レビュー

「iPhone SE(第3世代)」実機レビュー、5G対応&A15チップ搭載はどんな価値をもたらす?

iPhone SE(第3世代)

 最新スペックを搭載しつつも、比較的、手頃な価格帯となる「iPhone SE(第3世代)」が3月18日に発売される。

 iOS 15.4を搭載して発売される「iPhone SE(第3世代)」は、一見すると、2年前に登場した第2世代と同じ外観とあって、違いがわかりにくいかもしれない。

 これまでもiPhone SEは、iPhoneファミリーのなかでも、コンパクトで、価格面でも割安なレベルで提供されてきた。ずっと買い替えていなかった人、あるいはこれからiPhoneを選ぶといった人にとっては、有力な選択肢になる存在だ。

 あらためて、どこに注目すべきなのか、ご紹介しよう。

iPhone SE(第3世代)、注目のポイントは

iPhone 13シリーズと同じガラス素材を採用

 まずは外観を見てみよう。そのコンパクトなボディは、最大の特徴であり、第2世代と同等の仕上がり。航空宇宙産業でも用いられる7000番台のアルミニウム素材が用いられている。

 背面ガラスは、iPhone 13シリーズの背面に用いられているものと同じ素材で、アップルでは「現在のスマートフォンではもっとも頑丈なガラス」としている。

 またIP67相当の防水防塵性能も備える。

 「iPhone SE(第3世代)」のアルミニウムボディ、耐久性の高いガラス、そして防水防塵は、いずれも長く使いたい人に適した特徴だ。

カラーリング

 カラーバリエーションは、先代と同じように見えるが、今回はブラックのような「ミッドナイト」、ホワイトのような「スターライト」、そして真っ赤な(PRODUCT)REDの3種類。

 今回、筆者が手にしたiPhone SE(第3世代)はミッドナイト。ディスプレイ周辺はブラックだが、7層レイヤーのインク処理が施されているという背面の色合いは深い紺色。ミッドナイトというカラー名称に「なるほど」と思わずうなずいてしまった。

ディスプレイとTouch ID

 4.7インチのRetina HD(IPS液晶)ディスプレイは、1334×750ピクセル、コントラスト比は1400:1。周囲の明るさなどにあわせて表示を最適化する「True Tone」対応で、幅広い色を表現できる。ディスプレイはハプティックタッチ(Haptic Touch)対応で、その下部には、おなじみのホームボタン配置され、指紋認証のTouch IDを利用できる。

Touch ID対応のホームボタン

 ちょうど「iOS 15.4」ではFace ID側で、マスク着用中でもロック解除できるようになるが、ホームボタンを愛用している人にとっては、引き続き「iPhone SE(第3世代)」でホームボタンとTouch IDを使い続けられることの意義は大きいだろう。

A15チップは何をもたらすのか

 iPhone 6sの3倍、iPhone 7の2倍、iPhone 8の1.8倍、そして先代のiPhone SE(第2世代)から1.25倍高速――それが、「iPhone SE(第3世代)」に搭載されるチップ「A15 Bionic」の性能だ。グラフィックを処理するGPUの性能でいえば、iPhone 6の5倍、iPhone 7の3.7倍、iPhone 8の2.2倍とされる。

A15 Bionicを搭載
6コアのCPU
価格帯に関わらず、A15は他社よりも優位、発表会では紹介された
4コアのGPU
CPUの比較
GPUの比較

 「A15 Bionic」は、昨秋登場した「iPhone 13」シリーズでも搭載されていた。つまり、最新の処理能力がiPhone SE(第3世代)に備わっていることになる。さらに「A15 Bionic」では、16コアのNeural Engine(ニューラルエンジン)も用意されている。機械学習関連の処理を専門に担うプロセッサーだ。

 こうしたチップセットの性能を数字で表現されても、ちょっと、ピンと来ない……なんて人に向けて、アップルの9日の発表会で紹介された利点は、シンプルにアプリの起動が早くなることや、写真アプリのスクロールが早くなること、そしてゲームを快適にプレイできることといった点だ。

 さらには、カメラ機能や、機械学習を駆使したテキストの認識表示が、わかりやすい一例として紹介されていた。たとえば、ゲーム画面内の空の表現もより自然なグラフィックを楽しめることになる。

16コアのNeural Engine
iPhone 8の26倍
テキスト認識のような機能もスムーズに

 ユーザーにとっては、ちょっと関心を持って手を伸ばそうとしたコンテンツをそのままストレスなくプレイできる。そうしたことは、当たり前のように受け止められがちで、ちょっと気づきにくいところだが、嬉しいポイント。

 このNeural Engineの処理能力は、2017年に発売された「iPhone 8」の26倍。「iPhone 7」以前では用意されていない機能であり、そうした過去のモデルから買い換える人を含め、日々の生活で、地道ながらも大きな違いをもたらしていくことが期待される。

 最新のチップセットを搭載すること自体は、「iPhone SE(第2世代)」もまた同じだったため、そのポリシーが今回も採用されたと言える。発表会では、iOS 15、そして今後のバージョンアップでも利用し続けられることが紹介されており、より長い期間、不満なく使い続けられることも容易に想像できる。

