法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Leitz Phone 3」、「Leica」テイストの写真を楽しむ一台

 ドイツの老舗光学機器メーカーとして知られるライカ(Leica)が手がけるスマートフォン「Leitz Phone」シリーズの三代目モデル「Leitz Phone 3」が発売された。従来モデルに引き続き、シャープが製造を担当し、ソフトバンクから販売される。実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

ソフトバンク/ライカ 「Leitz Phone 3」、161mm(高さ)×77mm(幅)9.3mm(厚さ)、209g(重さ)、Leica Black(写真)をラインアップ

世界へ拡がった「カメラ付き携帯電話」の文化

 今年4月、再スタートを切ったNHKの「新プロジェクトX」。第2回の放送では世界初のカメラ付き携帯電話「J-SH04」の開発ストーリーが取り上げられた。気が付けば、すでにら四半世紀近く経っているが、モバイル業界では当時をご存知ない若い世代の人たちも増え、「え? 昔の携帯電話って、カメラ付いてなかったんですか?」と真顔で聞かれることがあるくらい、必須機能として、完全に定着している。当時、筆者が執筆したレビュー記事では、「カメラはケータイの新トレンドになるか?」「「撮る」「見る」「送る」で遊ぼう!」といった文言で、カメラ付き携帯電話の楽しさと可能性を伝えたが、正直なところ、日本発のカメラ付き携帯電話の文化が今日のように、世界中に拡がることまでは想像できていなかった。

 そんなカメラ付き携帯電話によって、大きな影響を受けたのがカメラ業界だ。旅行などで持ち歩いていたカメラはスマートフォンに置き換わり、コンパクトデジタルカメラの市場も縮小してしまった。デジタル一眼カメラの市場は活況だが、多くの人にとって、最初のカメラ体験がスマートフォンになり、写真を楽しむのもInstagramなどのSNSに投稿されたものが中心となるなど、カメラ業界を取り巻く環境は大きく変わりつつある。

 当然、カメラ業界もこうした動きに危機感を募らせており、ここ数年は一般的なコンパクトデジタルカメラが少なくなる一方、新たにVlogカメラがラインアップに加えるなど、SNSやスマートフォンを意識した製品を展開しつつある。

 今回紹介する「Leitz Phone 3」もそんなカメラ業界の危機感から生まれたモデルと言えそうだ。ドイツの老舗光学機器メーカーとして知られるライカ(Leica)ブランドのスマートフォンで、製造はシャープが担当し、ソフトバンクから販売される。シリーズとしては、2021年7月に初代モデル「Leitz Phone 1」、2022年11月に二代目の「Leitz Phone 2」がそれぞれ発売され、今回の「Leitz Phone 3」は三代目モデルになる。

 「Leitz Phone 3」を手がけたライカは、今から100年以上前に、世界ではじめて35mmフィルムカメラの量産を実現したことでも知られ、カメラ業界において、最高峰のブランドのひとつとされる。ライカは元々、「ライツ(Leitz)」(エルンスト・ライツ/Ernst Leitz)という社名で、その会社が開発したカメラなので、「Leitzのカメラ(Camera)」で「Leica」と名付けられたことが由来となっている。裏を返すと、ライカが手がけるスマートフォンに、「Leica」ではなく、敢えて「Leitz」のネーミングを与えているのは、現在のライカとして、それだけ強い思い入れがあるわけだ。

 ライカがスマートフォンを手がける背景にについては、「Leitz Phone 2」の記事でも少し触れたが、前述のように、多くの人のカメラのファースト体験がスマートフォンになり、ライカとしては自らが持つ技術やブランド価値に触れる機会が減っていることが挙げられる。一般的なカメラもスマートフォンのカメラも写真や動画を撮るツールのひとつだが、ライカとしては同社が培ってきた技術やノウハウをスマートフォンに注ぎ込むことで、ライカの価値を伝えられる製品に仕上げ、スマートフォンのカメラのポテンシャルを引き出したいという考えのようだ。言わば、「ライカの世界に足を踏み入れるためのスマートフォン」という位置付けを目指しているわけだ。

