法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

シャオミ「Redmi 9T」、1万円台で購入できるお買い得モデル

 2019年12月に国内市場に参入した中国のシャオミ。オープン市場向けに「Mi Note 10」や「Redmi Note 9S」などを販売する一方、au向けには初の5G向け端末「Mi 10 Lite 5G」を供給するなど、着実に国内市場への浸透を図っている。

 そんな同社の2021年モデルの第一弾となる「Redmi 9T」が発売された。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。

シャオミ「Redmi 9T」、約162.3mm(高さ)×77.3mm(幅)×9.6mm(厚さ)、約198g(重さ)、オーシャングリーン(写真)、カーボングレーをラインアップ

求められるコストパフォーマンス

 2019年の電気通信事業法改正により、国内のスマートフォン市場では端末購入補助金が大幅に制限され、売れ筋が大きく変化してきたとされる。

 これまで強いとされていたiPhoneもここ数年の高価格路線が徐々に敬遠され、iPhone 12シリーズで期待されていたiPhone 12 miniはまったく奮わない状況にある。

 各携帯電話会社が販売する端末ラインアップも一部のハイエンドモデルを除き、10万円以下のモデルが中心に展開され、売れ筋は3~5万円台のモデルが中心となりつつある。

 一方、SIMフリースマートフォンが展開されるオープン市場は、少し微妙な状況にある。これまでオープン市場向けのSIMフリースマートフォンは、主にMVNO各社のSIMカードを利用するユーザーに広く支持されてきた。ところが、昨年来の政府の強力な値下げ圧力を受け、主要3社が従来よりも数千円程度、割安な新料金プランを発表し、オンライン専用プラン(ブランド)や低価格ブランドも拡充を図ったことで、MVNO各社が厳しい戦いを強いられている。

 そのため、オープン市場向けのSIMフリースマートフォンの販売状況が落ち込んで……と想像してしまいそうだが、実は必ずしもそうではなく、意外に堅調な売れ行きを示しているモデルが増えているという。
 その 主戦場となるのは、やはり、3~5万円台以下のミッドレンジ で、MVNO各社のSIMカードを挿して利用するだけでなく、MNO各社と契約したSIMカードでの利用も増えているようだ。

 特に、主要3社のオンライン専用プランは、各プランごとの違いがあるものの、これまでのメインブランドと違い、端末販売にはあまり積極的ではなく、LINEMOのように「当面は販売を予定していない」とするケースもある。つまり、オープン市場で展開されるSIMフリースマートフォンは、今まで以上に幅広いユーザーから注目されることを意味している。

 今回、オープン市場向けに発売されたシャオミのSIMフリースマートフォン「Redmi 9T」は、そんな国内市場において、最安値クラスを実現したモデルになる。

シャオミについては本連載でも何度か取り上げてきたが、2019年12月の国内市場参入以来、オープン市場向けにはフラッグシップモデルの「Mi Note 10」や「Mi Note 10 Pro」、ミッドレンジの「Mi Note 10 Llite」や「Redmi Note 9S」を展開する一方、昨年夏にはau向けに初の5G端末「Mi 10 Lite 5G」を供給するなど、着実に国内市場への浸透を図ってきた。グローバル市場でも米アップルを抜き、第3位を獲得している。

 シャオミのラインアップについて、簡単におさらいをしておくと、「Mi」の名が冠された「Mi MIX」シリーズと「Mi」シリーズをプレミアムフラグシップ、「Mi Note」シリーズと「Mi T」シリーズをフラグシップ、「Redmi Note」シリーズをミッドレンジ、「Redmi」シリーズをエントリーレベルに位置付けている。つまり、今回のモデルはシャオミのラインアップで、もっともエントリーのシリーズになる。ちなみに、同じタイミングでソフトバンクから発売された「Redmi Note 9T」は、5Gに対応したミッドレンジに位置付けられる。ネーミングが似通っているが、混同しないようにしたい。

昨年発売された「Redmi Note 9S」(右)に比べ、わずかに幅が狭く、わずかに高さが長い。写真ではわかりにくいが、「Redmi 9T」(左)はやや画面が暗い

 価格についてはすでに販売が開始されており、今のところ、1万7000円前後で販売されている。この2万円を切るという価格設定は、現在、国内で販売されている主要メーカーのスマートフォンとして、もっともリーズナブルなものだ。

 内容については本稿で順次、説明するが、単純に値段だけを追求したモデルではなく、一般的な用途であれば、十分に実用できるモデルとして、しっかりと仕上げられている。販路については家電量販店やAmazonなどのECサイトなどに加え、主要MVNO各社がセット販売の端末としても扱っており、買いやすくなっている。

