法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

5G商用サービス開始前夜、何がどうなる? どれを買う?

 ここ数年、国内外のモバイル業界のニュースとして、大きく取り上げられてきた5G(第5世代のモバイル向け通信規格)。

 国内では2019年9月から各携帯電話会社がプレサービスを開始しているが、いよいよ今年3月から順次、正式な商用サービスが開始する見込みだ。

 ユーザーとしては国内での5G商用サービスがどうなるのかが気になるところ。各社の動向などを踏まえながら、3月の展開を予想してみよう。


5G、どうしよう?

 およそ10年ほどの周期で、世代が進んできた携帯電話の技術。第一世代のアナログ、第二世代のデジタル、世界共通規格を目指した第三世代。そして、現在、多くのユーザーが広く利用する第四世代の「LTE」。これに続くのがここ数年、国内外のモバイル業界で注目を集めてきた「5G」だ。あらためて説明するまでもないが、「5つめ」の「世代(Generation)」ということになる。

 これまでの携帯電話の技術は、周波数の利用効率向上や世界共通規格(技術と周波数帯)、高速化、大容量化など、さまざまな革新が重ねられてきた。今回の5Gも同様に、新しい技術が取り入れられ、高速、大容量、超低遅延、同時多元接続などのメリットが生み出される。

 ここ数年、本誌でも数多くの5G関連の記事が取り上げられてきたが、「5Gは電気になる」と言われるように、5Gが社会や生活のインフラストラクチャとして、組み込まれていくことが考えられており、5Gで社会全体が大きく変わるとされている。

 こうした5G全体の話については、ここで詳しく解説しないが、興味があるようなら、本誌でもおなじみの石川温氏の著書「未来IT図解 これからの5Gビジネス」(MdN)などをチェックしていただければ、きっと参考になるはずだ。

 では、もう少し身近な話、現実的な話題として、5Gをどうするのかということを考えてみよう。

 国内における5Gサービスは、2019年9月から各携帯電話会社がプレサービスの提供を開始し、スポーツイベントなどでデモが行なわれ、さまざまな企業との提携も数多く発表されてきた。このプレサービスを経て、いよいよ今年3月から商用サービスがスタートすることになる。

 原稿執筆時点で、まだ5Gサービスの提供開始日や発表イベントの案内などは届いていないが、おそらく3月中には何らかの発表や記者会見などが行なわれる予定だ。

 ただ、各社の関係者からは「5G、どうしよう?」といった話もあり、5Gサービスが置かれている難しさが垣間見えている。

 というのも前述のように、5Gサービスは「高速」「大容量」「超低遅延」「同時多元接続」などの特徴を持つ。ところが、現在の4G LTEも「高速」「大容量」「低遅延」をセールスポイントとして、サービスが展開されてきた。

 つまり、現在の4Gから新しい5Gになったからといって、スマートフォンなどを利用する範囲に限れば、実は劇的に変わる要素がそれほどないと言われている。

 もちろん、さまざまな産業との連携により、社会を変えるようなビジネスも徐々に展開されるが、それは一般のコンシューマー(消費者)にとって、直接的な関係がない話題と捉えられている。

 新聞やテレビを観ていると、今年の春から日本中を自動運転のクルマが走り回り、ドローンが飛びまくり、遠隔医療が急速に進み、建設機械の遠隔操作なども当たり前になるように感じられてしまうが(笑)、こうした社会インフラレベルの変革が今年3月にいきなりスタートするわけではない。

 身近な例のひとつとしては、VR/MRグラスでエンターテインメントを楽しむといったものが挙げられるが、これも4G LTEで対応できたり、Wi-Fiで利用できるようなケースもあり、現時点では必ずしも「5Gが必須」とされるものではない。

 こうした事情があるため、各携帯電話会社や端末メーカーなどの関係者は「5Gを実感してもらうには、どう見せればいいのか」に頭を悩ませているのが実状だ。

5Gサービスは「使い放題」が軸に?

