ケータイ用語の基礎知識
第903回:eKYCとは
2019年4月25日 10:39
オンラインで完結する本人確認法
「eKYC」とは、オンラインで完結する本人確認方法のことです。「電子的にあなたの顧客を知る」という意味の英語「electronic Know Your Customer」の略から来ています。
わざわざ「オンラインで」「電子的に」というのはなぜでしょうか。実はこれまで銀行や保険会社、資金移動業者や仮想通貨交換業者などの業務の一部ではオンラインでの本人確認ができなかったのです。
これらの業者とユーザーが一定の取引を行う際には、オフラインで本人確認が行われてきました。
これが、2018年11月の犯罪収益移転防止法施行規則の改正によって、オンラインで完結する本人確認方法、つまり「eKYC」の利用が一定の範囲で可能となったのです。
「身分証と顔の写真を専用アプリから送る」
たとえば、制度上は、銀行のキャッシュカードを作る場合、非対面での本人確認の方法としては、身分証明書、またはそのコピーをオンラインで送信することで可能となっていました。ただしその場合は、キャッシュカードをユーザーの手元に送る際には、証明書に記載された住所に宛てた「転送不要郵便」で送付してもらう必要がありました。
銀行のキャッシュカードのように物理的なカードなどではそれでもよいのですが、スマートフォンの送金サービスなどそれ自体で完結するものでは、郵便送付という手続きを挟むのは非効率です。そのため、オンラインで完結する本人確認方法の導入が待ち望まれていたわけです。
今回の犯罪収益移転防止法施行規則の改正によって「eKYC」として認められた方法は、大きく2つに分かれます。
ひとつめは、ユーザーが、「顔写真付きの身分証明書と自分の顔」の写った写真を送る、もしくは「自分の顔とICカード形式の身分証データ」を送るという方法です。身分証が写真の場合には、それが偽造でないことを確認するために厚みなどを確認できる角度からも撮影する、写真を加工されないように事業者作成のアプリから撮影するなどの要求されることがあります。
ふたつめは、銀行など他の事業者による取り引き時確認を利用する方法です。1つめの方法と同様にユーザーが、「身分証明書」の画像、あるいはICデータを利用したい事業者に送ります。
そのうえで、ユーザー名義の銀行口座開設やクレジットカード発行時の本人確認記録を他の事業者を通して確認することで本人確認を行うか、確認済みの口座に少額を振り込みその証明を事業者に送ることで確認とする、というやり方になります。
LINEやメルペイが導入開始
eKYCを使ったサービスは、徐々に始まりつつあります。
最近では、コミュニケーションアプリ「LINE」上で展開されているモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」で5月初旬から、eKYCの「LINE Pay かんたん本人確認」が導入されます。
「LINE Pay かんたん本人確認」では、ユーザーが身分証とスマートフォンのカメラで身分証と自分の顔を撮影することで、本人確認書類との照合を行い、最短数分で確認が完了します。
スマホ決済サービス「メルペイ」もオンラインで完了する本人確認(eKYC)を導入することを表明しています。