インタビュー

シャオミが「Xiaomi 14 Ultra」などを発表、大沼社長らが語る製品戦略とは

 小米技術日本株式会社(シャオミ・ジャパン)は9日、新製品発表会を開催し、フラッグシップのAndroidスマートフォン「Xiaomi 14 Ultra」などを発表した。

 発表会後には、大沼彰取締役社長と、プロダクトプランニング部 本部長の安達晃彦氏が、囲み取材や本誌のインタビューに応じた。本稿では、その様子をお届けする。

左:大沼氏、右:安達氏

囲み取材

――スマートフォンもタブレットも、フラッグシップのモデルを持ってきたということだと思う。販売戦略を教えてほしい。

安達氏
 今おっしゃられた2機種は、ちょっと毛色が違うかなと思います。

 Xiaomi 14 Ultraについては、本当に待望の機種を、皆さんからも熱いエールをいただいて、何とかここまで持ってこられました。「一番いいものを持ってこよう」というのがXiaomi 14 Ultraの考え方です。

 おそらくシャオミっていうだけじゃなくて、この世の中にあるスマートフォンの最高峰のカメラ技術が詰まっていると思っています。それをぜひお届けしたかったんです。

 タブレットについて言えば、Androidタブレットのビジネスを拡大したいと思ったときに、スマートフォンと同様、“安いコスパ”だけじゃなく“高性能なコスパ”もしっかりお届けしたいと思いました。

 アクセサリーなども含めて、Androidタブレットで高性能をお楽しみいただきたい。絶対金額としてはこれまでで一番高いものですが、中身を考えていただければ、期待を裏切らないものになっていると思います。

大沼氏
 日本においての(シャオミの)ブランドはまだまだこれからですので、エントリーとあわせて、ハイエンドのきちっとしたものを展開していくのは大切だと考えています。今回のXiaomi 14 Ultraとタブレットで、そういった部分は達成したと思います。

――フラッグシップは今後継続していくのか。

大沼氏
 継続していかなきゃいけないなと思っています。そのためには今結論を出すんじゃなく、実際の販売結果、それをどう反省して次につなげるかということを、しっかり段階を踏みながらやっていく必要があります。

――Xiaomi 14 Ultraは約20万円ということで、買いやすくするような取組みはあるのか。

安達氏
 それに関してはまだちょっと道半ばだと思っています。

 まず、企業努力として絶対的な金額をなんとか20万円を切る、それもフォトグラフィーキットをつけてお届けするということは、現状の為替を考えても頑張りました。

 あとはそれを、月々の支払いなど含めて買いやすい形にしていくことについては、これから我々がやっていくところでもあるのかなと思います。

――「au +1 collection」での売り方が少しピンと来なかったが。

大沼氏
 au +1 collectionでの販売は、SIMフリーの端末に近いと思っていただければ。SIMフリーとの違いとしては、auさまの販売店に置いていただいて、そこで店員さんが接客できるところがあります。考え方はSIMフリーに近いです。

――Xiaomi 14 Ultraはおサイフケータイに対応していない点が気になった。

安達氏
 そうですね、ご要望があるのはわかっています。

 ただ、今回はXiaomi 14 Ultraを、ライカ付きで日本にお届けすることを最優先にしました。絶対的な金額もそれなりに高いものですので、台数としても野望を持つ段階ではないのかなと思っていて。そういうところを考えると、日本向けのカスタマイズをしたときに価格への影響が出てしまう心配があります。

 (おサイフケータイに対応させることで)時期的にさらに遅くなったりとか値段が高くなったりとかしても本末転倒かな、という考えもありました。

――人気が出れば、キャリアへの販売につなげたい考えもあるのか。

安達氏
 これはフラッグシップの第一歩になっていますので、皆さまからのフィードバックや実際のビジネスの状況を精査しながら、次につなげていけると思います。

大沼氏
 グローバルで売れている状況や日本でのやり方などをディスカッションしながら、次にどうあるべきかを考えます。もしかしたらFeliCaが絶対という話もあるのかもしれませんし、我々としてはそこじゃないな、というのが今回の結論でした。

