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携帯各社から「20GB/2980円」、料金競争激化で影響を受けるMVNOのこれから

 ahamoに代表される携帯各社の料金競争は、注目されたオンライン専用の20GBで2980円(KDDIは音声トッピングで同額)、無制限プランではほぼ横並び。そして、サブブランドは容量アップと値下げで小中容量域を強化してきた。こうした大手の値下げに、第4のキャリアである楽天は従来の2980円無制限プランから「1GB 無料」、「3GB 980円」といった段階制に組み替える対抗策を発表してきた。

 今回は、携帯各社の新料金プランの流れから、MVNOのこれからについて少し考察していきたい。

無料化という「禁じ手」繰り出した楽天

 今年4月から有料化を迎える楽天が顧客流出をどのような手を出してくるのか関心は高かったが、繰り出してきたのは「無料化」という『禁じ手』だった。これは、1年の無料期間終了による有料化で他社へスイッチしようとする動きを一定数封じる効果はあると思われる。

 しかしその一方で、無料で持てるということは、使わなくても契約数としてカウントされてしまう別の問題を抱えることとなる。加えて、通信(データ)は使わずに音声通話だけを利用してしまえば、通話かけ放題無料も実現できてしまう。新たな料金体系で300万契約達成に突き進む楽天が、こうした問題にどのように対応していくのか、注目されていきそうだ。

大手キャリアのプランが出揃い、MVNOの対応が焦点に

 大手3社の段階制プラン以外の料金プランが一応出そろったことで、次のステージはMVNO各社の動きに移った。「mineo」を展開するオプテージは2月から大手サブブランドを意識した新料金プラン「マイピタ」を発表。新プランでは1GB(1180円)、5GB(1380円)、10GB(1780円)、20GB(1980円)の4種類に絞った。その翌日、ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコム(J:COM)は1GB(980円)、5GB(1480円)、10GB(1980円)、20GB(2480円)という新料金「J:COM MOBILE A プラン スタンダード」を発表。2月18日よりサービスを開始する。

 この他にもヤマダ電機とU-NEXTが設立したY.U-mobileは「y.u mobile」で提供しているシェアプランの月額基本料を5990円から3980円に値下げするなど、各社コミュニティや動画配信など差別化できる強みを前面に値下げしてきた。

 MVNO各社がターゲットに据えるのは、主に10GB以下の段階制(小中容量)プランの利用者で、総務省によるデータによれば契約者全体の7割以上が契約しているボリュームゾーンである。総務省は2月、MNOに対して2021年4月からの「データ接続料」をより一層低廉化するよう要請していくことを明らかにしている。これは2020年度より3年度分の接続料を予測して提示する「将来原価方式」に計算方式を改めることをMNO各社に義務付け、同方式に基づき、予測接続料は低廉化の方向となっていたが、今回、MNO各社のオンライン専用プランの登場を受け、MVNO側が更なる低廉化を要請したものである。

 1GBまでとは言え無料で使えるプランを楽天が打ち出した状況下では、接続料金がさらに引き下げられたとしても、MVNOが「さらなる料金値下げ」だけに頼るオペレーションには限界があるのではないだろうか。

 上図にあるように参入プレイヤーをMNOとMVNOで並べて、「ネットワーク品質」「価格」「店舗(サポート)」という軸で比較した時に、MVNOの価格競争力は以前ほど優位性がなくなっているように思える。むしろ、接続料引き下げ分を回線調達量の購入に振り分け、MVNOのネットワーク品質強化を目指すのも一手ではないだろうか。

 大幅な料金引き下げの影響を受ける2021年度は、MVNOの存在価値が改めて問われる生き残り競争となっていきそうだ。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/