法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

熟成のiPhone SE(第3世代)、どこで買う? 誰が買う? いつ買う?

 Appleは3月9日、新たに5Gに対応した「iPhone SE(第3世代)」を発表し、同月18日から国内向けに販売を開始した。2020年4月に発売され、好評を得てきた「iPhone SE(第2世代)」の後継モデルに位置付けられるが、筆者も購入し、試用することができたので、実機を見ながら、その仕上がりをチェックしつつ、どんなユーザーが買うのか、どこで買うのか、いつ買うのかといったことを考えてみよう。

Apple「iPhone SE(第3世代)」、138.4mm(高さ)×67.3mm(幅)×7.3mm(厚さ)、約144g(重さ)、ミッドナイト(写真)、スターライト、PRODUCT REDをラインアップ

シェアを支えたiPhone SE(第2世代)

 本誌でのニュースをはじめ、スマートフォンのシェアが報じられることは多いが、国内においては調査によって、多少の差異があるものの、基本的にはiPhoneが半数近いシェアを確保している。最近は電気通信事業法改正で端末購入時の割引が制限されたため、販売数に陰りが見えてきたという指摘もあるが、相変わらず、安定した人気は保っている。

 ただ、「どのiPhoneが売れているのか」という視点で見ると、少し状況が変わりつつあるようだ。これも調査によって、結果はいろいろだが、市場関係者によれば、かつては毎年9月に登場するiPhoneの最新モデルはもっとも注目度も高く、年末から春商戦にかけて、好調な売れ行きを記録していたという。ところが、iPhone 11シリーズ以降、「高付加価値=高価格路線」が一段と鮮明になったiPhoneのナンバリングモデル(iPhone 11/12/13シリーズ)は発売直後こそ、ある程度、数が出るものの、春商戦は型遅れモデルや手頃な価格のモデルに売れ筋が移行しつつあるという。これも電気通信事業法改正が大きく影響しており、iPhoneの半数近いシェアは横ばいながら、その内容や機種の構成は大きく変わりつつある。

 そんなここ数年のiPhoneのシェアを支える機種と言えば、「iPhone SE(第2世代)」だろう。iPhone 6から続くデザインを継承したコンパクトなボディを採用し、発売当時の最新設計だったA13 Bionicチップを搭載し、最小容量の64GBモデルで5万円を切る価格を実現した。発売は当初、2020年3月を予定していたが、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大が始まったばかりの頃で、やや出荷が遅れ、2020年4月に発売された。

 「iPhone SE(第2世代)」は発売当初からコンパクトなモデルを待っていたユーザーからの反響が大きかったことに加え、マスク着用が必須となった社会環境において、指紋センサーによる「Touch ID」の良さが再認識されたり、テレワークやリモートワーク、オンライン授業などで買い換えや2台目需要が拡大したこともあり、順調に売れ行きを伸ばした。これらの要素に加え、今年3月のauの3G停波、2021年1月終了のPHSなど、サービスが終了する契約者向けに、優遇施策で販売される端末としても「iPhone SE(第2世代)」が提供されるなど、キャリアとしても「扱いやすいモデル」として、販売を伸ばした。

2年を経て、後継モデルが登場

 そんな「iPhone SE(第2世代)」の後継モデルとなるのが今年3月に発表され、販売が開始された「iPhone SE(第3世代)」だ。iPhoneのナンバリングモデル(iPhone 11/12/13シリーズ)は、毎年、新モデルが9月に発表されているが、「iPhone SE(第1世代)」から「iPhone SE(第2世代)」は3年、「iPhone SE(第2世代)」から「iPhone SE(第3世代)」は2年という間隔で発売されたことになる。今後、iPhone SEがシリーズとして継続するか否かは不明だが、継続するのであれば、間隔として、2~3年がひとつの目安になりそうだ。

 今回発売された「iPhone SE(第3世代)」は、後述するように「iPhone SE(第2世代)」との違いが非常に少ないモデルになる。ただし、国内のモバイル市場の環境が変化したこともあり、取り扱いなどについては、これまでと違った点が見受けられる。たとえば、「iPhone SE(第3世代)」を取り扱うブランドが拡大したこともそのひとつだ。