カメラもパワーアップ

 カメラの作例については、別途、本誌でもお届けする予定で、今回は、まず仕様面の進化・違いと、どんな体験がもたらされるかをご紹介しよう。

 「iPhone SE(第3世代)」のカメラは、12MP(1200万画素)、広角(F1.8)というもの。光学手ブレ補正、最大5倍のデジタルズームという点を含め、「iPhone SE(第2世代)」とここまでは同じ。また、iPhone 13シリーズと比べると、「iPhone SE(第3世代)」には、ナイトモードや光学ズームがない。「iPhone SE(第3世代)」のISP(画像処理プロセッサー)は新たなものが採用された。

 一方で、先述した「A15 Bionic」搭載により、高い処理能力を手に入れた「iPhone SE(第3世代)」は、カメラ機能において「Deep Fusion」と呼ばれる機能と、スマートHDR4、フォトグラフスタイルを利用できるようになった。

Deep Fusion、スマートHDR4、フォトグラフスタイルとは

 Deep Fusionは、iPhone 11シリーズ以降、iOS 13.2で利用できるようになった、画像合成技術だ。

 暗い場面での撮影しようとする際、さまざまな露出(明るさ)の写真を記録しておき、ピクセル単位で解析する。それらの中から良い部分を合成して、ノイズを抑えながら、質感を高め、細部の表現を向上させる。

アップルが披露したDeep Fusionの作例

 いわゆるコンピュテーショナルフォトグラフィーと呼ばれる技術だが、ユーザーにとっては、シャッターボタンを押すだけで、より美しい写真を撮りやすくなる。仕組みを知らずとも、シンプルな使い勝手で、AIがサポートし、満足感を高めてくれる。「A15 Bionic」が搭載されることで、そうした体験が「iPhone SE」シリーズにもたらされたことになる。

アップルによるポートレートモードの作例

 「スマートHDR4」は、iPhone 13シリーズで導入された。HDR(HighDynamic Range、高いダイナミックレンジ)は、たとえば夏空のもとで、日陰にいる人を撮影する、といった場面を補正して、暗い場所の被写体も明るく記録してくれる機能。極端に暗い場面と明るい場面が混ざっていても大丈夫、というものだ。

アップルによるスマートHDR4の作例

 「フォトグラフスタイル」とは、撮影する際、「リッチなコントラスト」「鮮やか」など、被写体の色味、トーンをカスタマイズして撮影できる。たとえば「リッチなコントラスト」にすれば、よりドラマチックな写真になる。いわゆるフィルターのような機能だ。

カメラを起動し、上部右から2つ目にある、四角が重なったようなボタンをタップすると「フォトグラフスタイル」のモードを切り替えられる
リッチなコントラスト
鮮やか
暖かい
冷たい
標準
リッチなコントラスト
鮮やか
暖かい
冷たい

 それでいて、たとえば人物写真であれば、全体の雰囲気を調整しつつも、被写体を人と認識することで、その肌の質感(スキントーン)が維持されることになる。これはシンプルなフィルターではできないもの。

 ユーザーにとっては「撮りたい写真をかんたんに撮れる」場面がまたひとつ増えるわけだが、その背後には繰り返しになるが「A15 Bionic」がある。「メニューから選ぶだけ」「シャッターボタンを押すだけ」という簡単な操作で、より美しい写真を撮れる、という体験を支えるのは、最新チップセットとソフトウェアの連携だ。

5G対応

 「iPhone SE(第3世代)」では、いよいよ5Gに対応した。日本では2020年春に始まった5Gサービスが、求めやすい価格帯のiPhone SEでも利用できるようになった。

 たとえば日本では、auが5G対応の「iPhone 12」を導入した際、高速な通信サービスと、よりバッテリーが長持ちするよう、iPhoneとネットワークのチューニングが施されていることが明らかにされた。「iPhone SE(第3世代)」でも「スマートデータモード」を搭載。5Gほどの速度が不要な場合は、4Gへ切り替えてバッテリーを長持ちさせる。

 ちなみに「iPhone SE(第3世代)」は、5G通信で上り・下りの通信ともに2つのアンテナを使う「2×2 MIMO」をサポート。ミリ波と呼ばれる高い周波数は非対応となっている。

バッテリー

 「iPhone SE(第3世代)」は、第2世代よりも、たとえば動画再生で2時間、オーディオ再生で10時間、長く駆動する。

 この背景には、「A15 Bionic」により、ハードウェアとソフトウェアの密接な連携があり、バッテリー消費を最適化する工夫が盛り込まれている。

進化した点、引き継がれる点で「iPhoneの選択肢」が増える

 ここまでご紹介した「iPhone SE(第3世代)」の“新しい点”の一方、これまでから引き継がれた部分もある。代表的な要素は、Lightning端子とTouch IDだろう。どちらも、これまでの使い勝手に慣れ親しんだ人には、買い替え後、スムーズに使えるという側面がある。

 iPhoneには複数のラインアップが用意されており、5万円台から揃えられたiPhone SE(第3世代)は、過去のiPhoneを使ってきた人のうち、その使い勝手を変えたくないという人にはうってつけの製品。また、初めてiPhoneにしようとする人にとって、冒頭でも触れた通り、iPhoneのなかでも有力な選択肢になる。

 「A15 Bionic」搭載、iPhone 13シリーズと同じガラス素材での耐久性向上、バッテリー駆動時間の向上、そして5G対応は、長く使い続けたい人にとって魅力的な要素。「iPhone SE(第3世代)」は、引き続き、iPhoneファミリーのエントリーポイントとも言える存在になりそうだ。

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