聴き疲れしない」という印象にもなる。

 ちなみに対応コーデックはSBC、AAC、aptX。SBC以外の高音質コーデックにも対応しているものの、正直なところ「こういう聞こえ方では高音質コーデック対応の意味はそーんなに大きくないかも」とか思っちゃったりもする。

nwm MBE001専用アプリ「nwm Connect」(iOS/Android版あり)の使用例。音質を補うためのイコライザー機能も使える。ただその効果は限定的だと感じられる。

 率直なところ、音楽を聴き込めるようなしっかりした音質と、外音も聞こえる利便を両立させたいなら、アップルやソニーの外音取り込み対応のノイズキャンセリングで高級気味な完全ワイヤレスイヤホンのほうが満足感が高いと思う。「やっぱり値段が張るだけあって各機能ともイイし、音質もイイ」と感じると思われるからだ。

 だが、nwm MBE001には「外音まる聞こえ」でありつつ「音楽を聴くのにも適した音質バランス」がありつつ「装着感が軽快」といった、ほかの製品にはない良さが多々ある。そういう使用感やメリットはnwm MBE001独特のものだ。

 なので、nwm MBE001については、音質をあまり云々するのもどうかニャ〜、と。いつもの音に関わる生活をあまり変えず、BGMをさりげなく足せる(し着信音や通話などの利便も加えられる)という、日常遣いデバイスとしての幅広さを見たほうがいいのかもニャ〜、とか思う俺なのであった。

残念点も、そこそこ、ある

 俺的にnwm MBE001は使用感のいいBGM用完全ワイヤレスイヤホンとなっている。仕事場ではいつもスピーカーを使って小さめの音量でBGMを流しているが、「スピーカーで小さめ」にしているのは「周囲の音も聞く必要があるから」だ。また、音量が小さめだと「仕事に集中し始めたときに音が小さめだと、集中を音に邪魔されることがほとんどない」からでもある。

 ただ、そこでインイヤー型なりカナル型なりの外音取り込み機能付きイヤホンを使うのは……違和感がある。耳に長時間イヤホンを入れっぱなしなのは苦手な俺なのであった。

 そこにキタのがnwm MBE001。仕事中にコレでBGMを聴くことが増えた。ちなみにnwm MBE001、マルチポイントペアリングでの同時待受などはできないが、複数の端末とペアリングして接続先を切り替えつつ使うことはできる。なので、仕事場にずっといるときはMacと接続し、時々外出するようなときはiPhoneと接続して使っている。

 そんな感じでnwm MBE001を使っていて残念なのが、まずバッテリーのもち。音楽再生時のバッテリー持続時間は最⼤6時間となっていて、1日使うには短い感じ。最大10時間くらいはイッて欲しかったが……そうすると重くなって装着感が悪くなる?

 電池残量なしからの充電時間は約2.5時間で、充電には専用キャリングケースを使う。イヤホンがマグネット吸着されるケースで扱いやすく、サイズもまあまあ携帯できるという印象だ。

キャリングケースのサイズは123×53×26mmで、重さは約70g。手のひらサイズって感じではないが、携帯性もそこそこあって扱いやすい。
キャリングケースにUSB-Cケーブルを接続してイヤホンを充電する。充電中はランプが点滅し、満充電で点灯する。ランプ色は好みの色に設定できる。

 非常に残念なのが、キャリングケース単体ではイヤホンに充電できないこと。つまりキャリングケースにはバッテリーが内蔵されていない。連続使用時間が短めでありかつキャリングケースからのイヤホンへの充電ができないのは、今時的な完全ワイヤレスイヤホンとしてはスゲく残念な仕様といえよう。まあモバイルバッテリーひとつあれば済むといえば済む話だが。

 あと本体色。カラーバリエーションがもっと……というのもあるが、肌色に近いカラーがあると「常時身につけたくなるイヤホン」としてより積極的に使いたくなるのではないだろうかと思ったりする。茶色っぽい黒一色なのは、ちょっと残念。

 それから音量調節。イヤホン本体のボタンをダブルクリック+ホールドして音量調節するが、左のイヤホン操作で音量ダウン、右のイヤホン操作で音量アップ、という仕様だ。人によって感じ方は違うと思うが、俺的には「洗練度が足りない操作感」だと感じられた。まあ端末側で音量調節すればいいんだが。

 てな感じで、細かいところを見るとやや残念な点がいくつか残るnwm MBE001。またユーザーを選ぶイヤホンでもあると思う。

 たとえば「耳の穴にイヤホン入れたくない」「装着感は軽快であるべし」「音質はBGMがキレイに聞こえればいい」「周囲の音がしっかり聞こえることはマスト」あたりの条件を満たして欲しいなら、nwm MBE001はかなり気に入れる製品になりそうだ。逆にそうでない場合、気に入れるかどうか、一度試聴・試着したほうがいいかもしれない。

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スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。