 これまでiPhoneはAppleと契約を交わした携帯電話会社のみが扱うことができるとされ、国内では2008年からソフトバンク、2011年からau、2013年からNTTドコモがそれぞれ販売し、2021年からは楽天モバイルでも販売が開始された。これら以外の別ブランドやMVNO各社でもiPhoneが販売されているが、型落ちモデルやリファービッシュ品(整備済製品)だったり、販売台数やモデルが限られているなど、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルが販売する最新のiPhoneとは、別枠として捉えられてきた。

 ところが、今回の「iPhone SE(第3世代)」は、既存の4社(4ブランド)に加え、別ブランドのワイモバイルとUQモバイルでも3月18日から販売されている。これはワイモバイルがソフトバンクに、UQモバイルがKDDIに、それぞれ統合されたことも関係しているが、これまでよりも幅広いブランドで発売日初日から購入できるようになったわけだ。価格的にはauやソフトバンクと変わりないが、ワイモバイルとUQモバイルはメインブランドよりも割安な料金プランを選べるため、「iPhone SE(第3世代)」購入のタイミングで契約することができる。これまでのように、型落ちモデルや旧モデルを選ぶ必要はない。

 価格については別表の通りで、いずれの容量もAppleと楽天モバイルがもっとも安く、NTTドコモ、au、ソフトバンクで購入した方が10~20%程度、割高になる。その代わり、NTTドコモ、au、ソフトバンクについては、残価設定ローンのような端末購入プログラムでも購入できるため、実質負担額を半額程度に抑えられる。端末は基本的に2年後に返却することになるが、2年後に新機種に同様の端末購入プログラムで買い換えることも可能だ。楽天モバイルが提供する「楽天モバイルiPhoneアップグレードプログラム」も同様の端末購入プログラムだが、楽天カードでの48回払いが条件となっている。

初日から「1円」で買えた?

 64/128/256GBのモデルが5万円台後半から10万円を切る価格で購入できる「iPhone SE(第3世代)」だが、ここで挙げた価格はあくまでも各社が示した『公式な販売価格』に過ぎない。少し変な表現になってしまうが、「iPhone SE(第3世代)」(それ以外の機種も)は、もっと安く入手できるのが実状だ。

 すでに、各媒体でも報じられ、昨年あたりからSNSなどで何度も話題になっているが、ここのところ、iPhoneは一部の量販店などで、大幅に割り引かれた価格で販売されている。当初はiPhone 12 miniなど、発売当初に今ひとつ人気を得られなかったモデルが在庫処分なのか、MNP獲得のためなのか、1円や23円といった価格で販売されていたが、「iPhone SE(第2世代)」などもこれに加わり、最近では多少、価格の差はあるものの、「iPhone 11」や「iPhone 12」、「iPhone 13」なども見かけることが増えた。そして、今回の「iPhone SE(第3世代)」も3月18日の発売日から「1円」や数十円といった金額で販売されていたことが伝えられている。

 今回は「iPhone SE(第3世代)」の話題なので、詳しい内容は説明しないが、本来、回線に紐付く端末販売は、改正電気通信事業法により、最大2万2000円に制限されている。ところが、今回の販売方法では、販売店が独自に数千円から数万円を値引き、前述の端末購入プログラムやMNPなどを条件にした割引を組み合わせることで、1円や数十円での販売を可能にしている。端末購入プログラムを利用するため、2年後には端末を返却しなければならないが、最終的な実質負担額を大幅に抑えることができるわけだ。

 ただし、この販売方法では店舗独自の割引が回線契約に紐付かないことが条件となるため、本来であれば、端末だけを購入したいユーザーにも販売しなければならないが、「MNP向けの在庫しかない」などの理由で販売が断られるケースが報告されている。今後、総務省が問題視することが予想されるため、継続的に同じ価格で購入できるかどうかは不透明な状況だ。

まったくの同じデザインでケースなども流用可能

 さて、販売状況などの背景はここまでにして、本体についても少しチェックしてみよう。本誌では速報記事をはじめ、関連記事が掲載されているため、詳細はそちらもあわせて、ご覧いただきたいが、「iPhone SE(第3世代)」はチップセットなどを除き、基本的に「iPhone SE(第2世代)」と共通仕様となっている。