 では、具体的に5Gサービスがスタートすることで、一般ユーザーがメリットを享受できそうなことは何かというと、どうやら「使い放題」が軸になるのではないかと見られている。

 携帯電話の通信技術が進む中で、当初、青天井だったデータ通信サービスの料金は、auが2003年11月に「EZフラット」を導入し、2004年6月にはNTTドコモが「パケ・ホーダイ」で追随し、ケータイ時代の「使い放題」を実現した。

 その後、3Gから4Gへ移行し、端末の主流がスマートフォンになったことで、毎月一定額を支払い、一定量までデータ通信が利用できるキャップ制の料金プランへ移行が進んだ。

 ここ数年は総務省の意向などで、料金プランが二転三転したものの、利用できるデータ通信量が段階制のプランと、30GBや50GBといった大容量を利用できるプランの2つに集約されつつある。

 そんな中、2019年7月、auは月額8980円(割引前)でデータ通信を無制限に利用できる「auデータMAXプラン」を発表した。テザリングや世界データ定額の利用量が20GBに制限されているものの、事実上の使い放題にしたプランと注目を集めたが、おそらく5Gサービスでも各社共、これと同等か、これに準じる「使い放題」の料金プランが発表されると推察される。

 ただ、少し現実的なところを考えると、後述するように、5Gサービスを開始してもエリアは限られているため、当面は4Gネットワークとの併用になる。

 そのため、仮に「使い放題」の料金プランを提供しても4Gネットワーク上で延々と大容量データを送受信されてしまうと、既存の4Gユーザーを含めた他のユーザーの利用を影響を与えてしまうため、何らかの制限が付けられる可能性も十分に考えられる。

 とは言え、かつての「パケ死」という言葉がなくなったように、今どきの「ギガが足りない」と言われる状況は5G時代に消えていくことが期待される。

楽天モバイルの料金プランは?

 各社の5Gサービスへ向けた料金プランを考えるうえで、ひとつ気になる要素が3月3日にMNO(携帯電話事業者)としての料金プラン発表を控える楽天モバイルの存在だ。

 2019年10月から無料サポータープログラムを開始し、今年2月には2万人を追加募集し、数時間で目標人数を達成するほどの人気ぶりだったが、楽天モバイル(MNO)の新料金プランは月額2980円で100GBくらいが目安になると見る向きが多い。

無料サポータープログラムで提供されている「my Rakuten Mobile」のアプリは月々100GBを前提に画面表示をレイアウト

 いくつか理由は挙げられるが、楽天モバイル(MVNO)の主力プランである「スーパーホーダイ」が月額2980円(割引前)であり、今後、MVNOの契約者に対し、MNOへの移行を促すのであれば、最低でも同額程度の料金プラン提示は必須だ。それができなければ、楽天の三木谷浩史社長が掲げる「携帯電話業界の民主化」は実現が難しいという指摘もある。

 もし、楽天モバイル(MNO)がこの通りの料金プランを提示してくるのであれば、NTTドコモ、au、ソフトバンクはデータ通信を使い放題、あるいは国内通話の話し放題などを組み合わせることで、対抗してくるのではないかと見られる。

5Gユーザーは国際ローミング無料?

 また、もうひとつ違った「使い放題」が提供される可能性もある。

 5Gサービスは日本以外の国と地域で、すでにサービスが開始されているが、5Gサービスで先行す韓国では国際ローミングを無料にする施策が提供されているという。

 5Gサービスと国際ローミングは直接、技術的な因果関係がないが、5Gサービスを契約するメリットのひとつとして提供され、契約を伸ばす要因にもなっているという。

 国際ローミングについては、国内ではauが980円/24時間の「世界データ定額」で先行し、NTTドコモの「パケットパック海外オプション」もこれに追随したが、ソフトバンクはiPhone及びiPad限定の「アメリカ放題」を提供するのみで、それ以外は旧来の1日あたり最大2980円という高額な「海外パケットし放題」を提供してきた。

 ところが、「アメリカ放題」についてはようやく3月7日から対象機種をAndroidスマートフォンにも拡大し、接続先の通信事業者も米Sprintだけでなく、T-MobileやAT&Tなどに拡大することが発表された。