6.53インチフルHD+対応ディスプレイを搭載

 まず、外観からチェックしてみよう。ボディはラウンドさせた背面に、四つのエッジ(角)も丸みを帯びたデザインで、手にフィットして持ちやすい形状に仕上げられている。

テクスチャー仕上げの背面。エンボス加工が施された「Redmi」の文字が目を引く
背面のロゴはエンボス加工で描かれている。背面全体もテクスチャー仕上げで、指紋の跡などが付きにくい

 外観で特徴的なのは「Redmi」の大きなエンボス加工のロゴが印象的な背面で、樹脂製の背面パネルに独特のテクスチャーを施すことで、指紋の跡などがほとんど目立たない仕上げとなっている。

 パッケージにはクリアタイプのカバーが同梱される。

 防水防塵には対応していないが、シャオミによれば、ナノコーティングによる防滴には対応しているとのことで、雨に降られた程度であれば、動作に支障はない。逆に、水没などは端末を壊してしまう可能性が高いので、取り扱いには注意したい。

右側面は電源ボタンと分割式の音量キーを備える。電源キーには指紋センサーが内蔵される。同梱のクリアカバーは電源ボタン部分に穴が空いている
左側面にはボタン類がない。上側にピンで取り出すSIMカードスロットを備える
下部には中央にUSB Type-C外部接続端子を備える
上部には3.5mmイヤホンマイク端子、IRブラスターポート(赤外線通信)を備える。3.5mmイヤホンマイク端子はHi-Res Audio認証を取得

 ディスプレイは1080×2340ドット表示が可能な6.53インチのフルHD+対応IPS液晶を採用する。縦横比は19.5:9で、ディスプレイの上部には水滴型ノッチを備える。ノッチ部分はユーザーの好みに応じて、非表示にしたり、黒バックで目立たない設定にもできる。

 ディスプレイには米Corning(コーニング)社製Gorilla Glass3が採用され、独TUV Reinlandによるローブルーライト認証も取得済みとなっている。写真などで撮影すると、ややディスプレイが暗く写ってしまうが、これはおそらく視野角が少し狭いことが影響していると推察される。実用レベルではそれほど暗さを感じることはなかった。

 通常の表示モードのほかに、読書に適した「読書モード2.0」、太陽光の下での視認性を確保する「サンライトモード」などが用意されるほか、色温度調整機能なども備える。

 通常の表示モードも出荷時設定の「ライトモード」のほかに、「ダークモード」が用意されており、時間帯によって、自動的に切り替えることもできる。

 Redmi 9Tに搭載されるディスプレイはIPS液晶のため、有機ELディスプレイのような高い省電力効果があるわけではないが、バックライトの点灯を少なくでき、眼への刺激を抑えられるため、ダークモードに一定の効果は期待できそうだ。

側面に指紋センサーを内蔵

 生体認証は本体右側面の電源ボタンに内蔵された指紋センサーによる指紋認証、フロントカメラを利用した顔認証に対応する。

指紋センサーは右側面の電源ボタンに内蔵。電源ボタンを触るだけで解除できるため、操作しやすい。車載ホルダーに固定したとき、本体を前面から左手で触るだけで解除できるように、左手の親指も登録しておくと便利

 側面の指紋センサーは、画面ロック解除のために電源ボタンに触れれば、すぐに使いはじめられるため、非常に使い勝手が良く、最近、採用する機種が増えている。

 顔認証は指紋認証やパスワード、PINなどに比べると、安全性は低いものの、端末を手に取り、画面を見て、すぐに使い出せるメリットがある。

セキュリティはやや低くなるが、顔認証も利用可能。指紋認証と併用することができる

 昨今のマスクが必須となる環境で考えると、外出時など、マスクを装着しているときは指紋認証、マスクを外している自宅などでは顔認証という使い分けができる。

バッテリー

 バッテリーは6000mAhの大容量バッテリーを内蔵しており、18Wの急速充電に対応する。パッケージには22.5Wの急速充電器も同梱される。

 利用時間については通話が56時間、音楽再生が195時間、動画再生が17時間としており、一般的な利用でも数日間の動作が可能だとしている。

 今回試用した範囲でも電池の消耗は比較的、緩やかという印象だった。

 また、バッテリーについては1000回のくり返し充電でもバッテリー性能の劣化を抑える設計になっており、シャオミでは約4年間の継続利用を想定しているという。

チップセット

 チップセットは11nmプロセスルールで製造された米Qualcomm製「Snapdragon 662」を採用する。

 メモリーとストレージは4GB RAMと64GB ROMで構成し、最大512GBまでのmicroSDメモリーカードを装着できる。パフォーマンスはブラウザやメール、動画再生、音楽再生、SNSなどもストレスなく利用できるレベルで、十分に実用になる仕上がりだ。