パッケージにはUSB-C Lightningケーブル、マニュアルが同梱される。初期の「iPhone SE(第2世代)」で同梱されていた電源アダプターは同梱されない

 まず、ボディは2014年に発売された「iPhone 6」のデザインを継承したもので、ボディ側面をラウンドさせたコンパクトな形状に仕上げられている。外観については、従来の「iPhone SE(第2世代)」とまったく同じデザインで、ケース類や保護ガラスカバーなども従来品と同じものが利用できる。関係者によれば、2つの端末を並べても外観だけでは判別できないとしている。iPhoneのナンバリングモデル(iPhone 11/12/13シリーズ)と比較すると、大きさはiPhone 13 mini/iPhone 12 miniよりもわずかに大きく、重量も4gほど重い。

「iPhone SE(第2世代)」(左)と「iPhone SE(第3世代)」(右)の前面。「iPhone SE(第2世代)」は市販の保護ガラスを貼付した状態だが、外観はまったく同じ
「iPhone SE(第2世代)」(左)と「iPhone SE(第3世代)」(右)の背面。カメラやボタン類のレイアウトやサイズもまったく同じなので、ケースなどは同じものが使える
「iPhone 13 mini」(左)は「iPhone SE(第3世代)」(右)に比べ、ひと回りコンパクトだが、ディスプレイは大きい
「iPhone SE(第3世代)」と同じタイミングで追加された「iPhone 13 Pro」(左)のアルパイングリーン、「iPhone 13」(右)のグリーン

 ボディの防水防塵性能も従来と同じIP67だが、iPhone 13シリーズなどは耐水性能の基準が水深6メートルのIP68対応となっている。同じ『新しいiPhone』ということで、iPhone 12/13シリーズなどと同じように捉えられがちだが、「iPhone SE(第3世代)」はiPhone 12/13シリーズのような堅牢性や耐久性を持ち合わせていないと考えておいた方がいいだろう。

 バッテリーは従来モデルと同じ筐体ながら、容量としては10%程度増量した2007mAhのバッテリーを搭載する。Appleが示す使用可能時間などを比較すると、「iPhone SE(第2世代)」に比べ、20%程度のロングライフ化を実現している。

 充電は従来通り、本体下部のLightning端子からの充電、Qi規格準拠のワイヤレス充電に対応する。従来の「iPhone SE(第2世代)」は発売当初、パッケージに電源アダプター(USB充電器)が同梱されていたが、Appleは2020年10月のiPhone 12シリーズ発表を機に、iPhoneへの電源アダプター同梱を取りやめているため、今回の「iPhone SE(第3世代)」にも同梱されていない。必要であれば、市販品を購入することになる。

背面は左上にカメラ、中央にロゴがレイアウトされたデザイン
本体左側面には分割式の音量キー、着信/サイレントスイッチを備える
右側面はサイドボタン(電源キー)を備える。カメラの突起も大きくない
本体下部に外部接続に利用するLightning端子を備える

物足りなさが残るディスプレイ

 ディスプレイも「iPhone SE(第2世代)」と共通の4.7インチRetinaHDディスプレイを搭載する。解像度は1334×750ドット表示で、最大輝度の625nit、1400:1のコントラスト比などのスペックも共通となっている。

 従来モデルのデザインを継承と捉えると、ディスプレイが共通なのは、しかたがないのかもしれないが、プラットフォームが違うとは言え、今や3万円前後の端末でもフルHD(1920×1080ドット)以上の解像度を持つディスプレイが標準になり、なかには有機ELディスプレイを採用するモデルが登場していることを鑑みると、正直なところ、かなり物足りないというか、ひと昔前のディスプレイという印象は否めない。

 特に、ディスプレイ上下の額縁の太さは、下側に指紋センサーが内蔵されているとは言え、さすがに太すぎる印象で、全体的なデザインの古さを感じさせてしまう。もちろん、8年間も変わらないデザインで製品化できたことは素晴らしいが、さすがにスペック的にもデザイン的にも限界が近づいているように見える。もし、数年後に次期モデルがあるのなら、そろそろ見直しを検討して欲しいところだ。

