DATAで見るケータイ業界

楽天の携帯参入目前で「経済圏」作りを急ぐソフトバンク・Yahoo!陣営

 本誌既報の通り、ソフトバンクは8日に開いた決算会見の中で、ヤフーを連結子会社化すると発表した。一連のプロセスを経た上で、ソフトバンクの持株比率は約45%になるとのこと。

 これまでも、ソフトバンクユーザーのYahoo!への送客や、逆にYahoo!JAPAN内での携帯回線販売などを通じ一定の連携を行ってきた両社だが、ここにきて連結子会社化を進める背景には、携帯参入を目前に控えた楽天へのキャッチアップを急ぎたい狙いもあると見られる。

 両陣営の規模感を比較する指標の1つに「EC流通総額」が挙げられる。含まれる内容が異なるため比較が難しいが、ショッピングやオークション、宿泊、飲食店予約などの流通額を合計した値である。

 ソフトバンクのスマホユーザーに対し、Yahoo! ショッピングでの購入時にTポイントを10倍付与する特典を常時提供するなどテコ入れをはかっているものの、両陣営の流通総額の差はあまり縮まっていないのが実態だ。

※各社数値に含まれる主な事業は以下の通り
楽天=国内EC流通総額:市場、トラベル(宿泊流通)、ゴルフ、チケット、ビューティ、楽天ダイレクト、クーポン、ラクマなど
ヤフー=ヤフオク!、Yahoo! ショッピング、Yahoo! トラベル、アスクル、一休、有料デジタルコンテンツなど

 子会社化で連携をさらに深め、楽天の携帯参入前に強固な経済圏を作って守りを固めたいところだろう。その鍵を握るのが「PayPay」といえる。

 現在、ソフトバンクの通信料金やYahoo! ショッピングでの買い物、クレジットカード(Yahoo! カード)利用などに付与される「Tポイント」は、Tポイント・ジャパンが運営するポイントプログラムだ。異業種を含む幅広いTポイント加盟店で利用できるメリットはあるものの、外部のポイント基盤を使うため、ポイント発行のコスト負担が重くのしかかっているとみられる。

 一方の楽天は、自社で楽天スーパーポイントを運営しており、自社の自由な裁量のもとでポイントを発行できる強みがある。加盟店の独自開拓が必要だが、11月からはファミリーマートが採用すると発表するなど着実に使える店が広がっている。

 巻き返しに向け、ソフトバンク・Yahoo!陣営もTポイントではなくPayPayを軸にした経済圏作りへじわりと動き出している。

 6月3日からは、Yahoo!ショッピングでPayPay残高による決済が導入される。将来的には、キャンペーンでポイントを倍付け(10倍など)する際の期間限定ポイントもTポイントからPayPayボーナスに切り替える方針を公表済みだ。

 また、ソフトバンクも、6月から提供する新プラン「スマホデビュープラン」の契約ユーザーに毎月1000円相当の「PayPayボーナス」を6カ月付与することを決めた。今後、3年目以上の「長期継続特典」によるポイント付与などもPayPayに切り替わる予定だ。

 NTTドコモ「dポイント」、KDDI「au WALLET ポイント」も含め、携帯キャリア各社のポイントを軸とした競争は、今後もさらに激化しそうだ。

MCA

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。