DATAで見るケータイ業界

加速するセルラーキャリア各社の投資抑制

 セルラーキャリア各社の投資抑制が加速している。従来、4000億円規模であった設備投資額を、ソフトバンクが2023~2025年度まで年間3300億円に抑制する。

 KDDIも正式に投資抑制を発表していないが、2022年度の計画値6800億円に対し、6275億円で500億円減の実績となり、2023年度の計画値は6200億円になっている。一方、NTTドコモはコンシューマー通信とスマートライフ事業の投資額をみると、横ばいが想定される。

 ソフトバンクと同規模で投資を抑制するのが楽天モバイルである。直近では、楽天モバイルが2023年、2024年、2025年にそれぞれ3000億円、1500億円、1200億円を計画していた。しかし、KDDIとのローミング契約の延長に伴い、総額約3000億円の投資抑制を進め、それぞれ約2000億円、約500億円、約200億円へと大幅縮小する見込みである。

 楽天モバイルの場合、赤字幅の縮小、社債残高への対応に向け、投資抑制はやむなしとみられ、大幅抑制後の投資規模はUQコミュニケーションズとWireless City Planning並みになる。

 すでに4G人口カバー率は2022年10月末時点で98%に達しているが、当面は投資抑制で業績を改善させ、業績回復後に改めて同99.9%達成に向け、動き出す可能性が高い。

 後発参入となる楽天モバイルは、これまで国内通信市場の設備投資額を底上げしてきた。ただ、楽天モバイルもソフトバンクと同様に投資抑制を進めることにより、2023年度以降、年間2000億円の投資額が抑制される。

 現状、キャリア各社は5G人口カバー率達成にLTE周波数のNR化を用い、高トラフィックエリアにはミリ波やsub6といった5G専用周波数帯を活用している。投資抑制は将来的にミリ波やsub6展開への影響が想定され、このままでは5G人口カバー率99.9%といえども、実質、中身は4G(LTE)ネットワークと大きく変わらないということにもなりかねない。

 こうした懸念に対し、今後、キャリア各社がネットワークスライシングなどを活用した品質保証型の高付加価値サービスの提供本格化に期待したい。

 高付加価値サービスが普及することにより、5Gは儲かるという意識変革がキャリア各社にもたらされるものとみている。

 通信料の値下げも喜ばしいが、価値のあるサービスに適正な利用料を支払うことが市場拡大につながり、ひいては、5G投資の拡大にも影響を及ぼすのではないだろうか。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/