法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
「Galaxy Z Flip」はコンパクトに大画面を楽しめる
2020年2月26日 06:00
2月11日、米国サンフランシスコで開催されたサムスンのGalaxy UNPACKED 2020において、世界中から注目を集めたのが縦折りのフォルダブルスマートフォン「Galaxy Z Flip」だ。
ひと足早くグローバル版を海外で試用することができたので、レポートをお送りしよう。
懐かしく新しいフォルダブル
ケータイの時代から端末はさまざまな形が生み出されてきた。
肩から提げるショルダーホン、片手で持てるハンディ、コンパクトなストレート、テンキーをカバーするフリップ、クルッと回す回転式、そして、国内でも圧倒的に人気の高かった折りたたみ。
この他にもいくつかの形が生み出されてきたが、スマートフォン時代に入り、キーボードが引き出されるスライド式などが存在したものの、端末の形には今ひとつ変化が感じられなかった。
特に近年はスマートフォンが成熟したこともあり、ほとんどの機種がスレート(板)状のボディを採用し、見た目もあまり違いを生み出せていなかった。
そんな中、昨年は「端末を折りたたむ」という、フォルダブルが各社から相次いで発表され、注目を集めた。
なかでもサムスンが2019年2月に発表した「Galaxy Fold」は、曲げられる有機ELディスプレイの特徴を活かし、手帳や書籍のように、横方向に開いて、大画面で利用できるという新しいスタイルを実現することで、新しい時代のスマートフォンの形を示した。
ただ、発表後に一部のメディアが発売前の端末を無許可で分解したり、壊してしまうなどのトラブルが起きたため、発表後に改良が施され、発売が少し遅れることになってしまった。
しかし、発売後のグローバル市場での反響は良好だったようで、サムスン製端末がここ数年、苦戦していた中国市場でも一時は店頭で売り切れを記録するほどの人気を得たという。
日本市場においてもauが取り扱いをはじめ、わずか1カ月半ほどで、予定していた台数を販売しきったそうだ。
今回発表された「Galaxy Z Flip」はGalaxy Foldの後継機種というわけではないが、そこで培われたノウハウを活かすことで生み出された新しいスタイルのスマートフォンだ。
Galaxy Foldが横開きスタイルだったのに対し、Galaxy Z Flipは縦長の本体を縦方向に折りたたむ「縦折り」スタイルの端末として設計されている。
サムスンによれば、Galaxy Foldの購入者は圧倒的に男性が多く、女性が興味を持ちながらも購入に至らなかった理由として、端末そのもののサイズ感を挙げており、その点を意識して、今回は女性にも受け入れられやすいデザインを狙ったようだ。
今回試用したモデルはグローバル市場向けに発売されているモデルになるが、ほぼ同じ仕様のモデルは国内でauが取り扱いを発表しており、すでに予約の受け付けが開始され、2月28日から店頭で販売が開始される。
Galaxy Foldのときはau SHINJUKUなど、auの直営店をはじめ、ごく一部の店舗のみで取り扱われたが、今回はau取り扱い店で販売されると発表されており、全国各地のauショップなどでも購入できる。
デモ機が用意されるかどうかはわからないが、Galaxy Foldに比べれば、『普通の端末』として扱われているわけだ。
とは言うものの、価格は17万9360円と高価であり、2019年10月の電気通信事業法改正で端末購入補助が約2万円に制限されている状況を鑑みると、購入にはなかなか勇気のいる端末であることは間違いない。
そこで、auでは購入時に残価を設定し、残りの金額を分割で支払う「かえトクプログラム」という販売方法をスタートさせている。
Galaxy Z Flipの場合、2年後の残価は5万9760円に設定され、月々5200円×23回を支払い、24回目に残価を精算するか、端末を返却するかを選ぶことができる。端末返却時の実質負担額は11万9600円に抑えられており、少しは買いやすくなると言えそうだ。
縦折りデザインでコンパクトなボディ
まず、外観からチェックしてみよう。
縦方向の折りたたみデザインを採用したGalaxy Z Flipは、折りたたんだ状態のサイズはコンパクトで、筆者のような少し大きめの手であれば、本体をすっぽりと手のひらに収めることができるサイズ感だ。