プラットフォームは出荷時にiOS 15を搭載。ホーム画面も初期設定でウィジェットなどが並ぶレイアウト

 本体前面のディスプレイの下側には、従来モデル同様、指紋センサーが内蔵され、指紋認証(Touch ID)が利用できる。新型コロナウイルス感染が拡大する中、マスク着用時の画面ロックの解除のしやすさから、指紋認証が重宝されたが、「iPhone SE(第3世代)」でも同じように、ワンタッチで画面ロックを解除できるほか、サイトへのログインなど、さまざまな認証に利用できる。

 ちなみに、iPhoneのナンバリングモデル(iPhone 12/13シリーズ)のFace IDがアップデートにより、マスク着用時も利用できるようになったため、必ずしもTouch IDにアドバンテージがあるという状況ではなくなりつつある。

ディスプレイの下側にはおなじみのTouch ID(指紋認証センサー)を内蔵
Touch IDはロック解除だけでなく、iTunes StoreやApp Storeの決済、ウォレットやApple Payなどにも利用できる

5G対応は契約の切り替えに注意

 チップセットはiPhone 13シリーズと共通のA15 Bionicを搭載する。ストレージは前述の価格一覧を見てもわかるように、64/128/256GBのモデルがラインアップされる。ストレージの容量は大きいに越したことはないが、やはり、最小容量の64GBモデルは、写真やビデオ、楽曲などを端末に保存すると、容量が残り少なくなるので、予算が許せば、128/256GBモデルを選ぶようにしたい。

 ネットワークについてはこれまでの2G/3G/4Gに加え、新たに5Gネットワークに対応する。前述の4社6ブランドはエリアこそ違え、いずれも5Gサービスを提供しているため、対応する料金プランを契約していれば、対応エリア内で5Gに接続できる。

 ここでひとつ注意しておきたいのが5G対応の料金プランへの切り替えだろう。これはiPhone 12シリーズが発売されたときにも話題になったが、これまで「iPhone SE(第2世代)」など、4G LTE対応のiPhoneを利用してきたユーザーがAppleで「iPhone SE(第3世代)」のSIMフリー版を購入し、SIMカードを差し替えても各社の対応エリア内で5Gネットワークに接続できないケースがある。

 本誌記事の「5G対応の『iPhone SE(第3世代)』購入時の契約はどうなる? 4G契約のままでは使えないキャリアも」でも説明されているが、NTTドコモ、au、ソフトバンクは契約と料金プランの変更が必要で、NTTドコモとauは電話、ソフトバンクについては店頭での手続きが必要になる。逆に、楽天モバイルは「Rakuten UN-LIMIT VI」が4G/5G共通の料金プランのため、基本的にはSIMカードを差し替えるのみで利用できる。

 ちなみに、SIMカードについては従来に引き続き、nanoSIMカードとeSIMのデュアルSIMに対応するが、「iPhone SE(第3世代)」はデュアルeSIMにも対応しているため、各社のeSIMサービスを自由に利用しやすい環境が整っている。ただし、eSIMは落下などで破損し、端末を交換するときは再発行が必要になるため、eSIMを提供する各社の再発行の手順を確認しておくことをおすすめしたい。

本体右側面にピンで取り出すタイプのSIMカードを備える。SIMカードはnanoSIMカードとeSIMのデュアルSIM対応

 また、FeliCaについては「iPhone SE(第2世代)」と同様で、モバイルSuicaやPASMOなど、ApplePay対応サービスが利用できる。前述のTouch IDとの組み合わせにより、決済時に手際良く、操作ができるのもうれしいところだ。

 Wi-FiはIEEE802.11ax準拠のWi-Fi 6、BluetoothはBluetooth 5.0に対応するなど、前述の5G対応を除けば、通信関連はほぼ同じ仕様を継承している。

 ちなみに、位置情報サービスに利用する衛星測位システムは、表記が従来モデルの「内蔵GPS/GNSS」から、「内蔵GPS、GLONASS、Galileo、QZSS(みちびき)、BeiDou」に変更されているが、元々、GNSSは「Global Navigation Satellite System」の略で、衛星を利用した全地球航法システムの総称なので、内容的に違いはなく、衛星表示アプリの内容も変わらないので、ほぼ同じ仕様と考えて、差し支えないだろう。

