DATAで見るケータイ業界

携帯ショップの削減が進む中、量販系が台頭する代理店業界再編

 デンソーと豊田通商が出資するTDモバイルが、2023年7月10日付で携帯電話販売・代理店事業(一部の店舗を除く)について、家電量販店大手のビックカメラグループで携帯電話販売事業を行なうラネットの新設子会社との間で会社分割契約を締結したと発表した。

 今回は、携帯電話の代理店業界再編の動きについてアップデートしてみたい。

 TDモバイルはデンソーと豊田通商が2009年にそれぞれの子会社を統合して設立された会社で、全国に300店(直営店120・代理店180)のキャリアブランドショップを展開している。

 一方、新設子会社の親会社であるラネットは全国116店舗のキャリアショップのほか、ビックカメラ・コジマ・ソフマップの販売代理店事業、「BIC 4G LTE」「BIC SIM」「BIC WiMAX」といったMVNO事業も展開している。

 今回、量販系であるラネットが主導する形でTDモバイルを吸収する。その背景には、ティーガイアによる富士通パーソナルズ買収や家電量販店のノジマによるコネクシオ買収など、携帯会社がコスト削減を図る目的でキャリアショップ削減の動きが加速する中、代理店会社間の生き残り競争が激化している点が挙げられる。

 なお、これ以外にも2023年4月には全国で120店舗以上のキャリアショップを展開している兼松コミュニケーションズが北海道で代理店事業を展開するテーオーホールディングスから事業譲渡を受けるなどの動きも見られる。

 一連の再編を受け、代理店業界の構図を整理し直したのが、下記の図となる。

 今回の再編を受け、「メーカー系」代理店はほぼ無くなり、「地場・専業系」は特定地域で守りを固めるものの、一部は買収されたり、資本参加を受けるケースができている。

 「商社系」では広域系と呼ばれるティーガイアやMXモバイリング、兼松コミュニケーションなどが残っているものの、コネクシオのケースのように大手とて安泰ではない。そして、市場の成熟化が鮮明となる中、積極的な動きが目立っているのが「量販・その他系」ではないだろうか。

 従来、「メーカー系」や「商社系」が中心だった販売代理事業だが、「量販・その他系」の台頭が鮮明となってきており、これが携帯会社と代理店の関係に今後どのような影響を及ぼすのか注目される。

 なお、弊社が定点観測で調査している国内通信キャリア各社の「キャリアショップ」に関する調査「キャリアショップの展開状況と店舗一覧 2023春」によれば、2023年2月時点における、4キャリア(ワイモバイル、UQ mobileを含む6ブランド)が展開するキャリアショップは、全国に7794店舗存在するが、半年前(2022年8月)より184店減少していることが明らかになっている。

 代理店間の生存競争が更に激化していくことは間違いなさそうだ。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/