 米国限定ではあるものの、使いやすい環境を整えたと言えるが、こうした国際ローミングサービスが5G普及のための施策として、打ち出される可能性もある。

楽天モバイルの国際ローミングと「Link」の実力

 ちなみに、楽天モバイル(MNO)が提供する無料サポータープログラムでは、国内通話やデータ通信だけでなく、国際ローミングも無料で提供され、同社のアプリ「楽天Link」経由での国際通話なども無料で利用できる。

 楽天モバイル(MNO)の国際ローミングサービスはフランスの携帯電話会社のORANGEとの提携によって、実現しているもので、筆者もこの5カ月間、何度も利用してきたが、特に大きなトラブルもなく、各地で快適に利用できている。

 もし、楽天モバイル(MNO)が前述の予想料金プランの範囲内に、同様の通話サービスや国際ローミングサービスを無料、もしくは安価に提供できるのであれば、主要3社の5Gサービスでも国際ローミングが施策のひとつとして、取り込まれる可能性は十分にありそうだ。

気になるエリアは?

 今回、各社が国内で提供をスタートする5Gサービスは、これまでの4G LTEとは異なる周波数帯域を使い、サービスが提供されることになる。

 ただ、かつての2G(mova)から3G(FOMA)のときのように、利用できるエリアがすべて変わるのではなく、3G(FOMA)から4G(Xi)のときのように、エリアを追加する形で展開する。

 つまり、端末としては4Gと5Gの両方に対応したモデルを利用することになり、エリア内に入れば、いずれかのネットワークに接続される形になる。

 優先されるネットワークは基本的に5Gになるはずだが、どれくらいの電波強度でネットワークを切り替えるのかは、それぞれの携帯電話会社の設計によって、違ってくる。

 では、どれくらいのエリアで5Gサービスを利用できるのか。公式な情報を基にすれば、今のところ、各社が総務省に示した「5G基盤展開率」を見ると、サービス開始から5年後の目標はNTTドコモが97%、auが93.2%、ソフトバンクが64%、楽天モバイルが56.1%となっている。

 auが基地局数で他社の2倍以上の展開を予定しているなど、かなり力が入っている印象だ。

 過去の世代を考えれば、おそらく当初は都市部を中心に展開される見込みだが、総務省が5Gサービスを地方の課題解決などに利用することも求めているため、これまでの4Gなどに比べれば、意外に地方都市への展開も早いかもしれない。

 ところで、エリアを考えるうえで、もうひとつ重要なのが周波数帯域だ。5Gサービスではこれまでの4Gで利用してきた周波数帯域よりも高い周波数帯域が各社に割り当てられている。

 各社の5Gサービスを利用するには、当然のことながら、それぞれの周波数帯域に対応した端末が必要になる。

 これまでも何度か連載で取り上げてきているので、多くの読者はご存知だろうが、5Gサービスで利用する周波数帯域は大きく分けて、2つある。

 ひとつは「Sub6(サブシックス)」と呼ばれる6GHz以下の周波数帯域で、国内ではNTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル(MNO)に割り当てられた3.7GHz帯、NTTドコモに割り当てられた4.5GHz帯がある。Sub6についてはこれまでの4Gで利用してきた周波数帯域に近いこともあり、端末や基地局整備などもある程度、ノウハウが活かせるとされている。

 もうひとつは28GHz帯というたいへん高い周波数帯域で、「mmWave」や「ミリ波」と呼ばれる。ミリ波はたいへん高い周波数帯域であるため、電波の直進性が強いうえに、減衰も大きく、アンテナ設計なども含め、技術的に難しいとされているが、割り当てられる帯域幅が400MHzと非常に広いため、超高速通信を実現できるというメリットもある。