A15 Bionicで進化したシングルカメラ

 従来モデルと比較して、本体の外観がまったく変わらず、機能的にも大差がないとされる「iPhone SE(第3世代)」だが、もしかすると、実用面でもっとも差を体感できるのがカメラかもしれない。

 今回の「iPhone SE(第3世代)」は従来モデル同様、背面に12MP/F1.8の広角カメラを搭載する。Appleによれば、イメージセンサーやレンズなど、カメラ部を構成する基本的な部品は、「iPhone SE(第2世代)」と同じとのことだが、チップセットがA15 Bionicに変更されたことで、iPhone 11シリーズ以降で採用されている「Deep Fusion」が利用できる。

 Deep Fusionは一度の撮影で、複数枚の画像を撮影し、合計9枚の画像から1枚の写真を合成することで、ノイズが少なく、被写体の質感が優れた写真を撮影できる機能になる。Deep Fusionをはじめとする画像処理には、A15 Bionicに組み込まれている16コアのNeural Engineが活用されるため、従来モデルよりも高画質の写真が撮影できるわけだ。

背面カメラは「iPhone SE(第2世代)」と同じスペックで、位置もまったく同じ

 実際に「iPhone SE(第3世代)」と「iPhone SE(第2世代)」で撮り比べた印象としては、ポートレートを撮影したときの顔の明るさや服装の質感などに違いが見られたが、背景のボケ具合についてはそれほど大きな差はなかった。暗いところでの撮影は、「iPhone SE(第3世代)」の方が自然な色合いで再現されているようだ。

 今やiPhone 13シリーズに限らず、ほとんどのスマートフォンでマルチカメラが当たり前となっている中、「iPhone SE(第3世代)」はシングルカメラながら、一般的な利用であれば、それほど大きな不満を感じさせないレベルの写真を撮影できるように仕上げられていると言えそうだ。

ポートレートで撮影。背景も自然にボケて、人物が強調されている モデル:葵木ひな(Twitter:@hina1006ta_aoki、ボンボンファミン・プロダクション
少しアングルが違ってしまったが、「iPhone SE(第2世代)」で撮影した写真(下)に比べ、「iPhone SE(第3世代)」で撮影した写真(上)の方が顔も明るく服装の色合いも自然な印象
いつもの薄暗いバーで撮影。色合いの違うカクテルだが、両方ともバランス良く再現できている

どこで買う? 誰が買う? いつ買う?

 さて、ここまで「iPhone SE(第3世代)」を取り巻く環境や端末の内容について、説明してきたが、最後に「iPhone SE(第3世代)」の「買い」のポイントについて、考えてみよう。

 まず、本稿のタイトルにも挙げた「どこで買う?」という点については、冒頭でも説明したように、今回の「iPhone SE(第3世代)」はAppleのほかに、国内の4社6ブランドで販売されている。各社の販売価格に差はあるが、端末購入プログラムを利用すれば、実質負担額を抑えられるので、自分の使いたい携帯電話会社を選ぶのが基本路線だ。料金プランの安さを狙うなら、ワイモバイルやUQモバイルを検討するのも手だ。自分の活動範囲がエリアとしてカバーされているのであれば、楽天モバイルも選択肢に入るだろう。ちなみに、ahamoは「iPhone SE(第3世代)」が対応端末に含まれているが、ahamo申し込み時に同時購入はできず、別途、ドコモオンラインショップで購入する必要がある。

 ちなみに、あらためて説明するまでもないが、iPhoneはAndroidスマートフォンに比べ、同一プラットフォーム間でのデータ移行が非常に簡単かつ確実なため、これを機に、各キャリアの料金プランやサービス内容、エリアなどを再検討して、MNPを利用した移行を考えてみるのもいいだろう。ニーズはあまり多くないかもしれないが、有料ながらもメールアドレス持ち運びサービスの提供も開始されたので、今まで以上に乗り換えがしやすいはずだ。

 次に、「誰が買う?」として、どういうユーザーがターゲットなのかを考えてみよう。旧機種からの買い換えという点で見ると、従来の「iPhone SE(第2世代)」をはじめ、iPhone 6/6s/7/8シリーズが対象になりそうだ。

