法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Galaxy S24 Ultra」、「Galaxy AI」で進化を続ける史上最強のGalaxy

 サムスンは4月3日、今年1月にグローバル向けに発表されていたフラッグシップモデル「Galaxy S24」シリーズの国内向けとして、「Galaxy S24」と「Galaxy S24 Ultra」を発表した。従来に引き続き、NTTドコモとauが両機種を発売する一方、Samsung公式ストアからもオープン市場向けのSIMフリー版が発売された。今回は国内向けの「Galaxy S24 Ultra」を試用できたので、レポートをお送りしよう。

サムスン/NTTドコモ/au 「Galaxy S24 Ultra」、162.3mm(高さ)×79.0mm(幅)8.6mm(厚さ)、233g(重さ)、チタニウムブラック(写真)、チタニウムグレー、チタニウムバイオレットをラインアップ。auはチタニウムグレー、チタニウムブラックのみ、512GB版、1TB版はチタニウムブラックのみ

市場をリードしてきたフラッグシップモデルだが……

 各社から毎月のように新製品が発表される国内外のスマートフォン市場。ここ十数年、市場を牽引してきたのは、各社が最先端を争う高機能なフラッグシップモデルだったが、端末価格が高騰したうえ、昨年までは電気通信事業法のガイドラインで端末割引が制限されたことも影響し、普及価格帯のミッドレンジのモデルが販売を伸ばしている。かつては「フラッグシップモデル=高機能=高価格」が受け入れられていたが、ハードウェアとソフトウェアの両面で端末の完成度が高められてきたこともあり、ミッドレンジのモデルでも十分に快適な利用環境が実現できている。メーカーはカメラ性能の向上などで差別化を図ろうとしているものの、どこまでユーザーに訴求できているのかは疑問が残る。その一方、フォームファクターとしては、「Galaxy Z Flip」シリーズや「Galaxy Z Fold」シリーズなどに代表される『フォルダブル』が徐々に注目を集め、モトローラやZTEなどの他メーカーからもリーズナブルな価格のモデルが登場したことで、今後の拡大が期待される状況にあり、スタンダードなデザインのフラッグシップモデルから主役を取って代わろうとする勢いだ。

 そんな中、これからのスマートフォンの進化をはじめ、デジタル社会を大きく変革させる技術として期待されているのが「AI(Artificial Intelligence)」だ。なかでも「ChatGPT」に代表される「生成AI」は、さまざまなジャンルで展開され、新しいビジネスを生み出そうとしている。スマートフォンにおいては、Googleが生成AI「Gemini」の提供を開始したり、パソコンではWindowsに「Copilot」を標準搭載するなど、多くの人が生成AIを利用できる環境が整いつつある。

 今回、サムスンから発表されたフラッグシップモデル「Galaxy S24」シリーズは、サムスン独自の「Galaxy AI」を搭載し、さまざまな機能や利用シーンにAIを活かした「AIフォン」として、開発されている。これまでも撮影した写真の画像処理などにAIが活用されてきたが、今回は音声通話やチャット、通訳なのコミュニケーションをはじめ、Webページの閲覧や文書の作成、メモなど、ビジネスユースにも幅を拡げ、端末全体として、AIを活かす構成となっており、フラッグシップモデルの新しい方向性として、注目される。

 「Galaxy S24」シリーズは今年1月にグローバル向けに発表され、ディスプレイサイズの違いなどにより、「Galaxy S24」「Galaxy S24+」「Galaxy S24 Ultra」の3機種がラインアップされていたが、今回、国内向けに発売されたのは「Galaxy S24」「Galaxy S24 Ultra」の2モデルになる。販売はNTTドコモ、auに加え、Samsung公式ストアでのオープン市場向けSIMフリーモデルも同時発売となった。販路によって、ボディカラーやストレージ容量に違いはあるが、SIMフリー版であれば、いずれのカラーでもストレージ容量でも選ぶことができる。

 今回、取り上げる「Galaxy S24 Ultra」は、シリーズの最上位モデルに位置付けられる。ボディデザインは「Galaxy S24」と違い、かつての「Galaxy Note」シリーズの流れをくむもので、本体下部にSペンを格納する。基本的なデザインは昨年の「Galaxy S23 Ultra」を継承しているが、チップセットやディスプレイ周りのデザインなど、細かい部分に違いを見せる。