 取り扱いについては従来に引き続き、ソフトバンクのみで販売される。「Leitz Phone」シリーズはシャープの「AQUOS R」シリーズをベースに開発されており、「Leitz Phone 1」は「AQUOS R6」、「Leitz Phone 2」は「AQUOS R7」がそれぞれのベースモデルで、今回の「Leitz Phone 3」は昨夏発売の「AQUOS R8 Pro」がベースモデルになる。ただ、ベースモデルと言っても「Leitz」のバッジを着けただけというものではなく、外装やカメラ機能などにおいて、ライカならではのこだわりがしっかりと活かされている。ちなみに、「AQUOS R8 Pro」はオープン市場向けにSIMフリーモデルが販売されているが、「Leitz Phone 3」はこれまで同様、ソフトバンク独占で販売されるとのことだ。

 ソフトバンクオンラインショップでの販売価格は19万5696円で、端末購入サポートプログラムの「新トクするサポート(プレミアム)」を利用すれば、1~12回が月々4995円、13~48回が3771円で購入できる。12回支払い後、早トクオプションを利用し、端末を返却すると、1年間利用の実質負担額は5万9940円になり、早トクオプション利用料の1万2100円を含め、合計7万2040円で利用できる計算だ。ただし、実際には「あんしん保証パックサービス」への加入も条件になるため、もう少し負担は増える。

Leitz Phone 3販売価格

ダイヤモンドパターンの背面パネルとローレット加工のフレーム

 まず、外観からチェックしてみよう。前述のように、「Leitz Phone」シリーズは「AQUOS R」シリーズをベースにしているが、ボディはライカ独自のテイストでデザインされている。今回の「Leitz Phone 3」もブラックのフレームを採用し、端末を手にしたときの滑りにくさなどを考慮して、側面にはローレット加工を施し、背面はダイヤモンドパターンのパネルが装着されている。

「Leitz Phone 3」と「AQUOS R8 Pro」の背面。基本的なデザインは共通しているが、「Leitz Phone 3」は背面パネルやカメラリング部分などの仕上げが異なる
「Leitz Phone 3」(左)と「Leitz Phone 2」(右)の前面。四隅が角張ったフレームから丸みを帯びた形状に変更されている
「Leitz Phone 3」(左)と「Leitz Phone 2」(右)の背面。ガラスによる光沢仕上げからダイヤモンドパターンの背面パネルに変更され、精悍なイメージになった

 従来の「Leitz Phone 2」はベースモデルの「AQUOS R7」から大きくデザインを変え、シルバーのアルミフレームに、背面はガラス仕上げを採用していたが、今回は「AQUOS R8 Pro」のボディをうまく継承しながら、レンズキャップも含め、ブラックを基調としたデザインになり、全体的に引き締まった印象に仕上げられている。

背面は上部中央にカメラを備える。背面パネルはダイヤモンドパターンが施され、カメラリングも光沢仕上げとなっている。中央の「Leitz」ロゴが目を引く

 パッケージには従来モデルに引き続き、本体に装着するシリコン製保護ケースが同梱される。従来モデルではケース装着時に前面のフレームの一部が見えてしまっていたが、今回はディスプレイ周囲の額縁の仕上げなども変更され、しっかりとボディを覆う形状に仕上げられている。本体背面の中央には「Leitz」の赤いロゴバッジが着けられているが、シリコン製保護ケースの右上にも備えられ、「Leitz」ブランドを主張している。

パッケージには端末本体のほかに、シリコン製保護ケース、レンズキャップ、クイックスイッチアダプター、クイックスタートガイドが同梱される
同梱の保護ケースを装着した前面。側面のボタン類なども操作しやすく、違和感なく利用できる
同梱の保護ケースとレンズキャップを装着した背面。レンズキャップは「Leitz Phone 2」のシルバーからブラックに変更されたが、形状などは同じなので、流用できるようだ
「Leitz Phone 2」(下)は保護ケース装着時にフレームが見えていたが、「Leitz Phone 3」ではケースがフレーム部分を覆う形状に仕上げられている

 耐環境性能については「AQUOS R8 Pro」と同じ仕様で、IPX5/IPX8準拠の防水、IP6X準拠の防塵に対応する。一般的なデジタルカメラでは防水防塵対応のモデルが少ないが、「Leitz Phone 3」であれば、降雨時など、環境や天候に左右されず、撮影を楽しむことができるわけだ。

約6.6インチのPro IGZO OLEDを搭載

 ディスプレイは「AQUOS R8 Pro」と同じく、ワイドUXGA+(2730×1260ドット表示)対応の約6.6インチPro IGZO OLEDを採用する。最大10億色表示、2000nitsのピーク輝度、2000万対1のコントラスト比をはじめ、黒フレームをさし込むことによる最大240Hzのリフレッシュレート、画面静止時のアイドリングストップ(1Hz表示)による高い省電力性能など、国内外で販売されるスマートフォンの中でもトップクラスのクオリティを持つ。従来モデルの記事でも触れたが、ライカとしてはPro IGZO OLEDの優れた表示性能を高く評価しているという。