 ちなみに、同じチップセットは昨年末に発売されたOPPO A73にも採用されている。

ネットワーク

 ネットワークは4G LTE/3G W-CDMA/2G GSMに対応する。

SIMカードトレイはnanoSIMカードを2枚、microSDメモリーカードを装着可能なトリプルスロットを採用。microSDメモリーカードのすぐ横が1枚目のSIMカード装着位置

 今回試用した範囲では、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの各社のSIMカードを認識し、音声通話とデータ通信が利用できた。

出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN。アルファベット表記だが、主要なMVNO各社のAPNは登録されている
出荷時に設定されてるau網のAPN。アルファベット表記だが、IIJmioやmineo、UQモバイルのAPNなども登録されている
出荷時に設定されてるソフトバンク網のAPN。ソフトバンクやワイモバイル、LINEモバイルなどのAPNが登録されている
楽天モバイルのSIMカードを挿したところ、APNが自動的に設定された

 SIMカードはnanoSIMのデュアルSIMに対応し、microSDメモリーカードとの併用ができるトリプルスロット仕様のため、1枚目に主要3社のSIMカードで音声定額を利用しながら、2枚目にMVNO各社やオンライン専用プランの安価なSIMカードを組み合わせるといった使い方ができる。

 Wi-Fiは2.4GHz/5GHzが利用できるIEEE 802.11a/b/g/b/ac対応となっている。

Android 10ベースのMIUI 12を搭載

 プラットフォームはAndroid 10ベースのMIUI 12を搭載し、日本語入力にはAndroidプラットフォーム標準の「Gboard」が採用される。

ホーム画面にはインストールされているアプリが表示されるユーザーインターフェイス。独自のMIUIを採用するため、アイコンはAndroidプラットフォーム標準と一部が異なる。出荷時設定では上方向にスワイプすると、検索画面が表示される

 MIUIはシャオミ製端末に搭載されるユーザーインターフェイスで、一般的なAndroidプラットフォームのホームアプリに比べ、広範囲に渡って、カスタマイズされている。ただし、Google Playなどは他のAndroidスマートフォンと同じように使えるので、アプリなどで心配することはない。

通知パネルは「Wi-Fi」や「自動回転」などのほかに、バーコードを読み取る「スキャナー」、数秒後に撮影できる「スクリーンショット」などの項目も登録されている

 ただ、ユーザーインターフェイスとしてはややクセがあるのも事実で、たとえば、ホーム画面で上方向にフリックすると、多くのAndroidスマートフォンではアプリ一覧が表示されるのに対し、Redmi 9Tをはじめ、MIUI搭載端末では検索画面が表示される。

 設定アプリ内の[ホーム画面]-[モーム画面モード]で、[アプリドロワーを使用]に切り替えれば、一般的なAndroidスマートフォンと同様のユーザーインターフェイスを利用できる。

設定アプリ内で[ホーム画面]を選べば、上方向にスワイプしたときの表示を切り替えられる
[ホーム画面モード]で[アプリドロワーを使用]を選べば、上方向にスワイプしたとき、アプリ一覧が表示される

 設定アプリ内の項目の並び方も独特で、使われている文言などもシャオミ独自の表現がいくつか散見される。慣れてしまえば、気にならないが、使い勝手を重視したいユーザーは設定アプリ内の各項目をチェックしながら、自分なりのカスタマイズを見つける必要があるだろう。

設定アプリの画面は一般的なAndroidスマートフォンと比べ、並び順や表記が異なる
[セキュリティ]アプリではウイルススキャンやクリーナー、バッテリー残量の確認などができる

 ちなみに、Redmi 9Tといっしょに発表されたソフトバンク向けの「Redmi Note 9T」は出荷時設定が修正されており、ホーム画面で上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。ちなみに、Androidプラットフォームのセキュリティパッチは、今回試用した段階で2021年3月版のものが適用されていた。

独自のツールのアプリもプリインストールされている
赤外線ブラスターを使った赤外線リモコン機能が利用できる

4800万画素AI4眼カメラを搭載

 カメラについては背面左上にメインのAI4眼カメラモジュールを搭載する。

背面のカメラは3つのカメラ、内側にマクロカメラのレンズで構成される。マクロレンズ側の周囲の光るパーツはややチープに見えてしまうのが残念

 左端の3つのレンズが並ぶ部分は、上部から順に800万画素/F2.2レンズの超広角カメラ、4800万画素/F1.79レンズのメインカメラ、200万画素/F2.4レンズの深度センサーで構成され、深度センサーの内側の小さい穴に200万画素/F2.4レンズによるマクロカメラが内蔵されている。

カメラ画素/F値
超広角カメラ800万画素/F2.2
メインカメラ4800万画素/F1.79
深度センサー200万画素/F2.4
マクロカメラ200万画素/F2.4