女性には普段、持ち歩いている化粧品のコンパクトなどと同じくらいのサイズをイメージしてもらうとわかりやすいだろう。
折りたたんだ状態の厚みは17.3mmだが、かつての折りたたみケータイを考えれば、それほど分厚いような印象もない。むしろ、端末を開いたときの厚さが7.2mmに抑えられており、昨今の最新スマートフォンと変わらない仕上がりとなっている点が注目される。
端末を開いた状態はGalaxy S10+とほぼ同サイズで、これをちょうど真ん中で二つ折りにしたようなサイズになる。防水防塵には対応しない。
開閉する操作についてはボディの側面がラウンドしているため、指を差し入れやすく、すぐに開くことができる。
かつてのケータイでワンプッシュオープンなどに慣れ親しんでいたユーザーには開閉操作がややまどろっこしく感じられるかもしれないが、動きはスムーズであり、ストレスなく操作できる。
ヒンジ部
ヒンジには外部からのホコリなどの侵入を防ぐため、ブラシが内蔵されているそうだが、数日間の試用でも特に問題が感じられることはなかった。
耐久性についてはもう少し長く使わなければ判断できないが、サムスンによれば、十分な耐久性を考慮しているという。
側面に指紋センサー内蔵の電源キー
ボディの側面には指紋センサー内蔵の電源キー、音量キーが備えられている。
指紋センサー内蔵電源キーは端末を閉じた状態でも利用でき、短押しでカバーディスプレイ(サブディスプレイ)点灯、二回連打でカメラを起動し、カバーディスプレイをファインダーに、メインカメラで自分撮りができる。
ディスプレイ
ディスプレイは2636×1080ドット表示が可能な約6.7インチのフルHD+対応Dynamic AMOLED(有機ELディスプレイ)を採用する。
Dynaminc AMOLEDはGalaxy S10シリーズなどにも採用されている新しい世代のものになる。表面はフィルムで覆われていたGalaxy Foldと違い、極薄のガラスが採用されている。
曲がるガラスと表現されているが、端末を開いた状態で折れ曲がる部分を触ると、わずかに段差のようなものがあるように感じられる。おそらく実際の操作でも付近を触るだろうが、違和感はほとんどなく、自然なタッチ操作感にまとめられているという印象だ。
コンテンツなどを全画面に表示した状態もGalaxy Foldのときのような部分的に波打つようなシワに見えてしまうこともない。
ディスプレイの最上部にはパンチホールによるインカメラが内蔵される。
端末を閉じた状態のトップパネル側には、メインカメラの隣に300×112ドット表示が可能な約1.05インチのSuper AMOLEDによるカバーディスプレイが内蔵されている。
前述のように、自分撮り時にファインダーとして利用できるほか、日時やバッテリー残量、通知、着信などが表示される。このあたりはかつてのケータイの使い勝手が活かされている印象だ。
大画面を活かしたUI
大画面ディスプレイを活かした使い方として、画面を上下に分割し、複数のアプリを同時に利用できるマルチアクティブウィンドウが挙げられる。
メールを見ながら、地図を検索したり、動画を再生しながら、SNSでチャットを楽しむといった使い方もできる。
3300mAhバッテリー、ワイヤレスパワーシェア
バッテリーは3300mAhの大容量バッテリーを搭載。サムスンのWebページではデュアルバッテリーと表現されているため、おそらくボディの上下に1つずつバッテリーを内蔵した構造を採用していると推察される。
Galaxy S10シリーズやGalaxy Note10+などと同じように、他のワイヤレス充電対応機器に給電できるワイヤレスパワーシェアにも対応する。
クイックパネルのアイコンでワイヤレスパワーシェアを有効に切り替え、ボディの下側(カメラのない側)の背面に対応機器を置いて、充電する。同時発表のGalaxy Buds+などもワイヤレス充電に対応しているため、組み合わせて利用するときに便利だ。
指紋センサーと顔認証
セキュリティについては前述の通り、右側面に指紋センサー内蔵電源ボタンを備えており、指紋認証が利用できるほか、インカメラを利用した顔認証にも対応する。
顔認証は指紋認証に比べ、セキュリティが低いため、より安全に使いたいのであれば、指紋認証のみで利用するのがおすすめだ。
指紋認証はレスポンスも高速なため、使い勝手としては申し分ないレベルにあるが、端末を開いた状態でなければ、操作できないので、実際には顔認証と併用する方がストレスなく使えそうだ。
広角&超広角のデュアルカメラを搭載