背面にはクアッドカメラのカメラリングが並ぶ。少し見えにくいが、NTTドコモ版は背面中央に「docomo」のロゴが刻印される。au版はSIMフリー版と同じデザインで、中央下部に「SAMSUNG」のロゴが刻印される
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子、SIMカードスロット、Sペンの格納部を備える。Sペンはプッシュすると、引き出せるしくみ
左側面にはボタン類が備えられていない
右側面には中央付近に電源キー、上部側(左側)にシーソー式音量キーが並ぶ。電源ボタンの右側にある楕円パーツは内蔵アンテナをカバーする部分

 価格は別表にまとめているが、各キャリアとも従来モデルに比べ、5000円~1万円強の値上げとなっている。ストレージの容量によっては、ほぼ据置の価格を設定している例もあり、半導体をはじめとした部品コスト増や為替レートの急激な変動、端末の機能向上などを考えると、価格上昇を最大限に抑えた設定とも言える。NTTドコモとauで購入する場合、支払い額を抑えるには、両社の端末購入サポートプログラムの利用が有効だ。端末代金の分割払い額は月々4500円以上で、2年利用時の実質負担額は10~11万円程度になる。ちなみに、NTTドコモについては「いつでもカエドキプログラム(プラス対象機種)」のため、12カ月目までに端末を早期返却すれば、実質負担額をさらに抑えることもできる。これに対し、auは5月31日までのキャンペーンで、auオンラインショップで購入したときの価格が通常の機種変更でも2万2000円が割り引かれる。さらに、Samsung公式ストアの価格はNTTドコモとauの販売価格よりも10~15%程度、割安のため、そちらで購入するのも手だ。ちなみに、オープン市場向けのSIMフリー版を購入してもNTTドコモやauで購入したときと同じように、アプリなどは設定できる。

NTTドコモでの販売価格。端末返却が条件の「いつでもカエドキプログラム+」が利用可能。「いつでもカエドキプログラム+早期利用料」を支払えば、12カ月目で返却して、支払い額を抑えることもできる
auでの販売価格。端末返却が条件の「スマホトクするプログラム」が利用可能。au online shopでは5月31日まで「5G機種変更おトク割+Galaxy S24機種変更おトク割」で、通常の機種変更でも2万2000円割引で購入可能
Samsung公式ストアでの販売価格。端末購入サポートプログラムはないが、NTTドコモやauよりも10%程度、割安に購入できる

よりフラットなデザインに進化

 まず、外観からチェックしてみよう。「Galaxy S」シリーズの最上位モデル「Ultra」は、前述のように、かつての「Galaxy Note」シリーズのデザインを継承しており、「Galaxy S24」とはボディ形状が異なる。「Galaxy S24 Ultra」のボディは上下端をスッパリと切り落としたようなデザインで、左右両側面もちょうど紙の手帳の背の部分のように、少し湾曲した形状に仕上げている。今回の「Galaxy S24 Ultra」も一見、従来の「Galaxy S23 Ultra」と同じデザインに見えるが、従来モデルの背面パネルは左右両側面に少し回り込むように湾曲していたのに対し、「Galaxy S24 Ultra」は背面パネルがほぼフラットに近い形状になり、左右側面への湾曲もごくわずかで、ちょうど背面パネルで本体にフタをするような仕上がりだ。「Galaxy S24 Ultra」とサイズで比較すると、幅が0.9mm増、高さが1.1mm減、厚さが0.3mm減、重量が1g減となっている。

今回発表された「Galaxy S24」(左)と「Galaxy S24 Ultra」(右)の前面。ディスプレイは「Galaxy S24」の6.2インチに対し、「Galaxy S24 Ultra」は6.8インチと最大級
「Galaxy S24」(左)と「Galaxy S24 Ultra」(右)の背面。両機種共に背面カメラは『縦3眼レンズ』デザインを採用
「Galaxy S24 Ultra」(上)と「Galaxy S23 Ultra」(下)を重ねて、側面の形状を比較。側面へ回り込む部分の湾曲する形状が異なる。下部の放熱用の穴のデザインも変更された
「Galaxy S23 Ultra」(左)に比べ、「Galaxy S24 Ultra」(右)はベイパーチャンバー(銅色のパーツ部分)がひと回り大きい。表面の仕上げも異なる