安達氏
 少し言い訳っぽく聞こえるかもしれませんが、Xiaomi 14 Ultraは2台目、3台目で買われる方も多いかなと思っています。

 (Xiaomi 14 Ultraには)特化されている魅力があるので、2台持ちですとか、使っていく中での工夫で、弱点を補っていただけるとありがたいなと。

――日本側としては、「Ultra」シリーズを取り扱いたいという希望はもともとあったのか。

安達氏
 それはもう、「Xiaomi 12S Ultra」からずっと持っていました。「Ultra」シリーズとしては3世代目になっていて、今回のXiaomi 14 Ultraでかなり完成に近くなってきたので、時間は約2年かかりましたが、最適なタイミングだったと思います。

――渋谷でポップアップストアがオープンするとのことだったが、期間限定になる。これは日本でストアを構える布石なのか。

大沼氏
 現時点でストアを構えるところまでは行っていませんが、今回のようなことをひとつずつやりながら、次につなげていきたいなと思います。答えはまだ決めていません。

インタビュー

――Xiaomi 14 Ultra発売までの経緯として、実は2年前からハイエンドを本社側に要望していたということでした。大変だったこと、逆に背中を押されたようなことは何でしょうか。

安達氏
 大変というか、我々としても「日本でもぜひライカを出したい」という気持ちはずっとありました。でも、当時は……契約関連のことは我々のタッチするところではありませんが、なかなか導入できないという理由も何となくは感じていまして。

 ただ、やっぱり積み重ねです。(日本向けの)商品もどんどん良くなってきています。

 あと、昨年の「Xiaomi 13T」シリーズの発売時に、日本向けにライカが付かなかったことに対して、ユーザーさんのフィードバックが「残念だった」ということがあります。我々が思っている以上に、SNSの投稿などのユーザーさんの声が本社に伝わっていて。

 CEOからも「前向きに検討したい」といった話があって、我々としても要望してきたものについて、チャレンジしてみようかということで本日に至りました。

 結果はまだわからないところもありますが、商品自体の反響は上々ですし、Xiaomi 14 Ultraが日本のお客さまに評価いただけたらありがたいです。

安達氏

大沼氏
 少し繰り返しになりますが、「突然じゃない」ということです。エントリー、ミッドレンジ、Xiaomi 13Tシリーズと、ひとつひとつステップアップしてきた流れの中で(Xiaomi 14 Ultraの発売を)実現できました。

――ライカ関連の契約の話って、どんな状況なんでしょうか。国内ではシャオミの独占ということになるのでしょうか。

安達氏
 我々は全然わからなくて、本社からは、「我々が(ライカを)導入するから、他社さんには(ライカが)つかないよ」とも言われてないんですよ。わかるのは、「我々が(日本で)出せるようになった」っていうことだけです。

――なるほど……。

安達氏
 Xiaomi 14 Ultraは名前だけのライカではなく、かなりライカさんの手が入っています。ライカさんの技術やノウハウが入っているので、これをライカなしで出すというのは事実上難しいんです。切っても切り離せない。

 そういう意味でも、日本でライカと一緒にできる象徴的な商品になって、タイミングとしてはパーフェクトだったと思います。

――フォトグラフィーキットをつけたときに、シャッター音は消せないのでしょうか。

安達氏
 消すことはできません。ただ、この商品について言えば、カメラっぽさは表現できているので、Xiaomi 14 Ultraとの相性は悪くないかなと思います。

――約2万円のフォトグラフィーキットを購入者にプレゼントするというのは、結構思い切ったご決断だったと思います。セットのようにして提供することで、良さをより知ってもらうような狙いがあったのでしょうか。

安達氏
 その通りです。Xiaomi 14 Ultraは、本体だけではなくキットがつくことで、その体験が完成します。おそらく、(Xiaomi 14 Ultraを)買ったお客さまは、別売でも買う方が多いだろうと思いました。

 であれば、我々としてはプレゼントとしてご提供することで、Xiaomi 14 Ultraのポテンシャルを余すことなく引き出していただきたいなという思いがありまして。

 余談ですが、このフォトグラフィーキット、結構かっこいい化粧ケースに入ってくるんですよ。ガジェット好きにはたまんないんじゃないかなと思ってて。もしかしたら、使わないで取っておく人もいるかもしれない(笑)。

