三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

アップル初の折りたたみスマホ「iPhone Duo」のカメラをチェック

 今年もアップル「iPhone」の新製品が出揃った。今秋はスタンダードモデルの投入が見送られ、9月に発売されたハイエンド機の「iPhone 18 Pro」「iPhone 18 Pro Max」、そして10月23日に発売された同社初の折りたたみモデル「iPhone Duo」というラインナップだ。

 今回は遅れて登場した注目の「iPhone Duo」をレビューしたい。なお、端末の詳細や価格、基本スペックなどは本誌別記事を参照いただきたい。

開けば5.2mmの極薄ボディ、ただしカメラは「割り切り」仕様

 「iPhone Duo」を手にしてまず感心するのは、初めての折りたたみモデルとは思えないハードウェアの仕上がりの良さだ。開くと厚さがわずか5.2mmと驚くほどスリムで、閉じた状態でもポケットにすんなり収まる。

 一方、生体認証は顔認証のFace IDではなく、サイドボタン内蔵の「Touch ID」になった。正直、これは使いにくい。すっかりFace IDの快適さに慣れてしまっているので、いちいち指を当ててロックを解除するのはどうにもまどろっこしく感じてしまった。

 この極薄ボディを実現したしわ寄せが大きく出ているのがカメラまわりだ。率直に言って、36万円を超えるフラッグシップ機としてはカメラ性能がかなり割り切られている。

 「iPhone 18 Pro」シリーズで大きな目玉となったメインカメラの「可変絞り」は搭載されておらず、Proシリーズではおなじみの独立した「望遠カメラ」も省かれてしまった。背面は48MPのメインカメラ(26mm相当)と48MPの超広角カメラ(13mm相当)というシンプルな2眼構成だ。

 メインカメラによる光学品質2倍望遠撮影(52mm相当・12MP)は利用できるものの、独立した望遠レンズはなく、デジタルズームも最大10倍まで。純粋にカメラの表現力や望遠撮影の楽しさを求めるなら、14万5000円安い「iPhone 18 Pro」の方が満足度は高いだろう。

折り目を目立ちにくくした画面は、写真ビューワーとして最高

 では、写真好きにとって「iPhone Duo」は魅力がないのかというと、まったくそんなことはない。カメラ性能が割り切られている代わりに、写真を閲覧する「ビューワー」としての完成度がずば抜けて高いのだ。

 閉じた状態では5.4インチ画面で片手スナップができ、パカッと開けば7.6インチの大画面が現れる。折りたたみ機でいつも気になる画面中央の「折り目」だが、アップルは内側の画面に反射を抑える「Nano-texture」仕上げを採用。

 マットな表面処理によって、中央の折り目を視覚的にも目立ちにくくしている。斜めから強い光を当てれば窪みは分かるものの、正面から見ている限り、アンチグレアのしっとりとした質感のおかげで折り目がほとんど気にならない。

 しかも画面側のインカメラはディスプレイ下に埋め込まれた方式なので、パンチホールすらない。内側の大画面に写真を表示すると、まるで上質な小型モニターやプリント作品を眺めているような気分になる。

 本機で撮ったスナップはもちろん、ミラーレスカメラから転送した作例のピントや色味を現場でチェックしたり、仕事相手にその場で見せたりするビューワーとして、これほど気持ちいい端末はちょっと他にない。

 ちなみに価格は256GBモデルで36万4800円から。「iPhoneとiPad miniを2台買うより高いのでは?」と思っていたのだが、先日発表された新型「iPad mini」は有機ELディスプレイを搭載するなど大幅に進化し、Wi-Fi+Cellularモデルは14万4800円からとなった。

 「iPhone 18 Pro」(256GB・21万9800円)と新型「iPad mini」(Wi-Fi+Cellular・128GB)を別々に購入すると合計36万4600円。なんと「iPhone Duo」とほぼ同額になってしまうのだ。2台分の荷物や充電の手間を1台にまとめられると思えば、あながち悪くない価格設定に見えてくるから不思議だ。

アウトカメラのスペック
項目内容
メインカメラ解像度:48MP、焦点距離:26mm(1倍)/52mm(光学品質2倍望遠・12MP)、絞り値:F1.6、手ぶれ補正:センサーシフト光学式手ぶれ補正
超広角カメラ解像度:48MP、焦点距離:13mm(0.5倍)、絞り値:F2.2、マクロ撮影対応
望遠カメラ独立した望遠カメラは非搭載(デジタルズーム最大10倍)

「iPhone Duo」各カメラの描写はいかに?

 それぞれの写る範囲はこのとおり。独立した望遠カメラこそないものの、48MPセンサーと「A20 Pro」チップの組み合わせは優秀で、0.5倍から2倍まではiPhoneらしい優等生的な写りだ。一方、最大10倍まで拡大すると、さすがに細部の甘さが目立つので、記録用と割り切った方がいいだろう。

0.5x
1x
2x
10x(デジタルズーム最大時)

 折りたたみ画面を活かした「Duo Preview」、「キッズキュー」や、好みの色調で写真を撮影できる「スタイル」、「スマート撮影」、画面を2分割して使える「Split View」、そして「Apple Pencil(USB-C)」にも対応しており、撮った写真を大画面で整理・セレクトする作業も可能だ。