 おそらく、こうした構造と密接に関係するのがフレームで、今回の「Galaxy S24 Ultra」では従来のアルミニウムフレーム(アーマーアルミニウム)に代わり、チタニウムフレームが採用されている。スマートフォンでチタニウム合金を採用した例としては、「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」が挙げられるが、同じくフラッグシップの最上位モデルの「Galaxy S24 Ultra」も追随したことになる。ちなみに、「Galaxy S24」は従来通り、アーマーアルミニウムが採用されている。チタン合金については腕時計のケースや自転車のパーツなどに採用され、高級な素材、軽量、錆びにくい、人の肌に優しいなどの特長を持つが、重量に関して言えば、実は単純に比重だけを比較すると、アルミニウムの方が軽い。しかし、一定の強度を保つ形状にしたときの重量はチタン合金の方が軽いため、落下時や衝撃時を含めた強度を考えると、チタンフレームはアルミフレームに比べ、優位性があるというわけだ。

 耐環境性能については従来モデルに引き続き、IP5X/IP8Xの防水、IP6Xの防塵に対応する。最近では海外メーカーの端末でも防水防塵に対応する機種がかなり増えたが、「Galaxy S」シリーズは10年近く前から防水防塵に対応しており、十分な実績を持つ。NTTドコモとauでは万が一のトラブルに対応する補償サービスが提供されているが、オープン市場向けのSIMフリーモデルにも「Galaxy Care」が提供されており、安心して利用できる。

 バッテリーは従来の「Galaxy S23 Ultra」に引き続き、5000mAhの大容量バッテリーを搭載する。カタログ上の仕様では従来モデルに比べ、動画の連続再生が15%程度、長くなったものの、音楽の連続再生は5%ほど、短くなっているなどの違いがあるが、実用上はほぼ変わらないと見ていいだろう。

 充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子から最大45Wでの充電に対応し、残量ゼロの状態から約30分で約65%まで充電できる。最大15WのQi規格準拠のワイヤレス充電に対応するほか、本体のバッテリー残量からワイヤレスイヤホンやスマートウォッチに給電できる4.5Wの「ワイヤレスバッテリー共有」にも対応する。パッケージにはACアダプターやUSBケーブルが同梱されていない。NTTドコモとauでも対応製品を販売しているが、Samsung公式ストアでも対応する電源アダプターやワイヤレス充電器、モバイルバッテリーなどを販売しているので、そちらもチェックしておきたい。

よりフラットになった6.8インチディスプレイを搭載

 ディスプレイは3120×1440ドット表示が可能なQHD+対応6.8インチDynamic AMOLED 2X(有機EL)を搭載する。対角サイズとしては「Galaxy S23 Ultra」と同じ6.8インチだが、解像度は縦方向に132ドット分、広くなっている。ちなみに、ディスプレイの仕様としてはQHD+だが、出荷時の解像度設定は消費電力を考慮し、フルHD+に設定されている。より高解像度のコンテンツを利用するのであれば、QHD+に設定を変更するのも手だ。

ディスプレイの解像度は3つから選べる。出荷時はFHD+だが、より高い解像度を求めるなら、QHD+に設定が可能。ただし、バッテリー消費は増える

 ディスプレイについては、従来モデルと比較して、外観も少し異なる。「Galaxy S」シリーズの「Ultra」モデルは、「Galaxy Note」シリーズの流れを継承していることもあり、ディスプレイの左右両端を湾曲させた『エッジディスプレイ』を採用してきた。しかし、昨年の「Galaxy S23 Ultra」ではエッジ部分がグッと狭くなり、今年の「Galaxy S24 Ultra」ではほぼフラットに近い仕上がりに変更されている。これまでエッジディスプレイについては、『左右両端の湾曲した形状によって、没入感が得られる』と表現してきたが、実用面では端末を持つときに左右両端部分がタッチで反応してしまったり、露出するエッジ部分に壁などで傷を付けたりとリスクがあったことも事実だ。その点、こうしたフラットに近い仕上がりであれば、誤タッチや擦過などのリスクも抑えられる。映像コンテンツを視聴したときの没入感については、好みの分かれるところかもしれないが、今回の「Galaxy S24 Ultra」で動画を視聴してみた限り、元々、画面サイズが大きいこともあって、それほど不満を感じることはなかった。

「Galaxy S24 Ultra」(左)と「Galaxy S23 Ultra」(右側)の本体前面。高さや幅は1mm前後の違いしかないため、ほとんど変わらない
「Galaxy S24 Ultra」(左)と「Galaxy S23 Ultra」(右側)の本体背面。『縦3眼レンズ』のレイアウトは共通だが、両側面付近の湾曲が異なる