 この2つの周波数帯域の内、都市部など、一般的なエリア展開にはSub6が利用され、mmWaveはさまざまな産業用途を含めた利用が検討されている。

 ただし、一般的なスマートフォンやデータ通信端末などでmmWaveをサポートする製品もあり、徐々に利用は拡大して行くと予想されている。

中止されたMWC前後に5G対応端末が相次いで発表

 さて、料金プランや5G向けのサービスの話はまだ見えていない部分ばかりだが、意外にハッキリとラインアップが見えているのが端末だ。

MWC Barcelona 2020が開催される予定だったFira Gran Barcelona Viaは閑散としていた

 本誌でもお伝えしてきているように、今年はモバイル業界最大のイベント「MWC Barcelona 2020」が新型コロナウイルスの影響で中止されたため、発表イベントは見送られたものの、国内の5Gサービスに投入されることが確実視されている端末は、ほぼ明らかになっている。

8K動画の撮影を実現したシャープの「AQUOS R5G」は国内初の5G対応スマートフォン

 まず、国内初の5G対応端末として発表されたのは、2月17日に発表会を開催したシャープの「AQUOS R5G」だ。

 5Gのネットワークパフォーマンスを活かすため、8Kワイドカメラを搭載し、8Kで撮影した動画を独自開発のAIの処理により、特定の人物やペットなどにズームする「フォーカス再生」などの機能が利用できるほか、従来のAQUOS R3などにも搭載されていた機能を強化した「AIライブシャッター Pro」も搭載される。

 これまでのシャープの実績から考慮して、おそらく国内の主要3社向けに供給されることは確実で、もっとも幅広いユーザーに受け入れられる端末になりそうだ。

 ちなみに、シャープはこの他に、ビジネスのチーム利用や仮設事務所などでの利用を考慮した「5Gモバイルルーター」の開発も明らかにしている。

 次に、シャープよりもひと足早くグローバル向けに発表されたサムスンの「Galaxy S20」シリーズは、速報でもお伝えしたように、3機種ともに5G対応モデルになる。

 過去の流れから見て、NTTドコモとauの5Gサービスの対応機種になることはほぼ確実だが、気になるのは3機種の内、どのモデルが採用されるかだ。

 NTTドコモやauとして、5G対応端末のラインアップは取り揃えたいところだが、当初は5Gサービスの対応エリアがまだ広くなく、今後も5G対応端末のラインアップが増えていくことを鑑みれば、ある程度、モデル数は絞り込みたいと推察される。

 関係者のコメントなどを総合すると、国内向けには「Galaxy S20」と「Galaxy S20+」が供給され、「Galaxy S20+ Ultra」は見送りになるかもしれない。

Galaxy S20シリーズの3機種はいずれも5Gに対応。どのモデルが日本向けに出るのか?

 ソフトバンク向けはこれまでの流れから考えると、供給が難しそうだが、その他には今年6月以降に5Gサービスを開始する予定の楽天モバイル(MNO)にいずれかのモデルが採用される可能性も否定できない。

 MWC Barcelona 2020が中止になったことで、当初、予定していたプレスカンファレンスを同日同時刻のストリーミング配信という形で対応したソニーは、5G対応の「Xperia 1 II」を発表した。

 同時発表の4G対応モデル「Xperia 10 II」と共に、日本を含むグローバル市場に投入することが明言されており、過去の例に倣えば、NTTドコモとauの5Gサービス向けに採用されることはほぼ確実と言えそうだ。

 ソフトバンクもこれまでXperiaシリーズを扱っていることから、5Gサービス向けにXperia 1 IIが供給されそうだが、過去のXperiaシリーズの売れ行きや価格などから、もしかすると、5G対応端末はいったん見送られるかもしれないと見る向きもある。

 楽天モバイル(MNO)もXperia Aceなどを扱っている関係上、供給される可能性はあるが、やはり、同様の理由で、5G対応端末は供給されないかもしれない。このあたりはソニーモバイルとしての考え方もあるようで、今後の動向が注目される。

 逆に、ソフトバンクでの採用が十分に考えられるのがLGエレクトロニクスがグローバル向けに発表したばかりの「LG V60 THINQ 5G」だ。

LGエレクトロニクスは5G対応の「LG V60 ThinQ」を発表。LG G8X ThinQに続き、国内向けに採用なるか?