 4800万画素のメインカメラはセンサーサイズが1/2インチで、4つの画素を1つの画素として利用するビニング技術による「4in1スーパーピクセル」を搭載しており、暗いところでも明るく撮影できるようにしている。

カメラ起動時は「写真」や「ビデオ」、「ポートレート」などの他に、「もっと見る」を選ぶと、他の撮影モードを選ぶことができる

 撮影モードとしては標準的な「写真」、人物撮影に適した「ポートレート」、パラメーターを細かく設定できる「プロ」、1080p/30fpsの撮影が可能な「ビデオ」のほかに、「夜景」「パノラマ」「タイムラプス」「スローモーション」「ドキュメント」を選ぶこともできる。「48M」を選べば、メインカメラでビニングを利用せず、フル画素で撮影することも可能だ。

ポートレートで撮影。背景をぼかし、人物を際立たせた撮影ができる。モデル:葵木ひな(ボンボンファミン・プロダクション
「夜景」モードを使い、ホテルの窓から夜景を撮影。ややノイズが目立つ印象
「写真」モードで「0.5x」で撮影。明暗差が強いため、仕上がりは今ひとつ
「写真」モードで「1x」で撮影。さらに明暗がはっきりしてしまった印象
「写真」モードで「2x」で撮影。改札口にグッと寄ることができたが、明るい部分がやや飛んでしまっている
いつもの薄暗いバーで撮影。光の当たり具合のバランスがよく、きれいに撮影できている

 撮影については、基本的に「AI」を有効にしていれば、夜景や食事なども自動的に認識し、適切な設定で撮影が可能だが、マクロカメラによる接写は「カメラ」アプリの設定メニューから「マクロ」を有効にして、撮影する必要がある。最近、マクロカメラの搭載例が増えているが、女性であれば、ネイルやアクセサリーなどの撮影に適しているので、試して欲しいところだ。

マクロで撮影するときはファインダー右上のメニューを選び、表示されたパネル内で[マクロ]をタップする
マクロで撮影するときは、AIが「マクロ」と認識する

 フロントカメラは800万画素/F2.05レンズで構成され、ディスプレイ上部のノッチに内蔵される。メインカメラ同様、ポートレートやビデオでの撮影も可能で、美肌効果の「ビューティー」も設定することができる。

インカメラを使い、セルフィーで撮影

 最近のAndroidスマートフォンでは写真を閲覧するアプリとして、「Googleフォト」を標準で搭載するモデルが増えているが、Redmi 9TはMIUIを採用していることもあり、独自の[ギャラリー]アプリを標準で提供している。

撮影した写真は[ギャラリー]アプリで閲覧できる。[Googleフォト]も併用可能
[ギャラリー]アプリで編集も可能。被写体に応じた項目を選んで、簡単に補正ができる

 基本的な操作感は大きく変わらないが、アプリ内から編集メニューを呼び出し、明るさの補正やトリミング、ステッカーや落書きの追加、機種名などを表記する「透かし」の変更など、さまざまな写真の加工を可能にしている。ちなみに、「Googleフォト」も利用できるため、撮影した写真をWi-Fi接続時などに、自動的にクラウドに保存することもできる。

2万円を切る価格で買えるハイコストパフォーマンスモデル

 一昨年の電気通信事業法改正により、端末購入補助金が制限されたことで、ユーザーが端末に求める要素も大きく変わり始めている。必ずしもハイスペックのフラッグシップモデルを求めるのではなく、自分の予算に合った買いやすい端末を選ぶユーザーが増えている印象だ。しかし、ユーザーにとって、端末が安ければいいということではなく、やはり、価格に見合う、できることなら、価格を上回るスペックや機能を持つモデルを選びたいところだ。

パッケージには22.5W充電器、USBケーブル、クリアカバーなどが同梱される

 今回、取り上げた「Redmi 9T」は、競争が激しいグローバル市場や中国市場で戦ってきたシャオミらしく、非常にコストパフォーマンスの高い端末として、仕上げられている。2万円を切るというリーズナブルな価格ながら、6.53インチのフルHD+対応IPS液晶ディスプレイ、6000mAhの大容量バッテリー、4800万画素AI4眼カメラなど、ミッドレンジとしても通用するほどのスペックを持ち合わせている。

 ソフトバンクユーザーは同時発表の「Redmi Note 9T」という選択肢があるが、オープン市場向けに販売される「Redmi 9T」は2枚のnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを利用できるトリプルスロットを採用しており、SIMフリーならではの特徴を活かせる構成である点も見逃せない。派手さこそないものの、エントリークラスとしては非常に完成度の高い一台と言えるだろう。

Amazonで購入