DATAで見るケータイ業界

グラフで比較するキャリア決算(2)

各社「1契約あたり収入」は堅調に推移も、異変見え隠れ

 5月9日までに出揃った通信キャリア3社の決算をもとに各社の状況を整理する「グラフで比較するキャリア決算」。今回は、1契約あたり収入と解約率に焦点を当てる。

堅調に推移してきた「1契約あたり収入」には異変見え隠れ

 売上を契約数で割って算出される「1契約あたり収入」は、NTTドコモとソフトバンクがARPU(1契約回線あたり収入)、KDDIがARPA(1契約者あたり収入)の数字を開示している。2017年度第4四半期は、KDDIが前年同期比60円増の6410円、NTTドコモが同140円増の4690円、ソフトバンクは同変わらずの4310円だった。

 前年同期との比較では各社とも堅調に推移していると言えるが、直近の動きからは異変も見え隠れする。

NTTドコモ

 2017年度第3四半期と第4四半期を比較すると、NTTドコモは30円の減少となった。前四半期との比較でこれまで約3年間増加を維持していただけに、今期の状況が際立ってしまう。これまではドコモ光ARPUの伸びが下支えしてきたが、今期は「お客さま還元」の推進によるパケットARPUの減少幅が上回ってしまった。

KDDI

 KDDIは、前年同期比でARPAが60円増加しているが、その内訳をみると、コンテンツや物販・決済など付加価値ARPAが70円増の反面、au通信ARPAは10円の減少となった。新料金「auピタットプラン」「auフラットプラン」導入による影響が現れた格好だ。同社は、au通信料収入の落ち込みをMVNO収入でカバーし、トータルのモバイル通信料収入はプラスを維持している。

ソフトバンク

 ソフトバンクも、回線収入の落ち込みを非回線で補う構図はKDDIと同様だ。端末保証サービスやコンテンツの収入を示すサービスARPUが前年同期比20円増、通信ARPUが同20円減で、差し引きで前年並みを維持している。同社は2017年度を顧客基盤固めの先行投資の年と位置付け、実際に国内通信事業の営業利益も前年度比5%ほど減少している。しかし2018年度は増益に反転する計画を打ち出しており、ARPUがどのように推移するのか注目される。

スマホ等の解約率、前年同期比でKDDIは改善、NTTドコモとソフトバンクは悪化

 最後に解約率の状況を見てみたい。各社公表数値から、スマートフォンや従来型携帯電話に限った解約率(グラフの実線)を比較すると、2017年度第4四半期における各社の解約率は、NTTドコモが0.57%(前年同期比0.04ポイント増)、KDDIが0.96%(同0.11ポイント減)、ソフトバンクが1.09%(同0.05ポイント増)となった。

 NTTドコモとソフトバンクが悪化する一方、KDDIは大きく改善した。KDDIは、先述の通り新料金プランを投入しARPAの減少を招いているが、一方で解約率の抑止ではプラスに働いているようだ。

MCA 天野徳明

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。