 LG V60 THINQ 5Gは、昨年、ソフトバンク向けに供給された「LG G8X ThinQ」、NTTドコモの5Gプレサービス向け端末として採用されたモデルの流れをくむ後継モデルで、ディスプレイ付きケースと組み合わせることで、二画面による新しい利用環境を実現する。順当に行けば、NTTドコモとソフトバンク向けに供給されそうだが、「LG G8X ThinQ」の衝撃的な価格設定が今回も継承されるかどうかが注目される。

 ちなみに、今のところ、5G対応端末はいずれもハイエンドモデルが中心で、4G対応端末のハイエンドモデルに比べ、10~20%程度、価格が高くなっている。

 これに加え、2019年10月の電気通信事業法改正により、端末価格の割引きが約2万円程度に制限されているため、端末価格を下げることができない。

 その結果、せっかくの5G商用サービス開始にもかかわらず、端末がまったく売れず、普及がさらに遅れてしまうことが危惧されている。一部では総務省に対し、「5G対応端末だけでも制限を見直しては?」といった意見も出ていると言われているが、はたしてどうなることか……。

 また、原稿執筆中に飛び込んできたニュースとしては、2月25日にアメリカ・サンディエゴで開催されたクアルコムのプレスカンファレンスにおいて、Snapdragon 865搭載端末の一覧が公開され、そこに富士通コネクテッドテクノロジーズ製「arrows 5G」の名前があり、国内向けへの供給が確実視されることになった。

 おそらく、NTTドコモ向けとソフトバンク向けになりそうだが、ここのところ、普及モデルのみを展開してきた富士通が5G対応のハイエンド端末で、どのように巻き返してくるのかが注目される。

5G対応端末のオープン市場はあるのか?

 国内の主要3社が3月から提供を開始する5G商用サービスでは、ここまで説明してきたように、シャープ、サムスン、ソニー、LGエレクトロニクス、富士通が端末を供給することになりそうだ。

 しかし、この他にもグローバル市場向けには数多くの5G対応端末が発表されており、それらの内のいくつかは国内市場に投入される可能性がある。

米クアルコムのイベントで明らかにされたSnapdragon 865プラットフォームを採用した5G対応端末。おなじみのメーカーがいくつか……

 たとえば、前述のクアルコムのプレスカンファレンスで明らかにされたSnapdragon 865搭載の5G対応端末の一覧には、AQUOS R5GやGalaxy S20シリーズ、arrows 5Gなどの他に、ASUSの「ZenFone 7」「ROG Phone 3」、シャオミの「Xiaomi Mi 10」「Xiaomi Mi 10 Pro」「Redmi K30 Pro」、OPPOの「OPPO Find X2」、ZTEの「ZTE Axon 10s Pro」など、日本でもおなじみのメーカーの端末が名を連ねており、これらが国内市場に投入される可能性も十分に考えられる。

 また、米商務省の禁輸措置リストに登録されたことで、米国でのビジネス展開や米国企業との取引が制限されているファーウェイも数多くの5G対応端末を開発している。

ファーウェイはバルセロナで、ストリーミング配信による発表イベントを開催

 先日、スペイン・バルセロナで行なわれた発表イベントではフォルダブルスマートフォンの新モデル「Mate Xs」、5G対応タブレット「MatePad Pro」、5Gネットワーク対応CPE端末などを発表した。

 これらに加え、2019年9月、グローバル向けに発表された「HUAWEI Mate30 Pro 5G」が国内の技適を取得したことが明らかになっている。

HUAWEI Mate 30 Proが技適を取得。国内市場への投入はあるのか?

