みんなのケータイ

スマホの通話を録音したい時、どうするか

【AXON 7】

 学生時代に先輩から譲ってもらって以来、17~18年近く使っていたケンウッドの留守番電話機が壊れたため、パイオニアの最新のコードレス留守番電話機を購入した。

 ご多分に漏れず、自宅での固定電話の出番は驚くほど少ない。のだが、何かの契約や会員登録といった場面でさんざんその電話番号を書いてきたため、今更廃止できない・廃止にまつわる手続きが面倒くさいというのが実際だ。したがって、かかってくる電話も、迷惑電話が8割、通信会社系の迷惑電話とまでは言えないセールスが1割、信用機関と思われる導通確認みたいな深夜のワン切りが1割といった感じで、新しい電話機のセットアップも、あまりテンションは上がらなかった。

 ただ、固定電話の電話機を20年レベルで買い替えていなかったためか、最新モデルの受話器の、かなり押しやすそうな場所に、通話の「録音」ボタンが搭載されていたのには少し驚いた。着信応答時に自動で録音を開始するようにも設定でき、さらに、通話が録音される旨のガイダンスが相手に流れてから通話を開始する機能もある。購入した機種は上位モデルというわけではないが、非通知やフリーダイヤルからの着信を拒否するといった着信拒否機能も充実している。

 マニュアルの記述の仕方などを見ていても感じるが、固定電話のメインの利用者層は高齢者が中心になり、迷惑電話への対策がより重要になっていることが窺える。通話の録音機能にしても、悪質な勧誘を諦めさせるといった効果も期待して搭載しているようだ。

 翻って、携帯電話、特に最新の機能の塊であるスマートフォンはどうだろうか。通話の録音などはアプリで簡単に実現できそうだが、ハッキングや乗っ取りに対して常に対策を講じなければいけない高度なOSが仇になってか、アプリでの通話の録音はそれなりに制限されているのが実情だ(通話の録音が違法になる国もある)。例えばiOSアプリでは、通話について、正統的な方法で相手の声や自分の声を録音することはできない(外部端子に接続する録音機器はある)。

 Google Playでは、相手の声も自分の声も(つまり通話内容を)録音できるというアプリはそれなりに存在するものの、たいていはDropboxなどのクラウドサービスにアップロードする機能などとセットになっており、動作の不安定さを訴える声も少なくなく、筆者などは利用に不安を覚えてしまう。中にはアプリアイコン非表示で完全自動化を謳うなど、スパイツールとしか思えない仕様のものもあった。コールレコーダーというアプリのジャンルそのものが、スマートフォンにおいては悪用と隣合わせになっているためか、ちょっと怪しい雰囲気を感じてしまうのだ。固定電話の電話機ではボタンひとつで利用できる機能なので、歯がゆい部分とも感じられる。

 簡単な連絡は、SNSやメールで済むようになった結果、あえて音声通話でやりとりされる内容というのは、個人であっても、その重要度が増しているケースは多いのではないだろうか。何かのトラブルに関連し、直接相手と話さなければいけないケースなどは、電話をする前から「証拠として残しておきたい」と考えることも多いと思う。トラブルまでいかなくても、サポートセンターに電話した際のやりとりを、後から確認したいといったケースもある。

アナログ的手法で対応してみる

 そうした時、かなり簡単に通話の録音を実現してしまう方法が、マイクをスマホにあてて録音してしまうという方法だ。かなりアナログ的手法というか、決して“スマート”とは言えないのだが……。

 オリンパスやソニーといったICレコーダーを発売しているメーカーは、以前から関連アクセサリーとして電話録音用のマイクをラインナップしている(パナソニックの電話録音用マイクは生産終了)。仕組みは非常に単純で、イヤホンの形をしたマイクを耳に装着し、ICレコーダーで録音を開始すれば、耳にあてている電話の相手の声も、自分の声も録音できるというもの。

イヤホンの形をしたマイクで通話内容を録音

 これらの電話録音用マイクは、イヤホンのように音が出る機能は無い、シンプルなエレクトレットコンデンサーマイクだ。ただ、プラグはステレオミニプラグと同じ形状だがプラグインパワー方式の電源が必要なため、スマートフォンの4極のイヤホンマイクのジャックでは基本的に利用できない。ICレコーダーは、多くの製品でマイクジャックがプラグインパワー方式に対応している。

 筆者は仕事でソニーのステレオICレコーダー「ICD-UX565F」を使っているため、同じソニーの電話録音用イヤホンマイク「ECM-TL3」を買ってみた。使い方も簡単で、ICレコーダーのマイク端子にプラグを挿し込むと、自動的に「外部入力設定」の画面に切り替わるので、後は「電話用マイク」を選択するだけで準備は完了する。

ICレコーダー「ICD-UX565F」と電話録音用マイク「ECM-TL3」
マイクを装着すると設定画面に切り替わる

 「ECM-TL3」は2011年発売と最近の製品ではないが、いくつかのモデルを経ているためか、それなりにポイントがある。外に向いたマイクの周辺はシリコンゴムのパーツが盛り上がった形状で、スマートフォンや受話器がマイクに当たった際の雑音を低減するようになっている。イヤーピースもソニーの最近の製品と共通で、付け心地は良い。

 またこのモデルは、自分の声の録音用として骨伝導マイクも搭載しており、自分の声をかなりクリアに録音できる。自分の声をそんなに綺麗に録音して嬉しいのかという点はさておき、実際に録音してみると、相手の声との聞き分けという意味では、より分かりやすいと感じた。

 なお、筆者が使っているICレコーダー「ICD-UX565F」には、なんと電話録音用マイクがパッケージに同梱されていたのだが、すっかり忘れており、その存在に気が付いたのは「ECM-TL3」を購入した後だった。パッケージ同梱品は「ECM-TL02」という型番で、どうやら前モデルに相当するよう。シリコンゴムでマイクを簡単に保護する形状ではないほか、骨伝導マイクも搭載していないようで、自分の声の録音品質は、骨伝導マイク搭載の「ECM-TL3」のほうがクリアで綺麗だった。もっとも、「ECM-TL02」でも十分なレベルの品質で録音はできているのだが。

ICレコーダー「ICD-UX565F」に電話録音用マイクが同梱されていた……
パッケージ同梱品「ECM-TL02」(左)と別売りの「ECM-TL3」(右)。マイク部分の形状が違うほか、右は骨伝導マイクも搭載している

 ICレコーダーとマイクで録音するという方法は、スマートフォンのアプリで録音を開始できるとか、そういう仕組みではないので、通話中にとっさに思いついて録音を開始するというシーンには向かない。ただ、前述したように、あらかじめ録音しておきたいと思うような、トラブル対策の一環としては、少し心強いツールになってくれそうではある。