 「Galaxy S24 Ultra」のディスプレイが従来モデルと大きく違う点としては、明るさが挙げられる。「Galaxy S24」のレビューでも触れたが、従来モデルはピーク輝度が1750nitsだったのに対し、「Galaxy S24 Ultra」では2600nitsとなり、国内外で販売されるスマートフォンのディスプレイとしてはトップクラスの明るさを実現している。実際に利用するときは、周囲の環境に合わせ、明るさが自動調整されるが、この明るさであれば、陽射しの強い場所でも十分な視認性を確保できそうだ。

 生体認証についてはディスプレイ内の超音波式指紋センサーによる指紋認証、ディスプレイ上部のパンチホール内のインカメラを利用した顔認証が利用できる。指紋認証については、従来モデルに引き続き、指紋登録時に指を当てるエリアが少しずつ移動するしくみで、画面の指示に従って操作すれば、指先全体の特徴点を登録できる。ディスプレイ内指紋センサーは多くの機種が光学式を採用しているが、「Galaxy S24 Ultra」が採用する超音波式は、認識の速度が速く、精度も高いというメリットを持つ。コスト的には高くつくが、よりセキュアな環境を重視するため、超音波式を採用しているようだ。超音波式指紋センサーはディスプレイに保護フィルムや保護ガラスを貼ったときの動作が気になるところだが、基本的には指紋の再登録が推奨される。ただし、保護フィルムについては再登録せずに利用できるケースも多い。顔認証は特に仕様の変更がないが、マスク着用時の画面ロック解除はできない。画面ロック関連では「Galaxy S24」のレビュー記事でも指摘したように、従来の「Galaxy S23 Ultra」やこれまでの多くのGalaxyと違い、PIN入力時に[OK]を押さないと、ロック解除ができない。Androidプラットフォームの標準的な仕様に倣った形だが、従来モデルから乗り換えたユーザーは少し慣れが必要だ。

米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxyを搭載

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen3 for Galaxyを採用する。このチップセットは2024年のQualcommのラインアップにおいて、最上位に位置付けられるが、昨年の「Galaxy S23 Ultra」に引き続き、「for Galaxy」の呼称を付加したものが搭載される。サムスンによれば、コアなどの構成はSnapdragon 8 Gen3と同じで、クロック周波数などが異なる専用のものが採用されているという。「Galaxy S24」にも共通するが、今回の「Galaxy S24 Ultra」は「Galaxy AI」による画像処理や翻訳、通訳、Sペンの連動機能などの多彩な機能を実現するために、よりNPUの性能が高いチップセットを必要としているようだ。同時に、サムスンが以前から対応を強化しているゲームの快適なプレイ環境にも好影響を与えることになる。

 高性能なチップセットの熱対策については、内部のベイパーチャンバーを従来モデルに比べ、約1.5倍も大型化し、放熱しやすい環境を整えている。初期設定時だけでなく、「原神」や「ASPHALT 9」などのゲームもプレイしたが、市販のカバーを装着した状態でも少し背面が温かくなったことを確認できる程度で、ストレスなくプレイできた。ちなみに、「Galaxy S24 Ultra」には快適にゲームをプレイするためのアプリ「Game Booster」も用意されている。

[Game Booster]を使うことで、ゲームのプレイ環境を最適化できる

 メモリーは「Galaxy S24」よりも大容量の12GBを搭載する。ストレージは256GB版、512GB版、1TB版が用意され、NTTドコモ、au、Samsung公式ストアのいずれでも購入できるが、512GB版と1TB版は各社のオンラインショップ限定での取り扱いとなる。本体はmicroSDメモリーカードなどの外部メモリーに対応しないため、基本的には本体のストレージのみで利用することになるが、音楽や映像などのコンテンツは配信サービスが中心であり、バックアップもGoogleドライブやOneDriveなどのクラウドサービスが充実しているため、通常の利用であれば、256GB版でも十分だろう。写真や動画を数多く撮影し、端末上で編集などを考えているのであれば、512GB版や1TB版を検討するのも手だ。もうひとつ検討要素を加えるなら、後述する「ライブ翻訳」「リアルタイム翻訳」「チャットの翻訳」を利用するには、それぞれに対応した言語パックをダウンロードし、インストールする必要がある。この言語パックはひとつの言語あたり、数百MBと大きいため、より多くの言語に対応できるようにしておくのであれば、大容量モデルを検討した方がいいかもしれない。

 ネットワークはNTTドコモ、auが対応するバンドをはじめ、国内外で利用する5G NR/4G FDD-LTE/4G TD-LTE/3G W-CDMA/2G GSMに対応する。5Gについては、Sub6だけでなく、ミリ波にも対応し、5G SAモードでの利用も可能だ。対応バンドについてはNTTドコモ版、au版、SIMフリー版のいずれも共通のため、基本的にどのモデルを購入しても端末側にネットワーク接続の差はない。SIMカードはnanoSIM/eSIMのデュアルSIMに対応しており、eSIMはデュアルeSIMに対応しているため、ネットワーク障害や災害発生時に備え、複数のモバイル回線を契約しておくことができる。

本体下部にピンで取り出すタイプのSIMカードトレイを備える。nanoSIMカード1枚のみを装着可能で、外部メモリーカードは装着できない。eSIMにも対応し、デュアルeSIMでの運用も可能

 Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax準拠で、2.4GHz/5GHz/6GHzで利用できる。ワイヤレスイヤホンやスマートウォッチの接続に利用するBluetoothは、Bluetooth 5.3対応。衛星を利用した位置情報の測位機能は、米GPS、露GLONASS、中国BeiDou、欧州Galileo、日本QZSS(みちびき)に対応する。

 従来モデルに引き続き、FeliCaを搭載し、日本のユーザーには欠かせないおサイフケータイに対応する。おサイフケータイをかざすときのスイートスポットは、従来モデルが縦三眼カメラの下側2cm程度の位置だったのに対し、「Galaxy S24 Ultra」は背面側から見て、カメラ部の右側2cm程度の位置に変更されている。決済時だけでなく、最近はマイナンバーカードなどの読み取りにも利用することが増えているので、カバーなどを装着する前に確認しておきたい。

7世代のOSアップデートと7年間のセキュリティアップデートを保証

 プラットフォームはAndroid 14を採用し、サムスン独自のユーザーインターフェイスは「One UI 6.1」が搭載される。基本的なユーザーインターフェイスはこれまでのGalaxyシリーズで採用されてきたものを踏襲しており、大きく使い勝手は変わらない。ホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示され、アプリ一覧は左方向にスワイプすることで、次のページが表示される。アプリ画面のグリッドは「4×6」表示g標準だが、好みに合わせて、「4×5」「5×5」「5×6」に切り替えることができる。ディスプレイサイズも大きいので、より細かく表示するのも便利だ。One UIのアプリ一覧画面は、アプリをフォルダーにまとめられるなど、Androidプラットフォーム標準のものより、使いやすい面もある。One UIのユーザーインターフェイスについては、「Galaxy S24」のレビューでも触れたように、「Try Galaxy」というWebアプリが公開されており、iOSとAndroidプラットフォームで使い勝手を体験できる。後述する通訳や翻訳アプリのデモも画面上で楽しめるので、ぜひ、お試しいただきたい。

「One UI」のホーム画面。NTTドコモ版は「docomo LIVE UX」や「Disney UX」が設定できるが、Galaxy本来の使い方をするなら、「One UI」がおすすめ。[設定]アプリ内の[アプリ]-[標準アプリを選択]-[ホームアプリ]で設定が可能
ホーム画面を上方向にスワイプすると表示されるアプリ一覧画面。左にスワイプすると、次のページが表示される。アプリをフォルダにまとめることが可能。出荷時はアプリが「4×6」でレイアウトされているが、[設定]アプリの[ホーム画面]-[アプリ画面グリッド]でカスタマイズが可能

【あなたの携帯電話で「Try Galaxy」を試してみてください。】(サムスン電子ジャパン)

 また、プラットフォームについては今回の「Galaxy S24」シリーズから、7世代のOSバージョンアップと7年間のセキュリティアップデートの提供が保証される。昨年、Googleが「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」で、発売から7年間のアップデートを約束しており、これに追随する形になる。ユーザーとしては長く使える安心感につながるが、7年後にアップデートした端末が快適に使えるのかどうかは非常に気になる点だ。今から7年前と言えば、2017年発売の「Galaxy S8」や「Galaxy Note8」であり、これらが現在の環境で快適に利用できるようになるのかは疑問だ。もちろん、現在の最新モデルはプラットフォームとして成熟し、チップセットの性能も十分に高いため、7年後でも使い物になるかもしれないが、単なる対応年数の競争にするのではなく、ユーザーが利便性を損なわないレベルで継続して利用できるようにしつつ、場合によっては次のモデルへスムーズに移行できるような環境を構築する方が重要ではないだろうか。