縦折りのフォルダブルというユニークな形状を採用したGalaxy Z Flipだが、その形状はカメラの使い勝手にも大きな影響を与えている。
まず、メインカメラと呼ばれているのがディスプレイ上部のパンチホールに収められた10MPのイメージセンサーとF2.4のレンズを組み合わせたもので、視野角80度、ピクセルサイズは1.12μmとなっている。
本体のトップパネル側に備えられているのがサブカメラと呼ばれ、12MPのイメージセンサーにF2.2のレンズを組み合わせた視野角123度の超広角カメラ、12MPのイメージセンサーにF1.8のレンズを組み合わせた視野角78度の広角カメラで構成するデュアルカメラとなっている。広角カメラには光学式手ぶれ補正も搭載される。
カメラの「メイン」「サブ」という名称は、一般的なスマートフォンと逆になっているが、これは端末を途中まで開いたFLEX MODEの状態で机などに置き、ディスプレイ側のカメラで自撮りを楽しむことをメインの使い方として捉えているためだ。
もちろん、背面のトップパネル側のカメラでも前述のように自撮りができるのだが、「自分を見ながら撮る」という行為を考えると、やはり、大きなディスプレイとメインカメラを組み合わせた使い方が自然で、女性ユーザーにもその方がウケが良さそうだ。
カメラの撮影モードとしては、他のGalaxyシリーズと同じように、通常の写真のほかに、動画やパノラマ、食事、スーパースローモーション、ナイト、ハイパーラプスなどが用意されており、ボケ味を利かせたライブフォーカスも利用できる。
これらに加え、新たに発売後のアップデートで「シングルテイク」という撮影モードが追加されている。
シングルテイクは2つのカメラで最大10秒間、静止画と動画を同時に撮影し、AIが撮影した映像にエフェクトなどを追加して、ファイルを生成するものになる。
今回は試用期間が限られていたため、あまり試すことができなかったが、動きのある被写体を撮影するときなどには有効なようで、今後の活用が期待される。
古くて新しい「折りたたみ」の世界をどう受け取るか
冒頭でも触れたように、携帯電話の形状やデザインは時代とともに変化してきた。
その変化にはユーザーが求める、あるいは期待する使い方が反映されてきた。国内でのケータイ全盛期には各社がいろいろなスタイルを生み出したが、最終的には折りたたみが圧倒的なシェアを持つようになり、他の形状は役目を終え、市場から消えていった。
今回発表されたサムスンの「Galaxy Z Flip」は、昨年、世界中で注目を集めた「Galaxy Fold」で培われたフォルダブルのノウハウを活かし、縦折りのフォルダブルという形状を生み出した。
折りたたんでコンパクトに持ち歩き、開いて大画面で使うというスタイルは、古くて新しいスタイルであり、これまでのスマートフォンとは違った存在感、ユーザビリティを生み出している。
ただ、その一方で、ケータイ時代に数多くの折りたたみ端末に触れてきた筆者のようなユーザーでも身体はフラットなスレート状のボディに慣れてしまっており、使いはじめる度に「開く」という操作はちょっとまどろっこしく感じてしまうのも事実だ。
モノとしての仕上がり、存在感、メカニズム、デザインなど、どれをとってもまさに最先端の製品という印象なのだが、この形状、このスタイルが自分に適しているのかというと、ちょっと悩んでしまう。おそらく、このあたりは一人ひとりのユーザーによって、かなり解釈が違ってくることになりそうだ。
そして、価格面についても課題が残る。確かに、Galaxy Foldの約24万円という価格から、かなり値段は抑えられた印象だが、それでも多くの端末が10万円前後に抑えられ、売れ筋は5万円以下に集中している現状を鑑みると、約18万円を出すのは少し勇気が必要になるだろう。
国内についてはauが提供する「かえトクプログラム」で、実質負担額を減らすことができるが、それでも10万円を超える負担は避けられず、購入に踏み切れるユーザーは限られそうだ。
しかし、それを補って余りある存在感と新しさがあることも確かで、古くて新しい「折りたたみ」の世界をどのように受け入れるのかが最終的な判断になりそうだ。
Galaxy Z Flipの国内向けモデルはauショップなどのau取り扱い店で販売されるが、東京・原宿の「Galaxy Harajuku」でも実機を試すことができる見込みだ。買うか否かはともかく、一度、実機を手に取り、古くて新しい「折りたたみ」の世界を体験していただきたい。