ニュース

NTTの新音響ブランド「nwm」デビュー、開放型イヤホンなのに周りに音漏れしない新技術を披露

左からNTT副社長の川添 雄彦氏とNTTソノリティ代表取締役の坂井 博氏

 NTT(持株)とNTTソノリティは、NTTグループ初となる一般向け音響ブランド「nwm」(ヌーム)」を立ち上げ、音響業界に参入すると発表した。耳元だけに音場を作ることができる「パーソナライズドサウンドゾーン技術」(PSZ技術)を活用したイヤホンの新製品も披露された。

 発表会には、NTT代表取締役副社長の川添 雄彦氏とNTTソノリティ代表取締役の坂井 博氏が登壇し、音響ブランド参入への想いやPSZ技術の内容などを説明した。

IOWN構想の一環

今回の音響技術のイメージ

 NTTの川添副社長は、「科学技術が発展してきている一方、地球環境問題や新型コロナウイルス感染症など、世界の課題解決に必要なテクノロジーが足りていない」と指摘。

 NTTが掲げるIOWN構想では、これまでの人間が人間の価値観で考え出された技術から、人間が解明できていない「人間ではないものの視点」での技術開発も進められているという。

 今回のPSZ技術もその一つとし、「特定の場所に音場を作る」という音響の研究者が長年追い求めていたことを、「テレパシーができるイルカの音の伝え方」を考え、これまでの常識を離れてこの課題の答えを見つけ出せたと川添氏は説明する。

 川添氏は、今回のPSZ技術を「音響常識の限界を打破する技術」とアピールし、この技術を担う新会社「NTTソノリティ」を設立したという。NTTソノリティについて、川添氏は「BOSEのような音響メーカーを目指す」とし、世界的な音響ブランドに成長させる意気込みを示した。

逆相の音波を活用したPSZ技術

新ブランド「nwm」

 PSZ技術や製品の詳細は、NTTソノリティの坂井氏が解説した。

 特定の空間内に音を閉じ込める方法として、「逆相の音波をあてる」ことで音を打ち消せるが、これまでは非常に複雑な信号処理でこの目標達成を図っていたと坂井氏は言う。

 一方、スピーカーでは背面から出る逆相の音波について、それを封じ込めるためにボックスで囲っているものが多い。今回のPSZ技術では、スピーカー背面から出る「逆相の音波」を活用し、音を打ち消す音波として活用することができたと説明する。

 今回発表されたイヤホンは、オープンイヤー型で周囲の音を取り込みつつ、前述の音波を打ち消すPSZ技術で周囲への音漏れが軽減されたイヤホン。

 坂井氏は、NTTソノリティについて「音による新たなコミュニケーションを目指す会社」とし、リモートワーク中のイヤホン利用環境を改善することを目指し、今回のイヤホンを開発したという。

 リモートワークなどでイヤホンを装着するタイミングが増えたが「耳の疲労」や「コミュニケーションが取りづらい」など課題も多いと坂井氏は指摘する。

 今回の製品では、オープンイヤー型で周囲の音が聞こえるとともに、骨伝導イヤホンのように押さえつけられるストレスを感じずに長時間利用できるものだという。加えて、自分の耳元だけに音を閉じ込められる製品となっており、「没入感ではなく、周囲とつながれる」ことを重視したものになっている。

 今回立ち上がった音響ブランド「nwm」について坂井氏は、「リモートワークの音響ブランドでナンバーワンブランドを目指したい」とし、2025年にオープンイヤー型のシェア10%、売上高400億円と目標を据えた。

 9日発売されたものは、有線型イヤホンだが、今後無線タイプのイヤホンの発売を目指しているという。無線イヤホンについては、今冬クラウドファンディングで提供する。クラウドファンディング活用について坂井氏は、9日発売の有線型イヤホンでもクラウドファンディングを実施したことを踏まえ「新しい技術で今までと違う形の製品なので、クラウドファンディングで皆さんの意見を伺って一般発売の可能性をみたい。有線型では、ポジティブな反応をいただいたので販売させていただいた。無線型もユーザーの意見を見ながら販売したい」とコメントした。

NTT川添氏「日本ブランド復活を期待」

 NTT川添氏は、「NTTグループとの連携はあるか」との質問に、「まさにそれを目指している」と回答。

 川添氏は続けて「NTTドコモから発売する携帯電話は、昔はドコモブランドのものがあったが、いつのまにか日本の製品自体がすごく減っている。この端末については、これでストップするわけではなく、もっと新しいイノベーションを加えることで、もう一度日本から前向きに世界に対して大きな貢献ができるのではないかということを考えている」とコメント。

 また、「端末+アプリケーションといった大きな形のビジネスにできるのは、NTTグループならではだと考えている。今回はこの機能をまずは作って、最終的に大きな事業にしていきたい」とNTTグループでの連携についても示唆した。

9日発売「パーソナルイヤースピーカー nwm MWE001」

 有線モデルのイヤホンとなる「nwm MWE001」は、オープンイヤー型のイヤホンで、周囲の音を聞けるが、再生中のサウンドは、イヤホン外側から聞こえないイヤホンとなっている。価格は8250円。

 マイク機能も備えているので、Web会議などでもそのまま利用できる。端子は、3.5mm4極ステレオミニジャックを備えている。

今冬クラウドファンディング実施の無線モデル

 今冬クラウドファンディングを予定している無線型のパーソナルイヤースピーカー「nwm MBE001」は、オープンイヤー型のフルワイヤレスイヤホン。耳の穴に埋め込むのではなく、アーム部分を耳に引っかけるように装着する。実際に試用してみたところ、はじめは戸惑うが、フィット感があり、多少頭を動かしてもぶれることはなかった。

無線モデルを装着したところ

 有線モデルと同様に、マイクを内蔵しているほか、本体外側には音を打ち消す音波を出力しまわりには聞こえないようになっている。

【お詫びと訂正】
記事初出時、有線モデルの名称に誤りがありました。正しくは「MWE001」です。修正いたします。

Amazonで購入