 生体認証はディスプレイ内に、超音波式指紋センサーを搭載し、指紋認証が利用できるほか、インカメラによる顔認証にも対応する。超音波式指紋センサーは他製品でも採用されているが、「Leitz Phone 3」には「AQUOS R8 Pro」と同じ大型の指紋センサーが採用されているため、画面に2~3秒ほど、一度だけ、指先を当てれば、指紋を登録できる。指紋認証時の反応も優れているが、ひとつ課題となっているのが市販の保護フィルムや保護ガラスを貼ったときの対応だ。保護フィルムの場合はフィルムを貼付後、指紋を再登録すれば、通常通り、利用できる。指紋認証対応を謳う製品が望ましいが、特に謳われていない製品でも動作するケースが多いようだ。一方、保護ガラスについては指紋認証対応を謳う製品が必須で、対応製品の選択肢もかなり限られている。筆者は本誌の「みんなのケータイ」で「今度は大丈夫? AQUOS R8 proの超音波式指紋センサー対応保護ガラス」という記事で対応製品を説明し、現在も市販の保護ガラスを貼った状態で利用しているが、指先の湿度などによって、指紋認証の反応が少し鈍くなることがある。画面の美しさなら、『ガラス』に一日の長があるが、指紋認証の反応を重視するなら、『フィルム』を選ぶのも手だ。もっとも何も貼らずに使うのもアリだが……。

 バッテリーは5000mAhで、本体下部のUSB Type-C外部接続端子からの充電に加え、Qi対応のワイヤレス充電も利用できる。スタンド式のワイヤレス充電台では、本体背面にレンズキャップを装着したとき、少し浮いた状態で置くことになるが、筆者がANKER製ワイヤレス充電台などを試した範囲では、問題なく、充電ができている。もちろん、レンズキャップを外せば、背面はほぼフラットになるため、ワイヤレス充電台には通常通り、置くことができる。

本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える
本体左側面にはボタン類などがない。背面パネルは両側端へ向けて、わずかに湾曲している
右側面には電源ボタン、シーソー式の音量キーを備える。カメラ部の突起は二段階になっているため、目立ちにくいが、実測でも約2.7mm程度と、意外に少ない

 電源関連では従来モデルや「AQUOS R8 Pro」と同じように、バッテリーへの負荷を抑えながら充電する「インテリジェントチャージ」に対応する。充電時の最大充電量を90%で停止し、直接、端末に給電する「ダイレクト給電」に切り替えることで、バッテリーの劣化を抑えることができる。長くスマートフォンを利用することに配慮した機能のひとつと言えそうだ。

バッテリー残量90%まで充電し、それ以降は直接、端末にダイレクト給電をすることで、内蔵バッテリーを保護できる「インテリジェントチャージ」に対応

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen2を採用し、12GB RAMと512GB ROMを搭載。最大1TBのmicroSDメモリーカードを装着することも可能だ。メモリー(RAM)については「AQUOS R8 Pro」と同じだが、内蔵ストレージ(ROM)については「AQUOS R8 Pro」の256GBよりも大容量化が図られている。microSDメモリーカードも利用できるが、「Leitz Phone」ならではの写真撮影で何枚も何十枚も撮影したり、RAW形式でも保存するような場合でも安心して利用できる。

 ネットワークは5G/4G LTE/3G W-CDMA/GSMに対応し、5Gについてはソフトバンクが転用で運用する1.7GHz帯の「n3」、700MHz帯の「n28」にも対応する。5Gについては対応の有無が話題に挙がることが多いNTTドコモ運用の「n79」にも対応するが、ベースとなるモデルが「AQUOS R8 pro」のソフトバンク版ということもあってか、ミリ波の「n257」には対応しない。SIMカードはnanoSIM/eSIMのデュアルSIMに対応する。

本体上部には3.5mmイヤホンマイク端子、ピンで取り出すタイプのSIMカードスロットを備える
本体上部にはピンで取り出すタイプのSIMカードトレイを備える
SIMカードスロットには下段側(背面側)にmicroSDメモリーカードを装着できる。SIMカードトレイは上段側(ディスプレイ側)にさし込む構造