 本体をL字型に曲げてテーブルや手すりに置けば、三脚なしでも安定した撮影が可能。タイムラプス撮影など折りたたみ機ならではの使い方も楽しめる。一方で、側面にある「カメラコントロール」ボタンは、開閉状態や縦横の持ち替えによって指の位置が変わるため、従来のiPhone以上に操作しづらく感じた。

 また、外側のディスプレイを使用して撮影する場合、シャッターボタンやUIが画面上に表示されることによって、撮影に影響を与える場合があるので注意が必要だ。構図によっては開いた状態で撮影した方がいいだろう。

「iPhone Duo」でブラブラ実写スナップ

 ブラブラと「iPhone Duo」を持ち出してフォトウォークしてみた。移動中は閉じたまま片手で軽快にシャッターを切り、じっくり構図を追い込みたい時や、撮った写真を見返す時は7.6インチに開く。

 望遠で切り取れないもどかしさはあるものの、「スナップが撮れる最高の大画面ビューワー」として付き合うと、なかなか楽しい散歩カメラになってくれる。

夜間の商業施設を上からスナップ。群青色の空と温かみのある照明のコントラストが美しく、テント屋根の質感や行き交う人々の姿まで克明に描いている
室内の円形照明を真下から見上げて切り取った。輝度差の激しい被写体だが、電球周りの白飛びを抑えつつ、金属フレームの質感や天井に落ちる影をうまく捉えている。ただし、点光源のゴーストが盛大に発生している
雨上がりの夜の街路を撮影。ライトアップされた街路樹の緑や、濡れた路面に映り込む光の反射が鮮やかだ。暗部のノイズもまずまず少なく、しっとりとした夜の空気感が伝わる
夕焼け空を背景に浮かび上がる五重塔のシルエット。ドラマチックな雲の表情や空の繊細なグラデーションを自然に再現しつつ、黒く引き締まった塔の輪郭を際立たせた
夕暮れの隅田川と浅草周辺のビル群をスナップ。重たい雲が広がる空のトーンから、川面に反射する街明かり、金色のオブジェの輝きまでバランスよく収まっている
レトロな建築の前を走り抜けるバスを撮影。スローシャッターでバスをぶらして動感を出しつつ、ライトアップされた建物の立体感や窓のディテールをくっきり残した
店先に吊るされた「おでん」の赤提灯をクローズアップ。色飽和しやすい鮮やかな赤色もしっかり粘っており、強い日差しが作る影とのコントラストが印象的なポートレートモードの一枚だ
抜けるような青空を背景にそびえる白いホテルの建物を切り取った。すっきりとした気持ちのいい発色で、深い空のブルーと外壁に落ちる影のコントラストが心地よい
高架下の壁面に描かれたカラフルなウォールアートを正面から撮影。26mm相当のメインカメラは周辺の歪みが穏やかで、鮮やかな色彩やコンクリートの質感を素直に写し取る
ビニールカーテン越しに覗いた飲食店のカウンター。手前のビニールの複雑な光の反射と、奥の店内の様子が重なり合う独特の空気感を、細部まで破綻なく描写してくれた
昭和の風情が残る劇場横の看板群をスナップ。明暗差のある路地だが、レトロな看板の文字や色彩、入り組んだ建物の奥行き感を不自然な補正感なくリアルに再現している。前ボケもまずまずだ
生い茂るツタに囲まれた白い扉を撮影。葉の一枚一枚の細かなディテールや古びた扉の風合いまでしっかり解像しており、物語性を感じさせる路地裏の風景になった
繊細な文様が刻まれた金属プレートに寄って撮影。斜めからの光で浮かび上がるレリーフの凹凸や、年季の入った金属特有の鈍い輝きまでリアルな質感でキャプチャーできた
通信事業者が入る高層ビルと駅前の大屋根を超広角カメラで見上げた一枚。13mm相当のダイナミックなパースペクティブを生かしつつ、ナイトモードで雰囲気のあるカットになった

「iPhone Duo」まとめ

 アップル初の折りたたみモデル「iPhone Duo」は、薄さと引き換えにカメラ性能、特に独立した望遠カメラや可変絞りがスパッと割り切られている。カメラ機能を最優先するなら「iPhone 18 Pro」シリーズを選んだ方が間違いなく満足できるはずだ。

 カメラなど性能面に割り切りが見られるのは初代ゆえかもしれないが、来年あたりには「iPhone Pro Duo」になって3眼カメラが搭載されることを祈りたい。

 本機の真骨頂は、日常のスナップを軽快にこなしつつ、7.6インチのマットな大画面を生かした「極上のポケットビューワー」として使うことにある。折り目も照明の反射も気にならない大画面で写真を見返す快感は、一度味わうと普通のスマートフォンには戻れない魅力がある。

 もちろん本機はiPhoneなので、「DaVinci Resolve」などiPad向けの編集アプリが動かないのは最初から織り込み済みだ。ただ、開いたときのハードウェアやマットディスプレイの完成度がここまで高いと、「もし同じ仕組みで折りたためるiPadがあったらどんなに便利だろうか」と思わずにはいられない。いつかそんな「iPad Duo」が登場することにも期待したくなった。

 なお、今から注文すると出荷は来年になるようだが、ヒンジやディスプレイの問題がそれまでに解消してくれるといいのだが。「iPhoneとiPad miniの2台持ち」をスマートに1台へまとめ、いつでも最高の環境で写真を閲覧したい人にとっては、たまらない選択肢になるだろう。

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三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau