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シャープが突き詰めた「AQUOS R9 Pro」の1インチ超カメラと「AQUOS sense9」の使いやすさへの情熱
2024年10月29日 19:29
シャープは29日、Androidスマートフォン「AQUOS」シリーズより、フラッグシップモデルの「AQUOS R9 pro」、スタンダードモデルの「AQUOS sense9」を発表した。
「AQUOS R9 pro」は、12月上旬以降にNTTドコモから発売されるほか、SIMフリーモデルも展開される。想定価格は19万円台前半。
「AQUOS sense9」は、11月7日にNTTドコモとau、ソフトバンク、楽天モバイル、UQ mobileとJ:COMモバイルから発売されるほか、MVNO各社、SIMフリーモデル(11月21日発売)も順次展開される。想定価格は6GB+128GBは6万円程度、8GB+256GBは6万円台後半。
本項では、発表会や質疑の模様を中心に、担当者が語る機能やシリーズラインアップのこだわりなどをご紹介する。
「AQUOS R9」は絶好調と小林氏
ユニバーサルネットワークビジネスグループ長兼通信事業本部 本部長の小林繁氏は、まず2024年上期に発表した「AQUOS R9」について、「絶好調の売れ行きを見せている」とし、世界的にハイエンドモデルの需要が伸び悩んでいる中でも2023年同期比で3倍のペースで売れているとアピールする。
「AQUOS R9」や「AQUOS wish4」では、これまでのデザインを一新し、2024年のグッドデザイン賞を両機種で受賞した。なかでも「AQUOS R9」は優れた100選「ベスト100」にも選ばれた。近年スマートフォンが選ばれることは珍しく「業界全体にとっても快挙」(小林氏)と、一新した効果を強調した。
一方、今回発表された「AQUOS R9 pro」と「AQUOS sense9」では台湾、インドネシア、シンガポールでの展開もあわせて発表された。同社としては、この3カ国で積極的に展開する姿勢を進めており、グローバルで通用する端末でありながら、各国のニーズに合わせてローカライゼーションをすることで販路拡大を狙っている。
シャープ独自のAI機能を取り入れる
通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の中江優晃氏は、AQUOSシリーズに搭載しているAI機能を「代行して時短を図る『効率性』と、生成して提案する『創造性』という2つの価値がある」と紹介。
「AQUOS R9」から搭載された「AI伝言アシスタント」は、「AQUOS R9 pro」でも引き続き搭載される。R9 proからは、電話周りのAI機能として「電話アシスタント」機能へと発展。AIが電話の内容を聞き取り、メモを自動作成し電話の内容をリスト化する。
また、カメラ機能にもAIが活用されており、HDR処理や14チャンネルのスペクトルセンサー(R9 proに搭載)とAIを組み合わせて、より現実に近い自然な色味を表現する。加えて、被写体と周囲の光を分析し、難しい照明環境でも正確なホワイトバランスで撮影できる。
同社独自のAIだけでなく、グーグル(Google)のAI機能も利用できる。「Google Gemini」のさまざまな機能や「かこって検索」もサポートする。
フラッグシップモデルの「AQUOS R9 pro」
パーソナル通信事業部 商品企画部の今井啓介氏は、「昨今フラッグシップスマートフォンの存在意義が再び問われている」と指摘。手軽なスマートフォンでも高い性能や優れた機能が搭載される中で同社が導いたものは「カメラを超えること」と説明する。
フラッグシップモデルとなる「AQUOS R9 pro」では、先代モデルの「AQUOS R8 pro」に引き続きライカカメラ監修のカメラを搭載する。今回は、アウトカメラの3眼カメラシステム全体がライカカメラ監修の「バリオ・ズミクロン」カメラシステムを搭載。ライカカメラと何度も議論し、夜景や人物、風景などを被写体に応じて使い分けできる「メインとして使えるカメラ」を開発。本格的かつ直感的な操作で納得できる1枚を撮影できる。
カメラ機能は、ハードとソフト両面のこだわりがある。メインカメラには、1インチ超えの大型センサーを搭載したメインカメラと1/1.6インチと大きなセンサーを備えた望遠カメラ、超広角カメラを備える。超広角カメラでは、マクロ撮影も可能で、あらゆるシーンで確かな撮影体験ができる。
たとえば、夜景であればセンサーサイズが大きいメインカメラで光学式手ぶれ補正もサポート。ノイズやブレが少ない写真を撮影できる。
ポートレート撮影では、望遠レンズが活躍。65mm相当の望遠レンズはプロも写真家も活用するレベルのぼかし効果を持ち被写体を際立たせる。
超広角カメラは広大な風景を、5030万画素という高精細で撮影でき、広がる景色をくっきりと収められる。
先代モデル(AQUOS R8 pro)では、1インチの大型センサーを備えたメインカメラのみ備えていた。今回、望遠カメラと超広角カメラを備えたことで、「1倍での撮影時にセンサーをフルに使用」できるようになった。センサーの大型化と相まって、先代モデル以上の高精細な撮影が期待できる。
ソフト面では、HDR撮影など合成時にAIを活用することで、元のRAWデータを超える情報量で合成処理ができるようになる。これにより、ディテール感と階調感が大幅に向上しているほか、難しい照明条件下でも正確な色味を引き出せる。このほか、Dolbyビジョンによる動画撮影をサポートし、鮮やかな動画を残せる。動画撮影時における手ぶれ補正にもAIが活用され、手ぶれの強度に応じて補正が自動調整され、より広い画角で撮影できる。
また、本体にはシャッターキー(物理キー)が搭載された。半押しでフォーカスを合わせるなど本格的なカメラ撮影体験ができる。アタッチメントを取り付ければ、アウトカメラ部分にレンズ交換式カメラ用のレンズフィルターを取り付けることもできる。
このほか、高性能なチップセット(Qualcomm Snapdragon 8s Gen 3)やベイパーチャンバーによる高い放熱性能、大型ディスプレイや大幅に音響性能が強化されたデュアルボックススピーカーなど、フラッグシップモデルにふさわしい機能、性能が盛り込まれている。
“ワクワク感”を提供する「AQUOS sense9」
スタンダードモデルの「AQUOS sense9」について、パーソナル通信事業部 商品企画部の清水寛幸氏は、“ワクワク感”を提供するスマートフォンとして開発したとアピール。スマートフォン市場が登場してから15年が経つなか、ユーザーが買い替える度に経験する性能向上の期待感がやや落ち着いているとし「生活の道具として信頼できる性能を持ちながらも“ワクワク感”を提供できるスマートフォン」としての立ち位置を目指したとコメントする。
デザイン面では、「AQUOS R9」から引き続き「miyake design」監修のコンセプトを採用。自由曲線を用いたカメラパネルやアルミボディのメタリックな質感が融合したものに仕上がっている。カラーバリエーションも、バイカラー、トーントーン、ニュートラルという3つのカラーテーマの元、本体と純正ケースそれぞれのカラーの組み合わせて全36通りのコーディネートができるようになっている。
ディスプレイは、senseシリーズ初のPro IGZO OLEDを搭載。1~120Hzの可変リフレッシュレートに対応し、非常になめらかかつ省エネ性を両立している。明るさも先代モデル(AQUOS sense8)から全域で約4倍の明るさを実現し、日光の下でもはっきりとした画面表示ができる。
カメラは、背面に約5030万画素のメインカメラ(F値1.9、23mm相当、OIS、1/1.55インチ)と約5030万画素の広角カメラ(F値2.2、122°、13mm相当)を搭載。高画素の広角カメラを搭載することで、夜景やマクロ撮影でも高精細な写真が撮影できる。HDR撮影機能も進化し、シーンに応じた最適な合成処理ができるようになり、ディテールがより細かく表現される。
また、フロントカメラも約3200万画素(F値2.2、25mm相当)のものが備えられており、セルフィーでもこれまでより高精細に撮影できる。
フラッグシップモデルは「世界のトップ集団にとどまるには必要な商品」
「AQUOS R9 pro」のターゲット層について中江氏は「冒険に行くというコンセプトがある。こだわりの強いユーザーやアクティブなユーザーにお勧めしたい」とコメント。
フラッグシップモデルを開発する意義について小林氏は、上位のチップセットを採用できるなど、自社技術を含めた世の中の技術をすべて投入できるため、ブランド全体にたいして効果が大きいと説明。R proシリーズでは近年ライカカメラとのコラボレーションが続いており、カメラに対する評価も上がってきているとし、「世界のトップ集団にとどまるには必要な商品だ」(小林氏)とその意義を強調する。
一方、ライカカメラが開発に関わったスマートフォンは、グローバル市場を中心に数を増やしている。ライカ監修によるブランド効果や性能向上が、逆に「ライカ監修カメラ」同士による競争とはならないだろうか?
中江氏は「ライカが目指す写実性、見たままの空気感を撮影できる価値観が増えてくるようになる」とし、ライカ監修モデルが増えることに対して「ライバルでありながらいいパートナー」と説明する。
今回のモデル「AQUOS R9 pro」では、「望遠カメラに大きいセンサーを使い、人物撮影で顔の歪みが少ない写真を撮影できる」点を清水氏は指摘。また、本体にシャッターキーを備え、アクセサリーがなくてもカメラによる撮影体験ができる点も、強みの1つとした。
AIの活用
スマートフォンにおけるAIの活用にあたり、AQUOSシリーズでは通話関連のAIを強化している。
小林氏は、米国などの大きいテックカンパニーによるサービスの比較論になりがちだが、Androidを搭載しているAQUOSスマートフォンにおいてグーグルと競っても意味が無いとコメント。シャープにしかできないこととして、通話関連のAIを掘り下げているという。
日本独自の機能として小林氏は簡易留守番電話機能を上げ、「端末本体に録音する機能は日本でしかない機能(機能の開発当時)で、チップセットメーカーにお願いして入れてもらった」と説明。日本ユーザーが求める機能を、シャープが得意な分野でAI機能を活用する方針を示した。
スタンダードモデル「機能での差別化は限界」
一方、価格面で勝負となるスタンダードモデルについて中江氏は「機能で差別化するのは限界」と説明。今回のカラーラインアップについては「本体カラーや純正ケースを使った、デザインからワクワクさせる」効果があると語る。
日本のマーケットについて小林氏は「ローエンドの比率が高くなっている」との見解を示す。世界で見ても端末の平均販売価格の下がり方が日本は顕著だとし、このsenseシリーズを「大半のユーザーが満足できるモデルにする」ことで、ユーザーの満足感向上と、マーケット全体の金額スケール向上を目指すとした。