 Wi-FiはIEEE 802.11 a/b/g/n/ac/ax準拠で、2.4/5/6GHzでの利用が可能。対応する無線LAN機器が必要になるが、従来の「Leitz Phone 2」に比べ、6GHz帯での利用が追加されている。Bluetoothは5.3対応で、コーデックは一般的なSBCやAACをはじめ、より高音質なaptX、aptX Adaptive、aptX-HD、LC3、LDACにも対応する。FeliCaも搭載しているため、おサイフケータイの各サービスも利用可能だ。

「AQUOS R」シリーズ譲りの便利機能を搭載

 プラットフォームはAndroid 14がインストールされており、原稿執筆時点では2022年9月1日版のAndroidセキュリティアップデートが適用されている。プラットフォームのアップデートやセキュリティパッチの配布期間については、特にアナウンスされていないが、ベースとなる「AQUOS R8 pro」は最大3回のOSバージョンアップを謳っており、「Leitz Phone3」も基本的にはこれに準拠すると推察される。ただし、「Leitz Phone 3」には独自の撮影モード「Leitz Looks」が搭載されているため、その関係でソフトウェア更新の提供が遅れたり、見送られる可能性もゼロではない。ソフトバンクには「Leitz Phone 3」のような製品についてもきちんとバージョンアップの情報提供をお願いしたい。

 ホーム画面については「AQUOS R8 pro」の「AQUOS Home」と同じユーザーインターフェイスのものが設定されているが、スマートフォンの操作に慣れていないユーザーのための「かんたんモード」も用意されている。文字やアイコンが大きく表示されるモードだが、個別の項目を有効にすることもできるため、かつてライカカメラで撮影を楽しんだシニア/シルバー世代のユーザーにも扱いやすい環境を提供できる。欲を言えば、もう少し画面のデザインや色調などを「Leitz Phone」らしいものにしたモードがあっても良かったのかもしれない。

ホーム画面には「LFI Widget」が設定されている。「Leica Fotografie International」というライカ専門誌の写真が表示される
クイック設定パネル(通知パネル)は大きなボタンで校正されるデザイン。右下のペンアイコンから並べ替えなどのカスタマイズが可能
ホーム画面から上方向にスワイプすると表示されるアプリ一覧画面。他のAndroidスマートフォンと違い、アプリ一覧画面でフォルダーが作成し、アプリをまとめることが可能
「かんたんモード」の[Simple Home]を設定したホーム画面。できれば、アプリアイコンの背景をグレーやブラックにするなど、「Leitz Phone 3」に相応しいカラーを採用して欲しかった
「かんたんモード」のアプリ一覧画面はアプリが3列表示になり、キャプションの文字も大きく表示される

 日本語入力については、Androidプラットフォーム標準の「Gboard」が搭載される。ベースモデルの「AQUOS R8 pro」ではシャープ独自の「S-Shoin」を利用することができたが、シャープは昨年の「AQUOS sense8」以降、日本語入力を「Gboard」に切り替えたため、「Leitz Phone 3」もこれに倣った形となっている。「Galaxy S24」のレビュー記事でも触れたように、パスワード入力機能などの連動を考慮しての対応になるが、やはり、日本語入力はユーザービリティを大きく左右する機能のひとつでもあるため、少し気になる点と言えそうだ。

 また、「AQUOS R8 pro」をはじめ、シャープ製端末の独自機能を集めた「AQUOSトリック」は、「Leitz Phone 2」に引き続き、[設定]アプリ内に[便利機能]として、まとめられている。いずれも実用的な機能なので、購入後にひと通り、チェックしていただきたいが、「Payトリガー」「Clip Now」「テザリングオート」などはおすすめしたい。「Payトリガー」はロック解除時に指紋センサーを長押しすると、特定のアプリや複数のアプリを登録したフォルダーが表示できる。出荷時は[PayPay]が登録されており、コンビニエンスストアなどでの支払い時にすぐに画面を表示できる。「Clip Now」はスクリーンショットを撮る機能で、画面の右上や左上を長押しすると、すぐにスクリーンショットを保存できる。「テザリングオート」はあらかじめ設定した位置に移動したとき、テザリングを自動的にON/OFFできる機能になる。たとえば、筆者は打ち合わせなどでインプレスに出向いたとき、自動的にテザリングをONにして、ノートパソコンを利用できるようにして、インプレスを離れれば、自動的にOFFに切り替えて、余計な接続をしないようにできるわけだ。

[設定]アプリの[便利機能]で「かんたんモード」を設定可能。ホームアプリ(Simple Home)を含め、まとめて変更できるが、個別に設定を変更することが可能
[設定]アプリの[便利機能]は、AQUOS R8 Proの[AQUOSトリック]と同じ内容。シャープ製端末独自の便利な機能がまとめられている
「Payトリガー」は画面ロック解除時、指紋センサーを長押しすることで特定のアプリを起動できる。出荷時は[PayPay]が設定されている
[テザリングオート]は特定の場所に移動したとき、自動的にテザリングをON/OFFできる機能

ライカらしい撮影体験が楽しめる「Leitz Looks」

 カメラについては従来の「Leitz Phone 2」に引き続き、約4720万画素の1インチ(1.0型)のイメージセンサーに、F1.9の「Leica SUMMICRON」レンズを組み合わせたメインカメラ(19mm相当)を搭載する。ディスプレイ上部のパンチホール内には、1260万画素イメージセンサーとF2.3レンズを組み合わせたインカメラ(27mm相当)を内蔵する。

4720万画素の1インチ(1.0型)イメージセンサーを採用したメインカメラ

 スマートフォンのカメラにおける1インチイメージセンサーは、かつてPanasonicが「LUMIX DMC-CM1」(2014年発表)で初搭載し、その後、しばらく途絶えていたが、2021年にシャープが「AQUOS R6」でデジタルカメラ用のイメージセンサーを搭載し、後日、発表された「」Leitz Phone 1」と共に、世界中からたいへんな注目を集めた。2022年に登場した「AQUOS R7」と「Leitz Phone 2」では。ソニーが新たに開発したスマートフォン向けの1インチイメージセンサーを採用し、昨年の「AQUOS R8 Pro」、今回の「Leitz Phone 3」にも同じものが搭載されている。従来のデジタルカメラ用の1インチイメージセンサーはスマートフォン向けの周辺回路やライブラリなどがなく、開発にかなり苦労したが、スマートフォン向けの新しいイメージセンサーでは環境も整っているという。

 今回の「Leitz Phone 3」では、ベースモデルの「AQUOS R8 Pro」と同じように、14chのスペクトルセンサーと測距センサーを組み合わせることで、より高品質な写真を撮影できる。スペクトルセンサーは光の波長を分解したときの強度分布を測るもので、約600種類の光源を判別し、それぞれに合わせた自然な色合いで撮影ができる。屋外撮影での夕方や日没の時間帯をはじめ、室内ではレストランなどの電球色の照明などの影響を受けることで、写真の色合いがやや不自然に仕上がってしまうことがあるが、こういったシチュエーションでも自然な仕上がりの撮影ができるわけだ。特に、服装や食べ物など、被写体の色合いが重要なシーンでは効果が期待できる。今回は「AQUOS R8 pro」のレビュー記事と同じように、「Leitz Phone 3」と「Leitz Phone 2」でミニカーを並べた写真を撮ってみたが、画像処理エンジンが更新されたこともあってか、「AQUOS R8 Pro」と「AQUOS R7」の違いに比べ、差分はかなり少なくなった印象だ。

「Leitz Phone 2」で撮影。「AQUOS R8 Pro」のレビュー時、「AQUOS R7」で撮った写真よりも少し色合いが自然になった
「Leitz Phone 3」で撮影。「Leitz Phone 2」で撮った写真との差分は、かなり少なくなった

 そして、「Leitz Phone 3」でもっとも重要なのは、「Leitz Looks」と呼ばれる撮影モードだ。従来の「Leitz Phone 2」でも搭載され、独特の雰囲気のある写真が撮れることで注目されたが、今回もライカの代表的なMレンズ「SUMMILUX 28mm」「SUMMILUX 35mm」「NOCTILUX 50mm」のF値をシミュレートした撮影モードになる。撮影時にはF1.2、F1.4~F8までの範囲でF値を調整することで、撮影する写真のボケ味を調整することも可能だ。これに加え、「Leitz Looks」モードでは利用するフィルターとして、「ORIGINAL(NONE)」「MONOCROME(BW)」「CINEMA CLASSIC(CLS)」「CINEMA CONTENPORAY(CNT)」「ENHANCED(ENH)」「VIVID(VIV)」が用意されており、それぞれのフィルターを選ぶことで、誰でも手軽にカラートーンに変化を加えた写真を撮ることができる。さらに、撮影時に「LEITZ」ロゴや絞り値、シャッタースピード、焦点距離などの情報を書き込むウォーターマーク機能も搭載される。仕上がった写真のカッコ良さもさることながら、こうした情報を表示することで、あまりカメラに親しみがないユーザーでも撮影時の設定値などに興味を持つことを狙っていると言えそうだ。