大沼氏
 2個買うとかね(笑)。

――Xiaomi 14 Ultraでは、たとえばAI機能とか、カメラではない部分を訴求していくつもりはありますか。

安達氏
 実はXiaomi 14 Ultraに関するプレゼンって、本国(中国)では1時間30分~2時間くらいかけているんです。今日はそれをぎゅっと圧縮して15分に縮めていて、細かい技術的なものを省きました。

 その中には、いわゆる画像処理の部分でのAI機能などもあります。コンピュテーショナルな絵作りの中にAIが相当入っていて、今回はChatGPTみたいなわかりやすいAIというより、いわゆる黒子的なAIがかなり多いという感じですね。

大沼氏
 どこにフォーカスを当てるか、ということだと思っています。カメラ機能に集中してお伝えしたかったということです。

大沼氏

――今回のラインアップ、いわゆるローエンドのモデルはありませんでした。ポートフォリオについてお考えを教えてください。

安達氏
 今回の発表で、ラインアップはいったんきれいに埋まったかなと思っています。

 「Redmi 12 5G」を昨年に発売して以降、2万円台後半~3万円台前半のエントリー機種として、非常に好評をいただいています。ただ、エントリーモデルって、一年で機能的な進化を遂げるというのは難しいんです。

 特に、昨今の円安の状況からすると、コスト面の制約も厳しくなってきています。商品の存在意義はお手頃な価格というところにありますので、ハイエンドの商品のようにモデルチェンジをする必然性が、相対的に低くなります。

 ですから、しばらくはRedmi 12 5Gに頑張ってもらいたいという気持ちがあります。

大沼氏
 (発売から)まだ7~8カ月ですから。(Redmi 12 5Gは)息が長いと思います。

安達氏
 Xiaomi 13Tシリーズは、価格帯としては(Redmi 12 5Gとは)数万円以上のギャップがあります。今回発表したRedmi Note 13シリーズの2機種は、auさんがどのくらいの価格で販売されるかわかりませんが、その間を埋めるようなかたち(になっている)。でその上に象徴的なもの(Xiaomi 14 Ultra)が来て、スマートフォンに関してはポートフォリオが組み上がったという感覚があります。

――「Xiaomi Pad 6S Pro 12.4」について、「Xiaomi Pad 6」もハイエンドモデルだと思ったのですが、もっと進化したということですかね。

安達氏
 そうですね、本当に全方位的に進化しています。

 チップセットは一番コアになる部分としてもちろん、ディスプレイの大きさや解像度、それから個人的に一番大きいなと思っているのは急速充電です。

 タブレットって、「ちょっと使おうか」と思ったときにはバッテリーが切れている、という経験が何回かありまして。(「Xiaomi Pad 6S Pro 12.4」の)120W充電があれば、ちょっと充電するだけですぐに使える状態になります。

 毎日使うスマートフォンだからこその120Wという考え方もありますし、タブレットだから120Wが効く世界というのもあるんじゃないかなと思っています。

――「Xiaomi Pad 6S Pro 12.4」に触れてみて、簡単なスケッチをAIがきれいな絵にしてくれる「AIアート機能」が面白いと思いました。「Xiaomi Pad 6S Pro 12.4」のみの機能になるんでしょうか。

安達氏
 はい、現時点では「Xiaomi Pad 6S Pro 12.4」だけです。プレゼンでは触れなかったんですが、「Xiaomi Community」への登録も必要でして、ひと手間かけて登録いただくと使えるようになる機能です。

 今後のタブレットへの展開や、スマートフォンへの展開なども、もしかしたらあるかもしれません。

――超大型のスマートテレビ「Xiaomi TV Max 86”」を展開する理由も教えてください。

大沼氏
 我々、KDDIさんとスマートテレビを展開してきました。それはそれとして、今回の「Xiaomi TV Max 86”」については、「もっと大きなものを」というニーズが出てきたというのが事実です。

 我々はKDDIさんとだけというよりも、そういった分野で、商品と流通を組み合わせながらやっていきたいなと。今回はECチャネルのみになります。

 日本でこのサイズが本当に受け入れられるのかどうかということは、個人的に非常に興味があります。家庭じゃなくて、企業さんや飲食店さんでも活躍するかもしれません。

――ありがとうございました。