 日本語入力については、従来に引き続き、iWnnベースの「Samsungキーボード」が搭載される。Androidプラットフォームの日本語入力はほとんどの機種がGoogleの「Gboard」を採用するようになり、独自の「S-Shoin」を搭載してきたシャープも昨年秋の「AQUOS sense8」で「Gboard」搭載に切り替えている。こうした動きの背景にあるのは、開発コストだけでなく、生体認証と連動したパスワード自動入力などの機能が関係している。Galaxyの場合、指紋認証と連動した「Samsung Pass」があり、文字入力アプリの「Samsungキーボード」と連動させることで、パスワード入力などを実現している。同様に、「Galaxy AI」による通訳や翻訳などの機能も「Samsungキーボード」に言語パックを追加する仕組みとなっている。「Galaxy S24」シリーズで注目されるのは「Galaxy AI」だが、実は「Samsungキーボード」が重要な役を担っているとも言えるわけだ。

翻訳や通訳、要約など、多くの実用性を実現する「Galaxy AI」

 今回の「Galaxy S24」シリーズは、「Galaxy AI」を強くアピールしている。これまでも多くのスマートフォンで画像処理などにAIが活用され、GoogleのPixelシリーズでも「消しゴムマジック」や「編集マジック」などの機能で、強力なAIの可能性を示してきた。

 これに対し、今回の「Galaxy S24」シリーズに搭載される「Galaxy AI」は、こうした画像処理やカメラ関連の機能だけでなく、通話や会話、チャットなど、『携帯電話本来の使い道』において、実用的な機能を提案している。

 まず、今回の「Galaxy S24」シリーズにおける機能で、もっとも大きなインパクトを持っていたのが電話(音声通話)による「ライブ翻訳」だろう。国内に居る限り、あまり外国語圏の人と話す機会はないかもしれないが、海外渡航時などにはレストランの予約などで外国語で話すことが求められることがある。ビジネスシーンなどでは本物の通訳を介して、通話ができるサービスなども提供されているが、コスト的にはあまり気軽に利用できるサービスではない。

 これに対し、今回の「Galaxy S24 Ultra」に搭載されている「ライブ翻訳」では、[電話]アプリを使い、外国語圏の人と通話をすると、お互いの言葉を相互に翻訳しながら会話ができる。発表会のプレゼンテーションでは旅行中にレストランを予約するやり取りがデモで流されたが、かつての国際電話のような多少のタイムラグがあるものの、比較的スムーズに会話ができていた。対応する言語も言語と豊富だ。しかも「ライブ翻訳」は、端末の機能のひとつなので、基本的に無料で利用できる点も大きい。ただし、NTTドコモやauなどの国内携帯電話会社と契約した端末を使い、海外で通話をすると、国際電話料金になってしまうため、海外渡航時に利用するときは、渡航先のプリペイドSIMカードをデュアルSIMで使い、音声通話をした方が賢明だろう。

[リアルタイム通訳]でスペイン語のやり取り。海外旅行や海外出張に役立つが、インバウンド需要で訪日外国人と接する仕事にも便利

 次に、訪日外国人をはじめ、直接、会話するときに便利なのが「リアルタイム通訳」だ。Googleの[翻訳]アプリでも同様の機能が実現され、国内外でも広く利用されてきたが、「Galaxy AI」による「リアルタイム通訳」は話した内容が翻訳され、すぐに音声で流れるしくみのため、少し慣れが必要だが、スムーズな会話が期待できる。「Galaxy Buds」シリーズなどのワイヤレスイヤホンを片耳ずつ装着し、相互に翻訳しながらの会話も可能だ。店舗など、少し騒がしい環境で利用するときには有用だ。

 また、翻訳や通訳といった機能は、音声だけでなく、テキストメッセージでも利用できる。ここでカギを握るのが前述の「Samsungキーボード」だ。これまでもGoogleの[翻訳]アプリを併用し、翻訳した文字をメールやメッセージなどに貼り付けたり、送られてきたメッセージを[翻訳]アプリで飜訳するといった使い方をしてきたが、「Galaxy S24 Ultra」ではLINEや+メッセージなどのメッセージアプリを利用するとき、[Samsungキーボード]の文字パレット左上に表示される「Galaxy AI」のアイコン(複数の★を描いたアイコン)をタップし、「チャットの翻訳」を選ぶと、日本語で入力した文章が指定した相手の言語に翻訳され、送信される。相手から外国語のメッセージが送られてくると、そのメッセージの下に日本語に翻訳された内容が表示される。外国語圏の人とメッセージをやり取りするケースがどれくらいあるのかは、人によって違うが、LINEや+メッセージ、標準のメッセージアプリなどでも利用できるため、実用性は十分にあると言えそうだ。ちなみに、「チャットの翻訳」以外に「文章のスタイル」や「スペルと文法」を選ぶと、それぞれの項目に合わせ、「Galaxy AI」によって、調整された文章が作成できる。

クイック設定パネルはAndroid 14で採用された新デザインに変更されている。左にスワイプすると、次のページが表示される。[通訳]を選ぶと、対話式の[通訳]アプリが起動できる
[+メッセージ]で日本語を入力し、中国語に翻訳。LINEなどでも同じように利用可能
[+メッセージ]で[Galaxy AI](星のアイコン)をタップすると、3つの機能が選べる。[文章のスタイル]や[スペルと文法]では相手によって、メッセージの内容(口調)を調整したり、入力した文章の文法や表現をチェックしてくれる

 さらに、「Galaxy S24 Ultra」が対応しているSペンを利用した「ノートアシスト」機能にも「Galaxy AI」が活かされている。たとえば、Sペンによる手書きで入力した文字をテキスト化したり、自動的フォーマットで要約したり、内容を翻訳するといった使い方ができる。Sペンはどちらかと言えば、絵を描く機能などが重視される傾向にあったが、手書きメモをまとめるといった『手帳』的な使い方も充実しており、ビジネスシーンなどでも活用できそうだ。ただ、そもそもの話として、『手書きで文字を書く』というシーンが減ってきている面もあり、このあたりはユーザーによって、評価が分かれそうだ。

従来モデルに引き続き、Sペンが利用可能。入力もスムーズで、[Galaxy AI]で手書き文字をテキスト化したり、内容を要約することができる
[かこって検索]は気になるアイテムを囲むと、同じようなものを検索してくれる。[Galaxy S24 Ultra]ではSペンも使える

望遠カメラを強化したクアッドカメラを搭載

 カメラについては、背面に広角、超広角に加え、2つの望遠カメラを組み合わせたクアッドカメラを搭載する。背面カメラは本体上部から順に、1200万画素/F2.2超広角カメラ(13mm相当)、2億画素/F1.8広角カメラ(24mm相当)、5000万画素/F3.4光学5倍望遠カメラ(111mm相当)が並び、広角カメラの内側に1000万画素/F2.4光学3倍望遠カメラ(67mm相当)も備える。フロントカメラはディスプレイ上部のパンチホールに1200万画素/F2.2セルフィーカメラ(26mm)を内蔵する。

背面には『縦三眼デザイン』のクアッドカメラを搭載。カメラリング部分はボディから約2mm(実測)の突起

 背面カメラは従来モデルからデザインなどを継承しているが、望遠カメラの構成が変更されている。従来は2つの望遠カメラがいずれも1000万画素イメージセンサーを採用し、片方は光学3倍(70mm相当)、もう片方は光学10倍(230mm相当)で構成されていたが、「Galaxy S24 Ultra」では片方が同じ1000万画素イメージセンサーで光学3倍(67mm相当)望遠カメラだが、もう片方はイメージセンサーが5000万画素に変更され、光学5倍(111mm相当)の望遠カメラとなっている。つまり、イメージセンサーが高画素化し、光学倍率は低くなっているわけだ。こう書くと、遠景が撮れなくなったと捉えられそうだが、「Galaxy S24 Ultra」では従来からのピクセルビニングに加え、クロップ(切り出し)を組み合わせ、サムスン独自の画像処理エンジン「ProVisualEngine」で処理することにより、高画質のまま、遠景を撮影できるようにしている。ペリスコープレンズなどで、より高倍率を追求するのも手だが、その分、レンズが暗くなるうえ、カメラモジュールのメカニズムも複雑になってしまう。おそらく、これらのバランスを考慮したうえで、今回の「Galaxy S24 Ultra」のカメラ構成が決められているのだろう。今回も最大100倍スペースズームで月を撮影してみたところ、これまでと変わらない月の写真を撮ることができた。「AIで処理しているから、本物の月では……」といった声もあるが、一般的なデジタルカメラで撮影しても画像処理をするわけで、別物と言うほどの違いはない。むしろ、誰でも手軽にこういった写真が撮れることがスマートフォンのカメラの楽しさのひとつではないだろうか。