ポートレートで撮影。背景のボケと色合いが独特の仕上がり。画面下にウォーターマークが書き込まれる。モデル:葵木ひな(Instagram:@hina_aoki_officialTwitter:@hina1006ta_aoki、所属:ボンボンファミン・プロダクション
桜並木を背景に撮影。人物が際立って撮影できているが、少し色合いが他の写真と違う印象

 実際の撮影については、「Leitz Looks」で撮ってみると、ちょっと違った雰囲気の写真を誰でも簡単に撮ることができる。本物のカメラで凝った写真を撮るには、「カメラの知識がないと……」「マニュアル設定って、何をどう設定すれば?」と躊躇してしまうが、「Leitz Phone 3」の「Leitz Looks」で撮影すると、誰でも簡単に『ライカっぽい写真』を撮ることができる。もっとも「Leitz Phone 3」はライカブランドなので、これも『ライカで撮った写真』なのだが(笑)、『ライカのデジタルカメラやフィルムカメラで撮ったような写真』が誰でも簡単に撮れると考えていただきたい。特に、フィルターで「MONOCROME(BW)」や「CINEMA CLASSIC(CLS)」などを選んで撮影すると、ちょっとした作品のような仕上がりになることもあるので、はじめての人でも写真を撮ることが楽しくなるかもしれない。

街中で見かけた階段を何気なく、「Leitz Looks」の「MONOCROME(BW)」で撮ってみると、ちょっとシブい写真になる(?)

 ただ、ひとつ気になるのは、従来モデルから指摘していた「ポートレート」や「Leitz Looks」で撮影したときの保存時間だ。従来の「Leitz Phone 2」では約5~6秒かかっていたものが、今回は約3秒程度まで短縮されたため、かなり改善されたとも言えるが、それでも連続で「パシャパシャ」と撮影できないのは、今どきのユーザーにとって、ちょっとストレスかもしれない。

 撮影した画像はAndroidプラットフォーム標準の[フォト]アプリで確認することができ、Googleアカウントにより、Googleフォトに自動的にバックアップされる。切り抜きや傾き補正などの一般的な編集機能は、[フォト]アプリ内で利用できるが、Googleアカウントが「Google One」を契約していれば、「Pixel」シリーズなどでおなじみの「消しゴムマジック」や「背景ぼかし」などが利用できる。ちなみに、「消しゴムマジック」や「背景ぼかし」など、Google Oneで提供されているAIを利用した編集機能は、5月15日以降、Googleフォトユーザーが利用できることがアナウンスされている。

ライカの世界を手軽に楽しむための一台

 スマートフォンで利用する機能の中で、今やもっとも重要とも言えるカメラ。24年前にカメラ付き携帯電話が登場したときは、ここまでカメラが進化し、InstagramなどのSNSによって、人々のつながりにも拡がるとは、とても想像できなかったが、多くの人々が携帯電話やスマートフォンに搭載されるカメラを楽しみ、各メーカーや携帯電話会社、サービスプロバイダーなどがカメラ機能を活かしてきたことがこれだけの発展に結び付いたと言えるだろう。

 その一方で、一般的なデジタルカメラは市場が縮小してしまい、カメラ業界の人々の『恨み節』を耳にすることも少なくないが、一般的なカメラにはスマートフォンのカメラにはない楽しさや拡がりがあるのも確かだ。今回の「Leitz Phone 3」はまさにそういった『カメラの楽しみ』をスマートフォン上で体験させてくれる一台に仕上げられている。しかもその『楽しみ』を裏付けているのは、世界最高峰のカメラブランドとも言われる『ライカ』であり、「Leitz Looks」によって、誰でも手軽に個性的かつ雰囲気のある写真を撮影できるのは、大きな魅力のひとつと言えるだろう。カメラを本格的に楽しんできた人は、「これじゃ物足りないよ」という声もあるかもしれないが、「Leitz Phone 3」はデジタルカメラのスマートフォンのカメラの間をつなぐ存在でもあり、より『デジタルカメラ』的なスマートフォンが登場するきっかけになるかもしれない。ぜひ一度、ソフトバンクショップのデモ機で「Leitz Looks」を起動し、「Leica」テイストの一枚を撮って、新しいカメラの世界をのぞいてみていただきたい。