レビュー
石川温が「iPhone SE(第3世代)」を触って使ってわかった「キャリアから引っ張りだこ」の理由
2022年3月14日 22:00
3月18日に発売となるアップルの「iPhone SE(第3世代)」を数日間使っている。5G対応で、iPhone 13シリーズと同じ「A15 Bionic」チップを搭載。長年、愛されてきたデザインであり、欠点がなくなったのが最大の特徴と言える。発売以降、爆発的に売れる大ヒット商品になるのではないか。と言う気がしている。
「A15 Bionic」チップで長寿命化を期待
注目しておきたいのが、A15 Bionicだ。
実際にiMovieを使って動画編集をしてみたが、確かにサクサクと編集できる。とはいえ、やはり4.7インチという画面サイズが小さすぎる。
編集をしていて感じたことは、「iPhone SE(第3世代)」は「動画を撮りまくって編集する」、「eスポーツで戦う」といったようなニーズを満たすものではないだろう。「iPhone SE(第3世代)」のA15 Bionicはアプリをゴリゴリと使うためのものではない。「iPhone SE(第3世代)」に搭載されたA15 Bionicの真骨頂は「最新のiOSを長く使える」という点に尽きるだろう。
iOS 15は、6年前に発売された「iPhone 6s」でも適用できる。iOSは比較的、古い機種までサポートするのが特徴だ。今回、「iPhone SE(第3世代)」で最新のA15 Bionicが載ったことで、下手をするとこの先、6年ぐらい最新のiOSを使い続けられるのではないかと思う。
5Gに対応
続いて、5G通信を試してみた。
せっかくなので、4Gにしか対応していない「iPhone SE(第2世代)」も準備して、同時にスピード測定アプリを走らせた。
通信回線はauのpovo。あらかじめ1回線を所有していたが、今回のために楽天モバイルで契約していた回線をMNP。オンラインで契約でき、翌日午前中には手続きが完了し、「iPhone SE(第3世代)」のeSIMに書き込むことができた。トッピングは24時間、データ使い放題で330円。これで何度、速度測定をしても、データが減る心配がない。オンラインで契約、eSIMで書き込み、速度測定使い放題が簡単にできるようになるなんて、なんていい時代なのか。
JR大井町駅周辺など、5G NR(New Radio)のエリアとなっている場所から5G通信が安定している場所で何度か試してみたが、5G対応の「iPhone SE(第3世代)」のほうが当然のことながら通信速度は速かった。2倍から8倍近く速いという感じであった。
iPhone 13シリーズが4x4 MIMOなのに対して、「iPhone SE(第3世代)」は2x2 MIMOとなっている。
5Gに関しては、エリアが広がりつつあるものの、5Gエリアだと思って、速度測定をしてみたら、急に4Gに落ちることも珍しくない。今後、5Gエリアが広がり、5G SA(スタンドアローン)なども始まれば、そうした状況に変化も見られるだろうが、4G転用の5Gエリアも多く、劇的に通信速度が向上する場所が増えるというわけでもなさそうだ。
特に「iPhone SE(第3世代)」はミリ波にも対応していない。4x4 MIMOではなく、2x2 MIMOしか対応してないとしても、さほど気にする必要はなさそうだ。
第2世代同様のカメラ構成
カメラに関しては1つしかなく、画角を凝ると言ったことは難しく「メモ程度」に撮影できるという程度に過ぎない。
ただ、「iPhone SE(第2世代)」と比べたところ、A15 Bionicが働き、同じカメラモジュールであっても、若干ながら発色が良いような印象を得た。ただこれも、第2世代と第3世代を一緒に撮影して比べたからのこその違いに過ぎない。
ナイトモードがないなど気になる点もあるが、SNSでバンバン写真をあげるような人でなければ充分に満足できるクオリティに仕上がる。
3G停波時代の「国民機」
実際に「iPhone SE(第3世代)」をしばらく使ってみたが、カメラは一つだし、画面サイズも4.7インチと決して大きいわけではない。むしろ、普段、6インチを超える大画面や2画面、折りたたみを使っていると、小さすぎると感じるほどだ。
ただ、持ちやすさはずば抜けてよく、片手での操作もとてもしやすい。Touch IDという指紋認証で、しっかりと画面ロックを解除できる。マスクをしていても、ストレスなく解除できるのはコロナ禍であり、花粉症の自分としては本当に快適だ。
一方で、目立った特徴は皆無であり、こうしたレビュー記事を書くのは相当、難儀だ。
ただ、そうした尖った部分がないからこそ、幅広い人が満足できる製品になっているとも言える。
「iPhone SE(第3世代)」はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルに加えて、UQモバイルとワイモバイルでも初日から発売となる。
すでに楽天モバイルがかなりの割引を行っているが、早晩、かなりの値引きでばら撒かれるのではないか。
まもなく、KDDIは3Gサービスを停波させるし、今後、ソフトバンクとNTTドコモもそれに続く。
各社とも、ガラケーユーザーをいかにスマートフォンに移行させるかで苦労している。
そんななか登場した「iPhone SE(第3世代)」は、とにかく安価かつ5G対応と言うことで、将来的にも長くネットワークを利用できる。また、A15 Bionicで、今後、数年間、最新のiOSを使い続けられる可能性がある。
国民のスマートフォンユーザーの半分が持っているとされるiPhoneなので、操作に困ったときも、周りに相談できる人が多い。おサイフケータイを使っていたのであれば、Apple Payがあるのは、相当心強い。SuicaやiD、QUICPayだけでなくnanacoやWAONも使える。「iPhone SE(第3世代)」で使えないのは楽天Edyぐらいなものだ。
各キャリアとも3Gの巻き取りで「iPhone SE(第3世代)」をばら撒くのではないか。5G対応ということで、ARPUの上昇も見込める。昨今の通信料値下げで疲弊しているキャリアとすれば、「iPhone SE(第3世代)」で一気に5Gを普及させたいことだろう。
目新しさに欠ける「iPhone SE(第3世代)」ではあるが、数年後には、多くの人が所有する「国民機」になりそうな気がしてならない。