カメラの設定画面。[インテリジェント最適化]では画質の最適化に加え、[シーン別に最適化]も設定できる

 撮影モードは「ポートレート」「写真」「動画」「その他」が並び、「その他」には「プロ」「食事」「ハイパーラプス」「デュアル画像」などの多彩なモードが用意される。「その他」に含まれる「EXPERT RAW」を選べば、JPEG形式の画像に加え、RAW形式のデータを保存でき、アドビの「Lightroom」などで現像することで、より本格的な写真の生成や編集も可能だ。Sペンをリモートシャッターとして利用できる機能も継承されている。

カメラの撮影モードで[その他]を選ぶと、多彩なモードで撮影が可能。よく使うモードは中段やや下の右側の[+]から追加できる。RAWデータ形式で保存したいときは、左上の[EXPERT RAW]を選び、アプリをダウンロードする

 撮影した写真はサムスン独自の[ギャラリー]アプリで閲覧したり、管理できるが、Googleフォトの[フォト]アプリもインストールされているため、Googleにバックアップしたり、Google Oneを契約して、編集機能などを利用することもできる。バックアップについてはマイクロソフトとサムスンのグローバルでの提携もあり、OneDriveが利用でき、撮影した写真や動画を自動的にバックアップできる。ちなみに、カメラ周りには直接、関係ないが、Windowsに搭載されている「スマートフォン連携」は、機能の提供開始当初からGalaxyでの動作実績が確認されており、より確実に使いたいのであれば、Galaxyを選ぶというのも手だ。

撮影した画像はサムスン独自の[ギャラリー]アプリで閲覧が可能。Googleの[フォト]アプリもインストールされているが、「Galaxy AI」による編集機能を使うときは[ギャラリー]から操作する
やや逆光のもとで撮影。表情や背景、セーターの質感などもバランス良く再現。モデル:葵木ひな(Twitter:@hina1006ta_aoki、所属:ボンボンファミン・プロダクション
[ポートレート]で撮影。これだけ背景がしっかりボケてくれると、かなり人物が際立つ
店舗内で、明るい店外をバックに撮影。背景のボケ具合やグラスの質感などもうまく再現できている。グイッと飲みたくなる一枚
最大100倍スペースズームで撮影。満月ではないため、ちょっと暗めだが、これくらいの写真をスマートフォンで撮れるのは楽しい
インカメラによるセルフィー。[ポートレート]ではなく、[写真]で撮影

 撮影した画像の編集については、「Galaxy AI」の効果もあり、多彩な機能が利用できる。背景に映り込んだ人物や看板などを消去したり、人物の位置を移動したときの背景の空白部分を「Galaxy AI」で生成するといったことも可能で、「Pixel」シリーズなどでおなじみの編集マジックと変わらないか、同等以上の編集が楽しめる印象だ。さらに、「Galaxy S24 Ultra」ならではのSペンを使い、写真に手書きのメッセージを加えることも可能だ。

[ギャラリー]アプリで表示した写真を編集
人物をSペンで選択して、花の方へドラッグして、近づける
人物を移動することができ、元々、人物が居た場所には道路らしきものが描かれている

「Galaxy AI」でフラッグシップの新時代を切り開く「Galaxy S24 Ultra」

 各社が展開するスマートフォンのラインアップは、性能や機能の差に基づいて、『フラッグシップ』『ミッドレンジ』『エントリー』などのカテゴリーが存在する。しかし、スマートフォン全体の成熟度が高まってきたことで、それぞれのカテゴリーの違いが見えにくくなりつつある。なかにはわずかなスペック向上だけで、毎年のように価格ばかりが高騰している機種もあるが、やはり、フラッグシップモデル、上位モデルだからこそ、ユーザーが楽しめる機能やユースケースを提案して欲しいところだ。

 そんな中、今回発売された「Galaxy S24 Ultra」は、「Galaxy AI」によって、「ライブ翻訳」「リアルタイム通訳」「チャットの翻訳」「記事の要約」「画像編集」など、普段の生活からビジネスシーンまで、幅広いシチュエーションで活用できる機能を提案している。これらに加え、「Galaxy S24 Ultra」にはSペンという独自のアドバンテージを持っており、他のスマートフォンとは違った活用も楽しめる。「Galaxy AI」という、新しい時代へ向けたスマートフォンの可能性を追求したいユーザーなら、ぜひ試して欲しい一台と言えるだろう。