 現在、ファーウェイが準備を進めているHMS(HUAWEI Mobile Service)のAppGallery開発者向けという指摘がある一方、国内のオープン市場向けに販売する準備だという見方もある。

 これらのことを総合すると、国内の各携帯電話会社が販売する5G対応端末のほかに、10機種以上の5G対応端末が投入されることになりそうだが、ここでひとつ注意しなければならないのは、そもそもの話として、5G対応端末のオープン市場は存在するのかという問題だ。

 いずれは5GネットワークがMVNO各社にも開放され、5Gネットワークを利用したMVNO各社のサービスも展開されるだろう。総務省も今春からMVNOが5Gサービスを提供できることが重要として、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクへ要請済みだ。

 要請通り、今年3月の段階で開放されるのであればよいが、MNO側の体制なども考えれば、早くても年内、遅ければ、2021年以降にならなければ、5G対応MVNOサービスは提供されないかもしれない。

 また現在の4G LTE端末は、対応するバンド(周波数帯域)が合致していれば、あとはAPNなどの接続情報を設定することで、比較的、簡単に接続できる環境が整っている。VoLTE対応については回線を提供する携帯電話会社によって、対応や提供状況が少し異なるが、おおむね多くの端末がSIMカードを挿せば、動く状況と言えるだろう。

 ところが、5Gサービスについては必ずしもそれほどスムーズに接続できないのではないかという指摘もある。というのも5Gネットワークを構築する各携帯電話会社によって、微妙に仕様の違いがあり、A社のスマートフォンは接続できるが、B社のスマートフォンはつながらないということが起こり得るというのだ。そのため、前述の各携帯電話会社が取り扱う5G対応端末はそのまま動作するものの、それ以外の端末は必ずしも正常に動作しないかもしれないわけだ。

 ただ、各携帯電話会社や端末メーカーもそのままの状態で良しとしているわけではなく、これまでと同じように、IOT(InterOperability Test/相互運用性テスト)を行なっており、スムーズにつながる環境を構築しようと試みている。

 しかし、IOTにはある程度の時間がかかるうえ、開発には高い技術力が求められるため、今までの4G対応端末のときのような体制では対応できないという指摘もある。

 おそらく、5Gの基地局設備などを手がけ、数多くの端末を市場に送り出しているファーウェイなどであれば、対応は期待できそうだが、それ以外のメーカーは実力の真価を問われることになるかもしれない。

5Gに行くか、待つか

 ここ数年、新しい時代へ向けた携帯電話サービスとして、期待されてきた5G。

 いよいよ3月にも各社から正式な商用サービス開始が発表される。が、ユーザーとして、いつ5Gサービスに乗り換えるのがいいのだろうか。

 人によって、5Gサービスに期待するものが違うため、一概に判断できないが、まず、当たり前のこととして、5Gのサービス提供エリアに自分が活動するエリアが含まれていることが第一条件だろう。

 次に判断するのは各社のサービス内容だ。たとえば、毎月利用するデータ通信量がかなり多く、契約するデータ通信量ではまったく足りないようなユーザーであれば、5Gサービスで提供される見込みの「使い放題」への移行を検討してみるのも手だ。

 また、本当に国際ローミングが無料、もしくは割安で提供されるのであれば、海外渡航が多いユーザーは、5Gへの乗り換えを検討したいところだ。

 逆に、待つのも悪くない選択だ。5Gサービスを利用するには5G対応端末が必要だが、最初に市場に投入されるのは基本的にフラッグシップモデルばかりで、価格もかなり高い。

 しかし、米クアルコムはすでにミッドレンジを狙った「Snapdragon 765/765G」を発表しており、これを採用したスマートフォンの登場を待つというのも手だ。

 Snapdragon 765Gを採用したスマートフォンとしては、OPPOが「OPPO Reno 3 Pro」を中国向けに発表しており、販売価格は6万円台に抑えられている。

 さらに、ファーウェイやvivoなどは2020年にも1万円台の5G対応スマートフォンを開発できるとしており、もう少し待てば、現在の4G対応端末と変わらない価格で、5G対応端末が購入できる時期が来るかもしれない。

 いよいよ3月。国内でスタートする5G商用サービス。各社がどのようなサービス内容や施策を発表し、どんな端末ラインアップを揃え、ユーザーにどのようにアピールしてくるのかをしっかりとチェックしたい。