 最新のiOS 15は、iPhone 6シリーズが対応機種から外れたものの、iPhone 6s/7/8シリーズや「iPhone SE(第2世代)」は、今のところ、対応機種に含まれている。そのため、旧機種のユーザーによっては、「別に買い換えなくてもいいよ」と考えているかもしれない。ただ、iPhone 6シリーズから続くデザインは、ディスプレイサイズなども含め、そろそろ限界に近づいているため、数年後に後継モデル「iPhone SE(第4世代)」(仮称)が発表されるとしてもまったく違うデザインになるかもしれない。もし、このデザインが好みなのであれば、数年後に今回の「iPhone SE(第3世代)」の販売が終了する前に、買い換えた方が賢明だ。

 また、具体的なユーザー層を考えた場合、「iPhone SE(第3世代)」は価格が安いことから、新生活に合わせ、保護者が中高生などに買い与えるケースもかなり多いという。価格だけを考えれば、悪くない選択かもしれないが、前述のように、堅牢性や耐久性などの点を見ると、「iPhone SE(第3世代)」が適しているのかどうかは疑問が残る。

 特に、若年層の場合、落としたり、壊したりする傾向が多いとされるため、「AppleCare+ for iPhone」などの補償サービスは加入しておきたいが、むしろ、iPhoneのナンバリングモデル(iPhone 11/12/13シリーズ)のた方がユーザーインターフェイスとしても新しく、長く使っていくうえでも有用だという見方もできる。ホームボタンを利用したiOSのユーザーインターフェイスは、今後、終息していく可能性が高いため、これからスマートフォンに慣れ親しんでいくユーザーには、新しいユーザーインターフェイスのiPhoneを与えた方が有効ではないだろうか。

 一方、最近では70代や80代のiPhoneユーザーを見かけることも少なくないが、こうした世代のユーザーがホームボタンを備えたiPhoneを利用しているのであれば、「iPhone SE(第3世代)」が買い換えのファーストチョイスになりそうだ。人によって、捉え方はさまざまだが、こうした世代のユーザーがiPhoneのナンバリングモデル(iPhone 11/12/13シリーズ)で採用されているスワイプ操作のユーザーインターフェイスに移行することは、不可能ではないものの、少し障壁になるかもしれないからだ。

 Appleがこれまでと同様のユーザーインターフェイスを採用した「iPhone SE(第3世代)」をラインアップした背景には、こうした新しいユーザーインターフェイスのiPhoneに移行が難しい(移行したくない)ユーザーを意識しているのかもしれない。

 さて、販路やユーザー層、購入時期などを踏まえて、「iPhone SE(第3世代)」の「買い」のポイントを考えてみたが、上記のシニア世代やシルバー世代のユーザーを別にすれば、現時点のタイミングでは必ずしも「iPhone SE(第3世代)」を選ばなくてもいいのではないかというのが本音だ。確かに、従来モデルと変わらない筐体に最新にA15 Bionicを搭載し、カメラやバッテリーなどの性能を向上させた「iPhone SE(第3世代)」は、十分、評価に値する仕上がりと言えるだろう。しかし、本稿で触れたように、ここのところ、量販店などを中心に、iPhone 12/12 mini/13/13 miniなどが安価で販売されており、ある程度、長い目で考えれば、そちらを購入した方がおトクだと考えられるからだ。

 端末購入プログラムでの購入やMNPなどが条件に挙げられているケースも多いが、実質負担額は数千円から2万円程度で済むことが多く、「AppleCare+ for iPhone」などの補償サービスを契約していれば、2年後に「端末が壊れて、回収してもらえない」といった事態も避けられる。なかでも「iPhone 12 mini」や「iPhone 13 mini」は、ボディの大きさが「iPhone SE(第3世代)」変わらないため、iPhone 6/6s/7/8シリーズや「iPhone SE(第2世代)」から移行してもそれほど違和感なく、操作できるはずだ。

 今後、こうした販売方法は見直される可能性があり、いつまで買えるかは不透明だが、「iPhone SE(第3世代)」だけをファーストチョイスとするのではなく、「iPhone 12 mini」や「iPhone 13 mini」なども比較対象に加え、自分のベストなiPhoneを選ぶことが堅実と言えそうだ。